アクセンチュアと聞くと、戦略コンサルタントやITコンサルタントといった職種を思い浮かべるかもしれません。 しかし、ビジネス構造は近年大きく変化しており、中でも注目を集めるのがBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)部門です。
BPOはキャリアにとって、魅力的な選択肢なのでしょうか? コンサル業界のリアルな動向を発信し、SNSやnoteで支持を集める「外資系うさぎのちょこさん」がアクセンチュアの最新決算を基に解説します。
どうも、はじめまして、外資系うさぎのちょこさんです。
普段は小さなコンサルティング会社の創業者として働きつつ、X(旧Twitter)やnoteで「コンサル業界のリアル」を発信しています。
コンサルという仕事は、華やかに見える一方で、実態を正確に伝える情報が意外と少ない世界です。
この連載では、就活生や若手社会人、あるいはすでにコンサルファームに所属している方に向けて、業界の動向やキャリアの考え方をできるだけリアルにお伝えしていこうと思います。
1.アクセンチュアの決算から読み解く、コンサル業界のトレンド変化
コンサル業界のトレンドというと、どうしても「新規事業」とか「AI活用」とか、キラキラしたワードを意識してしまうのではないでしょうか。
特に現在は、各社こぞって「AIを活用したコンサルティングサービスの在り方」を社内外に強くアピールを続けている状態なので、そのようなイメージが先行してしまうのもわかります。
とはいっても、クライアントがコンサルファームに求めるプロジェクトはそのようなキラキラ感のあるものばかりというわけでもなく、業務改善やシステム更改などの、どちらかというと地味で、昔からあるテーマに関するプロジェクトがやはり多くを占めています。
たとえばアクセンチュアのプロジェクトにはどのようなテーマが多いのか、少し調べてみることにしましょう。
ちなみに、アクセンチュアは米国市場に上場しているため、決算書などが広く公開されているのがありがたいところです。大手戦略系ファームやBig4など、非上場の会社は情報開示の義務が少ないため、こういうときに調べられる情報に限りがあります。
国内で上場しているファームだと、ベイカレントの動向も常に気にしておきたいところですね。
さて、話を戻して…、
最新の決算(2025年8月期)を見てみると、アクセンチュアはグローバル全体で社員数約77.9万人、売上697億ドル(1ドル150円換算で約10兆4500億円)となっており、その売上は3つの軸で示されています。
- Geographic Markets(地域別)
- Industry Groups(クライアント業界別)
- Type of Work(プロジェクト種類別)
このうち、今回注目したいのが3つめのType of Workです。
この区分は「コンサルティング」と「マネージドサービス」の2つに分かれており、「プロジェクト型の仕事」と「運用型の仕事」がほぼ同じ売上規模となっているわけです。
そして、このマネージドサービスに、アクセンチュアが近年注力しているBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)やITアウトソーシングが含まれる、ということです。
ここが重要なポイントで、アクセンチュアは、かつては「戦略とITに強い会社」というイメージで、ちょこさん自身もコンサル業界にチャレンジしようと考え始める前までは、「アクセンチュアはITの会社らしい」となんとなく思っていたりもしました。
今では、コンサルの会社でもITの会社でもなく、「コンサル×IT×BPO」の総合サービス企業となっています。
「変革を提案して終わり」ではなく、「変革を提案 → 実行 → 運用まで全部やる」会社に進化している、と言えますね。
そしてこの流れはアクセンチュアだけの話ではなく、大手総合系コンサルファームの多くが、同じ方向での成長を目指して動いています。
コンサル業界の大きなトレンドを掴むにあたって、「アクセンチュアは今何をしているか」、「それを受け、その他の大手ファームはどのように動こうとしているか」は欠かせない注目ポイントです。
2.今伸びている「コンサルファームによるBPO」
就活生や若手社会人の方々は、もしかしたら「BPO」という言葉にはあまり耳馴染みがないかもしれません。
BPOとは、ざっくりいうと「業務プロセスの外部化」のことです。
