転職先としての人気が高まるコンサルティング業界。しかし「コンサルティングファーム」と一括りに言っても、その内実は実に多様です。戦略系、総合系、IT系、ブティック系など、それぞれの特徴や強みは大きく異なります。コンサル転職を検討する際には、各ファームの違いを理解した上で、自分のキャリアプランに合った選択をすることが重要です。
ONE CAREER PLUSがコンサル転職に必要な知識・ノウハウを丸ごと解説するシリーズ「コンサル転職:完全攻略ロードマップ」第2弾となる本記事では、「コンサル転職」を成功させるための第一歩として、コンサルティングファームの全体像と各ファームの特徴を、クチコミデータをもとに詳しく解説します。
コンサルファームの全体像と分類
コンサルファームは担当領域ごとに「戦略系」「総合・IT系」「ブティック系」の3つに大別できます。それぞれの違い・特徴を見ていきましょう。
戦略系/総合・IT系/ブティック系の違いとは
戦略系コンサルティングファームは、主に企業の経営戦略や事業戦略の立案を支援します。いわゆるMBB(マッキンゼー、BCG、ベイン)と呼ばれる3社が代表的で、クライアント企業のCEOや経営幹部に対し、トップレベルの意思決定をサポートします。
総合・IT系コンサルティングファームは、「総合」の名の通り戦略、業務、IT、人事、財務など幅広い領域をカバーするファームであり、経営戦略から実行支援までをワンストップで提供できる点が強みです。代表的なファームとしてグローバルで大規模な会計事務所を抱えるBIG4(PwC、デロイト、KPMG、EY)が挙げられます。
なお、近年はデジタル案件の需要増加から、IT案件に強みを持つ総合ファーム(アクセンチュア、ベイカレント、野村総合研究所など)が増えていることや、BIG4がIT案件も積極的に行っていることなどから、総合・IT系の垣根は曖昧になっています。本記事では総合・ITと称して解説します。
ブティック系コンサルティングファームは、AI・事業開発・組織開発などの特定の業界や専門領域に特化した比較的小規模なファームを指します。業界知識や専門技術に関する深い知見を持ち、ニッチな分野で高い付加価値を提供します。
戦略系ファームの特徴
戦略コンサルの定義と担当領域
戦略系コンサルティングファームは、企業の経営における最も本質的な課題に取り組み、長期的な競争優位性を構築するための戦略立案を支援します。具体的な業務内容としては、M&A戦略、新規事業開発、市場参入戦略、組織再編などが挙げられます。
戦略コンサルタントの主な仕事内容は以下の3つです:
- DD(デュー・デリジェンス):企業買収や投資の際の企業価値評価
- クライアントの戦略立案:競争環境分析や中長期経営計画策定
- オペレーションの改善:業務効率化や組織構造の最適化
クチコミデータから見る、MBBの社風と強み比較
ここからはONE CAREER PLUSに寄せられた社員のクチコミをもとに、主要な戦略ファームであるMBB3社の社風と強みを見ていきます。
マッキンゼー・アンド・カンパニー:オープンでフラットな議論文化
マッキンゼーは、フラットで開かれた議論文化が特徴です。年齢や役職に関わらず、正しいと思うことを発言できる環境が整っています。
正しいと思ったことをなんでも言い合える環境。年齢や役職関係なく議論できることは、非常に風通しが良いと感じる(マッキンゼー・アンド・カンパニー/コンサルタント/2019年中途入社)
また、グローバルで統一された文化や、実力主義の評価体系も特徴として挙げられます。
実力さえあれば評価されるフラットな雰囲気があります。さまざまな国籍の社員がいるので、いわゆる外資系カルチャーが浸透しています。(マッキンゼー・アンド・カンパニー/コンサルタント/2015年中途入社)
マッキンゼーでは、メンバー同士がお互いの成長を支援する文化も根付いています。
お互いにフィードバックしあう、互いのキャリアを応援しあう文化が強く非常にあたたかい組織です。風通しもよく、おかしいことはおかしいと比較的言いやすい文化だとは思います。(マッキンゼー・アンド・カンパニー/コンサルタント/2016年新卒入社)
一方で、自己主張や積極性が求められる環境であることも事実です。
