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「やりがい」か「安定」か。デロイトからフードテックベンチャーへ――“実感のあるキャリア”を求めて|辞めコン実録集 vol.19

コンサルキャリアで最も特筆すべきことは、「ネクストキャリアを見越した入社」の方が多いことでしょう。


そして、コンサルに入社した方の多くが直面するのが、以下のような問いです。


  • いつファームを去るべきか
  • コンサルを経由したからこそ行けるネクストキャリアはどこか
  • 年収の増減をどう捉えるか


本シリーズでは、実際にコンサルを卒業してネクストキャリアを歩まれる方々にインタビューをし、ポストコンサルキャリアの実録を集めていきます。







実録:デロイトからフードテックベンチャーへ。実感のあるキャリアを求めて



あと5ヶ月でマネージャー昇進。年収は1,000万円超。それでも、やめると決めました。


そう語るのは、デロイトトーマツコンサルティング(DTC)からフードテック系ベンチャー企業に転職したDさん。専門性を磨き、順調なキャリアを築いていたにもかかわらず、なぜベンチャーという“茨の道”に足を踏み入れたのでしょうか。



自分が“いい”と思えるものを、自分の手で広げていきたい


そうした思いが原動力になった転職活動の実態や、収入ダウンも厭わず選んだキャリアのリアル、そしてCMOを目指す現在の挑戦まで、元コンサルタントが語る「実感のあるキャリア」を目指したDさんの実体験をお届けします。





キャリアの出発点――DTCでの多彩な経験


Dさんのキャリアは、2017年に新卒でデロイトトーマツコンサルティング(DTC)に入社したところから始まります。


当時は「プール制度」という仕組みがあり、さまざまな部署・プロジェクトにアサインされる可能性がある中で、三年半の間、コンサルタントとしての足腰を鍛える期間を過ごします。



最初に配属されたのは、テレコムやメーカー、ハイテク業界を担当する部門でした。SCMや新規事業立案、ITコスト削減のPMOなど、幅広く担当しましたが、特にPMO業務が長かったですね


その言葉どおり、Dさんのコンサルタントとしての基礎は、多岐にわたる業務とともに築かれていきました。とくにコスト削減やITプロジェクトに関わる中で、「売上や利益をどう最大化するか」というテーマに強く惹かれるようになります。



より“攻め”の領域に踏み込みたいという思いが芽生えて、マーケティング系の部門に自ら手を挙げて異動しました


当時は社内でも異動の仕組みが変わるタイミングで、「プールに残っていたことで逆にチャンスが回ってきた」とも語ります。ここから、Dさんの専門性は大きく舵を切っていきます。





専門性の掛け算で切り拓くマーケティングの道


マーケティング系の部門に移ってからのDさんは、デジタルマーケティング戦略からウェブサイト構築、調査設計・分析まで、さまざまな案件を担当していきました。なかでも印象的だったプロジェクトとして、次のような案件を挙げます。



ある大手メーカーの案件で、それまでの“プロダクトアウト”から“マーケットイン”へ、マーケティン戦略を方向転換するプロジェクトがありました。いかに顧客一人ひとりのLTV(ライフタイムバリュー)を高めるか、という視点で、KPIの設計なども検討しました


単なる業務支援ではなく、企業のマーケティングの本質的な変化に関わるようなテーマに触れたことで、より一層「ビジネスに貢献するマーケターになりたい」という思いが強くなっていきます。


とはいえ、全てが順風満帆だったわけではありません。やがて、自身の関心とプロジェクトの内容の間にズレを感じるようになっていきました。



最後の方に携わったのは、マーケティングソリューションの導入案件でした。グローバル規模の案件でビジネス的には重要でしたが、個人的にはあまり関心が持てない領域でした。正直、これ以上DTCにとどまるとキャリアが停滞してしまうのではないかと思ったんですよね