昔は、BPOといえば、大量の事務のオペレーションを安価に請け負って、海外拠点で一括処理をしたりしてコストを大きく削減する、そんなモデルが中心でした。
大きな企業に勤めている方は、入退社などの人事手続きや、毎年の年末調整のプロセスなど、自社のバックオフィスではなく、他社が一括して対応している、という体制を見たことがあるのではないでしょうか。
このような「特定の業務処理を丸ごと外部に委託する」というのがよくあるBPOのパターンでした。
でも今の状況が全く変わってきていて
- DXの急速な浸透
- 少子高齢化による人材不足
- 地政学・為替リスク
- グローバル競争の激化
など、企業は単に業務を効率化すればよいだけではなく、社会の変化や移り変わるリスクへの対応も考えながら、「そもそも、このオペレーションってどうあるべきなんだっけ?」という根本的な問いに直面しています。
そこで、存在感を高めているのが、コンサルファームによるBPOです。
大手総合系ファームを中心として、「課題を整理して、業務を再設計し、最適な仕組みを作る」という今までのコンサルファームの強みを武器に、「最適化した仕組みを自分たちで請け負ってしまおう」と、コンサルティングフェーズの先にある、業務の実行そのものにまで手を広げようとしています。
具体的な動きとして、Big4各社は、ここ2-3年で明らかにBPOビジネスを大きなビジネスチャンスと捉え、投資を拡大している様子がうかがえます。
この動きはコンサル業界だけに限らず、NTTデータも2025年にBPS(ビジネス・プロセス・サービス)強化のために新会社を設立するなど、業界横断で「コンサル x IT x BPO」の総合サービス化を目指した動きが広がっています。
ちなみに、ちょこさんは今は大手ファームを離れ、業務改革案件に注力した小さなコンサル会社を経営しているのですが、「自社の事務オペレーション全体をゼロベースで見直したい」というテーマのプロジェクトに関わらせていただくことが多々あります。
その中では、事務オペレーションの担い手の安定した採用が今後難しくなっていくことをふまえ、「競争力の根源となるコアな業務を自社に残し、それ以外は外部委託に切り替える」という方針にたどり着くことが多いです。
やはり、「業務を改善したはいいものの、どうしても担い手が確保できない」という課題に、コンサルファームがBPOまでセットにした課題解決を提案する、というスキームは、今後増えることはあっても、減ることは早々ないのではないか、と個人的に強く考えている次第です。
3.コンサルファームの視点から見たBPOプロジェクト
コンサル業界では、小規模・高単価・短期のプロジェクトを起点とし、単価は低くとも大規模で安定した売上を見込める長期の業務改革やシステム構築のプロジェクトにつなげていく、という成長モデルがこれまでの主流でした。
なかでも、システムの実装そのものや長期の運用を請け負える、アクセンチュアやIBMなど、ITに強みをもつ会社では、この流れが定番中の定番だったのだと思います。
でもいまは、
「戦略 → 業務 → BPO(実行・運用)」
という新しい支援のシナリオが生まれ、実はこれはクライアント企業側だけでなく、コンサルファーム側からもニーズが高いものとなります。
コンサルファーム側も組織の拡大、大量採用が続いた結果、次のような喫緊の課題が出ています。
- 未経験人材の早期の戦力化
- 安定した収益源の確保
- クライアントとの長期的な関係の構築
そこで、どんな企業でも「事務オペレーションの最適解」が経営テーマとして重要性を増していることも相まって、
- 新規事業立ち上げや中期経営計画策定といった戦略コンサル案件よりハードルが低く
- ソリューションの再現性もあり
- プロジェクトの規模・期間も大きい
という3つの条件を満たしている大規模な業務改革、そしてその先にあるBPO、を注力テーマとして据える合理性が、コンサルファーム側にもあるわけです。
BPOは「安定した収益源」になると同時に、若手がプロジェクトの”型”をもとに実戦経験を積みながらバリューを出していくための「戦力化の場」としても有効、ということですね。
クライアントとの関係性も、単発PJより深く長く続くため、現場に入り込むなかで新たな課題や改善ポイントが見えてきやすく、そこから追加提案が生まれることも多い、というメリットまであります。
これが、ファーム各社がBPOを「次の主戦場」と位置づけている理由です。
4.BPOコンサルタントというキャリア
さて、ここからは個人のキャリアの話もしていきましょう。
BPOのプロジェクトって、
さらに・・・