忙しいながらも人を助ける文化が強く、性善説に立った企業だと思います。人の成長にも貪欲で、周りが常に自分の成長をサポートしてくれると思います。国内外を問わず、あまり国の概念がありません。ただ、自分から発信しないと誰も気にしてくれないので、ビジネス図々しさが必要です(マッキンゼー・アンド・カンパニー/エンゲージメントマネージャー/2014年新卒入社)
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ボストン コンサルティング グループ:クライアントファーストの徹底
BCGの社風として最も特徴的なのは、クライアントファーストの徹底と、フラットなコミュニケーション環境です。
良くも悪くも「クライアントファースト」が徹底されている。クライアントの課題解決・成長に資するためには何でもするというプロフェッショナリズムがあり価値の源泉となっている一方、それが故にスタッフに多少の無理を強いるケースも散見される (プロジェクト次第)(ボストン コンサルティング グループ/コンサルタント/2015年中途入社)
また、組織内のコミュニケーションについては、役職に関わらず意見が尊重される環境が整っているようです。
風通しは非常に良い。パートナーまでの距離も近く、一番下の役職からの意見でも耳を傾けてくれる文化が醸成されている。(ボストン コンサルティング グループ/戦略コンサルタント/2019年中途入社)
BCGは近年、デジタル関連のケイパビリティを急速に強化しており、クライアントの期待に応えるため実行支援までカバーする動きを見せています。
デジタル関連のケイパビリティを急速に伸ばしている。クライアントのコンサルに対する期待が実行支援まで拡がっていることを踏まえると、今後はシステム構築のような案件をどこまで本腰を入れて取りに行くのかが論点になると思われる(ボストン コンサルティング グループ/戦略コンサルタント/2020年中途入社)
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ベイン・アンド・カンパニー:結果主義と助け合いが共存する社風
戦略コンサルの中でも独自の文化を持つベイン・アンド・カンパニー。クチコミからは「結果主義」と「人を助ける文化」が両立している企業像が浮かび上がります。
結果主義ではあるものの、人を助ける文化が根付いており、定期的に実施するフィードバックを貰える機会もあり、成長機会は非常に大きい。(ベイン・アンド・カンパニー/コンサルタント/2022年中途入社)
また、若手のコンサルタントに関する評価も高く、良好な人間関係が構築されていることがうかがえます。
ジュニアのメンバーは優秀なだけでなく、一緒に働いていて気持ちのいい人ばかりだった。上の人は威圧的であったり、詰める癖のある人も多いが、チームで働くときは楽しく仕事することができた(ベイン・アンド・カンパニー/コンサルタント/2017年中途入社)
一方で、ベインはピュア戦略に留まっていることへの不安も一部では感じられます。DXや実行支援に各社が舵を切る中、戦略特化というポジションを維持することの是非については議論があるようです。しかし、これがベインの魅力でもあり、優秀な人材を惹きつける要因にもなっていると指摘する声もあります。
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総合ファームの特徴
総合コンサルの定義と担当領域
総合系コンサルティングファームは、戦略立案から実行支援までを包括的に提供するのが特徴です。その業務範囲は経営戦略、業務改革、ITシステム導入、財務・会計アドバイザリー、リスクマネジメントなど多岐にわたります。
特に注目すべき点として、近年では戦略と総合の区分を撤廃し、一体経営化する動きが加速しています。アクセンチュアをはじめ、各社ともグループ内に戦略部隊を抱え、戦略提案からインプリメンテーション、IT案件へとつなげるビジネスモデルを展開しています。これにより、コンサル業界の案件は大規模化・長期化する傾向にあります。
クチコミデータからみる、主要ファームの社風・強み分析
デロイト トーマツ コンサルティング:多様なセクターを持つ総合力
デロイト トーマツ コンサルティングは、豊富な研修機会と人材育成への熱心さが特徴として挙げられています。