そんな葛藤が、転職を本気で考えるきっかけとなっていきました。





やりがいの変化と転職の決断――心を動かしたのは“実感”だった


マーケティングソリューション等のシステム系案件を通じ、自分の関心とのギャップを強く感じたDさん。コンサルタントとしての仕事が嫌になったわけではありませんが、「もっと自分が良いと思えるプロダクトやサービスを、事業側から伸ばしたい」という気持ちは日増しに高まっていきました。



実は、デロイトに4〜5年いたあたりから“いつか転職しよう”とは思っていました。当時は明確にやりたいビジネスがあったわけじゃないけど、就活の時から『このプロダクト、世の中にもっと広がればいいのに』みたいなものに貢献したい気持ちはずっとあったんです


そんなDさんが転職を現実のものとして考え始めたのは、マーケティングソリューション導入案件の終盤でした。



この案件、長期化しそうだったんですよ。モチベーションが上がらないままプロジェクトに従事してもファームやクライアントに対して不誠実だと思ったし、ここに時間を使っても将来につながる実感がなかった


決断には迷いがなかったのでしょうか?その問いには「全然なかったですね」と笑って答えます。



逆に、なんで周りはそんなに怖がってるんだろうって思ってました。たぶん私、転職したことがなかったから楽観的だったんです。自信があったというより、“なんとかなるっしょ”って感じで(笑)


年収が大きく下がることも覚悟していました。デロイトでは「あと5ヶ月いればマネージャーに昇進するタイミング」で、年収はすでに1,000万円を超えていたといいます。そんな中、Dさんが設定した転職後の「ボトムライン」は700万円



この金額ならギリ許容できるかなと。さすがにもう少し下がると生活に支障が出るので、そこは冷静に決めてました


加えて、「完全リモートが理想ではあったけれど、多少出社があるならそれも妥協できる」といった柔軟なスタンスで、転職活動に臨んだそうです。


▼DTC(デロイトトーマツコンサルティング)からの転職体験談





フードテック企業での挑戦――経営戦略から現場までの全方位戦


現在、Dさんが勤務しているのは、フードテック系のベンチャー企業。入社の決め手は、パーソナルな動機にありました。



私の身近な経験から、まだまだ日本には食品にまつわる社会課題が存在すると感じていました。そうした課題にアプローチする会社だったので、その理念や描くビジョンに、強く共感しました


さらに、「ベジタリアンやビーガンの外国人観光客が日本に増えていることにも課題を感じていた」と語ります。



最近、そういう人たちが日本に来ても食べられるものが限られていて、困っているんですよね。そうした社会課題を解決するという点でも、この会社の製品には価値があると思いました


現在は、経営戦略部門に在籍しつつ、ECマーケティング部門にも兼務。アマゾンや楽天、自社サイトの運用を行いながら、生成AIの活用やPOSデータ分析、販促キャンペーンの検討、メールやLINEの顧客施策設計など、マーケティングの実務に広く携わっています。



最近では、スーパーやドラッグストアへの商品展開に向けた出店交渉や、新規取引先開拓のためのデータ分析もやっています。さらに、資金調達に関わるストーリー作りのサポートまで。もう本当に、毎日やることが変わる感じです。


他方、やりがいはあるものの、入社後に感じた“ギャップ”もあったそうです。



当初は、私が得意とするデータ分析でバリューが発揮できないか、と思っていました。ですが、入社してみると、そもそも活用できるデータがなかった。自分のスキルがある程度基盤が構築された中でしか発揮できないと気づかされたのは、明確なギャップでしたね


とはいえ、「何でもやる」ベンチャーでの働き方は、コンサル時代に多様な業務を経験していたDさんにとっては苦ではありませんでした。むしろ、「自分の力でどこまで事業を伸ばせるか」という挑戦の場として、前向きに捉えている様子が印象的です。





コンサル出身者の強みと“思わぬギャップ”


転職してから約1年の間、Dさんはコンサル経験が「想像以上に評価された」と語ります。



Excel操作やロジカルなプレゼンの仕方、ピボットでのデータ処理スピードなど、正直“当たり前”にやってきたことがすごく評価されるんですよ。“すごいですね”って言われて、むしろ驚きました


