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【超解説】テック企業のポスト“レイオフ”キャリア 2023 ─ 揺れるGoogle日本法人。テック人材流出の転職市場は今 ─


──「Googleの日本法人の一部社員に、退職勧奨のメールが届いた」



外資ITのレイオフの波が、日本に来るのは時間の問題だった。


3/4のGoogleの日本法人の一部社員レイオフ報道から1週間ほど。連日SNSやメディアでは、「初の労組結成」「退職パッケージの手厚さ」などの反響から、レイオフ当事者の発信まで、さまざまな情報が出ている。


しかし、この波は、すでに22年末からすでにスタートしていた。外資テック企業の日本法人での退職勧奨(実質的なレイオフ)について、ONE CAREER PLUS編集部の調査でも以下の情報が集まった。




「テック企業のポスト”レイオフ”キャリア」はどうなるのか。


編集部でも、ONE CAREER PLUS上のデータに加えて、GAFAMなど米テック企業複数社の日本支社の”中の人”とコンタクトを行い、営業・マーケなどビジネス系職種の方を中心に、20名超の証言を得た。


誰がレイオフか?がわからない中、キャリアの話がまだまだしづらい」というテック企業在籍者の方々の声に答える形で、情報をまとめていきたい。



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目次



テック企業の4大ポストキャリア(これまで)


そもそも、これまでのテック企業のポストキャリアは、特にビジネス系の職種だと主要4パターンに分類される。




このテック企業のポストキャリアが、今後どう変わるだろうか。ここからは、外資テック企業の在籍者の証言も踏まえながら、


・混乱するマーケットにおいて、何に悩むのか?

・テック企業のポスト”レイオフ”キャリアのパターンは?

・パターンごとに対するテック企業当事者の見解は?

・GAFAMなどカテゴリで一括りにするのが難しい中で、領域別にどんな傾向があるか?


といった点を通じて、より詳細なキャリアパターンの実態に迫りたい。



「Googleだから転職に困らない」は本当か?



「Googleだから転職に困らない」という一般の声は本当なのか。



「半分は真実。でも、半分はそうとは言い切れない」



これが、GoogleをはじめとしたGAFAM、既に国内でレイオフが始まっているTwitter、セールスフォース、他外資系のスタートアップの在籍者の声を聞いてきた編集部としての見解だ。なぜか?これには以下の3つの側面がある。




実際の声はどうだろうか。


「(自分も含めて)キャリアの終着点としてテック企業を捉えていた方だと、やっぱり困ると思う。」


ある外資メディア/広告企業に在籍する方は、以下の通り、続けた。


一方、その話を聞いた、ある外資SaaS在籍者(内勤営業)の方は、少し対照的だ。



加えて、「レイオフバイアス」が働く可能性も考えられる。


実態として、テック企業各社の在籍者からは、「社内でハイパフォーマーとされている方が、対象になって驚いた」という声も聞くため、レイオフと個人のスキルの高さや経験の豊富さは必ずしも相関しないようだ。一方、採用する人事側がこうした実情を知らず「レイオフされた=スキルが低いのでは」と見られるケースもあると聞く。


実際にあるTwitterの方は、「採用面接に挑んだ際にレイオフのことをそれほど知らない方も多くいた」との体験を証言。この事象については採用する側の企業も正しい理解が必要だといえる。


以上のことから、テック企業と一口に言っても、以下の点次第では「Googleなど外資テック企業からでも転職先に困る」ということが普通にあるわけだ。

・どこで、どんなスキル・経験を身につけたのか?

・今の自身の年収と実力が、相応なバランスなのか?

・今後、どういうキャリアにしたいのか?



【考察】 ポスト“レイオフ”キャリア 7つの選択肢


編集部が調査を進める中で、23年3月時点での「テック企業のポスト“レイオフ”キャリア」は、次の図の通り7つに分類されることがわかった。


ここからはそれぞれのパターンについて、テック企業在籍者・業界関係者の証言も踏まえて、解説/考察していきたい。



・①外資IT|ByteDance/Uberなど一部選択肢&”Re-Hiring”の可能性



これまでのポストGAFAMのキャリアの多くは、外資テックの回遊だった。このパターン、特にTwitter⇄Googleの様なキャリアパスは23年3月時点で凍結中の一方で、テック企業在籍者の方複数から以下の声もあった。


「Bytedanceのスカウトが、Googleの報道翌日もすぐ来ていた」

「Spotify Japanは、事業が好調で広告営業組織が数倍まで人員を増やす計画だ」


一部米テックに加えて、不況の波がまだアメリカほど及んでいない中華系、ヨーロッパ系のテック企業については、採用を強化する声さえあるのが、リアルなところだ。


【ヒアリング&調査でわかった直近募集があった求人例】

中にはオープンに募集をしていない企業もあるため、「求人がない」という見解を持つテック企業在籍者もいる。一方で、クローズドに募集がかかっているケースもあることが、テック企業在籍者・転職活動中の方々からの証言でわかった。

ByteDance(Tiktok)、Uber Japan、Spotify Japan、Pinterest Japan、アドビなど


【転職データ例】


また、レイオフ直撃の外資テック企業在籍者の話の中には、Re-Hiring(再雇用)の可能性に言及する方もいた。


「日本の事業自体は好調なので、『チームが想像してる比率以上にレイオフになって、営業現場が回らない!』という声も多い。新規採用をいつ再開するか?次第では、Re-Hiring(再雇用)の可能性もあるはず。各社の退職パッケージの内容次第ではあるが、一旦サインをして、Re-Hiringを待つスタンスも全然ありますよね。」


しかしながら、混乱するマーケットを目の前に


・断続的で長期に渡るレイオフで、国内転職市場が更に飽和するのでは?