育成に対しては熱心、前職と比較して研修やその他学習機会が豊富であった。また、若手・中途それぞれに対して、入社後少なくとも一年は見極めの時間を設けているように感じる(デロイト トーマツ コンサルティング/シニアコンサルタント/2018年中途入社)
また、組織内のコミュニケーションについても、風通しの良さが評価されています。
監査法人ということもあり独立性に関する法令遵守意識が会計士以外の従業員も含めかなり強い。風通しはコンサルティングファームの中では良く、パートナーと気軽に会話できる機会が用意されている。(デロイト トーマツ コンサルティング/コンサルタント/2022年中途入社)
一方で、総合ファームとして多様なセクターを抱えるため、所属部署によって文化や雰囲気が異なる点も指摘されています。
いくつかの組織ブレイクダウンがあり、それぞれの塊ごとに特色がある。まずはインダストリーとオファリングで分けられる。ITの特定サービスや開発など特定の専門知識、領域に特化するのがオファリングで、各業界の窓口となり、仕事の受注やオファリングコラボなど包括的にプロジェクトをデリバリーするのがインダストリー(デロイト トーマツ コンサルティング/コンサルタント/2020年中途入社)
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EYストラテジー・アンド・コンサルティング:柔軟性とコンプライアンスのバランス
EYストラテジー・アンド・コンサルティングは、社員の柔らかさとコンプライアンスの両立が特徴です。
柔らかい社員が多い印象。「何かあればいつでも連絡して」と多くの人が声をかけてくれるため、入社したてもあまり遠慮せずに聞きたいことを聞ける環境がある。(EYストラテジー・アンド・コンサルティング/コンサルタント/2021年中途入社)
また、外資系らしいオープンな組織文化と、監査法人系のコンプライアンス意識の高さが共存しています。
カルチャーとしては外資系らしくオープンでフラットな人間関係を基盤としながらも、監査法人からのコンプライアンスに対するプレッシャーを常に受けており、少しずつ社内手続きが複雑になっている印象を受ける。(EYストラテジー・アンド・コンサルティングコンサルタント/2021年中途入社)
事業面では、特にデジタルやイノベーション分野に注力していることが伺えます。
今後も伸びていく会社かと思います。新しいことにチャレンジしつづけているので他の競合に比べても優位性があると思います。(EYストラテジー・アンド・コンサルティング/コンサルタント/2020年中途入社)
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KPMGコンサルティング:社員を大切にする社風
総合コンサルティングファームのKPMGは、社員のワークライフバランスを重視する文化が特徴です。
4大コンサルといえば激務でアップorアウトのイメージがあるかもしれないが、KPMGコンサルティングは真逆。現社長の宮原さんは、なるべく社員が長く働ける環境を作ることに努めている。(KPMGコンサルティング/コンサルタント/2020年中途入社)
また、コンプライアンスを重視しながらも、現場に適切な裁量を与える柔軟な組織運営も魅力として挙げられています。
厳しい順法精神が求められる監査法人系の会社なので、ルールや技術的な仕組みなど、コンプライアンスを守るべく最大限の努力がなされいると思います。それでも、組織がガチガチにならないのは、現場に予算執行や業務遂行においていちいち上級管理職や管理部門に諮らなくてもよい裁量が与えられており、上司と部下の関係もフラットなものであることから、コンプラに関係ない部分で自分のコントロールできる範囲が大きいからと思います。(KPMGコンサルティング/コンサルタント/2019年中途入社)
事業面では顧客志向を掲げ、継続的な関係構築に力を入れているようです。
提供しているサービスそのものは同業他社と変わらないと思う。会社として顧客志向を掲げており、KPMGコンサルティングと継続的に関係を持ち、案件を依頼してくれる顧客の獲得に力を入れている。(KPMGコンサルティング/コンサルタント/2020年中途入社)
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アビームコンサルティング:人材育成を重視する日系総合ファーム
