コンサルキャリアで最も特筆すべきことは、「ネクストキャリアを見越した入社」の方が多いことでしょう。
そして、コンサルに入社した方の多くが直面するのが、以下のような問いです。
・いつファームを去るべきか
・コンサルを経由したからこそ行けるネクストキャリアはどこか
・年収の増減をどう捉えるか
本シリーズでは、実際にコンサルを卒業してネクストキャリアを歩まれる方々にインタビューをし、ポストコンサルキャリアの実録を集めていきます。
今回の実録:スカイライトからプライシングスタジオ→起業
今回お話を伺ったのは、株式会社ネクサフローにて創業メンバーとして活躍する有本雅俊さん。
九州大学を卒業後、新卒で総合コンサルティングファームのスカイライトコンサルティングに入社し、新規事業開発などのプロジェクトに3年半従事。
その後、当時10名未満だった黎明期のスタートアップ、プライシングスタジオ株式会社に入社。執行役員まで務めます。
2024年に友人たちと株式会社ネクサフローを創業し、プライシングや大企業の新規事業開発、中小企業の業務改革 / バックオフィス支援などの領域へのコンサルテーションサービスの提供、及びプロダクトを開発・提供しています。
ご自身もコンサルからスタートアップへの転職を実現し、かつコンサル人材を採用する立場もご経験された有本さんに、コンサルキャリアの捉え方や年収実態などを伺いました。
将来のスタートアップ転職を見据えたコンサル入社
就活当時から、スタートアップに興味があったという有本さん。
当時福岡ではスタートアップが盛り上がりを見せ始めた時期で、在学していた九州大学の土地柄、それを身近に感じていました。
「キャリアとして一番興味があったのはスタートアップでしたが、戦闘力ゼロの状態で飛び込んでも事業貢献が難しいと思っていました。」
新卒就活時は、商社や銀行、広告代理店など比較的オーソドックスな企業群を受けていきます。
有本さんが就職活動をされていた2017年当時は、九州ではコンサルティングファームに就職する人は周囲にほとんどいなかったと言いますが、縁あって出会ったスカイライトコンサルティングが自身の志向性にあっていました。
「大きなコンサルティングファームも受けていましたが、自分はコンサルよりは営業職や商社の方々に評価いただくことが多い就職活動だったので、スカイライトは比較的ウェットな雰囲気で自分に合うと思いました。
また何より、自分は社会に出てスタートアップでコミットしたい領域がきっとすぐ見つかるだろうとも思っていたので、やりたいことが見つかった時にすぐそこに取り組めるようなスピード感で基礎スキルを身につけられるかが、仕事選びの決め手でした」
1年かけて探した、裸一貫で飛び込む先
コロナが訪れたのは、有本さんが入社後3年目のタイミングでした。
スカイライトコンサルティングでは、プロジェクトが挙手性となっており、IT関連のプロジェクトや、事業開発 / 新規事業立ち上げなど様々なプロジェクトに自身が手を上げてアサインを勝ち取っていきます。
有本さんは自身の志向性通りに、大手企業内の新規事業開発などのテーマに従事することができました。
一方で、コロナでリモートワークが増え、自分自身を見つめなおす時間が増えたことで、転職を考え始めたと言います。
「コンサル自体は楽しかったのですが、経営の中まで入っていくチャンスが豊富にあるわけではないと感じていました。
スタートアップへのチャレンジは、就活当時と変わらず一番やりたいことでしたので、ファームにいるより外に出る方が近道だと思いました。
今振り返れば、ファーム内でスタートアップを立ち上げたり、そういったプロジェクトを取ってきたりと、コンサルにいてもできたことはあったと思いますが、当時は裸一貫、外でやってみたいと意気込む気持ちが強かったです」
転職を考え始めてから実際にファームを卒業するまでに、1年間考え抜きました。
黎明期のスタートアップに絞って次のキャリアを探していたため、そもそも求人が世に出ていない企業が多く、一般的なエージェントやスカウトサービスではなくリファラルで転職活動を進めていきました。
「これからすべてが形作られるスタートアップがいいなと思っていて、知り合いのVCや副業でスタートアップ支援をしている友人などを伝ってアクセスできた経営者と話をしていきました。
企業というものが形作られていく過程を味わうことが、自分の興味領域であるスタートアップそのもののエコシステムを最もよく理解できるのではないかと考えたんです。
あとは、レイターステージのスタートアップは後からでも転職できたり、コンサルファーム内で関わったりできると考えたのも、黎明期のスタートアップに飛び込みたかった理由の一つです。
会社が興り始めるタイミングは、ハードでカオスでリスクも高いので、若さを投資するならそういう環境かなと思っていました。」
プライシングスタジオ株式会社とも、知人を介して出会いました。
最終的に入社を決意した理由はプライシングという領域への興味と、ミッションへの共感です。
有本さんは「スタートアップは戦略や戦術はもちろん、事業の内容すら変わりうる」と考えています。
「ミッションを実現するための方法が、SaaSからコンサルになったり、そういうことって特に初期のフェーズでは往々にして起こりえますよね。
だからこそ、会社が今今抱えている戦略への納得性はあまり重要視しておらず、会社が向かおうとしている方向に共感ができるのか、を考え抜いた1年間でした。
ただ、やはり知り合い伝いでアクセスできたスタートアップは多くはなかったので、経営者のスタイルやスタートアップのお作法を知っておく意味でも、もっと多くの企業と出会えたら良かったとは思います」
