コンサル転職における最大の難関とも言えるケース面接。多くの候補者が緊張のあまり実力を発揮できなかったり、準備不足で苦戦したりしています。
ONE CAREER PLUSがコンサル転職に必要な知識・ノウハウを丸ごと解説するシリーズ「コンサル転職:完全攻略ロードマップ」
第6回となる本記事では、コンサルティングファームのケース面接について、その特徴、評価のポイント、主要ファーム別の対策、そして実際の質問例までをONE CAREER PLUSに集まるデータをもとに徹底解説します。
ケース面接とは?概要と出題意図
ケース面接とは、与えられた課題に対して制限時間内に適切な対策を提案する面接形式です。出題内容は実際にコンサルティングファームで取り組むような経営課題が多く、課題に対する問題解決力や分析力、論理的思考力が求められます。面接の時間は一般的に20〜40分程度です。
例えば以下のような設問が出題されます:
【設問例】
「あなたは飲料業界2番手の企業からコンサルティングの依頼を受けました。以下の状況を踏まえ、どのような戦略提案を行いますか。5分間考える時間を与えるので、発表してください。
「自社」
・ソフトドリンクが強み
・値下げ競争に苦しみ、利益率が低い
「競合(業界トップ企業)」
・プレミアム価格のビール販売でトップを握っている
・チェーン系居酒屋との提携販売でシェアを大きく伸ばしている
フェルミ推定との違い
フェルミ推定は、実際に調査して求めることが難しい数を限られた情報を基に論理的に概算する技法であり、ロジックだけでなく知識や常識を組み合わせる必要があります。そのため具体的なデータや数値を迅速に導き出す力が問われます。
フェルミ推定の例:
- 日本にある電柱の数は?
- 日本でテレビを見ている人の総数
- 電車の中づり広告の広告効果は?
一方、ケース面接では、フェルミ推定で数値を算出した後に、具体的な問題の対策を考えます。定量的な分析に加え、定性的な洞察や創造的な解決策の提案も求められる点で違いがあります。
ケース面接では何がみられている?具体的な評価ポイント
企業がケース面接を行う理由は、学生や転職者が顧客の問題に対してどのように能力を発揮して解決へ導けるかを見極めるためです。評価されているポイントは以下の通りです。
1. 分析力:
問題における課題を見いだす能力、問いの視点が鋭いか
2. 課題解決力:
質問に対する結論の優秀さ。論理に飛躍がなく一貫性があるかや、数字を使って意見をサポートできるかも重要。
3. 思考プロセス:
なぜこの答えに至ったのかの論理性。難問に対しても前向きに取り組み、創造的な解決策を模索する姿勢も重要
4. コミュニケーション能力:
面接官との対話を通じて、自身の考えを明確に伝える力
これらのポイントにより、企業は応募者が現場で活躍できる可能性があるかどうかを評価しています。
ケース面接の進め方
ケース面接の基本的な流れは以下の通りです。また、面接時間は全体で30分前後であることがほとんどです。
1. テーマ説明(1分程度)
2. 回答準備(課題特定・対策検討など) (15分程度)
3. 回答を面接官にプレゼン (5分程度)
4. 質疑応答、面接官と議論しながら考えを修正する (10分程度)
問題の捉え方・フレームワークの使い方
ケース問題を解く思考の4ステップは以下の通りです。
1. 達成すべき目標や前提条件を整理する:
まず問題を正確に理解し、何を求められているかを明確にします。
2. フレームワークや理論をもとに戦略を立てる:
適切なフレームワーク(4P、3C、STPなど)を選択し、問題解決の道筋を立てます。
ただし、無理にフレームワークを使うことは避けるべきです。「正しい答え」を出すために、その場に合ったフレームワークを柔軟に選択することが重要です。
3. 戦略に沿った実行プランを考える:
具体的なアクションプランを考案します。
4. プランごとの成果を概算し、対策を絞り込む:
提案した対策の効果を数値で示し、最も効果的な対策を選びます。
解答の伝え方とフィードバックの活かし方
解答の伝え方では、思考プロセスを明確に示すことが重要です。ゴールとなる結論を最初に述べ、そこに至るまでの論理展開を順序立てて説明しましょう。また、フィードバックを受けた際には、素直に受け入れ、自分の考えを修正する柔軟性も評価されます。面接官との対話を通じて答えを深めていく姿勢が大切です。
よくある誤解として、「正確な数値を出さないといけない」と思っている人がいますが、実際には正確性よりも論理的な思考プロセスが重視されます。
主要ファーム別:過去のケース出題事例と対策
ここからは、ONE CAREER PLUSの寄せられた選考体験談をもとに、各ファームのケース面接で実際に行われた質問例と傾向を見ていきましょう。
