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アクセンチュア、新社長人事が示唆するプロパー文化。新卒優遇は本当か?実態をデータで検証

2025年11月6日、アクセンチュア株式会社は次期社長に濱岡大 常務執行役員を選任すると発表した。現社長の江川昌史氏は会長に就任し、両者ともに新卒入社から叩き上げでトップに上り詰めた人材だ。


外資系でありながら社内昇格で経営を担う体制が継続される同社だが、これは「新卒優遇」の象徴なのだろうか。本記事では、ワンキャリア転職に寄せられた独自データを分析し、アクセンチュアの昇格構造における新卒優遇の実態を探る。



1. 2代続く、プロパーの社長就任。アクセンチュアは新卒優遇なのか?


アクセンチュアが公表するニュースリリースによると、新社長の濱岡大氏は1998年に慶應義塾大学商学部を卒業後、同年アクセンチュアに入社した。


製造・流通本部をはじめ、営業やビジネスコンサルティング本部など多岐にわたる領域で25年以上キャリアを重ねてきた。常にクライアントの成長を起点に、新規事業の開拓やサービス開発を主導してきた人物として知られる。


前社長の江川昌史氏も同じく慶應義塾大学商学部出身で、1989年の入社以来、国内外でコンサルティング事業を牽引。社長に就任した2015年からの10年間でアクセンチュア日本法人を2桁成長へ導き、グローバルでも存在感を高めた経営者として評価されている。


注目すべきは、この2人がともに新卒入社から叩き上げでトップに上り詰めたプロパー社員である点だ。


外資系コンサルティングファームといえば、一般的に中途採用・即戦力重視の文化を持つ。ところがアクセンチュアでは、こうして新卒プロパーによる社内昇格人事が続いている。今回の人事も外部招聘ではなく内部登用であり、「外資なのに“育成型”」という同社の一面を改めて印象づけた


では、実際の現場においても「新卒が昇格しやすい」構造は存在するのだろうか。本記事では、ワンキャリア転職に寄せられたクチコミデータを分析し、新卒と中途で昇格しやすさや評価に実際に差があるのかを検証する。






2. データで見る昇格構造のリアル ― 約4割が「新卒優位」と回答


今回は、ワンキャリア転職に寄せられたクチコミデータをもとに、「アクセンチュアにおける新卒と中途の昇格しやすさ」を多面的に分析した。

※本分析は、ワンキャリア転職に寄せられたアクセンチュア社員・元社員による全89件のクチコミを対象に実施

※昇格スピードについて回答のあった全件を集計しており、制度や文化面での傾向を定量的に把握しています



2-1. 全体傾向_「新卒優位」が約4割


「新卒/中途の出身の違いが昇格スピードに影響するか(かなり中途優位〜かなり新卒優位)」を5段階で評価した結果は以下の通りだ。


  • かなり新卒優位・新卒優位:約35%
  • 差はない(中途入社と新卒入社の社員で評価は変わらない):約48%
  • やや中途優位・かなり中途優位:約17%


半数近くが「差はない」と回答する一方で、約4割の社員が“新卒のほうが昇格しやすい”と感じている。


新卒優位と感じる人が多い背景の一つに、同社では初期3〜5年の“昇格モデル”が比較的明確で、同期比較の中で自分の立ち位置を把握しやすいという点が挙げられる。


実際にクチコミでは「入社3年目でコンサルタントに昇進できるか・6年目でマネージャーに昇進できるかが鍵」といった声が多く寄せられている。



・入社3年目でAnalyst→Consultantに昇進できるかが最初のギャップ。ただ、このタイミングでの昇進有無によって以降のキャリアに影響を及ぼすわけではない
・ストレートに昇進すれば入社6年目でConsultant→Managerに昇進できる。これも同様に以降のキャリアに影響を及ぼすわけではない。また、稀なケースとして超優秀層については5年目にManager昇進ができる。
(2020年新卒入社/ビジネスコンサルティング本部)


さらに、「評価制度の透明性」に関する回答では、「不明確」と回答した割合は中途入社者で約6割を占め、「明確」の回答が25%にとどまった。一方で、新卒入社者では明確系の回答が中途よりもやや高い結果となっている。


入社区分

「非常に明確」
「明確」

中立

「不明確」
「非常に不明確」

新卒入社

29%

10%

61%

中途入社

25%

17%

58%

全体

27%

14%

59%


この差分は、新卒社員のほうが「入社年次ごとの昇格モデル」や「同期比較によるキャリアパスの目安」がある程度存在するためと考えられる。


制度自体は全体的に不明確であるものの、初期フェーズにおける“道筋の見えやすさ”が結果的に体感差を生み、そうした構造が“新卒優位”という印象を後押ししているとみられる。




2-2.部署別に見る、昇格スピードの違い


部署別に見てみると、全体として新卒優位の傾向が強いものの、その度合いは部門によって異なる結果となった。


部署

「かなり新卒優位」

「新卒優位」

中立

「中途優位」

「かなり中途優位」

ストラテジー&コンサルティング

46%

40%

14%

テクノロジー本部

37%

50%

13%

その他

(オペレーション、ソング等)

25%

50%

25%


ストラテジー&コンサルティング(S&C)は「新卒優位」46%、「中立」40%、「中途優位」14%と、最も新卒優位と回答する比率が高かった。S&Cは他部門に比べてキャリアパスの階層構造が少なく、昇進スピードが早いとされているのが特徴だ。

若手が早期に昇進を果たしやすく、キャリアの見通しも立てやすいため、「新卒が順調に上がっていく部署」という印象が生まれやすく、“新卒優位”と感じる人が多い背景になっていると考えられる。



ストラテジー&コンサルティングの部署か、テクノロジーの部署かによって、昇進の難易度が少し異なる。
ストラテジー&コンサルティング部署の場合、CL10と8がないため、その分昇進がしやすいが、テクノロジー部署の場合は全ての段階を踏む必要がある。
若手社員でハードルが高いのがCL9に上がるタイミング、CL7に上がるタイミングである。このタイミングで大きく昇給するため、同期で差がつく(アクセンチュア/2018年新卒入社/テクノロジー)


テクノロジー本部は「新卒優位」37%、「中立」50%、「中途優位」13%で、中立層が半数を占めた。クチコミでは、CL11→CL7まで続く多段階構造に触れる声が多く、階層の多さが昇格スピードの体感差につながっている可能性がある。






3. 「優遇」を生む背景 


クチコミの声を総合すると、“新卒優位”の実態は制度上の差というより、構造的な環境要因による体感差として表れている。


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ワンキャリア転職 編集部

井口 祥子

一橋大学卒業後、新卒では大手人材系企業に入社し法人営業を経験。その後、就活プラットフォームを運営する人材ベンチャーに入社。学生の就職支援に携わった後、スタートアップ、大企業、コンサルティングファーム等の採用ブランディング記事の企画・編集・執筆を手掛ける。2022年よりワンキャリア入社。ワンキャリア転職にて社会人向けのキャリア支援やコンテンツ企画・編集に携わる。

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