毎年、年収ランキングで上位に位置するキーエンスと三菱商事。キャリア入社の際に考えるべき要素はいろいろありますが、子育てがはじまり、貯蓄にまわすお金が増える20代後半から30代前半において、年収の高さが強い誘因力になることは間違いありません。また、新卒入社した企業で経験を積み、自分の市場価値をきちんと評価してくれる制度を兼ね備えているかも重要なポイントです。
ONE CAREER PLUSは独自調査をもとに、両社の年収や評価体系、中途採用のキャリアパスなどを明らかにします。
- 事業内容:ものづくりに欠かせないキーエンス、大手総合商社の三菱商事
- キーエンス:世界240拠点から35万社のものづくりに貢献
- 三菱商事:世界に拠点を持ち、各分野をリードする総合商社
- 両社を比較:規模の大きさは三菱商事
- 年収:20代半ばで年収1000万超えも実現可能
- キーエンス:賞与の割合が大きい年収体系
- 三菱商事:基本的には社会人年次で等級が決まるしくみ
- 両社を比較:1年目から年収1000万円超えも可能なキーエンス
- 評価制度:2軸で評価されるキーエンス、人間関係の構築も重要な三菱商事
- キーエンス:グレードによって評価回数が異なる
- 三菱商事:上司とのすり合わせが欠かせない
- 両社を比較:両社ともあまり賞与に影響しない
- 高く評価される人の特徴:積極性が欠かせないキーエンス、実行力が求められる三菱商事
- キーエンス:数字にこだわり、上司との関係性も大切にする
- 三菱商事:重要なのは構想力、実行力、倫理観
- 両社を比較:より具体的な能力やスキルが求められる三菱商事
- 中途採用のキャリアパス:前職はさまざまなキーエンス、同業他社が多い三菱商事
- キーエンス:営業職は新規事業領域ポジションが基本
- 三菱商事:同業他社やコンサルティングファーム出身者も
- ONE CAREER PLUSのご紹介
事業内容:ものづくりに欠かせないキーエンス、大手総合商社の三菱商事
高年収で注目されるキーエンスと三菱商事ですが、両社の事業内容について概観しておきましょう。
キーエンス:世界240拠点から35万社のものづくりに貢献
キーエンスは、ファクトリー・オートメーション(FA)の総合メーカーです。
1974年の会社設立以来、今まで世の中になかった商品の提供を通じて、お客様の課題を解決すること、新しい価値を生み出し続けることにこだわり続けてきました。
2024年3月時点で、連結従業員数は12,286名です。大阪に本社・研究所があり、海外においても1985年のアメリカ現地法人設立を皮切りに世界46ヵ国240拠点から35万社のものづくりに貢献しています。
現在ではFA用センサをはじめとする付加価値の高い商品が、自動車・半導体・電子・電気機器・通信・機械・化学・薬品・食品など幅広い業界で採用されています。
2023年度の連結決算によると、売上高は9,673億円、営業利益4,950億円、営業利益率51.2%とのことです。
【参考資料】
三菱商事:世界に拠点を持ち、各分野をリードする総合商社
【概要】
三菱商事株式会社は、1950年に設立された日本を代表する総合商社であり、世界中に拠点を持つグローバルリーディングカンパニーです。
エネルギー、金属、機械、化学品、生活産業、次世代インフラ、金融・物流など、多岐にわたる事業領域を展開し、各分野でのリーディングポジションを確立しています。
持続可能な社会の実現に向け、環境・社会・ガバナンス(ESG)を重視した経営を推進。現在のグループ会社数は1,318社にのぼり、約7万人の社員が連携し、価値創造を目指しています。
本社は東京都千代田区丸の内に位置し、世界90カ国以上にネットワークを持つ同社は、グローバル市場での競争力を強化し続けています。
三菱商事は、革新と成長を追求し、持続可能な未来へのリーダーシップを発揮しています。
【事業・業績】
「地球環境エネルギー」「マテリアルソリューション」「金属資源」「社会インフラ」「モビリティ」「食品産業」「S.L.C.」「電力ソリューション」の8つの営業グループが各種産業と幅広い接地面を持ちながら、多様なビジネスを展開し、2023年度の売上は約21.6兆円、売上総利益2.6兆円に達しました。
【参考資料】
両社を比較:規模の大きさは三菱商事
キーエンスと三菱商事はそもそも業界が異なるため、単純に両社を比較できませんが、共通点は両社とも世界中に拠点を持ち、さまざまな産業分野に幅広いインパクトを与えている点です。
両社が年収ランキングで上位に位置するのも、社会に対してそれだけ大きな価値を生み出しているからともいえるでしょう。
業務内容も多岐に渡り、キャリア入社を検討している場合、前職での経験や知見を活かした多様な活躍が可能です。
