高市早苗首相の「ワークライフバランスを捨てる」発言が議論を呼んでいる。政治の世界での激務ぶりを表現した言葉だが、実際にワークライフバランスを"捨てて"働き抜いた人たちは、その後どんな道を歩んだのだろうか。
激務を乗り越えてキャリアを大きく前進させた人がいる一方で、心身を壊して軌道修正を余儀なくされた人もいる。ワンキャリア転職に寄せられた約数百件の転職体験談をもとに、覚悟を決めて働いた人たちの、リアルな末路を追った。
- 1. 「ワークライフバランスを捨てる」高市新首相の発言が映した、働く覚悟の行方
- 2. "捨てた"先で跳ねた人たち──「修羅場が糧に」ハードワーカーの成功法則
- 2-1. "耐え抜いた3年"が市場価値を変えた
- 2-2. "挑戦を選び続けた人"だけが掴んだ高み
- 2-3. "敢えて捨てる"戦略も、キャリアの武器になる
- 2. "捨てすぎて見えた限界"──軌道修正を選んだ人たち
- 2-1. "仕事中心の生き方"を、身体が拒否した
- 2-2. やりがいも、身体も、持たなかった
- 2-3. "家族の時間"を取り戻すために
- 3. 約370件のデータで見る「ワークライフバランス転職」のリアル
- 3-1. ワークライフバランス重視でも約3割は年収UP
- 3-2. IT・通信業界への転職は働き方と報酬の両立を叶えやすい
- 4. "捨てる覚悟"より、"選び直す力"を
- ワンキャリア転職のご紹介
1. 「ワークライフバランスを捨てる」高市新首相の発言が映した、働く覚悟の行方
2025年10月4日、自民党の新総裁に就任した高市早苗氏は、両院議員総会でこう語った。
全員に馬車馬のように働いてもらう。私自身もワークライフバランスという言葉を捨てる。働いて、働いて、働いていく
強い決意をにじませた言葉だったが、この“ワークライフバランスを捨てる”という一節が大きな波紋を呼んだ。「覚悟と責任の重さを示した発言」と評価する声がある一方、「過重労働を助長しかねない」「時代錯誤の働き方だ」と批判する声もある。
さらに、10月21日の厚労省へ労働時間規制の緩和検討を指示したことで再び議論が再燃し、11月には「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」が2025年の流行語大賞にノミネート。
さらに11月7日には、高市首相自身が「午前3時から答弁準備をしている」と投稿し、首相官邸の働きすぎを懸念する声も広がった。
政治家としての覚悟を語った一言は、社会全体に「働くとは何か」「どこまで捧げるべきか」という問いを突きつけた。
では実際、民間のビジネスパーソンたちは“働くこと”と“生活”の間でどんな選択をしてきたのか──。ワンキャリア転職に寄せられた数百件を超える転職体験談から、そのリアルを読み解いていく。
2. "捨てた"先で跳ねた人たち──「修羅場が糧に」ハードワーカーの成功法則
激務を乗り越えた人の多くは、"スキルと地力"を得て市場価値を上げていた。成功パターンに共通するのは、単なる我慢ではなく、明確な目的意識を持ってハードワークに臨んでいたことだ。
2-1. "耐え抜いた3年"が市場価値を変えた
アドウェイズからサイバーエージェントに転職した事例では、転職後に役に立った前職の経験として「ハードワークに耐えて結果を出したこと」が挙げられている。
メディアプランナーとして日々の運用ディレクションや数値の分析結果をもとにクリエイティブの検証の実施してきたこと。予算規模の大きい案件を継続できたこと。チームのリーダーとしてチーム体制の構築や教育に携わっていたこと、そして協業先の企業との座組を整えて、全体をまとめあげていた経験。3年間継続し、ハードワークに耐えながら結果を残し続けてきたこと。(20代男性/アドウェイズからサイバーエージェントへ)
単なる時間の投入ではなく、結果とスキルの蓄積があったからこそより良いポジションへの転職が実現したのだ。また、ハードワークを耐えた結果、身についた体力や精神力が、次の環境で活躍する自信につながっているとも考えられる。
ハードワーク経験が糧になっているとする、同様のクチコミは他にも多く見受けられた。
システム構築経験、プロジェクトマネジメント経験、顧客とのコミュニケーション能力、ハードワークに耐えられる体力および精神力が役に立った。(20代男性/電通総研からデロイト トーマツ コンサルティングへ)
論理的思考、基本的なIT知識、プロジェクトマネジメントのスキルは役だっている。また夜中まで働くハードワーク耐性も過去経験が活かせている。(30代男性/アビームコンサルティングからVisionalへ)
2-2. "挑戦を選び続けた人"だけが掴んだ高み
NTTコミュニケーションズから伊藤忠商事への転職事例は、より戦略的なハードワーク活用の典型例だ。こちらの転職者は以下のような視点で転職を決断している。
仕事内容および年収が最大のポイントだった。
・将来的な会社経営、グローバルな事業運営の統括を担えるポジション。
・世界的な大企業と協業し、世の中にないビジネスを生み出せるポジション。
・上記のようなハードワークに見合う高額の報酬やインセンティブ。
注目すべきは、この転職者がハードワークを「見合う報酬」の条件として捉えていることだ。さらに、過去の経験についても戦略的に整理している。
新しい事業を立ち上げるにあたってのノウハウは、前職のNTTで事業をゼロから企画した際の失敗経験や、前前職のITコンサル会社で新規サービスの立ち上げ支援を行なった際に有益な経験をした。(30代女性/NTTドコモビジネスから伊藤忠商事へ)
ハードワークで培った「諦めないスピリット」や「グローバルSOCの運営リーダーとしての指示や予算管理」経験が、新しい職場で直接活かされていることが示されている。
2-3. "敢えて捨てる"戦略も、キャリアの武器になる
また、興味深いのは、成長のために意図的にハードワーク環境を選ぶ転職者の存在だ。三菱UFJ銀行からJPモルガンに転職した事例では、以下のような明確な戦略が語られている。
グローバルな環境、かつ労働時間に制限のないような環境を重視していた。若いうちから成長をしていくにはハードワークが重要であると考えていたこと、及び英語が得意であったため早い時期から英語での業務遂行の経験が積める先を重視していた。(20代男性/三菱UFJ銀行からJ.P.モルガンへ)
20代の若手中心に、ハードワークを敢えて選ぶ同様の転職事例がワンキャリア転職には多く寄せられていた。
とにかく、20代をすごすにあたり養われるビジネススキルを重視した。ハードワークを基本とし、大きく成長できるような環境を目指した。(20代男性/トヨタ自動車からリクルートマーケティングパートナーズへ)
将来やりたいことから逆算し、どの職種つけば希望の業務に携わる事ができるかを重要視した。また、ある程度のハードワーク(月60〜80時間残業)でもいいので、成長できるかどうかも重要視した。(20代男性/アビームコンサルティングからリクルートホールディングスへ)
(転職で重視したポイント)20代のうちはハードワークできる環境(20代女性/ファミリアからベクトルへ)
こうした、ハードワークを辞さない転職事例の多くは転職前後で100~200万円単位での年収アップを実現している。「何のために働くか」が明確だった彼らは、"ワークライフバランスを捨てた"のではなく、"目的のために手放した"と言える。
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2. "捨てすぎて見えた限界"──軌道修正を選んだ人たち
一方で、ハードワークの末に心身の限界を迎え、軌道修正を余儀なくされた人たちも多い。彼らの体験談からは、"捨てすぎ"のリスクが浮き彫りになる。
さらに・・・


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