これまで数多くの人が経験してきたにもかかわらず、何かとブラックボックスの多い「キャリア」。「キャリナレ!」では、キャリアをもっとオープンにするために、経験者にしか分からないリアルを解き明かし、キャリアナレッジとして集めていきます。
「インサイドセールス(以下、IS)編」の第7回のテーマは、「Vertical SaaSのISの魅力」。ゲストは、株式会社hacomonoの樋口堅太郎さんと大友拓海さん。hacomonoでISを経験されたお2人に、Vertical SaaSのISの醍醐味やISからのキャリアの広がりについて伺います。
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テレアポや飛び込み営業からインサイドセールスに魅力を感じて転職
石川:最初に、おふたりのこれまでのキャリアについて教えてください。
樋口:私は新卒で光通信系列の営業会社に入社し、一気通貫型の営業を行ってました。その後、セールステックのスタートアップに転職。大友さんと一緒にISやFS、マーケをやっていました。現在は2022年の5月に入社したhacomonoで、様々なISに関する取り組みを行っています。
大友:私は新卒で野村證券に入社し、飛び込み営業からキャリアをスタートしました。約1年半後に樋口さんと同じスタートアップの会社に転職し、セールステックの領域を担当していました。その後2022年5月にhacomonoにISとして入社し、マーケティングに従事しています。
石川:おふたりは前職時代からの仲なんですね。それぞれ、ISとの出会いや魅力に感じた点についても教えてください。
樋口:新卒入社した会社では営業職でしたが、毎日200~300件とひたすらテレアポをしながらリスト管理をする仕事でした。いわゆるTHE MODELのISを始めたのは前職からです。
顧客にやみくもにアタックしていた新卒時の営業活動とは異なり、体系立てたコンテンツを当てていったり、長期的に商談や受注につなげるためのディスカッションを行ったりなど、分析的アプローチができることはISの魅力です。
大友:私も新卒で入社した証券会社ではリテール営業として、飛び込みやテレアポを行っていました。営業活動に従事する中でマーケティングに興味を持ったのですが、営業職からのいきなりの職種チェンジは難しかったため、マーケティングに近い営業職としてISを選びました。
樋口さんが話したことに加えて、ISは顧客に寄り添った営業活動ができる点が魅力だと感じています。一般的な個人営業はどうしてもこちら主導の営業になりがちですが、ISでは、相手のタイミングに合わせてアプローチできます。

焼畑的アプローチは通用しない?リストが限られるからこその面白さ
石川:ここからはVertical SaaSのISの醍醐味を聞いていきます。お二人が現在所属するhacomonoはフィットネス業界に特化した店舗運営システムを提供していますが、この領域のISならではの特徴について教えてください。
樋口:アプローチできるお客さまの数が限られている点です。市場が大きく企業数が多ければ、焼畑的なアプローチでも受注が作れますが、フィットネス業界の国内の店舗数は約10,000と言われており、限られたリスト1件1件へのアプローチの質をいかに高めるかが重要になります。
石川:具体的にはどのような工夫や戦略で臨まれているのでしょうか?
樋口:特殊な必殺技はありませんが、基本に忠実にISとしてのセオリーを徹底し、実行することを大切にしています。戦略としては、リソースを投下すべきお客様を限られたリストの中から特定し、そのターゲットに絞ったアプローチを行うことを一番に置いています。
現在の市場シェアが30%程で、残り70%の未導入店舗の中には金額が折り合わないお客様もいるため、hacomonoが実際に価値を提供できるのは1,000店舗程であると考えています。同じお客様に複数回アプローチをすることもあるのでひとつひとつのアクションのクオリティには特にこだわっていますね。
石川:リストが限られていることに伴う面白さはどのように捉えていますか。

樋口:面白さで言うと、大きく3つあると感じています。1つ目は、セールスとしてのレベルの高さが求められる点です。業界に深く入り込んでいくためには、単にお客様の店舗業務を改善するだけでなく、事業成長に必要な提案やヒアリングを行う必要があります。
2つ目は、一般的なISのセオリーにはまらない戦術を実行するなど、常識の枠にとらわれないアプローチができる点です。
3つ目は、事業開発に近い動きができる点です。Vertical SaaSにおいては市場でのシェアを高め、単価を上げることで売り上げを伸ばすことと同時に、新しい市場を開拓も必要になりますが、この開拓もIS主導でやることができるのは面白い点です。
事業開発やコンサルに近い動きも。hacomonoインサイドセールスの特徴
石川:「顧客の事業成長に必要な提案が求められる」とのことでしたが、サービス導入とともに顧客の業務フロー自体が変わることや、サービス導入の先に店舗運営の効率化だけでなく事業数字の成長も見るとなると、コンサルのような動きが求められると感じました。