社会課題に対するソリューション提供とも密接な関係があるため、売上や成果を求めるだけでなく、社会的意義のある仕事をしたいと思っている方が転職先として検討する上でも申し分ない企業といえるでしょう。
年収:20代半ばで年収1000万超えも実現可能
年収は等級制度によって大きく異なります。ここでは、両社の等級制度を解き明かし、グレードごとに年収がどのようにアップしていくかを解説します。
キーエンス:賞与の割合が大きい年収体系
キーエンスには大きく分けて7段階のグレードが存在し、それぞれのグレードに応じた年収が設定されています。
年収はベース給与(5Bグレードまではベース給与に見込み残業代が含まれる)と賞与で構成されますが、賞与の割合が大きくなっています。さらに、役職がつくと役職手当が上乗せされ、年収がさらに増加します。
キャリア入社の場合、4Bや5Bグレードからスタートすることが一般的です。特に20代後半から30代の営業経験を持つ人材が多く入社しています。4Bから5Bへの昇格は最短で5年目ですが、ここからは評価次第でばらつきが大きくなります。年次を重ねれば5Bまでは上がれるものの、それ以降の昇格は実力主義の度合いが強くなります。
キーエンスは国内企業の中でも平均年収が高いことで知られており、キャリア入社した時点で年収1,000万に達するケースも多くあります。OCPに寄せられたキーエンスの年収に関するクチコミをみても待遇面の満足度がとても高いことが特徴です。

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キーエンス
三菱商事:基本的には社会人年次で等級が決まるしくみ
キャリア入社の場合、経験やスキルが重視される一方で、基本的には社会人年次により等級が決まります。
入社後の昇格スピードに新卒入社者との違いはありません。また、入社後は希望による異動は可能ですが、内示による異動は発生しません。
コーポレートに強みを持つ企業でもあることから、コーポレート部門の社員のほうがマネジメントポジションへの昇格スピードが早い傾向にあります。
営業部門の場合、出向先や駐在先を減らすこともあるためマネジメントポジションの数に上下がありますが、コーポレート組織の場合はマネジメントポジションの数が安定していることが要因です。
三菱商事の年収は「基本給与」と「賞与」の2つの要素で構成されています。
基本給与
各等級の中でもさらに細分化された等級があるため、同じ等級であっても基本給与が異なるケースが存在し、評価によっては昇格がなくても月額5,000円〜1万円程度の昇給が発生します。
賞与
年収に占める賞与の割合も等級により異なり、S2〜ASは30〜40%程度、M2以上は半分程度となります。
また、賞与は個人成績と全社業績連動の2つにより金額が決まりますが、おおよそ2:1の比重となっており、個人成績の影響が大きくなっています。等級ごとに個人成績加算金原資と呼ばれる個人成績が目標達成100%だった場合の金額が決まっており、相対評価により振り分けがされます。
両社を比較:1年目から年収1000万円超えも可能なキーエンス
キーエンスも三菱商事も日本屈指の平均年収を誇る企業であることから、キャリア入社の場合でも1年目から高収入を期待できます。
キーエンスの場合は入社してすぐに年収1,000万円超えも可能でしょう。また両社とも年収に占める賞与の割合が大きく、その額は等級が上がれば上がるほどアップします。
ただ、JTCである三菱商事が社会人年次によって等級が決まるのに対して、キーエンスはより実力主義の傾向が強いようです。
転職先として検討する場合は年収に加え、各社のカルチャーも念頭において決める必要がありそうです。
評価制度:2軸で評価されるキーエンス、人間関係の構築も重要な三菱商事
評価制度は実際に入社してみないとなかなか分かりません。入社前とのギャップができるだけ少ないよう、ここでは、OCPが両社の在籍者の生の声に基づいて両社の評価制度の概要を解き明かします。
キーエンス:グレードによって評価回数が異なる
【評価の流れ】
キーエンスの評価回数は社員のグレードによって異なります。2Bから4Bのグレードでは年に1回の評価が行われ、5B以上のグレードでは年に2回の評価が実施されます。評価項目は「成果評価」と「アクション評価」の大きく二つに分かれています。
成果評価では、同じ事業部、担当商品が同じ、同じ等級の中でのランキングが見られ、「売上」、「過去最高額からの伸び率」、「3年平均からの伸び」といった項目が評価されます。これらの評価項目は毎年ほぼ変わりません。