アビームコンサルティングは、日系の総合コンサルティングファームとして、人材育成に力を入れている点が特徴です。
人を育てる・大切にする、という点においては、大変前向きで良い会社と言えるが、SAPを核にする企業のため、SAPコンサルタントを目指す人には良いが、経営・戦略コンサルタントを目指す人には向かない企業(アビームコンサルティング/コンサルタント/2013年新卒入社)
また、日系企業らしいウェットな側面と、コンサルティングファームとしてのグローバルスタンダードな側面を併せ持つ文化が形成されているようです。
コンサルティングという外来の文化と、日系であるが故に持つ日本的な文化がうまくミックスされていると感じる。Value Oriented, Client Interest Firstなど、コンサルティング業界におけるスタンダードな文化は持ちつつも、泥臭さ・人好きといったウェットな面も備えている。(アビームコンサルティング/係長・リーダークラス/2017年新卒入社)
特色としては、SAPに強みを持つ一方で、デジタル分野や戦略領域への拡張を図っている点が挙げられます。
SAPが売上の主軸になっていることは確かだが、デジタルといった領域も新たな収益源として拡大しようとしている。今後、他の収益源の確保を行うこと、また、SAP人材も継続しつつ、さらなる育成を行うことが重要と考える。(アビームコンサルティング/コンサルタント/2020年中途入社)
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野村総合研究所:論理的思考を重視する文化
野村総合研究所(NRI)は、論理的思考を重視する文化が特徴として挙げられます。
論理的に妥当性があれば年次に関わらず受け入れてもらえる雰囲気がある。(逆に言うと論理が破綻していたり感情論は通用しない) 良い意味で実力主義である。(野村総合研究所/情報システムエンジニア/2015年新卒入社)
また、新卒と中途での扱いの差や、各部門による文化の違いも顕著です。
新卒社員に対しては極めて面倒見が良い会社だが、中途社員には打ち解けるのが難しい会社であったと感じます。理由の一端としては、経営コンサルタントに占める高い新卒入社率が挙げられるかと思います。(野村総合研究所/副主任コンサルタント/2015年中途入社)
ビジネス展望については、技術力とシステム開発力に強みがあり、特に証券分野では圧倒的なポジションを築いていると評価されています。
証券業界のほとんどを占有しているような状態であり、今後も事業の優位性は変わらないものと感じる。屈強な収益の柱がある一方で他の事業にも手を伸ばしているような状態であり、会社としては安泰であると感じた。(野村総合研究所/プロジェクトマネージャー(Web・オープン系)/2022年中途入社)
ベイカレント・コンサルティング:実力主義とワークライフバランスの両立
急成長を続けるベイカレント・コンサルティングは、実力主義の評価体系と、残業時間管理の厳格さという一見相反する特徴を併せ持っています。
良くも悪くも実力主義な社風と思います。結果を出せばすぐに出世できる仕組みが整っている反面、結果を出せないことにはいつまでたっても昇進・昇給できないようになっています。(ベイカレント・コンサルティング/コンサルタント/2020年中途入社)
残業時間の管理については、他のコンサルティングファームと比較しても徹底している点が特徴です。
労働時間やコンプライアンスに関しては厳しく守られており、コンサルティング会社にしてはホワイト企業だなと感じる ※労働時間をオーバーしたり、夜中にメールを送ったりすると、管理部門からメールや電話がいくようになっている(ベイカレント・コンサルティング/システムコンサルタント/2022年中途入社)
また、DX領域に強みを持ち、今後も成長が期待されています。
DXに強みのあるコンサルとしてのブランディングがうまくいっている。サイクルの長いIT案件が多く、安定して収益を得られている。今後もIT/DXが日本企業のテーマになるため、将来性がある。(ベイカレント・コンサルティング/システムコンサルタント/2023年中途入社)
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ブティックファームの特徴