樋口:そうですね。お客様の事業成長のためにあるべき姿を問題提起できるのは面白い点です。例えば、現職ではフィットネスクラブのオーナー様に対して、近隣にある競合店舗を分析して「競合店にはない、この点を強みにしてはどうか」といった上流の提案をすることもあります。
お客様とは1~2か月に1回はコンタクトを取っており、その都度新しいコンテンツやイベントの案内などWOWな体験を届けられるよう意識しています。「hacomonoの人と話したら何かいいことを教えてくれるな」といった期待感を持っていただけるようになっているのを肌で感じます。
石川:新しい市場の開拓もISが行うとのことでしたが、具体的にはどのように開拓しているのでしょう。
樋口:hacomonoが提供できるサービスを「どのような人であれば買ってくれるのか」「どのようなお客様にどんな訴求をすれば、それを引き出せるか」といった点をISがアウトバンドでアプローチする中で、仮説検証を繰り返しています。
例えば、hacomono全社としては運動スクールという大きな業界を狙っていますし、さらには語学教室の領域にも注目しています。実際に今お問い合わせをいただくことが多く、競合もそれほど多くないので、そこにしっかり参入していければと思っています。将来的には学習塾の運営なども視野に入れています。
石川:他にもhacomonoならではのISの工夫や仕組みがあれば教えてください。
樋口:今後重要になってくるのが、オフラインの活用です。オフライン接点を持つことは、厳密に言えばISの仕事定義からは少しずれますが、私たちhacomonoのISは「有効商談を創出すること」にコミットしています。そのため、電話やメールといった空中戦だけではなく、オフラインという地上戦も使えるのであれば、積極的に挑戦しようと考えています。
例えば、オフィスでのワークショップや、地方のお客様へ直接ご挨拶に行くなど、一般的なISとは比べて泥臭い点もありますが、最終的には人対人なのでお客さまの気持ちを動かすために密なコミュニケーションも大事にしていきます。
マーケとの密な連携により、顧客へのコミュニケーションを徹底的に科学する
石川:hacomonoはISとマーケティングが同じ組織にあるようですが、両者の連携は他社と比べても密なのでしょうか?
樋口:かなり密にコミュニケーションをとっていると自負しています。例えば、チャネル別の商談獲得率の定量分析や、商談化した・しなかったリストの録音の定性分析といった分析はもちろんのこと、初期接点から商談化までの一連の流れの一貫性を意識したコミュニケーション整備を行っています。当社ではこれをトータルコミュニケーションと呼んでいます。
例えば、お客様がバナーで見た内容が「無人運営」だったのに、違う内容をISが話せば当然商談に繋がりにくくなるので、広告の訴求に合わせたISのトーク選定などをマーケとISが連携して行っています。
そのため、ISがバナーに対して意見を出す、うまくいっている広告チャネルの予算を増やして欲しいというオーダーを出す、「こんなお客様にアプローチしたいからこんなコンテンツを作って欲しい」という意見を出す、ということもあります。
石川:大友さんは現在、マーケティング担当ですが、ISと連携する際に意識していることはありますか?
大友:コンテンツの質にこだわることと、実働時の連携体制の担保の二点です。まず、どんなに良いコンテンツでも、お客様に刺さらなければ意味がないので、一次情報を取りに行くために、コールの録音を聞きにいったり、ISからコンテンツ骨子にフィードバックをもらったりするようにしています。
また、ISはコンテンツを基にアプローチしていくので、各コンテンツに対して実際にどれぐらいのリソースを割くことができるのかにも目を配っています。

マーケに進むためにインサイドセールスを挟む。戦略的なキャリア選択
石川:ここからは、大友さんの実例をもとにISから広がるキャリアについて深堀ります。大友さんは、マーケティングに近い営業としてISを選んだとの話がありましたが、その意図について詳しく教えてください。
大友:1社目で非効率な営業活動を経験して、マーケティングに興味を持ったものの、当時の私のキャリアは営業色が強く、マーケティング職としての転職は難しい面がありました。そこで、まずは仮説検証を繰り返し、ツールも活用しながら分析的なアプローチができるISでキャリアをはじめ、マーケティングに染み出していこうと考えました。
石川:なるほど。そこで前職でISを経験し、hacomonoではISからマーケティングへと意図通りにキャリアを歩まれているのですね。
大友:そうですね。hacomonoに入社した背景も、いつかマーケティングにチャレンジできそうだと思っていたことがあります。
hacomono入社後はISをやりながらも、「マーケティングをやりたい」という自分の思いを周りに伝えていました。さらに、プロジェクトを担当して確実に成果を積み重ねていくことで、結果的にマーケティング職に移ることができました。
石川:現在のマーケティングの仕事の中で、どんな時にISの経験が生きると感じますか?