ベンチャー企業では、社内のスキル水準にバラつきがある場合も少なくありません。特に、資料作成やデータ整備の部分では、コンサル出身者が重宝されやすいと言えます。



PowerPointでの資料構成や数字の裏付け、分析観点の整理など、コンサルで培ったベーシックスキルはやはり強みになりますね


一方で、生成AIの進化には危機感も抱いているといいます。



最近の生成AIって、資料作成とかリサーチの質がめちゃくちゃ上がってきてるんですよ。ClaudeやGeminiなんかの精度もすごくて。だから正直、1〜2年目のコンサル業務って、もうAIでかなり代替できちゃうんじゃないか、とも感じています


では、生成AIでは代替できない“人の価値”とは何なのか。Dさんは「場での議論」や「空気を読む力」といった、場面対応力の重要性を強調します。



顧客インタビューで得たお客様の言葉から何を読み解くか。AIが書き起こしはしてくれても、そこに込められたニュアンスをどう理解するかは、人間の洞察が必要です。議事録はAIでもいいけど、その後の“壁打ち”はやっぱり人なんですよね


また、コンサル時代に鍛えられた「プレッシャー耐性」や「人間関係の適応力」も、ベンチャーで働くうえで大きな武器になっているといいます。



CxOレイヤーに対するクライアントワークの苛烈なプレッシャーを経験しているので、社内向けの資料作成や意思決定支援は、適度なプレッシャーとして受け入れられています。突然違うチームと働くことにも慣れているので、カルチャー適応のスピードも早いと思います


そうしたコンサルのスキルは、ベンチャーのフェーズによって“刺さるポイント”が違うとも語ります。



アーリーフェーズの会社では、ゼネラリスト的に動ける人のほうが向いている気がします。一方、シリーズB以降や上場直前の企業なら、ある程度専門性が求められる場面も増えてくる。自分がどの段階の企業に行くのかを見極めることは重要だと思いますね



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未来への展望と、ポストコンサル転職者へのアドバイス


今後、Dさんが目指しているのは、CMOとしてのキャリアです。



実はマーケ領域に進んでから、“CMOを目指すべきだ”と思い始めました。コンサル→ベンチャーというキャリアって、市場価値を高めようとすると自然とCXOを意識するようになるじゃないですか。だったら、自分が売上や利益を最大化できる人材になりたい、となるとCMOかなと


実際のところ、スタートアップにおいてCMO的な役割を担うには、単なるマーケターの枠を超え、事業戦略や経営にも深く関わる必要があります。Dさんも、マーケティングだけでなく、経営戦略や資金調達支援といった業務を担いながら、着実にその道を歩んでいます。


最後に、ポストコンサルのキャリアを考えている人に向けて、こんなアドバイスをくれました。



私は転職にすごく満足していますし、CMOとしてプレゼンスを高めていければ、役員として社会に価値を出すこともできると思っています。だけど、今の会社の売上がめちゃくちゃあるわけでもないし、IPOもどうなるか分からない。年収も以前よりは大きく下がってます


それでも、転職には確かな意義があったとDさんは言い切ります。



コンサルだと、どうしても事業の“当事者”にはなりきれない部分があります。今の会社では、どんなマーケ施策を打てば売上が変わるのか、自分の手応えとして感じられる。その感覚は本当に新鮮でした


ただし、ベンチャー転職が“全員に開かれた道”ではないことも冷静に分析しています。



正直、ひとつのベンチャーにコンサル出身者が何人も必要か?っていうと、そうでもない。今後は枠も限られてくる気がします。だからこそ、意思と熱量を持って、自ら意思決定をして動ける人が向いてると思います



迷いながらも挑戦を重ねる。その姿は、今まさにキャリアの分岐点に立つ多くのコンサルタントにとって、大きな示唆になるはずです。Dさんの今後の成功を、ワンキャリアプラス一同、心より応援しています。






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