コンサルキャリアで最も特筆すべきことは、「ネクストキャリアを見越した入社」の方が多いことでしょう。
そして、コンサルに入社した方の多くが直面するのが、以下のような問いです。
・いつファームを去るべきか
・コンサルを経由したからこそ行けるネクストキャリアはどこか
・年収の増減をどう捉えるか
本シリーズでは、実際にコンサルを卒業してネクストキャリアを歩まれる方々にインタビューをし、ポストコンサルキャリアの実録を集めていきます。
今回の実録:アクセンチュア・ベイカレントからブロックチェーン起業家へ―世界に通用する産業を日本で作る
第11回の実録は、コンサルティングファームを経て、ブロックチェーン技術×コンテンツのSingulaNet Ltd.を経営する町浩二さんに話を伺います。
アクセンチュアで金融業界のクライアント向けたIT開発を10年務めた後、ベイカレントコンサルティングでセキュリティ構築やイノベーション推進のプロジェクトを経て、起業というキャリアに至った経緯について語っていただいきます。
日本の競争力低下を目の当たりに、危機感を覚えた
このままでは、日本の技術力は確実に衰退する
アクセンチュアで10年以上、金融業界のシステム開発に携わる中で、町さんはある違和感を抱き始めました。
2000年代、アクセンチュアでは中国を中心にオフショア開発の推進が進んでおり、日本の技術力を海外へ移管する流れが加速していました。コスト削減の名のもとに、国内は管理職や開発経験の少ない人材が増え、その結果、国内の開発力は徐々に失われていく。
短期的には利益が出るかもしれない。でも、20年後に日本の競争力はどうなっているのか?
アクセンチュアの日本国内の経営陣に対し、日本のエンジニアの単価を上げ、業務知識と設計力を強化する直談判を行い、一旦は挑戦が許されました。しかし、その動きは開始数か月でグローバル戦略の前に否認。逆に、「オフショア比率を75%まで引き上げろ」と言われ、国内の技術者育成の道は断たれてしまいます。
これは、80年代の製造業の衰退とまったく同じ流れだ
日本が過去に経験した「製造業の海外移転」が、今度はIT分野で繰り返されようとしている。その構造的な問題に気づいた町さんは、「ここにいても、日本の未来は変えられない」と考えるようになります。
グローバル企業だから最終的な決定権は日本ではない。もっと意思決定者=経営者と近い立場で仕事をしたい...
日本の行く末に危機感を感じた町さんは、もっと経営者に影響力を行使できる立場で仕事をする必要があると考え、日系ファームであるベイカレントへの転職を決めました。
▼総合・ITコンサルから総合・ITコンサルへの転職体験談▼
経営者と働くことでわかった、意思決定する面白味
ベイカレントに移った町さんがまず驚いたのは、経営者と直接対話する機会の多さでした。
コンサルとして戦略を考えるだけでなく、「この施策は実行可能か?」「現場に適用するにはどうするか?」と、事業のリアルに向き合う場が増えた、と言います。
アクセンチュア時代は、クライアントの意思決定層と距離がありました。
しかし、ベイカレントでは、事業責任者や社長と議論しながら戦略を作ることができた。
特にイノベーション推進PJは、町さんが最初「たった一人でクライアントに放り込まれた」という状況から始まり、最終的には3〜4人のチームを組成するまでに至りました。
経営者に近いからこそ、柔軟に施策を実行できることが増える。コンサルの仕事に血が通ったように感じました
こうしたチャレンジングな経験を積むにつれ、クライアントが求めるのは、コンサルのスキルだけではなく、「その場で意思決定し、動ける人間」だったと気づかされます。
その環境で仕事をすることで、町さんは意思決定に近い場所で働く面白味を感じていきました。
「先導者として活躍できるかもしれない」ブロックチェーン技術との出会い
ベイカレント在籍時、町さんは本業のコンサル業務に加えて、副業としてブロックチェーン技術の研究を始めていました。
当時、2016~2017年頃のブロックチェーンはまだビジネスとして確立されておらず、主に趣味の延長として取り組まれていた状況でした。
しかし、技術者として趣味的に学び続けていると、次第に企業から「技術的にわからないので教えてほしい」と依頼を受けるように。
コンサルとしての知見を活かしながら、リサーチや技術解説を提供する仕事が副業になりました。
そもそもこの技術は次世代のインフラになる可能性があると思いました。また、気づけば日本でもかなりブロックチェーン技術に詳しい部類になり、これなら『先導者』として活躍できるかもしれない、と可能性を感じました。
さらに、町さんは自身の暗号資産を売却して約5,000万円の資金を確保し、本格的にブロックチェーン関連の事業立ち上げを決意します。
VC(ベンチャーキャピタル)からの資金提供も受け、研究開発を進めた町さん。
