外資IT企業への転職を考える方にとって、最大の関心事の一つが「年収アップ」ではないでしょうか。「転職したらどれくらい収入が上がるの?」「成果をあげたら年収は青天井って本当?」という疑問は誰もが持つものです。
ONE CAREER PLUSの独自調査によると、外資IT企業への転職者の54%が前職と比較して年収アップを実現しています。中には100万円以上の年収アップを果たした例も少なくありません。
本記事では、外資IT企業への転職で実際にどれくらい年収が変わるのか、職種別の相場感や実例、さらには年収アップを成功させるための交渉術まで、データと実例をもとに徹底解説します。キャリアアップと収入アップ、両方を実現するための道しるべとなるでしょう。
- 1.外資IT転職で本当に年収は上がるのか?【結論:上がります】
- 1-1.外資IT企業の給与体系の特徴(固定給+変動ボーナス)
- 1-2.なぜ外資ITは高年収を実現できるのか?
- 2.【職種別】外資ITの年収相場と転職アップ例
- 2-1.セールス職:年収1,000万〜2,000万の世界
- 2-2.マーケティング職:年収800万〜1,300万のレンジ
- 2-3.エンジニア・PM職:年収900万〜1,500万+α
- 3.実例で見る:転職で年収がどう変わったのか?
- 事例①:日系大手SIer法人営業(30歳前後目安年収:800~900万円)→日本IBM法人営業(30歳目安年収:1,000万円以上)
- 事例②:外資コンサル(20代後半目安年収950万円)→日本マイクロソフト プリセールス(20代後半目安年収1,030〜1,100万円)
- 4.年収アップ転職の鍵は「企業選び」と「交渉力」
- 4-1.企業による"報酬設計の差"を見極めるには?
- 4-2.外資IT転職で年収を上げるためのネゴシエーションTips
- 4-3.年収だけを見ない:キャリア全体での価値の考え方
- 5.まとめ:年収アップを狙うなら、外資ITは"正解の一つ"
1.外資IT転職で本当に年収は上がるのか?【結論:上がります】
外資IT企業への転職は、年収アップの可能性が高いと言えます。
ONE CAREER PLUSに寄せられたクチコミを分析すると、外資IT企業への転職者の54%が年収アップを実現しています。中には日系企業から外資ITに転職し、年収が1.5倍以上になったケースも見られます。
もちろん、すべての人が年収アップを実現できるわけではありませんが、特に日系企業からの転職や、実績を積んだミドルクラス以上の人材にとっては、外資IT企業への転職が年収アップの大きなチャンスとなり得ます。
1-1.外資IT企業の給与体系の特徴(固定給+変動ボーナス)
外資IT企業の給与体系は、日系企業と大きく異なります。
一般的に、基本給(固定給)とボーナス(変動給)の2本立てで構成されており、特に変動給の割合が大きいのが特徴です。また、On-Taeget Earnings(=OTE)と呼ばれる目標達成率100%時の理論年収で雇用契約を行うことが多い傾向にあります。
営業の給与は100%達成時の給与、OTEと呼んでおります、で基本的に契約を行います。そのうち60%が基本給、40%がインセンティブとなります。
インセンティブは自分の数字目標への達成度で決まります。
ただコロナの様な社会情勢が厳しいタイミングではインセンティブが2倍でるケース等もあり、非常に給与面は充実しております。また昇給等もしっかり見込めるため、給与への納得度は高いです。(セールスフォース・ジャパン/男性/法人営業)
転職時の年収は交渉により決定しますが、外資系出身者は年収額をOTE(On-Target Earnings)で提示し交渉する傾向が強く、日系出身者はベース給与で提示し交渉する傾向があります。(出典:ONE CAREER PLUS 日本マイクロソフト「役職・年代・職種別の年収・評価を独自調査」)
ONE CAREER PLUSのクチコミにも、成果に応じて給与が変動するかどうかを重視し、LIFULLからセールスフォース・ジャパンに転職した方のクチコミが寄せられていました。
成果を評価され給料や待遇が変動するのかどうか。キャリアのステップアップの基準が明確かどうか。業界的に伸び代はあるのかどうか。営業以外の職種変更のチャンスがあるかどうか。人を大切にしているかどうか。(法人営業/男性/20代)
例えば、セールス職の場合、年収全体の30%〜50%がボーナスや歩合(コミッション)で構成されることも珍しくありません。これは営業成績に直結するため、成果を出せば大きく年収を伸ばせる可能性があります。
一方、エンジニアやプロダクトマネージャーなどの職種では、固定給の比率が比較的高いものの、ボーナスや株式報酬(ストックオプションやRSU)の割合も無視できません。
特にテック企業では、入社時に付与される株式報酬が数年間にわたって権利確定(ベスティング)していく仕組みが一般的です。この仕組みにより、会社の業績が良ければ予想以上の報酬を得られる可能性もありますが、逆に株価が下がれば期待していた報酬を得られないリスクもあります。
1-2.なぜ外資ITは高年収を実現できるのか?
