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【転職するならどっち?】ノースサンドとベイカレント。上場と急成長の背景をクチコミで分析

コンサルティング業界に新たな勢力が台頭している。


2025年11月に東証グロース市場への上場を控えるノースサンドだ。創業からわずか10年で売上高164億円を達成し、2026年1月期には250億円を見込む驚異的な成長を遂げている。


一方、新興コンサルの「元祖」とも言えるベイカレント・コンサルティングは、上場後も勢いが止まらない。26年2月期通期の売上収益は過去最高の1430億円を予想し、従業員数約5,900名(2025年4月時点)という国内最大級の規模を誇る。


両社の急成長の背景には何があるのか。そして転職を検討する若手ビジネスパーソンにとって、これらの企業はどのような「キャリアの選択肢」を意味するのか。ワンキャリア転職に集まるクチコミデータと公開資料を基に、両社の実態と、そこで築けるキャリアの「光と影」を比較する。


(参考)2026年1月期の業績予想について|株式会社ノースサンド

IR情報 | ベイカレント | Baycurrent


1. 規模のベイカレント、成長率のノースサンド


両社の業績と規模を比較すると、その特徴は明確だ。


売上高の推移と見通し(億円)

年度

2021

2022

2023

2024

2025 (予想)

ベイカレント

576.4

760.9

939.0

1160.5

1430.0

ノースサンド

24.0

44.4

91.4

164.1

250.0

(※)ベイカレントは26年2月期通期の予想、ノースサンドは26年1月期通期の予想をそれぞれ「2025年度(予想)」として設定し、過去を実績を記載


従業員数の推移(名)

年度末時点

2021

2022

2023

2024

最新 (2025)

ベイカレント

2,638

3,310

4,321

5,467

5,904

ノースサンド

170

314

710

1,170

1,602


(※)最新の従業員数は、ベイカレントが2025年4月時点、ノースサンドが2025年9月末時点

(※)ベイカレントは25年2月期通期、ノースサンドは25年1月期通期の決算年度の人数を「2024年度」として設定し、過去実績を記載


ベイカレントは国内最大級の規模を誇り、売上高・従業員数ともに安定した高成長を継続している。その伸び率も著しい。だが、それが霞んで見えるほど、ノースサンドの成長率は「特異」と言える。


特に売上高は、2023年1月期(2022年度)の44.4億円から、2025年1月期(2024年度)の164.1億円へと、わずか2年で約4倍(ベイカレントはこの間で1.5倍)という驚異的な急拡大だ。


この両社の急成長を支えるビジネスモデルには、興味深い共通点と決定的な相違点が存在する


(参考)ノースサンド「新規上場申請のための有価証券報告書」

IR情報 | ベイカレント | Baycurrent


▼ベイカレントについてもっと知る




2. 急成長を支えるビジネスモデルと採用戦略


2-1. 共通点:コンサルタントを「実行」に集中させる体制


両社の成長を支える基盤には、「コンサルタントの人数、稼働率、平均単価」の3指標を重要視する共通のKPIがある。


このKPIを最大化するため、両社は案件を獲得する「営業(アカウントマネジメント)」と、プロジェクトを実行する「コンサルタント」の役割を分離する体制を採用している。これは元々ベイカレントが確立し、その効率性で急成長を遂げたビジネスモデルだ。ノースサンドも、創業者の前田知紘社長(ベイカレント出身)が自社にうまく取り入れ、成長につなげている。


この体制により、コンサルタントは新規案件獲得の営業活動から解放され、クライアントへのデリバリー(実行)と稼働率の最大化に集中できる。この「効率的なコンサルティングモデル」こそが、両社の急速な規模拡大を可能にしている共通要因だ。

では、同じモデルを採用しながら、両社の違いはどこにあるのか。それは事業戦略にも直結する「採用」の方針に明確に表れている。



2-2. 相違点:事業戦略に直結する「採用」の違い


ベイカレントもノースサンドもコンサル未経験者の採用に積極的な点は共通しているが、方針には違いがある。


ベイカレント:「スキル」「競争」で組織的な実行力を担保


ベイカレントは「優秀な人材の採用・育成」を成長戦略の柱に据え、未経験の場合でも能力・ポテンシャルの高さを重視した採用を継続している。


ワンキャリア転職に寄せられたクチコミでは「研修が1ヶ月間あり、競争させられる」「実力主義で若くても成果をあげれば役職・給与が上がる」といった声が目立つ。スキルベースでの競争と高い報酬により、コンサルタントの能力の底上げができているといえる。


この採用・育成方針が、大規模なPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)や業務支援案件を組織的にこなし、安定した収益を上げる基盤だ。



