これまで数多くの人が経験してきたにもかかわらず、何かとブラックボックスの多い「キャリア」。「キャリナレ!」では、キャリアをもっとオープンにするために、経験者にしか分からないリアルを解き明かし、キャリアナレッジとして集めていきます。
今回は、消費財メーカーの営業職で得られるスキルやキャリアパスの具体例について、ネスレ日本株式会社(以下、ネスレ)の杉本さんに伺います。
消費財メーカーの営業というと、飲料やお菓子など、私生活でも馴染みの深い商品に携われる魅力がある一方で、有形商材やブランド力が強い商品の営業では個人の力が身につきづらそう、というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。
杉本さんにそうした疑問に答えていただきながら、消費財メーカーやネスレで営業として働く醍醐味を紐解きます。
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地方でのシェア拡大、営業企画など幅広く活躍
石川:はじめに杉本さんの経歴を含めて、簡単に自己紹介をお願いします。
杉本:私は新卒でネスレ日本に入社し、現在入社6年目になります。
入社して最初の3年間は地方の営業所での営業を経験しました。3年目に配属された長野営業所ではほぼ一人で県内全域を担当し、当時ネスレの市場シェアが低かった同県において、ほとんど取り扱いがなかった「スターバックス」家庭用製品の品揃えを拡大するなど、地域のお客様に自社製品を浸透させる営業活動に励みました。
4年目から5年目は広域を担当する部署に異動になり、営業というよりは内勤に近い形で、商品やプロモーションの開発を行う部門と営業の現場とをつなぐ役割を担いました。今年の4月からは再び営業に戻り、現在は全国にまたがるお客様を担当しています。
石川:ネスレ日本の営業組織の体制と、杉本さんの担当範囲についても教えてください。
杉本:ネスレの営業組織は、商品カテゴリー別の事業部ごとに分かれています。具体的にはコーヒー・チョコレートの家庭用部門・業務用部門、ペットケア製品の部門や栄養補助食品の部門などがあります。そのため、例えばあるスーパーマーケットに営業に行く場合、コーヒーやチョコレートに関する商談と、ペットケア製品に関する商談は別の社員が担当することになります。
私は家庭用のコーヒーやチョコレートを担当しており、「ネスカフェ」や「キットカット」などの商品を、主にスーパーマーケットや問屋に向けて営業しています。
また営業本部の組織内には、お客様と直接やり取りを行う営業だけでなく、お客様により良い提案をするためのサポートを行うスタッフも在籍しています。サポートスタッフには、現場と本社の部門とをつなぐスタッフや、売上や販促金の管理を行うスタッフなどがいます。
ミッションは、自社と顧客双方の売上・利益の最大化
石川:「有形商材は提案の余地が少ない」「ネスレほど有名なブランドであれば商品を売るのは簡単なのでは」というイメージを持つ方も多いと思いますが、ネスレでの営業の難しさや醍醐味について、杉本さんの考えをお聞かせいただけますか?
杉本:ネスレの営業の醍醐味は、自社製品の売上・利益の最大化と小売店のカテゴリー収益の最大化の両立を目指すことにあります。
なぜなら限られた棚に自社製品を品揃えしていただくには、小売店に対して「どのように売り場を構成すればカテゴリーの売上を伸ばせるか」まで提案する必要がありますし、ネスレは小売店の「カテゴリーリーダー」に選ばれることも多いからです。
石川:カテゴリーリーダーとは、どのような役割なのでしょうか?