一方、アクション評価では、成果創出までのプロセスを定量的に設定します。プロセス指標は事業部(取り扱う商品)によって違いがありますが、例えば架電数、架電時間、訪問数、決裁者にといった項目が8つ程度設定されます。この評価項目は毎年変わります。
期末には、成果評価とアクション評価を振り返り、7段階(U、A、B、C、D、E、Z)で最終評点がつけられます。最高評価のUと最低評価のZはほとんどつかないため、実際の評価はAからEまでの範囲で行われます。評価は同じ事業部、担当製品、同じグレードの中で正規分布するように相対調整が行われます。
【賞与の決定ロジック】
キーエンスの賞与は大きく3つに分かれており、年4回支給されます。このうち、年2回は等級で固定額が支給され、残りの2回は等級の固定基準額に個人評価の評点による係数が掛け合わされて決定されます。個人評価による係数は1.2倍から0.8倍の範囲で、ほとんどの社員が1.1倍から0.9倍に収まるため、評価の評点によるボーナス金額の個人差は大きくありません。
さらに、毎月支給される業績連動賞与もあります。これは等級に応じて配分され、個人評価はほとんど関係ありません。
三菱商事:上司とのすり合わせが欠かせない
三菱商事の評価制度は、期初に個人目標を立て、上司との面談で目標をすり合わせることから始まります。等級に求められる行動要件を踏まえて目標を設定し、期末のタイミングで評価を実施。自己評価を行った上で1次評価者(本店の場合はチームリーダー)との面談を行い、1次評価者が2次評価者(本店の場合は部長)へ評価を伝え、最終的な評価が決定されます。最終評価は5段階(AAA、AA、A、B、C)で行われます。
成果水準を大きく上回った場合にはAAA、成果水準相応だとAA、成果水準に至らなかったが一定の貢献があった場合にはAの評価がつきます。
半期のタイミングで同僚・先輩からの360度フィードバックを受けますが、あくまで業務改善のためのものであり、賞与等には影響しません。
高い評価や昇格のためには、成果に加えて人間関係をうまく構築することが重要です。定性的な面をみられることもあるため、自分自身のブランディングを行うことも求められます。
両社を比較:両社ともあまり賞与に影響しない
両社とも賞与額が高いことは前述した通りですが、注目すべきは評価と賞与額が密接に連動していない点です。
賞与評価により、企業は従業員の成果達成を認めていることを示すことができ、モチベーション向上につながる一方で、評価が主観的になることで従業員の不満を生んだり、短期的な業績の追求や従業員間の競争を促したりするなどのデメリットも考えられます。
この点でキーエンスも三菱商事も賞与という形で従業員の働きを評価することをせず、より長期的な視点に立った戦略を立てているといえるのかもしれません。
賞与額に影響されず、自分の専門性を磨き、プロとして成長できる人材が求められています。
高く評価される人の特徴:積極性が欠かせないキーエンス、実行力が求められる三菱商事
以上、両社の等級や評価制度について解説しました。これらを前提にキーエンス、三菱商事ではそれぞれどんな人が評価されるのかを見てみましょう。
キーエンス:数字にこだわり、上司との関係性も大切にする
(1)数字にこだわることができる
キーエンスは目標達成度合いによって明確に評価される会社であり、数字にこだわることができる人が高い評価を得やすくなります。
営業として力を磨きたい人たちが集まる環境の中で、抜きん出るためには生産性を極める必要があります。
例えば、どんな顧客や状況であっても物おじせずに電話や訪問ができるなど、数字の手前にある行動量が重要です。
営業活動をしていると、お客さんが怖い、クレームがしんどいと感じる瞬間もありますが、そういったことを気にしすぎない良い意味での図太さがある方が活躍しやすいといえます。
(2)売上の出しやすいエリアを割り当てられている
目標達成の難易度は、割り当てられるエリアによっても変わってきます。エリアのアサインは上長の定性的な判断によるものであるため、上司に気に入られることも大事です。
売上の出しやすいエリアを割り当てられることで、目標達成がより容易になる可能性があります。
三菱商事:重要なのは構想力、実行力、倫理観
三菱商事では、構想力、実行力、倫理観の3つの観点で各等級ごとに求められる要件を定義しています。
キャリア入社の場合、S1、ASからの入社が多いと思われますが、すでに専門性を身につけていることが期待され、現場のプロとして実務経験を通して足腰を固めることが求められます。
自身の専門性を売上に繋げるためには周囲の協力を得ながら業務を遂行する実行力が必要になります。
例えば、ASにおいては具体的に以下のような能力やスキルが評価されます。