ブティックファームの定義と担当領域
ブティックコンサルティングファームとは、特定の業界や専門領域に特化した、比較的規模の小さいコンサルティングファームを指します。大手総合ファームや戦略ファームと比較すると組織規模は小さいものの、特定分野における深い専門性と柔軟な対応力が強みです。
ブティックファームの主な担当領域としては、特定業界(医療・ヘルスケア、エネルギー、小売など)に特化したものや、特定機能(マーケティング、サプライチェーン、デジタル変革など)に特化したもの、さらには特定地域に根ざしたローカルファームなどがあります。
クライアントに対して、より深く専門的なサービスを提供できる点、そして大手ファームよりも柔軟かつ迅速な対応が可能である点が、ブティックファームの大きな魅力となっています。
注目すべき新興ファームの台頭と動向
近年、専門領域に特化した新興ブティックファームが急速に成長しています。
近年注目を集めるのは、ABEJA・エクサウィザーズといった先端AI技術で顧客の課題を解決するAIファームです。これらの企業はデータサイエンスやAI領域において、最先端技術を駆使したソリューション提供に強みを持ち、大手企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援しています。
コンサル転職を考える際、大手ファームだけでなく、こうした新興ブティックファームも視野に入れることで、専門性を深めるキャリアパスを構築することが可能です。新興ファームは小規模で一人一人の裁量が大きいことも魅力です。
自身の専門性や興味関心に合った領域で高い付加価値を発揮したい方には、ブティックファームへの転職も魅力的な選択肢となるでしょう。
実際にONE CAREER PLUSでは、先端の技術知見やスタートアップでの成長環境を求めて、ブティックファームへ転職する事例が複数見受けられました。
【AIファームへの転職事例】
【その他ブティック系ファームへの転職事例】
外資コンサルVS日系コンサルの違いは?
自分にあったコンサルファームを探すうえで、「外資系か日系か」という観点も重要です。外資コンサル・日系コンサルの違いを詳細に見ていきましょう。
【外資VS日系】求められる英語力は?
外資系コンサルティングファームにおいて、高い英語力はキャリアを築く上で大きなアドバンテージとなることは疑いありません。しかし、外資系=必ずしもビジネス英語がプロジェクトワークで必須となるわけではなく、自身が担当するプロジェクトによります。
例えば、ボストン コンサルティング グループは、顧客の多くが日系企業であるため、日常的なプロジェクト遂行においては日本語が中心となるケースが少なくありません。一方で、EYストラテジー・アンド・コンサルティングのように、グローバル案件を多数手がけ、社員の国籍も多様な環境では、英語でのコミュニケーションが不可欠となる頻度が高まります。
ただし、外資系ファームでは、本社との情報共有やグローバルチームとの連携において英語を活用する機会は多く存在します。そのため、募集要項や担当するプロジェクトによっては、入社段階で一定レベル以上の英語力を求めるハードルを設定している可能性はあります。
例えば、ベインのキャリア採用の要件では「ビジネスレベルの英語力」が明記されています。デロイトの採用情報では「求められる英語力は募集ポジション・担当案件によって違う」とされており、アクセンチュアの採用情報では「全ての職種において入社時必要な条件ではない」とされています。
一方、日系コンサルティングファームの場合、プロジェクトの主な対象が国内企業であるため、業務における英語の使用頻度は一般的に低い傾向にあります。しかし、アビームコンサルティングのように、グローバル案件に関わるチャンスを積極的に打ち出している企業も存在します。(※)
なお、採用時に英語力が必須ではない場合でも、入社後にビジネスレベルの英語力を身につけることがキャリア形成において重要視されており、研修制度などを通じた英語学習のサポート体制が整っている企業が多くあります。
(※)「グローバルに活躍するなら、日本発が有利」な理由。コンサル歴20年の執行役員が語る、アビームコンサルティングの強み
【外資VS日系】年収はどちらが高い?