・(インフレの進度が相対的に低い日本では)レイオフされた方を全部Re-Hiringするだけのポジションを作れるのか?


などの見方もあり、このレイオフが「片道きっぷ」であると想定して30~40代を迎えることが必要だ。



・②コンサル(戦略&総合)|本当にキャリアの受け皿になるか?



外資テック企業在籍者の意見が分かれた1つの選択肢が、コンサルファームへのキャリアシフトだ。


特に、「戦略か、総合/ITか」「在籍元が広告か、クラウドか」で、全く異なる意見も出た。いけるのか?(Can)と、いきたいのか?(Want)がねじれる傾向になる。




採用が活況なコンサル各社から見ると確実に採用チャンスになるタイミングだが、実際「GAFAMなどテック企業の方が、本当にコンサルを選ぶのか」は注視する必要があると言える。


【転職データ例】

ONE CAREER PLUSの調査でも、GAFAMから戦略ファームの転職事例も非公開のものも含めて複数確認できている一方、転職体験談としては「クラウド→総合/ITファーム」の転職データが多く集まる結果となった。



※参考:類似する外資や広告系からのコンサル転職データ例



・③スタートアップ|有力キャリアも必須の覚悟/「SaaSはもういい」の本音



「仮にレイオフ対象になったとして、ライフステージ次第で、仕事と給与のどっちを選ぶか?で、『給与が下がってもいいからやりたいことをしよう』となる人が多いと思うんです。」


レイオフの騒動を振り返り、あるGAFAM在籍者は、こう続けた。


「『給与も下がって、仕事もただ単にキツくなるだけ』となると、GAFAMの人のプライドが許さない、が正直なところではないでしょうか。」


こうしたスタートアップへの挑戦は、レイオフ前からも①の外資ITへの転職に次いでよく聞くパターンだ」と話すテック企業在籍者が多い。


【転職データ例】

<上場フェーズ>


<未上場フェーズ>





一方、冷静な目線が企業・テック企業在籍者の双方からも聞こえてくるのも事実だ。中には「SaaSはもういい」という声も。




上記の声の通り、複数の観点で冷静な目線もある中で、これらを超えて意思決定できるか、がキャリア選択における鍵になりそうだ。



・④メガベンチャー|一番バランスが取れるという声も


メガベンチャーの転職は、現実的な選択肢としてデータも多く集まっている。


【転職データ例】



特に外資系ゆえの部門縦割り・日本支社による課題である「キャリアの幅が狭まる」ことへの、有効な処方箋となるケースが多い。


実際の声でもこの通りだ。


「マーケティングから営業、カスタマーサクセスまで幅広く関わる職種につきたかったから。外資の場合は部門ごとに分かれているためそれが実現できなかった。」(コンカー→LINE)
「外資系企業から本社機能がある日本企業から海外進出のチャンスをつかもうと思った為。 加えて、バジェットが多く使える可能性がありより幅広いキャリアが考えられたから。」(グーグル→DeNA)


加えて、リクルートや楽天、ヤフー、LINEなどのメディア/広告営業からGAFAM、Twitterに行ったケースも多く、出戻りイメージが湧くとの声もあるため、バランスが取れる選択肢になりうると言える。



・⑤広告代理店(総合/デジタル)|在籍元で二極化



「②コンサル」の選択肢と似ているのが、広告代理店や、デジタルマーケティングの支援を行う以下のような企業でのキャリアだ。


・総合代理店:電通、博報堂など

・デジタル支援:サイバーエージェント、電通デジタル、博報堂デジタルなど

・マーケティングコンサル:アクセンチュア(Song)など


在籍者の証言によると、デジタル広告経験者(GoogleやTwiitterの方)は「給与も仕事も変わるので、代理店に戻る選択肢は今となっては考えづらい」という方が大半だ。元々は逆の流れが多く、その理由も「生涯年収で考えると、外資でキャリアアップをした方が良いと判断したため」という声が多い。


【参考】広告/マーケコンサル → Google/Twitter/Amazonの転職データ例



「年収においてせめてベース給与である700〜1,000万を落とさず、キャリアチェンジしたい」となり、電博のような総合代理店を狙わざるを得ない、というところはあるが、ONE CAREER PLUSのデータでも主要な公開データはほとんどなく、「これまでは通常であれば選ぶ方が少ないキャリアパターン」であることは確かだ。


