シンクタンクとコンサルは、近年実務において境界が曖昧で重なる部分も多い一方、それぞれに特徴的な違いも存在します。
本記事では、ONE CAREER PLUSが保有する豊富なキャリアデータと独自調査をもとに、クライアント、プロジェクトテーマ、年収、評価制度、キャリアパス、向いている人という6つの観点から、両者の特徴を比較・解説します。
\一目でわかる!コンサル・シンクタンクの違い まとめ/
1. そもそも、シンクタンクとは?
そもそもシンクタンクとは、英語の「Think Tank」を訳したもので「頭脳集団」を意味する言葉であり、特定の政策や社会課題について調査・研究を行い、政府や企業に対して提言を行う機関のことを指します。
日本においては野村総合研究所や、日本総合研究所、三菱総合研究所、みずほリサーチ&テクノロジーズ、三菱UFJリサーチ&コンサルティングなどが代表的なシンクタンクとして知られています。
近年では、シンクタンクが単なる調査・研究にとどまらず、コンサルティングサービスやシステム開発サービスを提供するケースが増えており、コンサルティングファームとの境界は曖昧になってきている側面もあります。
本記事では野村総合研究所や日本総合研究所、三菱総合研究所などシンクタンク系コンサルと呼ばれる企業と総合系コンサルティングファームの違いについて具体的にみていきます。
2. コンサルとシンクタンクの違い5選
2-1. 【コンサルとシンクタンク】クライアントの違い
まず、クライアントの違いです。コンサルと比べてシンクタンクは公的機関が顧客となることが多いのが特徴です。政策や社会課題と関わりが深い、中央省庁・地方自治体・国際機関などが挙げられます。
ただし、民間企業に対してサービスを提供している場合もあります。また、野村総合研究所や大和総研など、母体となる企業から依頼を受けてリサーチやコンサルティング、システム開発を行うといったケースもあります。
一方、コンサルティングファームの顧客は民間企業から官公庁まで幅広く存在します。ただし、大手企業を主なクライアントとする場合や、中小企業向けのコンサルティングを得意とする場合など、ファームごとに特徴は異なるため個別に見ることが重要です。
2-2. 【コンサルとシンクタンク】テーマの違い
次にプロジェクトのテーマの違いです。シンクタンクでは、政策立案や社会課題の解決、国際関係の分析、将来予測など、社会全体に関わる公共政策を主なテーマとしています。
シンクタンクが発表する政策提言やレポートの例は以下のようなものがあります。
- 三菱総合研究所:2050年の世界トレンドを予測し、日本が豊かで持続可能な社会を実現するための取り組みを「未来社会構想2050」として発表
- 日本総合研究所:「リサーチ・アイ」として経済分析のレポートをタイムリーに提供
一方、コンサルティングファームは、クライアント企業の課題解決をサービスとして、経営戦略、事業戦略、組織開発、DX推進など様々な課題に対して解決を行います。
コンサルティグファームは扱う課題の種類によって「戦略コンサル」「ITコンサル」「総合コンサル」などと呼び分けられます。たとえば、企業の経営戦略に関わる課題を解決するのが戦略コンサル、IT関連の課題を解決するのがITコンサルという具合です。
(参考)コンサルティングの領域と代表的な企業一覧はこちら
2-3. 【コンサルとシンクタンク】年収の違い
シンクタンクとコンサルの年収はどのように違うのでしょうか?代表的なシンクタンク・コンサル企業の目安年収を見てみましょう。
<代表的なシンクタンク企業の目安年収>
▼野村総合研究所(→詳しくはこちら )
- 平均年収は1,271万円
- 30代前半までは年功序列で横並びで昇進
- 新卒1~2年目(メンバークラス)で450万円
- 新卒2~5年目(アソシエイトクラス)で732万円程度
- 新卒4年目以降シニアアソシエイトに昇格し、シニアアソシエイトの後半になると年収約1,000万円に到達
▼三菱総合研究所(→詳しくはこちら)
- 平均年収は1,080万円
- 30代前半までは基本的に年功序列で昇進
- 新卒1年目は500万円程度、新卒2~5年目で600~800万円
- 20代後半に4級まで昇格すれば800~1,000万円の年収が見込める
▼大和総研(→詳しくはこちら)
- 30歳の目安年収は730万円
- 30代ごろまでは年功序列で昇格する傾向あり
- 新卒1~5年目(役職なし〜主任)では年収は約430~560万円程度
- 課長代理で約700~800万円、次長で約960万円、副部長で約1,190万円の年収が見込める
<代表的なコンサルティングファームの目安年収>
▼ベイカレント・コンサルティング(→詳しくはこちら)
- 平均年収は1,074万円
- 実力主義の評価制度だが、実態としておおよそ2-3年単位で昇進