外資IT企業が高年収を実現できる理由は主に以下の3点に集約されます。
1. 高い利益率と従業員あたりの収益
外資IT企業、特にSaaSやクラウドサービスを提供する企業は、利益率が極めて高いビジネスモデルを確立しています。
例えばMicrosoft、Google、Amazonなどのテック大手は、従業員1人あたりの売上や利益が日系企業と比較して圧倒的に高いため、その分を人材への投資に回すことができます。
2. グローバル人材市場での競争
外資IT企業は世界中で優秀な人材を獲得するために競争しています。特に日本のような高コストな環境でトップ人材を確保するためには、グローバル水準の報酬体系が必要となります。
3. 成果主義の徹底
一般的に、外資IT企業は年功序列ではなく成果主義の報酬体系を採用しています。成果を出した人材には惜しみなく報酬を与える一方で、パフォーマンスが低い場合は厳しい評価となるのが特徴です。
この「高リスク・高リターン」の環境が、外資IT企業の高年収を支える基盤となっていると言えるでしょう。
2.【職種別】外資ITの年収相場と転職アップ例
外資IT企業の年収は職種によって大きく異なります。ここでは、主要な職種別に年収相場と転職による年収アップの実例を見ていきましょう。
2-1.セールス職:年収1,000万〜2,000万の世界
外資IT企業のセールス職は、特に高収入が期待できる職種の一つです。基本給に加えて成果報酬(コミッション)の割合が大きく、成績次第では年収が大幅に上がる可能性があります。
年収相場:
- アカウントエグゼクティブ(AE):800万〜1,500万円
- エンタープライズAE:1,200万〜2,000万円
- セールスマネージャー:1,500万〜2,500万円以上
ONE CAREER PLUSにも転職による年収アップの実例が多数寄せられています。
一方で、セールス職は業績に直結するため、業績不振時にはレイオフの対象になりやすいというリスクもあります。特に、外資IT企業ではグローバル全体でレイオフが決定された場合、日本のビジネスが好調だったとしても影響が及び、レイオフが実行されることがあります。
高収入と引き換えに、常に結果を出し続けるプレッシャーがあることも覚えておく必要があるでしょう。
▼外資IT企業のレイオフに関する参考記事▼
2-2.マーケティング職:年収800万〜1,300万のレンジ
マーケティング職は、セールス職ほどではないものの、比較的高い年収水準が期待できます。特にデジタルマーケティングやマーケティングオペレーションなど、データ分析スキルを求められる職種では、年収が高くなる傾向があります。
年収相場:
- マーケティングスペシャリスト:600万〜900万円
- マーケティングマネージャー:800万〜1,200万円
- マーケティングディレクター:1,000万〜1,500万円
ONE CAREER PLUSにも転職による年収アップの実例が寄せられています。
マーケティング職は、デジタルマーケティングの知識や経験、データ分析スキルなど、専門性の高さによって年収に差が出やすい傾向があります。また、マーケティング組織の規模や会社におけるマーケティングの位置づけによっても年収は大きく変わります。
そのため、外資IT企業間の転職でも年収UPを実現した事例もありました。
2-3.エンジニア・PM職:年収900万〜1,500万+α
エンジニアやプロダクトマネージャー(PM)職は、技術力や経験によって年収の幅が大きく異なります。特にクラウド、AI、機械学習などの最新技術に精通したエンジニアは、高い市場価値を持っています。
年収相場:
- ソフトウェアエンジニア:700万〜1,200万円
- シニアエンジニア:900万〜1,500万円
- プロダクトマネージャー:800万〜1,400万円
- テックリード/エンジニアリングマネージャー:1,200万〜2,000万円以上
ONE CAREER PLUSにも転職による年収アップの実例が寄せられています。
なお、エンジニア職では、技術スキルの専門性や希少性によって年収に大きな差が生じます。そのため入社後も自律的なスキルアップが必要でしょう。
3.実例で見る:転職で年収がどう変わったのか?
