こんにちは、トイアンナです。
「出戻り転職」という言葉をご存じでしょうか? 一度転職してから、前の会社へ戻ることを意味する言葉です。
転職がイレギュラーだった時代において「出戻り転職」など、ありえないものとされていました。たとえるなら、一度離婚を言い渡しておいて、再度前の伴侶へ言い寄るような沙汰だと思われていたわけです。
しかし、転職する人材は徐々に増加。2024年の転職者数は331万人と、前年に比べ3万人増加、3年連続の増加を記録しています。(*)
転職市場の拡大に伴い、「一度は社外に出たものの、戻ってくる」方も増えつつあるのです。
(*)労働力調査(詳細集計)2024 年(令和6年)平均結果の要約
出戻り転職を歓迎する企業も増加
社員の出戻り転職を歓迎する企業も、徐々に増えています。以前は外資系企業でしか見られなかった出戻りですが、今やクラレの「カムバック採用制度」ニトリや雪印メグミルクの「ジョブリターン制度」など、公に出戻り転職を歓迎するケースも増えてきました。(*)
公式な制度でなくとも、退職時に「良かったらまた戻ってきてください」と声をかけられ、実際に前職へ戻るケースも聞きます。
こうして出戻りが歓迎されるのには、実務上のメリットがあります。一度大企業で働いた方ならわかると思いますが、大手企業ほど「その会社独自のルール」に縛られているものです。
使用するツール、メールの定型文、根回しの作法など、使いこなすのが難しいものや、言語化されていない文化も多々ある。それを「元・社員」なら、説明せずにまた働いてもらえるというのは、大きなメリットです。
さらに、かつて働いていた社員なら「こんな社風だと思わなかった」と離職されるリスクも下がります。通常のキャリア採用では、応募者が期待した社風と現場の風土に多少のギャップが生まれます。部署や上司によってカルチャーは変化するので当然ですが、そこで一定の離職は避けられない事情があるのです。
しかし、一回在職した方なら、そのあたりの誤差も把握してくれています。出戻り転職をした場合、新たにカルチャーギャップを理由に離職することはないだろう、と予想できるわけです。
(*)退職した元社員のカムバック採用制度の新設について | 株式会社クラレ、ジョブリターン(再雇用)制度|採用情報|雪印メグミルク株式会社
出戻り転職で年収が上がったケースも
今回、実際に出戻り転職で年収アップを実現したKさん(仮名)の話を聞きました。
「私は新卒で、IT企業でコンサルタントとして勤務していました。ただ、その会社は業界でも年収が低いことで知られていて、周りからも、「転職しないの?」とは常々言われていたんですよ。
IT業界は他と比べて転職する人も多いので、数年単位で(他社へ)動くのが当たり前です。だからこそ、長く自社にいる自分のことを、周りも不思議がっていた。自分としては、転職するタイミングをなんとなく見失っていただけなんですが……。
最終的には6年ほど在籍して、転職しました。そこで年収が倍になりましたね。そういう意味では、転職してよかったと思いました。ただ、転職先はかなりのハードワークで、残業時間も倍になってしまって。
しかも、「人材を大量に採用して、大量にレイオフする」という、計画性のない採用戦略をとっていたこともあり、社員のモチベーションがどんどん下がってしまっていたんです。
僕自身はストレス耐性がある方ですけれども、やっぱり失望しましたし、何よりこの労働時間で家庭を持つのは無理だなと思ってしまって。それで数年働いてから、35歳になる前に転職活動を再開しました。そのとき、前職の求人が目に入ったんですね。
で、もともと出戻り転職できる文化は知っていたんで、そのまま応募してみました。人事も慣れていたみたいで、スムーズに内定が出ましたね。
意外だったのは、2社目の給与水準を参考に、年収を200万円アップしてくれたことです。労働時間も裁量も変わらないのに、待遇だけ改善された。これだと、いったん社外に出てから出戻ったほうが、プロパー(生え抜き)より得じゃないか、って思っちゃいましたよね。」
出戻り転職者の方が生え抜きよりも給与が上がるロジック
Kさんのように、出戻り転職で年収が上がるケースは珍しくありません。というのも、転職者の年収は、前職をベースに決められるからです。
さらに・・・



