コンサルキャリアで最も特筆すべきことは、「ネクストキャリアを見越した入社」の方が多いことでしょう。
そして、コンサルに入社した方の多くが直面するのが、以下のような問いです。
・いつファームを去るべきか
・コンサルを経由したからこそ行けるネクストキャリアはどこか
・年収の増減をどう捉えるか
本シリーズでは、実際にコンサルを卒業してネクストキャリアを歩まれる方々にインタビューをし、ポストコンサルキャリアの実録を集めていきます。
今回の実録:デロイトからKPMG
今回お話を伺ったのは、デロイトからKPMGへ転職したAさん。
新卒でデロイト トーマツ コンサルティングに入社し、約3年間勤務した後、KPMGに転職しました。
デロイトではIT分野を中心に様々な業界のプロジェクトに携わり、KPMGではセキュリティ分野のプロジェクトを中心に担当しているといいます。
同じコンサル業界内での転職という選択肢を選んだAさんに、2つのファームの違いや転職の理由、そして今後のキャリアについて話を聞きました。
専門性を深めるために転職を決意
デロイトに入社して約3年が経ったとき、Aさんは自分のキャリアについて考え始めます。
「複数案件を経験する中で、どういった環境で力を発揮できるのか、どのような働き方が長期的に合っているのかを意識するようになりました」
デロイトでは、入社後1〜2年目は様々な業界・テーマのプロジェクトを経験します。その後インダストリーやファンクションカットの部署に配属されますが、それでも様々な領域のプロジェクトにアサインされることが多いのが特徴です。
大学時代から憧れていたコンサルタントとしての仕事に充実感を覚えていた一方で、入社3年に差し掛かり、専門性への危機感が募っていきます。
特に新人コンサルタントは、ランダムに様々なプロジェクトを経験することになります。
昇格するにあたり、上司との面談の中で『自分の専門の業界か、専門の何かしらの領域がないと難しいんじゃないか』という話を聞いて、多岐にわたる案件に関わる中で自分が専門にできる分野を見つけることを意識していました」
一方で、興味領域が見つかったとしても、特定分野のプロジェクトに入り続けることが難しいという実情もありました。
「希望する部署に所属はできたものの、継続的に案件があるわけではなかったりプロジェクトが短期間で終わることも多いので、ファーム全体のプロジェクトの受注状況に応じて知見のない全く別領域のプロジェクトに配属されることもありました。
配属面談で興味領域を聞かれもするのですが、実際にアサインされるときは人手が足りないプロジェクトに配属されることも多かったです
さらに、自分が興味を持った特定領域のプロジェクトを続けたいと希望すると、クライアント先への「出向」という選択肢を提案されたこともあったといいます。
こうした状況を踏まえ、自身のキャリアを考えたとき、より専門性を強めたいと考えたAさんは、転職に動き出します。
デロイト内では、私が望む領域に長期的に携われる機会が限られていたんです。より個々人の専門性にフォーカスし、特定領域に長期的にアサインする文化が強いファームに移動しようと考えました
年収は維持。成長と人で選んだKPMG
転職先を探す中で、Aさんの目に留まったのがKPMGでした。
魅力的だったのは専門性を重視する文化がある点です。
「KPMGは専門性を大事にしていて、個々人の知見や経験をベースにアサインが決まります」
新卒入社直後は、コンサルタントは約3カ月単位でいろいろな案件を回ります。その中で専門にしたい領域を見つけ、上司と相談をして次のアサインに意向を反映することで、より専門性を極めるパスを拓いていくことができるんです
一度特定の領域を経験すると、同じ上司と複数プロジェクトにわたって継続的に働くことも多く、専門性が身につきやすい環境があることも魅力でした。
特定の領域を経験してからは、過去一緒に働いた上司が担当する案件に継続的にアサインされることも多々あります。その上司が特定の専門性を持っている方であれば、同じ領域のプロジェクトで働き続けることができるんです
また、選考を通じてKPMGの人や社風に惹かれたといいます。
会社の文化として、社内のコミュニケーションを大事にしたり、分からないことがあったとき、聞いたら誰でも教えてくれる。優しい人が多いんです。デロイトほど巨大な組織ではないので、チームをまたいでも仲良く仕事をしていたりプライベートでも会ったりします
この点はデロイトとは対照的だったといいます。
デロイトは厳しいところもありますね。プライベートと仕事は切り分けている印象で、かっちりしている方が多いです。出社してもみんなスーツが多いのですが、KPMGは比較的カジュアルで、ジーンズでも問題ないです
この社風の違いは、KPMGが監査法人をバックグラウンドに持ちながらも、比較的外資系の雰囲気を持っているという点に表れているようです。
KPMGは外資的な雰囲気がありながらも、監査法人としての側面も持っているため研修などはしっかりしているイメージです
一方で、年収面では妥協することになりました。