外資IT企業への転職によって、実際にどれくらい年収が変わったのか、具体的な事例を見ていきましょう。ONE CAREER PLUSに集まった転職体験談から、代表的な2つのケースを紹介します。
事例①:日系大手SIer法人営業(30歳前後目安年収:800~900万円)→日本IBM法人営業(30歳目安年収:1,000万円以上)
伊藤忠テクノソリューションズから日本IBMへの転職で年収が大幅アップした30代男性のケースです。
伊藤忠テクノソリューションズの30歳前後の目安年収は800〜900万円ですが、日本IBMの30歳目安年収は1,000万円以上のため、約100〜200万円以上年収がUPしています。
▼参考記事▼
転職を検討した背景としては日系大手ならではの年功序列の文化により目指すべきキャリアゴールや年収に近づけないことに対する懸念が挙げられています。
日系企業にいるとまだ年功序列感が拭えず、30歳で1000万円を稼ぎたいと思った際に現職だと難しいと思い転職を決意。
また将来のキャリアアップを目指す為に自身の市場価値を上げるためには外資IT企業やコンサルに転職することが最短ルートになると思ったから。
そのため、転職活動では「年収・評価制度」「企業安定性・知名度」「年収アップ」を重視し、外資IT企業への転職を決めたようです。
同一業界内で年収を上げたいという軸で転職活動を開始。
また自身の市場価値を高めるために外資IT or コンサルの絞って準備をしました。
その中で給与とワークライフバランスを鑑みた際に外資ITの方が自身の希望と合致している点が多いという点が決め手になりました。
また、日系大手から外資への転職となるため、事前準備として英語学習を行っていたようです。
外資への転職なのでTOEICの勉強をして、入社後にキャリアアップができるように事前準備をおこなった。
事例②:外資コンサル(20代後半目安年収950万円)→日本マイクロソフト プリセールス(20代後半目安年収1,030〜1,100万円)
KPMGコンサルティングから日本マイクロソフトへの転職で年収が大幅アップした30代男性のケースです。
KPMGコンサルティングの20代後半の目安年収は950万円ですが、日本マイクロソフトの20代後半目安年収は1,030〜1,100万円のため、約100〜150万円程度目安年収がUPしています。
▼参考記事▼
グローバル企業ならではの明確なプロダクトの強みを魅力に考え、転職に至ったようです。
コンサルタントとベンダー、両方の垣根があいまいになっていく時代において、明確なプロダクトの強みを持つベンダー起点のコンサルティングのほうが、結果的に顧客にとってより良いソリューションとなるのではないかと思ったからです。
中立的立場で、様々なベンダーを比較することの意義を否定するわけでありませんが、顧客にとってはそのプロダクトを深く理解し、あるべき姿にどう持っていくかを共に考えていく存在のほうが頼りがいがあると自分自身は思っており、ベンダーのほうがその点は強いと思い転職を考えました。
そのため、「魅力的なサービス・商品」があるかどうかを重視していたとクチコミを寄せています。
プロダクトのマーケットシェアや知名度をベースに考えました。日本だけではなく、世界に売れる製品競争力と開発力を有しており、かつコンサルティング活動もしている会社で探すと、自動的に数社に絞れました。
また、コンサル時代に培ったスキルが転職活動で役に立ったようです。
前職ではM365をはじめとした様々なクラウド製品の導入支援をしていました。そのため、顧客に分かりやすく、刺さりやすい提案をするにあたり、コンサル時代に培ったプレゼン力や幅広い製品知識が活かせたと思います。
4.年収アップ転職の鍵は「企業選び」と「交渉力」
外資IT企業への転職で年収アップを実現するためには、「企業選び」と「交渉力」が重要です。ここでは、その具体的なポイントを解説します。
4-1.企業による"報酬設計の差"を見極めるには?