外資系と日系のコンサルティングファームでは、年収体系に大きな違いがあります。外資系コンサルティングファームは総じて年収レベルが高く、成果主義の報酬体系を採用しています。
特に戦略系ファーム(MBB:マッキンゼー、BCG、ベイン)では、新卒入社でも年収600万円台からスタートすることが一般的で、経験者採用の場合はさらに高い水準となります。
日系コンサルティングファームは、外資系と比較すると年収レンジはやや低めですが、安定性があり、年功序列的な要素も残っている場合があります。ただし、野村総合研究所(NRI)やベイカレント・コンサルティングなど、一部の日系トップファームは外資系に匹敵する報酬水準を提供しています。
アクセンチュアやベイカレント・コンサルティングなどでは、最速で年収1,000万円に到達できるキャリアパスが用意されており、高い成果を上げることで急速な年収アップも可能です。
→コンサルティングファーム各社の年収相場について詳しくはこちら
【外資VS日系】社風の違いは?向いている人のタイプとは
ONE CAREER PLUSに寄せられたクチコミを分析すると、外資系と日系のコンサルティングファームには以下のような社風の違いが見えてきました。
仕事への姿勢:成果主義 vs 関係性重視
外資系コンサルでは、どれだけ成果を出せるかが最重要視される傾向があります。特にMBBでは「クライアントファースト」の姿勢が徹底されていることが、クチコミからも読み取れます。
▼外資
真面目な人が多く、クライアントの成功を極限まで高めにいくプロ人材が多い。結果、ハードワークが発生することも一定存在する。組織が拡大するにつれ、産業軸よりも機能軸での専門性が求められる方向になっている。(ボストンコンサルティンググループ/コンサルタント部門/コンサルタント)
一方、日系コンサルでは、クライアントとの長期的な関係構築や伴走型の支援を重視する傾向があります。
▼日系
コンサルティングという外来の文化と、日系であるが故に持つ日本的な文化がうまくミックスされていると感じる。Value Oriented, Client Interest Firstなど、コンサルティング業界におけるスタンダードな文化は持ちつつも、泥臭さ・人好きといったウェットな面も備えている。(アビームコンサルティング/IES Sector/マーケティングコンサルタント/係長・リーダークラス)
評価制度:短期的業績 vs 中長期的視点
外資系では四半期や半期ごとの成果が厳しく評価される一方、日系では中長期的な視点での評価も加味される傾向があります。
▼外資
複数の役員が多角的に評価しており、納得度は高い。詳細なフィードバックがあるため、次回の査定までの課題も明確になることから、自身の成長機会として評価を活かすことができ有意義な評価制度となっている。(ローランド・ベルガー/戦略コンサルタント)
▼日系
非常に上位者との関係はフラットです。人事制度がしっかりしているわけでは無いので、上位者と良好な関係が取れているだけで気に入ってもらえ昇進しやすいという面があります。(アビームコンサルティング/DX部門・セクター/システムコンサルタント)
年功序列がベースにあるため評価制度もあってないようなものである(三菱UFJリサーチ&コンサルティング/商事部門/戦略コンサルタント)
働き方:ハードワーク前提 vs ワークライフバランス配慮
外資系、特に戦略コンサルでは長時間労働が前提となっている一方、日系や一部の外資系では働き方改革やワークライフバランスに配慮する傾向があります。
▼外資
やはりタフな仕事であり長時間労働を前提としてプロジェクトが売られているため体力に自信がある人の方が向いていると思う。他社と大きく変わらず長時間労働を前提とした労働モデル(ベイン・アンド・カンパニー/コンサルティング)
▼日系
残業規制(45h)は現場のマネージャー層から厳しく管理されている。プロジェクトによっては平均残業時間20hを切るところもあり、業界のなかでもホワイトな部類である。(ベイカレント・コンサルティング/コンサルティング本部/システムコンサルタント)
組織文化:フラット vs 階層重視
外資系ではポジションに関わらず意見を言える文化が根付いている傾向がある一方、日系では年功序列的な要素も残っているケースがあります。