・参考:ONE CAREER PLUS上で、本パターンに類似する転職データ例


一方、クラウドやコマースで日本でも新卒採用・未経験採用も含め積極姿勢だったセールスフォース、アマゾン在籍者にとっては、「有力な選択肢」として見る声が一定存在していた。このレイオフタイミングで、「営業だけでなく、マーケティングにも携わりたい」という中で、デジタル広告のアカウントプランナーを目指す、というのはリアルなところだろう。



・⑥独立/フリーランス|「レイオフ対象も辞さない」の真意


テック企業在籍者の声で意外にも多かったのが、「独立・フリーランスを挟む」という声だ。


GAFAMや他テック企業在籍者の複数の方から、主に2つの観点でこの選択肢への声が挙がった。


【1. 独立を目指し、既に副業で相応の収益があるケース】


「元々独立するつもりで副業も育ててきた。仮に退職パッケージが届けば、数百万〜1,000万レベルでの独立資金が一気に溜まる。むしろレイオフ対象になることも辞さないです。


ONE CAREER PLUSの調査では、上記のような声を聞く機会が複数あった。


【2. 手厚い退職パッケージゆえ、焦らず職探し/Re-Hiringを待つケース】


例えば、Google Japanのケースでは、実質1.5年前後ぐらいの期間の給与が補償されると見てもおかしくない。

(期日までに合意した場合、勤続年数×1ヶ月(3年未満は3ヶ月で固定)+追加 9ヶ月分の条件にボーナスやストックも追加になるため*

*参照:Business Insider Japan「【全文公開】日本のグーグル社員に通達された「退職パッケージ」連絡。2週間で退職合意、9カ月分の給与積み増し」


独身の20代の方はもちろん、30代既婚でお子様がいるケースでも夫婦共働きであれば「ある程度余裕を持って職探しをすればいいか」となるわけだ。


もちろんGoogle Japan程手厚いケースばかりではなくとも、

・「①外資ITでのキャリアスライド」を目指す上で「今、市場にある求人は、限られているのでは」と様子を見る

・Re-Hiring(再雇用)を狙う

のいずれかで、直近は暫定的にフリーランスを選択する、と答える方もいた。



・⑦その他|日系大手/海外転職…


これまで6つのメインパターンに触れてきた。それ以外のパターンも、ここでは2つのケースを取り上げたい。


【1. 日系大手への転職ケース】


「日系大手のカルチャーは、フィットする気がしない」という声が大半を占める一方、「この会社、このポジションじゃないとできないこと」や「マーケティングに携わる上では、日本支社ではなく日本本社で」などの目的から、マーケティング、事業開発、プロダクト企画などの職種や、特殊な企業へ移るケースは僅かながら存在する



【2. 海外転職への転職ケース】


海外転職は、外資ITならではのキャリアを磨いてきた方には見えてくる選択肢と言える。中には新卒・中途で海外の支社で挑戦している方もわずかに存在していた。ただ、ライフステージ次第で、「子供をシンガポールで育てるか?」「家族も連れて行けるか」などの家族とのバランスも求められるため悩ましい。



まとめ「GAFAMも永遠ではないと、Call Outされたのが今」



ここまで、ONE CAREER PLUSの転職データに加え、GAFAMなど米テック企業の方々20名弱の証言を元に、「テック企業のポスト”レイオフ”キャリア」のパターンをまとめてきた。



「『定年までここにいるのかな』とさえ、思い始めてて。」

「でも、まさに今Call outされたよね、『GAFAも永遠ではなかった。』って。」



あるGAFAM在籍者はこう語れば、他のテック企業在籍者は、


「業界が沸いたコロナ禍のシーズンを経て、書籍『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』の『常に学び直せ』という話が急に訪れた」


と語る。これまで米テック企業をキャリアの桃源郷的な選択肢の一つとして見る声もあった。しかし、憂いに備えて次の選択肢を意識した「キャリア経験」を磨くことが重要なのは、外資テック在籍者でさえ変わらないということだ。



このレイオフの波が日本でも話題になることは、「転職時代のキャリアの磨き方」を振り返る機会になるはずだ。



売る転職か、買う転職か。レイオフで急にキャリアの仕切り直しが求められた方にとって、キャリアプランニングにおける次の転職の位置付けをどうするか、が本質的な課題になる。



今後もONE CAREER PLUSでは、テック企業も含めて、転職データや生の声に基づく、次のキャリアに関する情報を発信していきたい。



(終)


【予告】緊急ウェビナー開催/1on1のキャリア面談(無料)


ONE CAREER PLUSでは、情報提供ができるよう以下のような企画を実施することにしました。少しでもお役に立てれば幸いです。


【終了】緊急開催のウェビナー(3月下旬開催)


「テック企業のポストキャリア」を解説するウェビナーも、3月下旬に急遽開催予定です。

詳細は以下のイベントページをご確認ください。





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【執筆:長谷川 嵩明

ワンキャリアプラス編集部

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