外資IT企業と一口に言っても、企業によって報酬体系は大きく異なります。
年収アップを目指すなら、以下のポイントで企業の報酬設計を見極めることが重要です。
1. 基本給とボーナスの比率
セールスフォース・ドットコムやAWSなどのクラウド系企業は、基本給とインセンティブの比率が6:4程度の場合が多く、成果次第で大きく年収が変わります。
一方、GoogleやMicrosoftなどは基本給の比率が比較的高く、安定した収入を得やすい傾向があります。
2. 株式報酬の有無と割合
GAFAM(Google・Apple・Facebook(現:Meta)・Amazon・Microsoft)では、総報酬の20%〜40%が株式報酬(RSUなど)である場合も珍しくありません。株価上昇時には大きな収入増につながる可能性がある一方、下落時にはリスクもあります。
3. 昇給・昇格の頻度とプロセス
一部の外資IT企業では半年〜1年ごとに昇給・昇格の機会があり、実力次第で早期に昇進できる仕組みがあります。一方、より保守的な企業では2〜3年程度のキャリア形成が求められる場合もあります。
転職先を選ぶ際は、単に提示される年収だけでなく、その後のキャリアパスや報酬の伸び代も含めて総合的に判断することが重要です。特に、入社後1〜2年での昇給見込みや、ボーナス・株式報酬の実績などを可能な限りリサーチしておくことをおすすめします。
▼外資IT企業の報酬・評価制度を確認する▼
4-2.外資IT転職で年収を上げるためのネゴシエーションTips
外資IT企業への転職では、オファー段階での交渉次第で年収が大きく変わることもあります。以下に、効果的なネゴシエーションのコツをご紹介します。
1. 現在の市場価値を客観的に把握する
同業他社や類似ポジションの年収相場をリサーチし、自分の市場価値を客観的に把握しておくことが交渉の第一歩です。ONE CAREER PLUSのようなクチコミサイトではポジションごとの年収を確認することができるので、活用すると良いでしょう。
2. 前職の成果を数値で示す
「売上を20%増加させた」「コスト削減率15%を達成」など、前職での成果を具体的な数値で示すことで、交渉の説得力が増します。
3. 複数のオファーを並行して進める
可能であれば複数の企業の選考を並行して進め、オファーを複数獲得することで交渉力が高まります。「他社からはこのような条件をいただいています」と伝えることで、条件アップの可能性が広がります。
4. 総報酬(トータルコンペンセーション)で考える
基本給だけでなく、ボーナス、株式報酬、福利厚生などを含めた総報酬で交渉することが重要です。場合によっては基本給は低くても、ボーナスや株式報酬で十分にカバーできるケースもあります。
また、転職エージェントを上手く活用することも有効です。特に外資IT企業に強いエージェントは企業ごとの報酬相場に詳しく、適切な交渉のサポートを受けられる可能性が高まります。
▼ONE CAREER PLUSのプロにサポートしてもらう▼
4-3.年収だけを見ない:キャリア全体での価値の考え方
外資IT企業への転職を検討する際、年収は重要な要素ですが、それだけにとらわれず、キャリア全体での価値を考えることも大切です。
1. スキルや経験の市場価値
外資IT企業での経験は、その後のキャリアにおいて高い市場価値を持つことが多いです。例えば、AWSやGoogle、マイクロソフトでの経験は、その後の転職や独立時に大きなアドバンテージとなります。
また、「外資IT企業への転職を経て高年収となった場合、年収水準が合わないために日系企業に転職しづらくなる」という通念もあります。ですが、近年では特にスタートアップ企業において、重要なポジションに対しては年収水準を引き上げる動きも出てきています。
その点においては「外資IT企業にチャレンジするハードルは下がってきている」とも言えます。
2. 成長スピードと学習機会
多くの外資IT企業では、最新技術や先進的なビジネスモデルに触れる機会が多く、短期間で大きく成長できる可能性があります。これは長期的なキャリア形成において非常に価値のある経験となります。
3. ワークライフバランス
外資IT企業は一般的に成果主義ですが、一部の企業では柔軟な働き方やリモートワークなど、ワークライフバランスを重視した制度が整っています。これは金銭的な報酬には換算できない価値と言えるでしょう。
また、会社のビジョンや文化、チームの雰囲気なども、長期的に働く上で重要な要素です。年収だけでなく、これらの点も含めて総合的に判断することが、後悔のない転職につながるでしょう。
5.まとめ:年収アップを狙うなら、外資ITは"正解の一つ"
外資IT企業への転職は、年収アップを実現するための有効な選択肢の一つと言えるでしょう。
特に、日系企業から外資IT企業への転職は、年功序列から成果主義への移行を意味し、若手でも実力次第で高い報酬を得られる可能性があります。セールス職、マーケティング職、エンジニア・PM職のいずれにおいても、スキルと経験に見合った適正な報酬を得やすい環境と言えるでしょう。
一方で、すべての人が外資IT企業で成功するわけではありません。高い報酬の裏には、それに見合った成果を出し続けるプレッシャーもあります。
また、企業によって報酬体系や評価制度は大きく異なるため、自分に合った企業を見極めることが重要です。
転職を成功させるためには、市場価値の把握、成果の定量化、交渉力の向上など、自分自身への投資も欠かせません。さらに、年収だけでなく、キャリア全体での成長や将来性も含めて総合的に判断することが、長期的な満足につながるでしょう。
外資IT企業への転職は、キャリアアップと年収アップを同時に実現できる可能性が高い選択肢の一つです。自分のスキルや経験、志向性に合った企業を見つけ、戦略的に転職活動を進めることで、理想のキャリアを築いていきましょう。
次回「外資IT転職:完全攻略ロードマップ」vol.3では、外資IT企業の選考にフォーカスし、必要スキルと突破の秘訣を解説します。
【参考情報】
・【超解説】テック企業のポスト“レイオフ”キャリア 2023 ─ 揺れるGoogle日本法人。テック人材流出の転職市場は今 ─