ボストン コンサルティング グループ(BCG)
BCGは戦略コンサルティングファームの中でも特に人気が高く、難関として知られています。クチコミによると、BCGのケース面接は複数回実施され、各回ごとに異なる難易度と種類の問題が出題される傾向があります。
▼実際の出題例
- ラーメン屋売上のフェルミ、拡大打ち手
- キオスクの売上フェルミ、他の分解方法
- コンビニ売上(フェルミのみ推定のみ)
▼傾向
BCGのケース面接では、フェルミ推定とその後の拡大戦略の立案がセットになっていることが多いです。初めに「コンビニの1日の売上」や「ラーメン屋の売上」といった市場規模を推定し、その後「売上拡大のための施策」を考えるという流れが一般的です。
最終面接に進むと、より複雑なケースが出題されるケースもあります。例えば「ある業界の売上の推計や売上向上の対策」のように特定業界に絞った深い考察を求められることもあります。
▼対策
- フェルミ推定の基本的な手法を習得する(トップダウン・ボトムアップ両方)
- 一般的な店舗業態(小売、飲食など)の売上構造を理解しておく
- 推定値に対する感度を高めておく(例:日本の人口、平均世帯年収など)
- 売上向上施策を4P(Product、Price、Place、Promotion)などのフレームワークで整理できるようにしておく
→ボストン コンサルティング グループの選考体験談をもっと見る
→ボストン コンサルティング グループの面接対策について詳しく知る
ベイン・アンド・カンパニー
ベイン・アンド・カンパニーは「実行できる戦略コンサルティング」を掲げており、ケース面接でも実務に近い、より具体的な問題解決能力を見られる傾向があります。
▼実際の出題例
- ある会社のオフィスビルの年間の賃料の推計、賃料を減らす方法
- あるトラック会社の年間利益の推計と利益拡大のための打ち手、家事代行サービスの市場規模と拡大のための打ち手
▼傾向
ベインのケース面接の大きな特徴は、「ケース面接のみ」で構成されることであり、自己紹介さえ省略してすぐにケースに入ることです。これは応募者の思考プロセスのみを評価する意図があると考えられます。
また、ケース面接の内容は「オフィスビルの賃料推計と削減方法」や「トラック会社の利益拡大」など、具体的なビジネス課題に直結したものが多いのが特徴です。
▼対策
- ケースのみで評価されることを念頭に、論理的思考のトレーニングを徹底する
- 様々な業種・業態の収益構造やコスト構造について基本的な知識を身につける
- 具体的なアクションプランまで踏み込んだ提案ができるよう練習する
- 面接中の計算や数値操作に慣れておく
マッキンゼー・アンド・カンパニー
マッキンゼーは世界最大の戦略コンサルティングファームとして知られ、その選考プロセスも非常に体系化されています。ケース面接に加えて「ビヘイビア面接」も重視される傾向があります。
▼実際の出題例
- とあるファストフード店の売上向上戦略、現在の状況における課題の原因を列挙、資料の読み取り、計算問題
- とある国の二酸化炭素排出削減について、現在の課題の要因を構造的、網羅的に列挙、資料の読み取り、計算問題
▼傾向
マッキンゼーのケース面接は「ビヘイビア面接」と「ケース面接」のセットで進行することが特徴です。各30分ずつの時間配分で、複数の面接官と面接することが一般的です。特に最終面接では3名のパートナーと各60分の面接を行うケースもあります。
ケースの内容は「ファストフード店の売上向上」といった典型的なビジネス課題から、「二酸化炭素排出削減」といった社会課題まで多岐にわたります。また「資料の読み取り」や「計算問題」も含まれており、複合的な能力が問われます。
▼対策
- ビヘイビア面接対策として、自身の経験を構造化して説明できるようにしておく
- 複数回の面接に備え、体力・集中力の維持を意識する
- 社会課題や環境問題などの時事問題にも関心を持っておく
- 資料読解力と素早い計算力を鍛えておく
アーサー・ディ・リトル
アーサー・ディ・リトルは世界最古のコンサルティングファームで、テクノロジーとイノベーションに強みを持つことで知られています。日本でも長い歴史があり、ケース面接にも独自の特徴があります。
▼実際の質問例
- コロナ禍における航空事業の再生方法
- 殺虫剤メーカーの成長戦略
- スーツ事業の成長戦略
- 趣味についてのフェルミ推定
▼傾向
アーサー・ディ・リトルのケース面接では、趣味に関連したフェルミ推定から始まり、その後業界特化型の戦略課題が出題される傾向があります。「航空事業の再生」「殺虫剤メーカーの成長戦略」「スーツ事業の成長戦略」など、特定の業界や商材に焦点を当てたケースが多いのが特徴です。
