これまで数多くの人が経験してきたにもかかわらず、何かとブラックボックスの多い「キャリア」。「キャリナレ!」では、キャリアをもっとオープンにするために、経験者にしか分からないリアルを解き明かし、キャリアナレッジとして集めていきます。
インサイドセールス(以下、IS)編・第5弾となる今回のゲストは、現在株式会社スマートドライブでご活躍中の今野雄貴(こんのゆうき)さん。ブライダル業界出身の今野さんに、ブライダル業界とISの共通点や、ISからのキャリアの広げ方を伺います。
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未経験ながらもIS組織の立ち上げに挑戦。結果で存在価値を示す
石川:まずは簡単に、自己紹介をお願いします。
今野:スマートドライブの今野と申します。新卒でブライダル業界の企業に就職し、4年間ほど在籍。法人営業、個人営業に加え、業績が伸び悩むレストランやホテル、ブライダル会場などを対象に営業代行やマーケティング支援を行っていました。
2社目がビズリーチになるのですが、IS組織の立ち上げ期に入社をし、ISとしてのキャリアがスタートしました。3社目で、現職のスマートドライブに入社し、インサイドセールス部部長、パートナーサクセスマネージャー、事業企画部マネージャーを経て、現在はアライアンス推進部の部長を務めています。
石川:今野さんが入社した時代のビズリーチは、いわゆるTHE MODEL型の分業組織がなかったと聞いています。IS未経験から入社して、具体的にどのように組織を立ち上げたのでしょう。
今野:はじめは「啓蒙活動」からスタートしました。当時のビズリーチのセールスにとって、アポ獲得から訪問、クロージングまで全て1人で担当する流れが当たり前でした。それがIS部門の立ち上げに伴い、アポ獲得業務を切り離すことになったので、最初は反発もあったんです。そのため、社内にISの役割や存在意義を浸透させることが重要なミッションでした。
石川:入社後すぐに「やり方を変えましょう」と周りの方を巻き込むのはハードルが高いように感じましたが、どのように乗り越えられたのでしょう。
今野:そうですね。なかなか受け入れられず思い通りにいかないこともありましたが、結果で示すことで次第に周りの反応も変わっていきました。「ISが高いパフォーマンスをあげることでビズリーチとしてお客様が増えていく・売上がしっかり伸びる」ということを結果で示すことで、最終的にISの存在価値を示せたと感じています。
高い対人スキルやPM力は、ISでも活かせる汎用的な力
石川:ここからはブライダル業界で培われたスキルがISがどのように活きているかについても教えてください。今野さんの前職であるブライダル業界とISはあまり結びつかないように感じていたのですが、共通点はあるのでしょうか?
今野:ブライダル業界で培うことができて、ISにも活かせるスキルはいくつかあります。
ひとつは、お客様へ寄り添う姿勢や丁寧なコミュニケーションです。ウェディングは、多くの人にとって一生に一度の大イベントであり、挙式・披露宴の数時間で数百万円という高額な金額を個人が払うことになります。そのため、ひとつひとつのタスクの進め方やお客様とのやりとりには丁寧さが必須であり、これはISでも重要な点です。
2点目は、お客様への傾聴力です。ウェディングプランナーは、挙式・披露宴の約3時間の中で、新郎新婦の人生や、両親や友人といった参列者への感謝など、たくさんの想いを形にすることが求められます。お客様に満足してもらうために、要望をヒアリングしてまとめ上げる能力は高いレベルで身についていると思います。
3点目はプロジェクトマネジメント力です。結婚式のプランニングにおいては、司会者や、引き出物を手配する業者、テーブルクロスを手配する業者など、数十数百のパートナーの方々との連携が必要です。多種多様なパートナーを巻き込んでプロジェクトを進める力は他の業界でも汎用的に活かせるスキルと言えます。
ToBならではの決裁フローが難しさであり、キャリアのアップサイドに
石川:逆にブライダル業界出身の方が、ISに未経験で挑戦して苦労すると思われる点はありますか?
今野:私の場合はBtoC、BtoBの両方を経験してからビズリーチのISにジョインしたので、そこまで苦労したという訳ではないのですが、ブライダル業界でBtoCの経験しかない方はBtoBとBtoCの営業の違いに違和感や難しさを感じるのではないかと思います。
石川:具体的にどういう難しさがありますか?