ノースサンド:「人間力重視」で未経験者をカルチャーフィット採用


対照的に、ノースサンドの採用は極めて独特だ。「愛嬌・素直さ・しつこさ」を兼ね備えた人材を重視するカルチャーマッチ採用を行っており、2025年1月期の中途入社者のうち、コンサル業界「以外」からの応募割合は実に92.4%に上る。


(出典)ノースサンド「新規上場申請のための有価証券報告書」


ワンキャリアのインタビューによると、前田社長はシステムエンジニアとしてキャリアをスタートしたこともあり、スキルの高さで勝負するコンサルの限界に気付いたという。


「大手のコンサルティング会社ではセンスの大切さを教えてくれませんが、ノースサンドでは入社時からセンス重視です」


インタビューではこのように語っており、人間力という採用基準を徹底していることがうかがえる。この「人間力」「センス」を中心とした組織・事業展開こそがノースサンドのオリジナリティーであり、コンサル市場における競争優位の源泉になっている。




3. コンサル未経験者の「受け皿」としての魅力は? クチコミから分析


この両社の台頭は、コンサル業界未経験者にとって新たなキャリアの「受け皿」となっている。旺盛な国内コンサルティング需要を背景に、未経験からでも高成長産業に飛び込める門戸が広がったことは、間違いなく「光」の部分だ。


しかし、その選択には「影」、すなわちキャリア上のリスクも存在する。転職希望者は、両社が提供するキャリアの現実を深く理解する必要があるだろう。


そのリスクを、ワンキャリア転職に寄せられたクチコミから検証する。


3-1. ベイカレント:高収入と「実行支援特化」のリスク


ベイカレントは「他のコンサルティング会社と比べても高い」と評される給与水準と、充実した研修制度という明確な魅力を持つ。


一方で、クチコミでは「他のコンサル会社が手を出さないPMOや業務支援案件が多く、いわゆるコンサルタントの業務のようなキラキラした案件は少ない。どちらかというと泥臭い」という実態が指摘されている。


「実行支援」や「PMO」はコンサルティングの重要な機能だが、キャリアがそこに特化しすぎるリスクがある。未経験から入社し、数年間PMO案件に従事した場合、転職市場において「戦略立案ができるコンサルタント」ではなく、「(特定の業務・IT領域の)PMO専門家」として評価が固定化されてしまう可能性には留意が必要だ。


3-2. ノースサンド:理念の魅力と「専門性構築」のジレンマ


ノースサンドは、「Joby(Job+Joy)という仕事と遊びの造語で、仕事を楽しもうという考えがある」「チャレンジを推奨し、失敗してもしっかりとフォローアップしてもらえる」など、独特の企業文化が魅力だ。未経験者でも「人間力」で評価され、理念に共感できれば活躍の場が広がる。


一方で、クチコミからは「他の大手ファームと比べると1階級分程度給与に開きがある」という待遇面の課題や「部署らしい部署がないので人見知りは馴染みづらい」といった、独特な組織運営から生じる敷居の高さも見える。


ノースサンドの掲げるコンサルタント像はユニークである一方、それが具体的な「専門スキル」にどう結びつくかは未知数な面もある。「センス」や「愛嬌」は属人的な要素のため、他の社員のキャリアパスを参考にしづらいケースも出てくるだろう。





4. おわりに:あなたがなりたい「コンサルタント」とは何か


ベイカレントとノースサンドは、従来の戦略ファームとも大手総合ファームとも異なる、独自のポジションを確立した。特に、広く門戸を開いているノースサンドの上場は、キャリアチェンジを目指す多くのビジネスパーソンにとって朗報だ。


しかし、その扉の先にあるキャリアは、必ずしもあなたが考える「コンサルタント」のイメージ通りではないかもしれない。


安定した基盤と高い報酬を得ながら「実行支援のプロ」としての専門性を磨く道(ベイカレント)か。


理念に共感し、給与水準は一歩譲っても「人間力」という新しいコンサルタント像に挑戦する道(ノースサンド)か。


どちらを選ぶにせよ、「急成長企業だから」「未経験でも入りやすいから」、あるいは「"コンサル"という響きが格好良いから」といった理由だけで飛びつくのは危険だ。


あなたがなりたい「コンサルタント」とは、具体的にどのようなスキルを持ち、どのような価値を提供できるプロフェッショナルなのか。その解像度を高め、自身のキャリアプランと照らし合わせることこそが、後悔のない選択の鍵となるだろう。


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ワンキャリア転職 編集部

吉川翔大

東京大学卒業後、新卒で中日新聞社に入社。長野、静岡、三重の3県で記者として働く。2019年にワンキャリア に入社。就活生向けの記事制作チームや広報を経て、ワンキャリア転職 編集部でコンテンツ制作を担当。京都市生まれ。

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