▼コンサルからスタートアップへの転職実例▼
スタートアップで活躍するコンサルは「動きながら考える人」
プライシングスタジオに入社した直後は、10名未満のフェーズだったこともあり、事業成長のためのありとあらゆる役割に奔走します。
コンサルの経験が活きたと感じるのは、「お客様の価値に対して徹底的に向き合うマインドセット」と「課題解決とは何たるやという思考 / 動きのお作法」だと言います。
「コンサルは、一般的な大企業と比べてクライアントの成長に対してコミットしようという気持ちが強い人が昇進する傾向にあります。
どういう状況でもお客様に対してやりぬくという当たり前の基準が高く設定できていたことは、スタートアップでも役立ちました。
また、課題解決の思考法は癖づいていたので、会社がコンサルテーションサービスを提供していたことも相まって、経験を役立てられたと思います」
一方で、実際にスタートアップの経営者となり、人材を採用する立場になって思うことは、考えすぎる人はスタートアップに向かないということです。
「特に黎明期のスタートアップは、がちがちに資料を作りこんで提案するより資料なしでお客様とお話しして受注するほうがえらい、飲み会で受注できるならそれで全然いい、というような世界です。
『正論で言えばこうだが、それはいったんどうでもいいからとりあえず売上を上げるために動こう』という考えを呑み込めないと、アーリーフェーズのスタートアップで活躍するのは難しいと思います。
その意味で、動きながら考えられる人を求めているので、そこはきれいに思考し準備することが当たり前のコンサル出身者は苦労するかもしれません」
年収はV字回復型。年収だけを追うならコンサルに残るべし
有本さんがスカイライトコンサルティングを退社した社会人4年目時点の年収は、700万円前後でした。
そこからプライシングスタジオに転職した際には、550万円程度に年収を落として入社しています。
その後最終的には同社の執行役員に登用され、在籍した2年半の間にコンサル退社時の年収をゆうに超える年収帯となりました。
「私自身はスタートアップという領域や取り組むテーマが一番大事だったので、一定のラインを下回らない転職であれば、その分の投資リターンがキャリア上あると思える範囲内で年収ダウンを許容するという考え方でした。
結果的にはスタートアップに転職した後、コンサルを卒業する時以上の年収にはなりましたが、コンサルに残っていればその年収帯にもっと早く到達していただろうとは思います。
年収が最も重要な要素だという方は、当然ながらコンサルに残り続けるまたはコンサル間で転職を続ける方が賢明でしょう」
意思決定の先延ばしを認識し、出口戦略を描かねば機を逸する
スタートアップのキャリアを見据えてコンサルに入社したことは、結果的に良かったと振り返る有本さん。
ただ、ファームを出るタイミングは重要だと言います。
「事業会社でのキャリアを見据えたコンサル入社なのであれば、いつ出るかは重要だと思います。
大手企業で新規事業開発をやりたく、社内にそういったプロジェクトがあるなら、ファーム内でマネージャーまで行った方が良いと思いますし、大手であれば年収水準をある程度維持して転職できる事業会社もあると思います。
一方でアーリーフェーズのスタートアップで0→1をやりたいとなれば、若い時に出た方が良いでしょう。
当然ながら黎明期のスタートアップに1,000万以上の給与オファーを出せる企業はそう多くないため、報酬水準を前職とある程度合わせようと思うとストックオプション付与などが選択肢になります。
ただ、ストックオプションとなると株式希薄化の観点や資本政策との整合など全社最適を考えながらの採用になるので、かなり大がかりです。
また、コンサルが90%の確率で成功することを1カ月かけてやるやり方だとすると、スタートアップは1%の確率で成功することを1日でやるやり方をひたすら続けるような、根本的な違いを感じます。
プロダクトはまだないけどβ版でプレスリリースを打って帳尻を合わせにいったり、上流の戦略がないまま手を動かしたりするのは、5年や10年コンサルの頭を働かせてきた方からするとかなりのアンラーンですし、実際自分もここに苦労をしました。
給与水準が上がり切る前の若手で、コンサルでスキルを学んでいる人はどんな会社も求めていると思います」
もう一度新卒就活をするとしても、コンサルを選ぶという有本さん。
新卒でコンサルに入ることは、スキルが身につき選択肢が広がるという点でポジティブにとらえています。
一方で、将来の選択肢にかけてコンサルに入社することは、意思決定の先延ばしであることを自覚する必要があるとも考えています。
「将来やりたいことや事業ドメインへの覚悟がないから、意思決定を先延ばしにしてコンサルに入っているというのがリアリティだと思います。
それ自体は否定するものではないですが、意思決定を先延ばしにしているのであるということを自覚し、出口戦略を決めないといけないという焦燥感を持つ必要はあると思います。
そうでないと、出るタイミングを見誤ることで、自身が求めるキャリアを逃してしまうリスクもありますからね」
コンサルキャリアを活かすためには、結局のところ自分の意思決定が必要という有本さんの力強い言葉は、スタートアップというキャリアフィールドを貪欲に追い求める有本さんならではの強い説得力を感じます。
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