▼外資
プロフェッショナルファームとしての文化、振る舞いが浸透している。自身の意見が正しいかつ、クライアントのためになるのであれば、上司に対しても意見を交わして正しい答えを導き出す。(上司とぶつかることによる評価への営業時間はなし)(ボストンコンサルティンググループ/ta/戦略コンサルタント)
▼日系
組織・マネジメント体制は、悪い意味での日系大企業らしさも出ていたように思う。ヒエラルキーが強く、意思決定が速いとは言えなかった。(アビームコンサルティング/P&T3 SCM/コンサルタント)
キャリア展望:アップオアアウト vs 長期的成長
外資系では「アップオアアウト」の文化が強く、一定期間で昇進できない場合は退職が暗に求められる傾向がある一方、日系では長期的な成長を支援する文化が根付いているケースが多いです。
▼外資
他戦略ファームと比べるとそこまでシビアではないものの、やはりup or outの文化は強い。特にマネジャー以下の場合、定性評価が重要な評価軸となってくるため、自身のパフォーマンスやバリューのアピールが非常に重要。ユニットにより風土や文化は大きく変わる。(デロイト トーマツ コンサルティング/M&A/コンサルタント)
▼日系
企業の成長に伴い、日々社内の組織やルールが良い方向に変更されている。良くも悪くも成長期として人材を採用しながら、規模を拡大させている。コンプライアンスに相当気を/使っているようで、就業時間の管理など、相当厳しい。(ベイカレント・コンサルティング/コンサルティング/コンサルタント)
これらの違いを踏まえると、外資コンサル・日系コンサルに向いている人は以下のように整理できます。
▼外資系コンサルティングファームに向いている人
- 成果主義環境で高いパフォーマンスを発揮し、高い報酬を得たい人
- スピード感のある意思決定と行動力を持つ人
- 高い英語力とコミュニケーション能力を持つ人
- 明確なキャリア目標を持ち、短期間での成長を望む人
▼日系コンサルティングファームに向いている人
- 長期で腰をすえて働きたい人
- 日本企業の文化や慣習に精通し、それを活かしたい人
- チームワークとコンセンサスを重視する環境を好む人
- コンサルタントをしたいが、ある程度ワークライフバランスも重視したい人
いずれのタイプのファームでも、論理的思考力や問題解決能力、クライアントとの関係構築能力は共通して求められる資質です。自分のキャリア志向や働き方の優先順位に合わせて、最適なファームを選ぶことが重要です。
まとめ
コンサルティング業界への転職を検討する際、まず重要なのは自分のキャリア目標を明確にし、それに最も適したファームのタイプを理解することです。戦略系、総合系、IT系、ブティック系とそれぞれ特徴や強みが異なるため、自分のスキルセットや志向性に合ったファームを選ぶことが成功への鍵となります。
また、外資系と日系の違いも大きなポイントです。成果主義と高い報酬を重視するなら外資系、長期的なキャリア構築やワークライフバランスを重視するなら日系など、自分の価値観に合った選択をすることが大切です。
コンサル転職は、単に高収入や社会的ステータスを得るための手段ではなく、自分のキャリアをどう構築していきたいかという長期的な視点で考えるべきものです。各ファームの特徴をよく理解した上で、自分の強みを最大限に活かせる環境を選ぶことが、充実したコンサルタントキャリアへの第一歩となるでしょう。
本記事が、業界への理解を深め、あなたに最適なコンサル転職先を見つけるための指針となれば幸いです。次回「コンサル転職:完全攻略ロードマップNo.3」では、コンサルタントの仕事内容とキャリアパスについて深掘りしていきます。
【参考情報】
・ONE CAREER PLUSのクチコミデータ【業界研究:総合コンサル】大手6社(アクセンチュア、デロイト、PwC、アビーム、EY、KPMG)を比較!業績比較・ランキング・平均年収・社風/強みの違い|就活サイト【ONE CAREER】
・業界研究】戦略コンサル大手5社「マッキンゼー・BCG・ベイン・A.T.カーニー・ADL」を比較!仕事内容・社風/強みの違い
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