今野:難しいのは、決裁者、決裁フローの違いです。BtoCの場合は、実際に対面しているお客様が決裁者になります。例えばブライダルの営業でいえば、新郎もしくは新婦に決裁権があります。そのため、実際にお話しているお客様に向き合い、訴求をしてクロージングができれば直接、売上につながります。
BtoBでよくあるのは、商談後にセールスが「いけると思います」と言っていたのに、3日後に「失注してしまいました…」というパターン。「なぜ?」と聞くと「担当者はいけると言っていたのですが…」と黙り込んでしまうのです。担当者ベースでは導入に前向きな場合でも決裁フローの中で差し戻されてしまったり、稟議が通らないケースが多くあるのはBtoB「あるある」です。
商談をしている担当者だけでなく、その先にある何層もの決裁フローを通すことまで見越して営業を行うことが難しい点であり成長できるポイントでもあると言えます。
キャリアチェンジは必ずしも必要ない?前後を意識することで多くを学べる
石川:ISとして成果をだすためにはどのようなことが重要だとお考えですか。
今野:THE MODEL型職種の中でISはマーケティングとフィールドセールスに挟まれているため、ISだけでなく、マーケティングの知識やフィールドセールスがどんなことをしているのかなど、しっかり視野を広げて把握しておかないと、ISとしてのパフォーマンスが最大化しないと個人的に考えています。
石川:確かに全体を把握しておかないと、そもそも自チームにどういう課題があって、どう動いていくのか、全体として何がベストなのかが分からないため、ISは前後両方を見る必要がありますね。
そういう意味ではISからマーケティングやフィールドセールスへのキャリアパスもお見受けしますが、今野さんご自身はフィールドセールスやマーケティングへのキャリアパスは考えておられましたか。
今野:1社目のブライダル企業でBtoBの営業経験があったため、フィールドセールスへのキャリアパスは考えていませんでした。ただ、BtoBマーケティングには興味がありましたね。
せっかくISを担当しているので、マーケティングの知識を吸収して経験を積みながら、自分のできること、知っていることを増やしていこうと思いながら業務にあたっていました。
石川:キャリアチェンジはしなかったが、ISとして幅を広げていくことを常に意識してこられたということでしょうか。
今野:キャリアチェンジができるならそれも良いですが、ISに軸足を置きながらマーケティング領域でも貢献するとか、フィールドセールスとして営業もできるようになるとか、キャリアチェンジをしなくてもできることはたくさんあります。ISとして活動しながら幅を広げて学び続けることが大切だと思っています。
IS時代に視野を広げた経験がパートナーセールスに活きる
石川:今野さんは現在、スマートドライブにてアライアンス推進部にいらっしゃると聞きました。これまでは分業制でやっていたところから、現在は複数あるチャネルを実際に開拓するところから、それを経由してクロージングすることもあれば、自分でクロージングしてカスタマーサクセスまですることもある、というところでお仕事の性質がちょっと違うような感じもするんですが、どんな風に接続があるんでしょうか?
今野:今の仕事でもTHE MODEL型のように業務でチーム・役割を分けることもできなくはないのですが、パートナーに対して、都度窓口が変わるのは顧客体験としてはよくないと考えています。
現在は「このパートナーの担当はAさん、Bさん」というように窓口をしっかり設け、締結したパートナーシップを成功に導くことにコミットしています。数ある企業からスマートドライブを選んでいただいているので、各メンバーが責任を持ってパートナーシップを推進していく必要があります。
そのため、インサイドセールス時代にマーケやフィールドセールスなど幅広く視野を広げて全体像を見てきた経験が生きていると感じますね。マーケティングの知識から、インサイドセールスのようなヒアリング力があり、商談紹介いただいたお客様をしっかりとクロージングできる営業力があること、カスタマーサクセスとしてお客様を成功に導けることみたいな、比較的幅広いスキルとか知識が求められるのが現在の仕事です。
石川:今後、今野さんご自身がどのようにキャリアを築いていかれるのかも伺いたいです。今野さんが、これから軸にしていきたい自分の強みや価値提供方法など、どんな形でキャリアを広げていきたいと考えていらっしゃるのでしょうか。
今野:思い描いているキャリアは「CRO(Chief Revenue Officerの略)」です。CROは売上・収益部分の最高責任者になるのですが、この職務に就くにあたってはマーケティングからカスタマーサクセスまでの知見や経験がないとできないのでは、と思っています。
これから仕事を何年、何十年と続けていくのなら、責任あるポジションで働きたいと思っています。まずは今やらせていただいている業務をしっかりブラッシュアップしていき、将来的にはCROのような職務に就けるといいなと考えています。
石川:最後に、ユーザー様に一言いただけますか。
今野:本日は貴重なお時間をいただきましてありがとうございました。お話させていただいた内容は本当に私の中での一部にすぎないので、もし何かあれば遠慮なくSNSなどでご連絡ください。
私は、成長とは、インプットとアウトプットの繰り返しであると考えています。ですから、いろいろな方の話をたくさん聞いて、インプットしていくことで、私自身も成長していきたいと考えています。是非、そういう機会があれば、遠慮なくご連絡いただければと思います。
石川:今野さん、ありがとうございました!
キャリナレ!では、今後も様々な職種を経験された方をお呼びして、経験された方にしかわからないキャリアのナレッジをたくさん聞いていきます。
次回もぜひお楽しみに。
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