2026年、世界は「新しい秩序」を模索する時代に突入した。地政学リスクの高まり、サプライチェーンの再編、そしてAI技術の爆発的な進化。こうした不確実性の高い事業環境の中、日本の経済を牽引してきた総合商社は、どのような未来を描いているのか。
今回は、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅の5大総合商社について、2026年の年頭挨拶や最新の決算情報、さらには現場で働く社員の生の声であるクチコミデータをもとに、各社の現在地と未来への展望を分析する。
1. 商社でもAI活用は進むのか? 年頭挨拶からみる各社の方針
2026年の幕開けにあたり、5大商社のトップが発した年頭挨拶は、各社のカルチャーと戦略の方向性を鮮明に映し出している。共通のテーマとして「AIの実装・深化」が挙げられるが、そのアプローチには違いが見られる。
三菱商事:AI時代こそ現場主義
中西勝也社長は、AIについて「もはや単なる効率化ツールでは無く、企業の基幹機能として認識されるべきステージに到達」し、「ビジネスの至るところで“AIによる再定義”が起きており、“AI defines everything”の世界を見据え」る必要があると強調した。
一方で、生成AIで答えが出る時代だからこそ、「『現場』に足しげく通って」「生の情報に触れることで、業界や顧客の変化を、誰よりも早く感じ取ってほしい」と、現場主義の重要性も説いている。
三井物産:AIでギアを上げる
堀健一社長は、現中期経営計画の仕上げと次期中計への準備期間として、「ツー・ノッチ(ギアを二段上げる)」という言葉で全社的なレベルアップを求めている点が特徴的だ。
AIテクノロジーについては、プロフェッショナルが持つ専門知見と組み合わせることで「学習のサイクルが高速に進む」とし、「人間本来の役回り(共感・交渉)」を強化するための「大変効果的な道具」と位置づけた。
(参考)2026年「年頭の辞」 | 2026年 | リリース | 三井物産株式会社
伊藤忠商事:AIをボトムアップで活用
「あくまでもAIはツールであり、アシスタントとして、我々のビジネスの進化や転換、付加価値の創出に多くのチャンスやヒントを与えてくれる」
石井敬太社長のメッセージは極めて実務的だ。まずは事務処理などの効率化から始め、得意とする「顧客接点が多い川下ビジネス」でのデータ活用によって、新たな収益モデルを構築するという具体的なステップを示した。
社内イベント「AI Challenge Month」などを通じてボトムアップでの活用を促し、コスト削減や効率化を「稼ぐ力」に直結させる姿勢を鮮明にしている。
住友商事:「人間力」との掛け合わせ
上野真吾社長は「もはやAIを使わないことが最大のリスク」と断言しつつも、最終的な差別化要因として「人間力」を強調した。
「最後は人間力がものをいう」とし、それは「人を惹きつける力」だと定義。誠実さや信頼をベースに、夢を語り、相手の話を聞くといった人間的なコミュニケーション能力を磨くよう求めている。
丸紅:AIの変化を追い風に
大本晶之社長は、AIなどのテクノロジーも世界の変化の一つとして捉え、それを「追い風」に変えていく姿勢を示した。創業者精神を引用し、「商人となる前にまず人となれ」と、人間的成長の重要性を訴えかけるなど、精神的・哲学的なメッセージが際立っている。
(参考)2026年 社長年頭挨拶
2. 【業績】純利益トップは伊藤忠商事となるか
2026年、AI活用に続いて注目したいのが、各社の業績だ。2025年度第2四半期(中間期)の純利益と通期の見通しを見ると、その勢力図が明確になる。
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