杉本:小売店が、商品のカテゴリー別に「嗜好品のカテゴリーはネスレと協力して伸ばしていこう」と指名するポジションです。ネスレ製品は嗜好品カテゴリーで大きな販売規模を誇るため、カテゴリーリーダーに選ばれることも多々あります。
カテゴリーリーダーに指名されると、自社の売上最大化を追いかけつつも、小売店やバイヤーのカテゴリー収益の最大化を実現するべく、公平公正な立場に立って他社製品を含めた品揃えや販促の提案を行う必要があります。
石川:ネスレの営業でありながら、小売店の社員になったような立場で考える必要があるのですね。
杉本:そうですね。自社の売上だけを追求し、自社に偏った提案をしてしまうと、小売店からの信頼を失いかねません。一方で公平公正性を重視しすぎると、ネスレの営業としての使命を果たせなくなってしまいます。
そこで重要になるのが、「公平公正な立場に立った場合でも、ネスレ製品を強化することがカテゴリーの売上最大化につながる」と思っていただける提案を作り上げることです。そのためには、商品・コミュニケーション・プロモーションの開発を行う部門と密に連携し、ネスレがカテゴリーの成長をリードできるような提案を共に作り上げる必要があります。
このように、単に商品を品揃えしていただくだけではなく、並べた後の販売戦略まで考えて提案する必要がある点は、ネスレの営業の難しさでもあり面白さでもあると思います。
小売店のパートナーとして販売戦略・ブランディング提案も行う
石川:小売店のカテゴリー収益最大化のために、具体的にはどのような提案を行っているのでしょうか。
杉本:スーパーマーケットによって販売戦略はそれぞれ異なるため、顧客の戦略に合わせた提案を心がけています。
例えば、代表的なものとしては、普段は通常の価格(いわゆる定番の価格)で価格設定を行い、特売日にぐっと安い値段でチラシを打ち、集客を行う「Hi-Lo(ハイ&ロー)」戦略や、原則的に価格を変えず、いつも同じ価格で商品を販売する「EDLP(エブリデイ・ロー・プライス)」戦略などが挙げられます。
Hi-Lo戦略を採用しているスーパーに対しては、ブランド力がある商品を活かしたチラシ特売の提案や、チラシを打つ最適なタイミングや頻度の提案を行います。一方でEDLP戦略を採用しており、基本的にチラシを打たないスーパーに対しては、来店後に商品を購入してもらえるような需要喚起策の提案が必要になります。
石川:各小売店の特徴や戦略を深く理解した上で、効果的な提案を行う必要があるのですね。
杉本:冒頭でご質問いただきましたが、ブランド力のある商品は、たしかに品揃えしていただくハードルはあまり高くないかもしれません。
一方で、そうした商品は商圏内の多くのお店で販売されているからこそ、小売店からすると「その商品をいかに自分の店舗で買ってもらうか」が課題になります。だからこそ、小売店に伴走し、販売戦略やブランディングまで共に考え、提案する力が求められます。
石川:複数のレバーを多角的に動かしながら、お客様の利益の創出に伴走していくという点で、かなりビジネスパーソンとして必要な提案力やコミュニケーション力が鍛えられそうですね。
営業企画・マーケティングなど、営業から広がる多様なキャリアパス
石川:営業職を経験した後のキャリアパスについては、どのような選択肢があるのでしょうか。
杉本:まず、営業としてそのままキャリアを極める道があります。他にも営業企画系であれば、営業本部と営業拠点の架け橋として、エリアの販売戦略・顧客戦略を担うポジションや、営業本部の組織内で他部門との窓口を担うポジションが挙げられます。
また、売り場に最も近い立場で働き、何が売れて何が売れなかったのかを肌で感じながらマーケット感覚を磨いていけるという意味では、マーケティング(ブランディング・商品開発)のキャリアに進む選択肢もあります。
石川:杉本さんご自身は、ネクストキャリアについてどうお考えですか?
杉本:将来的には、マーケティングに挑戦したいと考えています。
マーケティングへの興味はもともと持っていたわけではなく、営業を経験するなかで徐々に芽生えてきました。営業として長年、自社商品を含むカテゴリー全体の商品をお客様が実際に手に取る瞬間を目の当たりにしてきたことで、「こんな商品を市場に投入してみたい」「こんなプロモーションを打てば、さらにカテゴリーの売上を伸ばせるのでは」というアイデアが、次々に湧いてくるようになりました。
新卒・中途、職種にかかわらず多様な人材が活躍できる環境
石川:ネスレでは現在、中途採用も積極的に行っているそうですね。ネスレに入社する魅力を、杉本さんの目線で教えてください。
杉本:消費者の生活に直結する商品を扱い、また、嗜好品というカテゴリーならではの「人々の生活をより楽しく豊かにするためのアプローチ」を、消費者の生のリアクションを見ながらカテゴリーリーダーという立場で顧客と一緒に追求していけるのは、ネスレの営業ならではの醍醐味だと思います。
また、お互いへのリスペクト(敬意)を大切にするカルチャーが根付いている点も、ネスレの魅力です。私自身、職場で関わる様々な人と分け隔てなくコミュニケーションが取れていると感じますし、社内では社員一人ひとりの個性や考え方が受け入れられていると感じます。
加えて、働く場所や時間を社員が最大限選べる働き方を導入するなど、社員のウェルビーイングを推進している点も魅力の一つです。
石川:最後に、読者の皆様に向けてメッセージをお願いします。
杉本:先ほどもお伝えした通り、ネスレではリスペクト(敬意)を大切にする文化があり、新卒・中途、職種を問わず、多様な立場や価値観を尊重しながらコミュニケーションを取れる環境があります。ぜひ、様々なバックグラウンドを持った方々と一緒に働けたら嬉しいです。本日はありがとうございました。
石川:杉本さん、ありがとうございました!
「キャリナレ!」では、これからもさまざまな職種を経験された方をお呼びして、経験者にしか分からないキャリアのナレッジをたくさん伺っていきます。次回もぜひお楽しみに。
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