- 新卒1~7年目(アナリスト、コンサルタント)で年収は500~900万円
- シニアコンサルタントの後半で年収は1,000万円超
- 最速で20代後半にシニアコンサルタントに昇格すれば1,000万円近い年収が見込める
▼アクセンチュア(→詳しくはこちら)
- 平均年収は836万円。31歳の目安年収は約840万円
- 年次によらず実力次第で昇格可能
- 新卒1~5年目(アナリスト、シニアアナリスト)では年収550~600万円程度
- マネージャーに昇格すれば年収1,100~1,320万円程度
- 20代であっても実力次第でマネージャーへの昇格が可能(最速新卒5年目)
▼デロイト トーマツ コンサルティング(→詳しくはこちら)
- 平均年収は886万円。29歳の目安年収は1,000万円
- 年次によらず実力次第で昇格可能
- 新卒1~5年目(アナリスト、コンサルタント)では年収600~700万円程度
- シニアコンサルタントの後半〜マネージャーになると年収は1,000万円超え
- 最速で20代後半でマネージャーへの昇格が可能
平均年収でみると、野村総合研究所や三菱総合研究所など大手シンクタンクは水準が高いことがわかります。
一方で、若手(新卒1~3年目)の年収で比較するとシンクタンクは400~500万円程度であるのに対し、コンサルは500~600万円程度となっており、コンサルの方が高い傾向がみられます。また、昇格についてはシンクタンクよりもコンサルの方が実力主義の色が強いことがわかりました。
2-4. 【コンサルとシンクタンク】評価制度の違い
前提として、評価制度は個別企業によって異なりますが、全体の傾向をみると外資コンサルを中心にコンサル企業は実力主義・成果主義の風潮が強いのに対し、シンクタンク企業は年功序列の要素が強い傾向にあることがわかりました
。
例えば、大手シンクタンクの野村総合研究所では「昇進スピードが年功序列」「賞与の支給金額は個人の成績によって変わるが、メンバー層では10~20万円程度の差しかない」という評価制度になっています。
(参考:ONE CAREER PLUSの独自調査)
他にもシンクタンク企業については以下のようなクチコミが寄せられていました。
一方で、外資コンサルのデロイトでは「評価が高ければ高いほど給与反映されるため非常に納得度が高い(中途/男性)」「パフォーマンスに連動する賞与もあり、一定のインセンティブはある(中途/男性)」といったクチコミが寄せられており、個人の実力次第で収入面に差がつく給与設計となっていることが伺えます。
これらのことから、年収・評価面においては「年功序列を前提に長期で働きたい・同世代と評価の差をつけられたくない人」にはシンクタンク、「実力で評価されたい・早期に年収を上げるチャンスをつかみたい人」にとってはコンサルが向いていると言えます。
2-5. 【コンサルとシンクタンク】キャリアパスの違い
2-5-1. シンクタンクからの転職事例
一言でシンクタンクといっても、シンクタンク企業の中で、「リサーチを主としていたのか」「コンサルティングも行っていたのか」「システムインテグレーションを行っていたのか」等でネクストキャリアは変わります。
ONE CAREER PLUSに寄せられた体験談を見てみましょう。リサーチ中心の経験を持つ若手の場合は、年収アップやコンサルタント職への転換を目指して戦略コンサルティングファームに転職するケースなどが考えられます。その他、20代の若手であれば、未経験で事業会社のセールス職などに転職するケースも見受けられました。
また、官公庁向けのプロジェクト経験がある人であれば、官公庁や公的機関への転職も考えられるでしょう。
▼三菱UFJリサーチ&コンサルティング→コーポレイトディレクションへの転職事例
社会人歴:10~15年
転職理由:
現職では、調査業務なども多く、イメージしていた戦略コンサルティングの業務や自身のキャリアイメージにより近づく環境を求めていたため。
転職で役立ったこれまでの経験:
基本的なコンサルティング、リサーチのスキル。また、コンサルティング業務のイメージができていることなどは、双方のマッチングの観点で重要であった。
社会人歴:3年未満
転職理由:
人工知能や機械学習専門のリサーチャーとして働いている中で、アカデミアではなく、実業の世界で、最先端の技術を使って顧客や社会の問題を解決する経験を積みたいと思うようになったからです。GAFAで働いている方が、高度な技術力と社会への貢献意識を同僚が皆持っていると話しているのを聞き、自分もそのような世界に入りたいと思いました。
転職で役立ったこれまでの経験:
多変量解析やディープラーニングによる画像診断などのアプリを自分で作っていたので、コーディングやアプリ開発に抵抗はありませんでした。セールスフォースは顧客に応じた作りこみが必要ですが、その部分の開発スキルを磨くにあたり、大学院や研究員時代の知見がベースとしてあったため、比較的短い時間で済んだと思います。
