これは、新時代への突入を告げる号砲なのか、それとも単なる偶然の一致なのかー。
2025年5月、日産自動車(以下、日産)とパナソニック ホールディングス(HD)が相次いでリストラを発表した。人員規模は日産が2万人、パナソニックHDが1万人。多くの人のキャリアに影響を与える一大事だ。
「終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」とトヨタ自動車の豊田章男社長(当時)が発言してから6年。「新卒で大企業に入り、定年まで働く」というキャリアは珍しいものになっていくかもしれない。
では、これからの時代、どのようにキャリアを描けばいいのか。本記事では、渦中のビジネスパーソンの声を取り上げつつ、日系大手からのキャリアパスを考察したい。
2万人の大リストラも「避けては通れない」。日産トップが出した社内メッセージ
「経営再建計画について」
5月13日、日産の社内イントラネットにこのようなタイトルの投稿が上がった。この日は日産の決算発表日。最終6708億円の巨額赤字を出し、グループ全体の従業員の15%にあたる2万人の人員削減を行うことを発表した。
動画に登場したのは、イヴァン・エスピノーサ社長。経営課題とともに今回のリストラについて言及した。「従業員を大切にしているが、人員削減は避けては通れない」「これから適切な協議と、公正な対応をしていく」。日産の社員によると、このような趣旨だったという。
数年前に転職してきた本社勤務の男性(40代)は「転職時はまだ会社の調子も良く、EV市場もこれからという雰囲気で、将来性を感じていた」と話す。
業績悪化、ホンダとの経営統合の破談、そして今回のリストラ。新天地でのキャリアには、思わぬ逆風が吹いていた。「詳細も分からない状態で心配しても仕方がない」と目の前の仕事に向き合う。
パナソニックは黒字でも1万人削減。変わる日系大手と、自ら動くビジネスパーソンたち
日産だけではない。この数年、日系大手のリストラが相次いでいる。
このうち、パナソニックHDは5月9日、グループ全体で1万人の人員削減を行う方針を発表。2024年度の営業利益は4,265億円と黒字にもかかわらず、収益構造を改善するため大リストラに踏み切った。
東京商工リサーチの調査では、2024年に早期・希望退職募集が判明した上場企業57社のうち、約6割の34社は直近の通期決算の最終利益が黒字だった。
調査では「経営環境が不透明さを増し、将来を見据えた構造改革に着手する企業が増えており、2025年も上場企業の早期・希望退職の募集が加速する可能性が高い」との見通しが示されている。終身雇用を前提とした日系大手に変化の兆しが生まれている。
一方で、既に日系大手を離れていった人たちもいる。ONE CAREER PLUSに投稿されたパナソニック グループからの転職体験談を見ると、「自分のキャリアを考えると、会社が変わるのを待つのは無理だ」という切実な本音が見え隠れする。
事業拡大が見込めない中、若手に裁量のある業務が生まれず、自ら提案したものもポジティブに捉えられるわけでもない状態だった。事業だけでなく従業員自体のエンゲージメントも低下している中で、製品を届けるのではなく、届ける「組織」を変えたいと思い人事に異動を願い出たが、最低でも5年、長ければ10年かかると言われ、さすがにそこまで待てないと思い、転職を決意した(20代男性)
家電の海外マーケティングを担当していたが、韓国企業になかなか勝てずに苦しかった。特に海外赴任時は、現地での戦術の最適化を図ってはいたものの、グローバル全体での企業戦略がより良いものでないと、挽回できないと感じていた。自分自身が企業の戦略を作りたい、作れるような人材になりたいという思いが強くなり、転職した(30代男性)
日系大手で長く働きキャリアアップを図る。そのようなキャリア戦略は、企業・個人の両側面で綻び始めている。
日系大手からの転職は4つのパターンに分けられる
では、日系大手からの転職先としては、どのような選択肢があるのだろうか? 大規模リストラを発表したばかりの日産とパナソニックの転職事例から考察すると、大きく4つのパターンが見えてきた。
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