また、面接の回数も多く、4〜5回の面接を経て最終面接に進むケースもあります。各回で異なる視点からのケースが出題されることで、多角的な能力評価が行われています。
▼対策
- 自分の趣味や関心事に関連したフェルミ推定の練習をしておく
- 様々な業界の基本構造や成長戦略のパターンを学んでおく
- 複数回の面接で同じような質問が繰り返されても、一貫した回答ができるよう準備する
- テクノロジーやイノベーションに関する知識を深めておく
A.T.カーニー
A.T.カーニーはオペレーション改革や組織変革に強みを持つ戦略コンサルティングファームです。ケース面接も実務に近い形式で行われる傾向があります。
▼実際の質問例
- もし運輸業界でDXあるいはGXが起きるとしたら、どのような変化が考えられるか。その時あなたはどのような提案をクライアントに持っていくか
- 専門的な知見を持ったメンバーとゼネラリストの上司、短期的な結果のみを重視するクライアントとのコンフリクトにおいてマネージャーは何を重視し、どのように解決に導くべきか
- ホッチキスの市場規模
- 人材紹介業の市場規模
▼傾向
A.T.カーニーのケース面接では、単純なフェルミ推定(「ホッチキスの市場規模」「人材紹介業の市場規模」)から、業界変革に関する深い考察(「運輸業界でDXあるいはGXが起きた場合の変化と提案」)、さらにはプロジェクトマネジメント上の課題解決(「コンフリクト解決」)まで、多様なタイプの問題が出題されます。
特に注目すべきは、実際のコンサルタントがプロジェクト中に直面しそうな状況を想定した問題が含まれている点です。これはA.T.カーニーが実行力も重視していることの表れと言えるでしょう。
▼対策
- 一般的なフェルミ推定に加え、B2B商材の市場規模推定も練習しておく
- DX、GXなどの業界トレンドについて自分なりの見解を持っておく
- プロジェクトマネジメントやステークホルダー調整に関する基本的な考え方を整理しておく
- 「提案」だけでなく「実行」の視点も意識した回答を心がける
ローランド・ベルガー
ローランド・ベルガーはドイツ発祥の戦略コンサルティングファームで、欧州を中心にグローバルに展開しています。日本でも独自のポジションを確立しており、ケース面接にも特徴があります。
▼実際の質問例
- コロナ禍で東京の人口は増えたか減ったか。その理由
- 無印良品の売上を2倍にするための戦略
- 紀伊国屋書店の売上アップ策
- コンビニ1店舗の売り上げアップ策
- 地銀の成長戦略
- 映画館の売上高の試算と売上向上策に関するディスカッション
- スポーツジムの売上の試算と売上向上策に関するディスカッション
▼特徴
ローランド・ベルガーのケース面接では、時事問題(「コロナ禍で東京の人口は増えたか減ったか」)から始まり、具体的な企業名を挙げた戦略立案(「無印良品の売上を2倍にする」「紀伊国屋書店の売上アップ」)まで、非常に実践的なケースが多いことが特徴です。
また、「地銀の成長戦略」のように金融業界に関するケースも出題されており、業界知識の幅広さも問われます。面接の回数も多く、5次面接まで行われるケースもあります。
▼対策
- 時事問題や社会トレンドに対する自分なりの見解を持っておく
- 具体的な企業の事例研究を行い、業界理解を深めておく
- 金融業界など、専門性の高い業界についても基本的な知識を習得しておく
- 具体的なアクションプランまで踏み込んだ戦略提案ができるよう練習する
まとめ
ケース面接を突破するためには、各ファームの特性を理解し、それに合わせた対策を行うことが重要です。「正解」を出すことよりも、論理的な思考プロセスを面接官に示すことが評価されます。実践的なトレーニングを通じて、自信を持ってケース面接に臨みましょう。
コンサル転職において、ケース面接は避けて通れない関門ですが、しっかりとした準備と正しい理解があれば、決して乗り越えられないものではありません。この記事で紹介した対策ポイントを活用し、ぜひコンサルティングファームの内定を勝ち取っていただければ幸いです。
次回、「コンサル転職:完全攻略ロードマップ」最終回では、入社後活躍するコンサルタントになるために押さえておくべきポイントを解説します。
【参考情報】
・【図解】コンサルキャリアまるわかり講座 Section 6 自分のキャリアを形成するために
・ケース面接対策&例題|コンサル・日系大手も出題!ゼロからの始め方|就活サイト【ONE CAREER】
・【27卒向け】フェルミ推定・ケース面接を対策!ポイントは「論理性・コミュ力・楽しむ姿勢」:外資戦略コンサル徹底解説Vol.2
▼「コンサル転職:完全攻略ロードマップ」他のシリーズはこちら
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