大友:お客様に対する解像度の上げ方や、受注というゴールに向けてしっかりと考え切ったうえでコンテンツやセミナーを設計していくところはISとも共通点が多く、そこでの経験が大きく生かされていると思います。
石川:これまでのお話しにあったように、hacomonoではISとマーケの距離が近いからこそスムーズに職種チェンジができたのだと感じました。
証券会社→インサイドセールス→マーケというキャリアパスのススメ
石川:大友さんのように、証券会社からSaaSやIT、もしくはISに転職するというのは、キャリアパスとしてはメジャーなのでしょうか?
大友:あまりメジャーではないと思います。同じく金融系の営業職に就かれる方がイメージです。
石川:もし、現在金融の個人営業をしている方がマーケティングを希望されているとしたら、このキャリアパスはおすすめできるでしょうか?
大友:おすすめですね。いわゆる軸ずらし転職という感じでしょうか。いきなり違う業界の違う職種に転職しようとすると、ともするとこれまでの業績があまり評価されずに、待遇も悪くなるなど、不利な形でキャリアを積む危険性があります。
そういった意味では、営業職というキャリアを軸にIT業界に転職し、同じIT業界の中でマーケティングにチャレンジするというやり方は、今思えばよかったと思います。
※類似の転職体験談としてONE CAREER PLUSには以下のようなデータが集まっています。
石川:同じ営業職とはいえ、証券のリテール営業とISでは営業スタイルも大きく異なります。初めて挑戦した際は苦労もあったのではないでしょうか。
大友:IT業界での経験がなかったため、苦労した部分は多かったですね。最初は何も分からず、業界のセオリーをキャッチアップするのがすごく大変だった記憶があります。
ただやり抜く姿勢によってその壁も乗り越えることができました。分からないことが多い中でも成果が出るまでとことんやり抜くことができたのは、証券会社時代に「どんなに素晴らしい施策でも、やり切らないと意味がないという」マインドを鍛えることができたからこそだと感じています。
インサイドセールスはキャリアの幅を広げる魅力的な仕事
石川:お二人の今後のキャリア展望についてもお聞きします。まず大友さんはいかがですか?
大友:直近の目標は、ISとマーケティングを統括して、まとめていけるようなマネージャーになることですね。将来的には、マーケティング領域に強みを持って、経営の領域も見られるようなCMOポジションを目指したいと考えています。
石川:樋口さんはいかがでしょう。
樋口:私はこれまで、たまたまISを担ってきましたが、ISや、マーケティング、FSといったところには一切こだわりはありません。
今後やっていきたいことは2つありまして、今ある市場をよりシェアを高めていくことと、新しい市場を作っていくことです。そのためには、市場を見てあらゆる戦略・戦術を立案することや、お客さまにアプローチをして受注していくことも必要になります。結果的に、とにかく事業を伸ばせるような人になりたいと思っています。
石川:それでは最後に、お二人から進路で迷われている方へのメッセージをお願いします。
大友:ISには、すごく幅広い選択肢を持つことができます。私のように、マーケティングの領域に移っていくことや、IS領域そのものを伸ばしていくこともできるでしょう。
他には、営業職やCS、事業推進など、全ての領域に進める可能性を秘めた職種だと思っています。IS領域にガッツリと入り込むのは、今後キャリアの幅を広げる意味でも、魅力的ではないかと思います。
樋口:最初はハードなこともあるかもしれませんが、結果を残して、いろいろな施策をやっていけるようになれば、本当に選択肢が広がっていく魅力的な職種だと思います。ですから、これから頑張りたい方も、今ちょっとしんどいなと思っている方も、そこを乗り越えて、違う景色、世界を見られるように頑張ってほしいなと思います。
また、今hacomonoは、ISとしてすごく面白いフェーズに入ってきています。ISの枠にはまらない取り組みができますし、市場価値もどんどん上がってきています。少しでも面白そうだと思った人は、ご連絡をいただけるととても嬉しいです。
石川:ありがとうございます。
いかがでしたでしょうか?
キャリナレ!では、今後も様々な職種を経験された方をお呼びして、経験された方にしかわからないキャリアのナレッジをたくさん聞いていきます。
次回もぜひお楽しみに。
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