年収は現年収維持でした。他ファームだと年収があがるオファーが多かったのですが、キャリアの志向性、働く環境とのフィット感でKPMGを選びました
Aさんはデロイト退職時に約850万円の年収でしたが、KPMGはそれを維持する条件での入社となりました。
年収水準を維持するために、デロイト時代よりも一つ職位を上げてシニアコンサルタントとして入社しています。
KPMGはBIG4の中で給料のレンジが低い傾向があったので、シニアコンサルの職位でないと年収が下がる可能性がありました。
楽しく仕事をしているので後悔はしていないのですが、年収の面ではもう少し上げてもよかったなと今は思います
特にKPMGは昇格しないと年収が上がりづらい仕組みになっているため、入社時の条件交渉は重要だったといいます。
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マネージャー以下は定時に帰宅?デロイトとKPMGは、評価の仕組みも働き方も異なる
デロイトとKPMGでは、様々な面で違いを感じているといいます。
まず、評価の仕組みに大きな違いがあります。
KPMGでは、proactiveに動く人が評価されます。マネージャーから指示される前に自分から聞いて行動に移せる人は高い評価をもらいます。KPMGは絶対評価なので、高評価なら昇格できる文化があります
対してデロイトは相対評価の要素が強いといいます。
デロイトもproactiveな人が評価される点では似ているのですが、昇格できる人数が決まっていて、高評価でもポジションが埋まっていたら昇格できないことがあります。パートナーは足りないのですが、マネージャーは結構席が埋まっていた印象です。社内のポジションが限られていたので、良い評価をとっても上司と仲のいい別の人が昇格してしまって結局昇進が叶わなかったという友人もいました
こうした評価の違いが、キャリアパスにも影響を与えているようです。
また、勤務スタイルや休暇の取り方にも違いがあります。
KPMGは半休が使えないんです。マネージャー以下だと一日フルでしか休暇を取れません。フレックスで中抜けはできるのですが、半日休むことができないのはデロイトと違う点です
労働時間については、KPMGの方が残業が少ない傾向にあります。
思ったより残業が少ないです。デロイトの時は月30〜50時間くらいでしたが、KPMGは忙しくても月25〜30時間くらい。雰囲気的にマネージャー以下だと定時に帰ってほしいという方針なので、早く帰ることが多いですね。マネージャーになると忙しそうですが
働き方の違いを生んでいる要素として、デロイトでは成果に対する期待値が非常に高く、それが独特の雰囲気を生み出しているようです。
マネージャー職で優秀な人が多いので、アウトプットに対する要望が高く、それが厳しい雰囲気につながっていると思います。タクシー帰りになることも多々ありました。
実際同期で既にデロイトを卒業している人も複数人いますが、仕事の量が多く労働時間が長いことで、報酬とのバランスや健康面を考慮して次のステップを考える人が多いです
▼KPMGの年収・評価制度について詳しく知りたい方はこちら▼
▼デロイトの年収・評価制度について知りたい方はこちら▼
今後のキャリアに向けて:立ち止まって考える大切さ
Aさんは今後ポストコンサル転職を考える人へのアドバイスとして、「キャリアについて立ち止まって考える時間を作ることの大切さ」を挙げます。
コンサルタントとして数年働くと、多くのスキルや知見を得られる一方で、このままファームにいるべきか悩むフェーズが誰でも来ます。目の前のプロジェクトで忙しい中で、自分のキャリアを立ち止まって見つめる時間がとりづらいのも分かります」
しかし、転職はゴールではなく通過点に過ぎないと語ります。
「転職=最終のゴールではないので、働き方や生き方をどうしていきたいか考えることが大事です。キャリアは積み上げるものというよりは、自分の意志で形をどう作っていくのかを考えることが大事だと思います
実際、Aさん自身も次のキャリアステップについては様々な可能性を検討しています。
転職活動の際はコンサル業界しか見ていなかったのですが、もう少し幅広く事業会社なども見てみた方が良かったかもしれません
と振り返りつつも、
コンサルの働き方に慣れていたので、働き方を変えない方が次の会社でも働きやすいと思ったんです
と当時の決断を説明します。
コンサルの魅力についても語ってくれました。
いろいろなお客様と会うのが楽しいです。様々な業界の人と会うので、業界の特徴を知る機会が多い。事業会社だと同じメンバーで働くことが多いですが、コンサルはプロジェクトごとに働く人が変わるので学びがあるし、成長できると感じています
専門性を深めたい、働きやすい環境を求めるなど、転職理由は人それぞれですが、Aさんのように「立ち止まって考える」時間を持つことが、後悔のないキャリア選択に繋がるのではないでしょうか。
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