コンサルキャリアで最も特筆すべきことは、「ネクストキャリアを見越して入社する」方が多いことでしょう。
そして、コンサルに入社した方の多くが直面するのが、以下のような問いです。
- いつファームを去るべきか
- コンサルを経由したからこそ行けるネクストキャリアはどこか
- 年収の増減をどう捉えるか
本シリーズでは、実際にコンサルを卒業してネクストキャリアを歩まれる方々にインタビューをし、ポストコンサルキャリアの実録を集めていきます。
実録:4年間のアクセンチュア経験が揺さぶった価値観と、リクルートで見つけた新しい働き方
新卒でアクセンチュアに入社し、テスターからPMO、戦略案件まで多様な領域を経験してきたIさん。
夜間勤務/残業、責任の重い案件の連続など、想像以上に泥臭い現場で鍛えられながらも「自分が提供できる価値よりも多くの給料をもらっているのではないか」と悩む日々が続きました。働き方の限界と、価値提供への葛藤。その二つが重なったとき、彼女はリクルートへの転職を決断します。
「母としての働きやすさ」と、「手触り感のある社会への価値創出」。どちらも追求できる環境で、キャリアへの手応えを取り戻していったIさんの軌跡をお届けします。
新卒でアクセンチュアへ ITとキャリアの現実に向き合った最初の一歩
新卒でアクセンチュアに入社したIさんは入社理由を以下のように語ります。
これからの時代はITだと思っていた。新卒で入社した会社でずっと働き続けるわけではないので、今後に活用できるスキル・業界知識が得られるか、で企業を選んでいた
学生時代は小売でのアルバイトを通じ、システム導入の重要性を感じていたこともあり、就活ではSIerを中心に受け、最終的にアクセンチュアに決めました。
最後に心が傾いた理由は「給料が高いことと、合わない案件があっても抜けやすい制度だったこと」、さらに「将来子どもを産むことを考えると、転勤がない会社の方がライフプランが立てやすいと思った」と語ります。
ところが、入社後に待っていたのは、想像以上に泥臭い現場でした。最初の半年はSAPのテスター・保守運用を担当し、夜間監視で「障害が起きたら上司を叩き起こす」という日々。「私じゃなくてもできる仕事なんじゃないか」と戸惑いながらも、「自分で直せない領域だからこそ、まずはできることをやるしかない」と議事録や引き継ぎ資料を完璧に仕上げる等の自分の責任範囲に集中していきました。
クライアントワークを始めると、Iさんはある誤解に気づきます。それは、入社した瞬間にコンサルタントになれるわけではないという現実です。「資格を取っても何も分からない。入ればすぐコンサルになれると思っていた自分が甘かった」と振り返り、会議に出て内容を必死に理解し、少しずつキャッチアップしていく積み重ねの大切さを実感していきました。
そしてもう一つ、彼女の意識を支えたのが同期の存在でした。
同期も全員同じように泥臭くやっていましたし、みんな残業して本当に頑張っていたんです
華やかなイメージとは裏腹に、全員が必死に手を動かしながら、小さな成長を積み重ねていました。
稼働後のトラブル対応では長時間の連続勤務を経験するほど過酷な場面もありました。しかしタフな案件をこなすほど、次もハードな案件に回されるというアサイン側の事情もあり、1年目から着々と経験を積み重ねていきます。
こうして最初の1年で、Iさんは期待と現実のギャップに向き合いながら、コンサルタントとして成長するための土台を築いていきました。
PMOとしての鍛錬と、価値に悩んだコンサル時代
テスターとしての半年を終えたIさんは、PMO案件にアサインされました。偶然シニアマネージャーからPMOとしての面談依頼が届いたことが転機になります。当時すでに「半年やってITが得意ではないと気づいていた」と語るIさんは、資料作成や整理業務で身に着けた調整力や情報整理力を発揮しやすいPMOを選択しました。「コーディングに強い人と比べると自分は向かない。でも議事録やエクセルは得意なので、そっちの路線がいいと思った」という率直な判断でした。
PMOの仕事は「会議に出席し、議事録を正確に記録。その内容を自分の言葉で話せるようになるまで理解する」という地道な事務作業の積み重ねです。「会議にたくさん参加して、議事録を完璧に取って、内容を話せるようになるとコンサルらしくなる」と語るように、日々の鍛錬によって仕事の幅は徐々に広がっていきました。
しかし、担当したプロジェクトは想像を超える困難の連続でした。クライアントとの認識齟齬や責任の所在を巡る議論が絶えず、社内外の調整が続く緊張の多い現場。
関係が良くない案件だったので、どう説明すれば納得してもらえるか毎日悩んでいた
納品物を受け取ってもらうための説得、エラー対応の進捗管理、週に何度も資料を更新して説明する日々。「納品をどうにか受け取ってもらうために奔走した経験は忘れられない」と振り返るほど、精神的にも負荷の大きい経験でした。
続くコールセンターの基幹システム刷新案件では、また別の壁にぶつかります。基幹システムの基本設計を担うなかで、プロジェクト体制に大きな偏りがありました。経験者がごく少数で、ほとんどが経験の浅い若手で構成されたチームだったのです。
「体制のバランスが取れていないと感じる場面もあり、クライアント側の方が詳しいことも多かった」と語るように、チームとして十分な価値を提供できているのか悩む瞬間が増えていきました。
さらに、アサイン基準に対する違和感もありました。
経験や適性ではなく、マネジメント側の都合を優先しアサインされているように見える場面がありました。本当にこれで回るのか不安に思うこともありましたね
現場にはポテンシャル採用が多く、若手が急速にキャッチアップすることを前提にした体制。その結果、負荷が偏り、精神的に追い込まれるメンバーが出ることもあったといいます。
IT案件で成長を感じる一方で、心の奥には拭いきれないモヤモヤが残り続けていました。この違和感が、後に戦略領域への挑戦やキャリアの方向転換につながっていくことになります。
戦略領域への挑戦と、自分の思考を鍛える時間
IT領域での複数案件を経験したIさんにとって、次の転機となったのが戦略領域への異動でした。これまでの経験を踏まえて、システム開発のさらに上流である戦略の世界に挑戦したい気持ちが強まっていきました。
そこで思い切って応募したのが地方行政向けの戦略案件でした。社会的なインパクトの大きさを感じられる点にも魅力を覚えたといいます。
さらに・・・