結果、副業としての仕事は単なる技術支援から、事業化を目指す段階へと進化していきました。
しかし、この動きが本業との両立を難しくし、最終的にはベイカレント側から「会社を買い取るか、退職するか」の選択を迫られることになります。
「これを機に独立しなかったら、この先、一生ワクワクすることはない」
当時、ベイカレントは給与面でも恵まれており、副業も含めて年収2,300万円ほどに達し、経済的な安定は十分にありました。
しかし、「会社の買取か、退職か」を迫られた以上、どちらかを選ぶしかありません。
すでに外部のパートナーとチームを組んでおり、ベイカレントの枠内に会社を収める選択肢はありませんでした。
そして、町さんは独立に際して、こう考えました。
これを機に独立しなかったら、この先、一生ワクワクすることはない。挑戦しないことが最大のリスクだ
年齢が上がればそれだけリスクは取れなくなる。会社経営で失敗しても、まだやり直せる年齢だ。
そして、仮に収入が下がるとしても、自分が本当にやりたいことに挑戦する価値はあるはずだ。
そして、独立を決意します。
▼ベイカレントからの転職体験談▼
独立後の苦悩
技術はできても、ビジネスにはならなかった。
最初の事業はブロックチェーン技術を活用した研究開発、次の事業は地下アイドル向けの投げ銭・コンテンツ販売システムでした。
しかし、理想と現実のギャップは大きく、どちらも思うように収益化できず。
さらに、仮想通貨取引所の不祥事を発端として、暗号資産市場の規制強化や、投資家の撤退が相次ぎ、資金繰りが厳しくなっていきます。
そして、ミラノでの詐欺事件が決定打に。
投資家と見込んでいた相手に2,000万円分の仮想通貨を持ち逃げされ、全財産を失いました。
資金が尽きた時点で、事業は終わる。どれだけ技術があっても。
結果、どちらの事業も畳む決断を下します。
町さんはゼロからの再出発を余儀なくされました。
コンサル時代は、顧客が変わってもプロジェクトは続き、収入は保証される。
しかも大企業のバックアップがあり、キャリア形成も自分の意図する方向性で行うことが容易だったと言います。
しかし、独立後は、大型案件の中止により、一瞬で収入ゼロに。
事業が成立するかどうかが、特定の投資家やクライアントの意向に大きく左右され、自らの意志で切り開くことは非常に困難になりました。
また、1〜2年単位で計画が変わるため、長期の事業戦略を立てづらい。
こうしたキャリア環境の変化は、独立して感じたコンサル時代からの変化でした。
「今の自分はヒット作を生み出すことに全力を注ぎたい」
ヒットを生み出せなかったら、事業家として終わりだ。
現在、町さんはコンテンツ配信・保護技術の開発を手掛けています。
ブロックチェーン技術を活用し、デジタルコンテンツの流通を最適化する仕組みを構築中です。
世界に通用するサービスを作る。日本が誇れる産業を作る。
それが、町さんが目指す次のゴールです。
アクセンチュア時代に日本の将来に対する強い危機感を覚えました。
だから、日本に成長産業を生み出したい。
事業家なので、これまでのスキルを活かしキャッシュを確保しつつ、日本が世界的に強いコンテンツ領域に、自分の得意なtech領域をかけ合わせる。
この領域で、自分の代表作を作らなければいけない、という想いでまずは頑張っています
ポストコンサルへの3つのアドバイス
12年に渡るコンサルティングファームでの経験を経て、独立した町さん。
ポストコンサルのキャリアに悩んだら、思い出してほしい3つのアドバイスをいただきました。
「コンサルスキルは『保険』になる」
コンサルで一流の仕事をすれば、転職・独立後も高い収入を維持しやすいことは事実です。
副業として他のベンチャーに関わることで、年収を大幅に上げるチャンスもある。
だからまずは、今の仕事で一流を目指していただければと思います。
「自分が作りたい世界」への意識を持つ
コンサルは企業の「本質的な成長に貢献できる」可能性がある一方で、「短期的なドーピング」となる場合もあります。
私自身のキャリア転機もその問題意識に起因していました。
もし、今の仕事に悩んだなら、「本当に長期的に社会に価値のある仕事か」を自問自答していただきたいですね。
独立のリスクを理解し、ワクワクする道を選ぶ
私の場合は、独立によって収入が半減しました。
そのリスクを許容できるかを本気で考えてほしい。
でも、コンサルで閉塞感を感じている方にとって、独立はその閉塞感を打ち破り、魅力的な選択肢であることも事実。
心からワクワクする道を見つけたら、ぜひチャレンジしてみてください。
インタビューの終わりに「最終的には、自分の子供たちの世代が『日本に生まれてラッキー』と思えるような、そんな社会を作ることに貢献したいんです」と笑顔で話してくれた町さん。
今後の益々の活躍をONE CAREER PLUS一同、応援しています。
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