両社を比較:より具体的な能力やスキルが求められる三菱商事
キーエンスが「数字にこだわる人」を評価するといっても、高い属人的な能力や前職での豊富な経験で結果を出すことが求められているわけではありません。
キーエンスは営業利益率が高いことでも知られていますが、それを可能にしているのは属人性を排除した、再現性の高い仕組みともいわれています。
マネジメント職であれば、仕組みを定着させるためのメンバーの総意を得るための丁寧な説明やフォローアップをすること、メンバーの力を引き出してあげることが必要でしょう。
そして、この点は、三菱商事が重視している「構想力」や「実行力」ともかなり重なってくるのかもしれません。
中途採用のキャリアパス:前職はさまざまなキーエンス、同業他社が多い三菱商事
キーエンス:営業職は新規事業領域ポジションが基本
(1)営業職の入り口はデジタル系の部署がメイン
キーエンスといえば電子機器メーカーの印象が強いですが、新規事業としてソフトウェアサービスの提供も開始しており、営業職のキャリア採用はこの新規事業領域でのポジションが基本です。
社内では事業推進部データアナリティクス事業チームと呼ばれる同チームでは、機械学習を活用したサブスクリプションサービスを大手金融機関などエンタープライズ向けに提供しています。
この部門には、キャリア入社が半数で多様な業界から人材が集まっています。前職企業はソフトバンクや外資系企業などさまざまで、学歴や職歴に関係なく面接での頭のキレが評価される傾向にあります。
集まる社員のバックグラウンドや商材、顧客の性質が異なることから、データアナリティクス事業チームと、従来から存在するキーエンスの他営業部門は異なるカルチャーが形成されています。
中小企業の社長相手の営業ではなく、エンタープライズ向けの経営企画部門に対する営業が主となるため、戦略的な営業活動が求められます。
一方で、他の部門やチームにおいては、ビジネス職でのキャリア入社は少ない傾向にあります。
(2)社内のキャリアの流動性は高くない
また、入社後ですが、同社の事業部は、取り扱う商品ごとに組織が分かれていますが事業部を跨いだ異動は、新卒社員もキャリア入社者も基本的にありません。
例外的に、社内の女性比率が非常に低いため女性であれば、営業職から稀に本社配属になる可能性もありますが、レアケースです。
また、部長クラスのポジションはプロパー社員が多く占めているため、キャリア入社者がそのポジションに昇格するのは難しい傾向にあります。
キャリア入社の場合、6Mグレードが最高グレードとなることが多いです。
OCPに寄せられた転職体験談によると、平均年収が日本随一のキーエンスへの転職理由として「成果に見合った報酬や評価」を挙げる方が多くいらっしゃいました。また、営業職からの転職理由としては、無形商材からより社会課題に当事者意識を持ちやすい、手触り感のあるプロダクトを扱いたいという声も見受けられました。
▼リサーチ・データ分析への転職体験談▼
▼営業職への転職▼
三菱商事:同業他社やコンサルティングファーム出身者も
三菱商事は総合商社最大手であるため、キャリア入社を目指す多くの方が三菱商事で取り扱う幅広い事業やグローバルな環境に身を置き、裁量権の大きな業務に携わり、自らの市場価値を高めたいと思っています。
三菱商事へのキャリア入社で圧倒的に多いのは総合商社や海運業などの同領域からの転職です。
具体的には丸紅、豊田通商、商船三井などが挙げられます。
同業他社からの入社理由としては、商社業界での成長や裁量の大きな仕事を目指すなら、業界最大手である三菱商事を目指したいという声がありました。
また、三菱商事は連結子会社が多いため、出向という形で役員経験も積めるという理由も挙げられます。
▼同業他社からの転職体験談▼
また、コンサルティングファームからの転職も目立ちます。
例えば、デロイトやKPMGからのキャリア入社のケースが見受けられました。
コンサルティングファームは激務かつ成果主義であることが多いため、ワークライフバランスや働きやすい労働環境を求めて転職する方もおられます。
また、商社は扱う事業が多様かつ幅広いため、各国・各事業の法律に対応しつつ、事業を邪魔しない仕組み作りが求められますが、コンサルで積んだ経験が役立つとの声もありました。
▼コンサルからの転職体験談▼
ちなみに三菱商事からのキャリアパスでもコンサルティングファームは多く見受けられます。その理由としては、コンサルタントとして顧客が抱える課題に直接働きかけられるという点を挙げる声がありました。
▼三菱商事からコンサルへの転職体験談▼
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