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球団職員になるには? 業界変遷で生まれた新たなキャリアチャンス

長らく「親会社の広告塔」であり「狭き門」とされてきたプロ野球球団職員だが、近年その状況は激変している。球団経営がビジネスとして独立し、DX(デジタルトランスフォーメーション)が強化部門にまで浸透した結果、異業種からの専門的な中途採用が活発化しているのだ。


本記事では、この新たなキャリアチャンスの背景を解き明かし、ビジネス部門・強化部門の仕事内容から、転職成功者が語る必須スキルまでを徹底解説する。




1.球団職員は狭き門なのか?業界のビジネス化が拓いた中途採用のチャンス


一般企業とは大きく異なると言われることが多いプロ野球の世界。


それには様々な理由がある。まず大きいのは新規参入がほとんどないということだ。2004年に球界再編問題が起こり、2005年シーズンから東北楽天ゴールデンイーグルスが新規参入しているが、これは1954年の高橋ユニオンズ以来実に51年ぶりの出来事だった。この楽天の新規参入についても、オリックスと近鉄の合併によって減少した分を補ったもので、セ・リーグとパ・リーグ6球団ずつの12球団という数は1958年から70年近く変わっていないのだ。


一昨年からはファーム限定という形でオイシックス新潟アルビレックスBCとくふうハヤテベンチャーズの2球団が新規参入を果たしたが、1993年に開幕したサッカーのJリーグが当初10チームだったものが、現在ではJ2、J3を含めて60チームまで増えたことを考えると、いかにプロ野球が“閉じられた”世界かということがよく分かるだろう。


しかしプロ野球の球団も“企業”ということに変わりはなく、経営していくには当然あらゆる人材が必要である。またかつては『球団は親会社の広告宣伝費』と呼ばれることも多く、球団単体では赤字というのが当たり前の時代も長かったが、近年はいかに球団として利益を出すかというビジネス的な視点も重要になっているのだ。



その背景としては2005年から参入した楽天は初年度から黒字を達成したことが大きく、2011年12月からDeNAに親会社が変わったベイスターズもそれ以前とは比べものにならないほど売上、利益が向上している。以前は球団職員の大半は親会社から出向していたと言われていたが、儲けを生み出すためには当然人材も必要となる。そしてその結果、新卒、中途ともに採用を強化している球団も増えているのだ。






2. 球団職員の仕事とは?チームの勝利を支える二つの主要部門


ここでまず球団職員の職種について説明する。一般的な企業と同じ人事や経理などの管理部門を除くと、球団によって名称は異なるものの主に2つに分けられる。


それが集客やスポンサー営業などで収益を上げることを目的としているビジネス部門と、チームが勝利するための強化部門だ。そして一般に広く求人があるのはビジネス部門であるケースが多い。


2-1. 一般公募の主戦場「ビジネス部門」の採用動向


2025年11月12日現在、各球団のホームページ上で公開されている求人を見るとDeNAベイスターズは以下の職種を募集しているが、経理担当を除くといずれも事業部門に属するものだ。


◇経理担当

◇グッズ戦略担当

◇広告制作ディレクター

◇イベント企画演出担当

◇全社社内プロジェクトのマネジメント担当

◇経営企画担当

◇戦略・企画系オープンポジション

(出典)採用情報 | 横浜DeNAベイスターズ


プロ野球12球団の親会社は新聞(巨人、中日)、鉄道(阪神)、食品(ヤクルト、日本ハム、ロッテ)といった伝統のある企業から、比較的新しいIT(ソフトバンク、楽天、DeNA)までに及ぶが、この募集職種を見るとそういった親会社の事業とは全く異なっていることがよくわかる。


それを考えると親会社から出向する社員だけでは利益の最大化は簡単ではなく、外から広く人材を集めることは当然と言えるだろう。


そしてプロ野球をビジネスとして考えた時に、その構造が変化してきていることも確かだ。以前は入場料収入と放映権料が売上の多くを占めており、常に試合中継が放送されていた巨人が所属しているセ・リーグ球団がパ・リーグ球団を大きく上回っていた



しかし近年は地上波でのプロ野球中継が大きく減少し、巨人の人気に頼らず収益を上げる必要が出てきたのである。その結果どの球団もファンの獲得に注力するようになり、球界再編問題が起こった2004年以降多くの球団が観客動員数を増やしている。また収益構造の改善を図るために球場自体を所有する球団も増え、近年では日本ハムファイターズが2023年に『エスコンフィールドHOKKAIDO』を開場し、一気に利益を伸ばした。


そんな日本ハムファイターズのホームページにも総合職という形でビジネス部門の社員の求人が掲載されているが、応募資格と求める人物像としては以下のように書かれている。


◇応募資格

・社会人経験1年以上で、ファイターズと共に夢を実現・発展させる気概をお持ちの方


◇求める人物像

・スポーツ、エンターテイメントを通じて世の中を明るくしたい方

・北海道のシンボルとしてFビレッジを成長させることができる方

・これまでのスポーツビジネスの既成概念にとらわれず事業推進できる方

・夢に向かって挑戦したい方

(出典)https://www.fighters.co.jp/expansion/recruit/career/index.html


これを見ても野球にかかわらずスポーツチームというのはその地域にとってなくてはならないものになることを重要視しており、変化するスポーツビジネスにおいて価値を創造できる人物が求められていることがよく分かるだろう。


日本でプロ野球のリーグ戦が始まったのは1936年からであり、業界としてはかなりの歴史を重ねているが、ビジネスという観点ではここ数年で大きく変化していることは確かであり、それに対応できるようなスキルやマインドが必要と言えそうだ。




2-2. 強化部門におけるDXトレンドと新たな人材需要


ここまではビジネス部門について触れてきたが、他の業界とより大きく異なっているのはやはりチームの勝利を目指すための強化部門だ。簡単に言えばよりポテンシャルのある選手を獲得し、その能力を最大化し、野球というゲームに勝つことが求められる部門である。


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スポーツライター

西尾典文

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。現在は年間400試合以上を現場で取材し、各種媒体に記事を寄稿している。2024年4月には侍ジャパンの井端弘和監督との共著で『日本野球の現在地、そして未来』(東京ニュース通信社)を出版。2017年からは毎年CS放送スカイAにおけるドラフト会議中継でも解説を務めている。

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