コンサルキャリアで最も特筆すべきことは、「ネクストキャリアを見越した入社」の方が多いことでしょう。
そして、コンサルに入社した方の多くが直面するのが、以下のような問いです。
・いつファームを去るべきか
・コンサルを経由したからこそ行けるネクストキャリアはどこか
・年収の増減をどう捉えるか
本シリーズでは、実際にコンサルを卒業してネクストキャリアを歩まれる方々にインタビューをし、ポストコンサルキャリアの実録を集めていきます。
実録:監査法人から独立系コンサルへ――社会課題に挑むAさんの転機
「まさか自分がPwCを退職するとは思ってなかったんですよね」
そう語るのは、現在、独立系コンサルティングファームで部門長を務めるAさん。15年以上にわたり大手コンサルティングファームで活躍し、東日本大震災の復興支援や地方創生など、社会課題に深く関わってきました。
長年勤めたPwC Japan有限責任監査法人を退職し、より自由な立場でのキャリアへと舵を切ったAさん。キャリアの転機に何があったのか。その背景をたどると、「自分の手で社会を変えたい」という強い想いと、「現実との向き合い方」が交差していました。
大手コンサルファーム、PwC、そして現在──約15年のコンサルキャリアの歩み
新卒で大手コンサルファームに入社し、PwCを経て、今は独立系ファーム。──だいたい15年近く、ずっとコンサルの仕事をしてきました。
そう振り返るAさんのキャリアは、コンサルティングという仕事の広がりと深さを体現しています。最初のキャリアの舞台は、大手コンサルファームでした。
大手コンサルファームでは会計・財務領域の業務改革がメインでした。
具体的には、PMOとして全社プロジェクトをハンドリングしたり、基幹システムの導入を支援したり。物流会社、銀行、商社、食品メーカー、ハイテク企業など、多様な業界のクライアントと向き合ってきました。
大手コンサルファームでの経験は、会計・財務領域を主軸とし、特定業界に偏ることなく、幅広い業種への理解と、プロジェクトマネジメントスキルを養う土壌となりました。
一方で「より専門性を深めたい」という思いが芽生え、転職を決意。次の舞台となったのがPwCです。
大手コンサルファームで、会計・財務を専門にしていたこともあって、“監査”という軸でキャリアの幅を広げたいと思ったんです。監査法人の中でも、PwC Japan有限責任監査法人が一番面白そうだったので、そちらに入りました。
入社当初は監査業務への関与も想定していたが、関与のタイミングが合わず、自然とアドバイザリー(コンサルティング)業務にシフトします。
結果的に、PwCでは約9年間、監査法人内のアドバイザリーサービスでキャリアを築くこととなりました。
最初は、監査法人らしい内部統制やITガバナンスなどの業務も実施していましたが、ほとんどはパブリックセクターの案件をおこなっていました。
官公庁や自治体、地方の中小企業支援、スタートアップ支援、社会起業家の誘致など。──特に福島など震災被災地の復興支援に深く関わっていました。
福島では、起業家や移住者を呼び込むための「人の流れを生む仕組みづくり」を国とともに推進。
地方創生やエコシステム構築といった、より社会的意義の大きなプロジェクトにも数多く携わりました。
ただ支援するだけじゃなくて、自分自身が“当事者”として関わりたい。そんな思いが強くなっていったのも、この頃からですね。
さらにPwCでは、新卒・中途採用の業務にも深く関与。学生や候補者と向き合い、意義ある仕事を通じて人を惹きつける発信にも取り組んでいました。
PwCを離れた理由──「自由」と「制約」のはざまで
居心地は、正直めちゃくちゃ良かったんです。
Aさんは、PwC Japan有限責任監査法人での9年間をこう振り返ります。
チームの仲間、顧客との信頼関係、そして社会的意義のあるパブリック案件の数々。
まさにやりがいに満ちた日々でした。
その一方で、「自分が本当に面白いと思う話に、飛び込めないもどかしさ」が、じわじわとAさんの中に蓄積していったのも事実です。
こういった案件を実施していると多くの魅力的な経営層や起業家たちと出会います。
その中で、『一緒にやらない?』と声をかけていただくことが何度もあったんです。
でも、PwCの立場では関与に制約がある。他社の経営に深く関与することは難しいですし、例えば、社内の兼業・副業にも一定の規制がある。
熱量のあるプロジェクトを目の前にしても、『当事者として関われない』というもどかしさがありました。
やがて、それはAさんにとって“自由を求める感情”へと変わっていきます。
ちょうどその頃、かつて一緒に仕事をした知人から「一緒にやらないか」と声がかかりました。
最初はまったく乗り気じゃなかったんです。
PwCを辞める気なんて、1ミリもなかった。
でも…この話を受けないと、自分が本当にやりたいことができない。ずっと制約を抱えたままなんじゃないかって。
約半年間、社内の関係者と何度も対話を重ね、最終的に円満な形での退職を選んだAさん。
社内での昇進を目指すという選択肢もありました。
ただ、これまで描いてきた未来とは異なる未来を描きたくなりました。
自分にとって“やりたいことに本気で関わる自由”は、収入以上に価値があると感じたんです。
地方創生との出会い──被災地・福島で見つけた原点
Aさんの“当事者としての関わりたい”という思いには、被災地・福島での経験が大きく影響しています。
福島は他の被災地と違って、原発事故という“人災”の色が濃い地域です。
だからこそ、復興には長い時間がかかるし、外部の人材を呼び込んで起業してもらうようなエコシステムの構築が必要でした。