社会人歴:3~5年
転職理由:
業績が処遇に反映されず、仕事ぶりに差がある同期・先輩と横並び評価であることに不満を感じたから。30歳に到達する前に転職活動することを決めた。
<その他シンクタンクからのネクストキャリアの例>
2-5-2. コンサルからの転職事例
コンサルティングファームからのネクストキャリアは、他コンサルティングファームや、事業会社の企画部門、事業開発、セールス系職種、起業など多岐にわたります。
ONE CAREER PLUSに寄せられた体験談を見てみましょう。
社会人歴:10~15年
転職理由:
1.外資系ならではのドライな人事制度を感じるケースを見たため、心理的に安心できる会社で働く意欲が強くなった
2.仕事に打ち込む体力がなくなってきた
3.サプライチェーンの強靭化、ドライバー不足への対応などロジスティクス専門コンサルタントとして得た経験が、事業会社で実行フェーズに関わったときにどう活きるかを試したかった
転職で役立ったこれまでの経験:
コンサルタントとして、食品メーカーや運送会社など様々なクライアントとロジスティクス関連の課題を解決するお手伝いをしました。こうした経験から、物流関連の契約交渉や配送管理、トラブルがあった際の相談窓口がどこにあるかを把握しており、なおかつコンサルとしての大局的な目線で課題を分析、処方箋を提言することができます。入社して長くはないですが、こうした過去の経験のおかげで、実務者から見て違和感のない地に足の着いたあるモビリティ分野の事業戦略を、私が主導する形で策定することができました。
社会人歴:3~5年
転職理由:
コンサルタントとして様々なお客様と期間限定で働く楽しさも感じていたものの、組織に属して働く方が自身の気質に合っていると感じたため、事業会社への転職を検討し始めました。
またコンサルタントの専門性を高めるよりも、守備範囲を広げる方が自身の強みと合致していると感じたことも転職活動を始めた一因でした。
社会人歴:15~20年
転職理由:
前職は戦略的コンサルとして多様な業界のプロジェクトに携わり、コンサルタントとしてのスキルを磨いてきましたがより専門性を高められる経験を積みたいと考えたため。
転職で役立ったこれまでの経験:
ステークホルダーとの調整、交渉が求められる部分が多かったので前職でのそのような経験が役立ったと思います。
具体的には提案内容の精査、資料作成、提案力(コミュニケーション)、雑談力(趣味の話など懐に飛び込むために非常に重要視していました。)
<その他コンサルからのネクストキャリアの例>
(参考)コンサルタントやリサーチャーからのキャリアパスをもっと知りたい方はこちら
3. シンクタンク・コンサルに向いている人
3-1. シンクタンクに向いている人
コンサルと比較してシンクタンクに向いている人の特徴としては、以下のような点が挙げられます。
- 社会課題に関心が高く、その解決に貢献したい人
- 官公庁への政策提言など公共性の高いプロジェクトに関わりたい人
- 知的好奇心が強く、分析やリサーチを行うことが好きな人
実際に、ONE CAREER PLUSに寄せられたクチコミをみると、シンクタンクで働くやりがいとして以下のような点が挙げられていました。
3-2. コンサルに向いている人
一方で、シンクタンクではなくコンサルに向いている人の特徴としては、以下のような点が挙げられます。
- リサーチだけでなく、クライアントの課題解決に向けたコンサルティングも経験したい人
- 実力主義の社風で、成果に応じた報酬やキャリアアップを求める人
- マルチタスクを得意とし、高いプレッシャーの中でも成果を出せる人
実際に、ONE CAREER PLUSに寄せられたクチコミをみると、コンサルで働くやりがいとして以下のような点が挙げられていました。
実力があり、積極性があれば、基本的に裁量の際限なく任せてもらえる。一方で、上長もただ傍観というわけでなく、適宜アドバイスなど後方支援を頂けるため、試行錯誤しながら進めることの安心感をもって取り組むことができる。(PwCコンサルティング/中途)
4. コンサル・シンクタンクへの転職を目指すなら
ONE CAREER PLUSでは、コンサルティングファームへの転職を検討する人に向けて、実際にコンサルキャリアを歩んだ人のクチコミや、業界理解・企業理解に役立つ記事コンテンツを多数発信しています。
シリーズ企画「コンサル転職:完全攻略ロードマップ」では、未経験からコンサル転職を目指す人に向けた転職成功の方法を全7回にわたり解説しています。具体的にコンサル転職を考えている方はまず、ここからご活用ください。
<導入編>
<業界理解編>
<実践編>
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