福島でのプロジェクトでは、起業家の支援や移住促進、人材マッチングなど、さまざまな取り組みを行ってきました。
その過程で、多くの志ある人々と出会い、「この人たちと本気で事業をやってみたい」と思うようになります。
彼らから『一緒にやりましょう』と言ってもらえても、自分がPwCにいるとどうしても第三者的な関与になってしまうんですよね。
「個」として生きるための選択──独立系ファームでの挑戦
いざ入ってみたら、チームが自身を含めて4人しかいなかったんですよ(笑)。まさにゼロからの立ち上げでした。
Aさんが今所属している独立系ファームは、ある企業が立ち上げた社内ベンチャー的なコンサルティングファームです。
業務改革やDX推進を担う部門で、Aさんはコンサルティング部門の部長としてチームの拡大に取り組んでいます。
いま採用も自分でやっています。
もともとPwC時代に新卒・中途の採用を担当していた経験があったので、そのノウハウを全部活かしています。
知り合いの人材会社をつなげますし、エージェントとの契約交渉もするし、もう“採用部”みたいな感じですね。
驚くほどフラットなその姿勢からは、大企業でのマネジメントとは違う、手触り感のある「組織作り」への情熱がにじみます。
大きなファームには、優秀な人材も、案件の仕組みも、全部そろっている。でもここでは、全部を自分たちで作らないといけない。だからこそ、誰をチームに迎えるかがすごく大事なんです。
自ら採用し、自ら伴走し、そしてチームの成長を肌で感じる──そんな「0→1」的な仕事に、Aさんは今、確かな手応えを感じています。
自分の会社で目指す未来──“関係性”をビジネスにつなげる
正直、まだ何も成果は出てないです。でも、少しずつ“関係性”が“事業の種”に変わり始めている実感はあります。
Aさんは現在、独立系ファームに籍を置きながら、自身の会社も立ち上げようとしており、パラレルに活動を進めています。
目指すのは、これまでコンサルとして築いてきた「人とのつながり」をビジネスにつなげることです。
各地の中小企業の社長さんや起業家との関係が今の自分の事業のベースになっています。
例えば、とある地方大学のMBAでは客員研究員として活動もしています。ここからもいろんな可能性が生まれてくるんです。
さらにAさんは、将来的にはこうしたつながりの持つアセット──全国にある工場や流通網、消費財の企画・製造能力など──を活かし、自社での地域との連携事業に発展させたいという構想も描いています。
例えば、ある工場が建設される地域で、その土地ならではの社会課題に自分の会社が取り組む。
そしてわたしとつながりのある企業と連携して事業化する。
そんなシナジーがきっとあると思ってるんです。
後輩コンサルへのメッセージ──「個の力」と「人との関係性」
最後に、Aさんにはこれまでの経験をもとに、ポストコンサルのキャリアに悩む方へ向けてアドバイスをいただいた。
どんなに大きな看板を背負っていても、最後に残るのは“自分”なんですよね。
15年以上のコンサル経験を経て独立に踏み出したAさんが、後輩たちに伝えたいのは、実にシンプルで本質的な2つのことでした。
それは「個の力をつけること」と「人との関係性を大切にすること」。
外に放り出されたとしても、“個”として生きていける力が必要。これは、私が常に意識していたことです。
コンサルティング業界は今もなお人気があり、多くの人材が集まる競争の激しいフィールドです。
だが、その一方で、コンサル業界自体の先行きが不透明になる兆しも見えはじめています。
外資系ファームといっても、いま結構厳しいじゃないですか。人員整理の話も聞くし、今後は事業が停滞する時代が来るかもしれない。
だからこそ、看板に頼らず、“個”として仕事を取れる力を持っておかないと、厳しいと思うんです。
Aさんが言う“個の力”とは、単なるスキルや知識だけではありません。
“やりたいことを、自分から掴みに行ける姿勢”──そのマインドセット自体が「個の力」であり、何よりも大切なのだといいます。
そしてもう一つ、同じくらい強調されていたのが「人との関係性」です。
よく後輩にも話してたんですけど、仕事を通じてできたネットワークって、最終的には組織じゃなくて“個人”に紐づくんですよ。
これは、Aさん自身が独立を決めたあとに改めて実感したことでもあります。
PwC辞めたあと、『一緒に仕事しようよ』って言ってくださる方が本当に多くて。
PwCを辞めても、関係性が残っている。
むしろ、そこから新しい仕事が始まったりする。
特に印象的だったのは、「100回打ち合わせするより、1回直接会ったほうがいい」と語っていた一言です。
オンラインでも話はできるけど、雑談とか、現地でのちょっとした会話って、すごく重要なんです。
そこで信頼関係ができるし、そこから先の話が始まる。
今の時代だからこそ、意図的に“会いに行く”っていう姿勢が大事だと思います。
“個”の力を鍛え、人とのつながりを大切にする。
──コンサルとしてのキャリアを自分らしく切り拓くために必要なものは、実はその二つに尽きるのかもしれません。
「自分の経験はイレギュラーなことが多く参考になるかわかりませんが大丈夫でしょうか...」と、インタビューの最初に心配そうに語ってくれたAさん。
お話を伺うと、目の前の仕事に実直に、懸命にあたってきたからこそ、今のキャリアを築いてきたという印象を受けました。
そんなA氏の挑戦をONE CAREER PLUS一同、応援しています。
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