外資IT企業への転職と聞くと、「自由な働き方」や「高い給与」をイメージする一方で、「残業が多くて激務なのでは?」という不安を抱く方も少なくないでしょう。実際のところ、外資IT企業の残業時間はどれくらいなのでしょうか。
この記事では、ワンキャリア転職に寄せられた外資IT企業への転職経験者によるクチコミデータを基に、企業別・職種別のリアルな残業時間の実態を徹底分析します。「成果主義」をベースとした柔軟な働き方が浸透している一方で、その実態は企業や職種によって大きく異なることがデータから明らかになりました。日系企業との働き方の違いや、転職前に知っておくべき注意点まで、詳しく解説していきます。
外資ITの平均残業時間はどれくらい?
ワンキャリア転職に寄せられたクチコミデータを分析した結果、外資IT企業の残業時間は月20-30時間が最も多いボリュームゾーンとなりました。厚生労働省の「毎月勤労統計調査 令和6年度分結果確報」によると、パートタイムを除いた従業員の平均残業時間は月13.4時間だったので、外資ITは比較的残業が多い業界といえます。
しかし、0時間の社員から100時間を超える社員まで幅広く分布しており、一概に「多い」「少ない」とは言えないのが実情です。
重要なのは、企業や職種によって残業時間の実態が大きく異なるという点です。以下で、それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
企業別の残業時間
セールスフォース
残業時間は少ない層から多い層まで幅広く分布しており、残業時間が10時間未満の人もいれば、80時間を超える人もいます。部署や役割による働き方の差が大きいことがうかがえます。
残業時間が多い人は営業職の割合が高く「フレックス制度やワーケーションのような柔軟な働き方もできるが、業務量的に実現するのが難しい」といったコメントがありました。
グーグル、日本マイクロソフト
残業時間が30時間以下の人の割合が比較的高く、この2社は柔軟な働き方ができることがうかがえます。「柔軟に働き方を選ぶことができる制度は整っていると感じました。自身だけでなく周囲も含めて会社の制度はきちんと利用・活用されているように感じます」といったコメントがありました。
日本IBM、日本オラクル
残業時間が40時間以上の割合が高く、特にコンサルタント職や営業職で多忙な実態が反映されている可能性があります。「フレックスタイム制は導入されていたが、お客様先に常駐する業務には関係ない」とのコメントがありました。
アマゾンジャパン
「基本的にフレックスタイム制であるため、その日の業務量に合わせて勤務時間を調整できる」という声がある一方、「マネージャーになってからかなりハードワーク」といった声もあり、自身のポジションや業務の調整次第で残業時間が変わることがうかがえます。
職種ごとの違い
職務内容によって、働き方の柔軟性や残業時間に明確な傾向が見られます。
フィールドセールス職
残業時間が10時間未満の人から、80時間を超える人までにいます。「成果さえ出せば自由」な働き方と、「目標達成のためにハードワークが必須」な働き方の両極端な実態を反映していると考えられます。
コンサルタント職
残業時間が40時間以上の口コミが半数以上を占めており、クライアントワークが中心となるため、労働時間が長くなる傾向が顕著です。
インサイドセールス職
20〜30時間の残業がボリュームゾーンとなっており、ある程度の残業は発生するものの、営業職やコンサルタント職ほど極端な長時間労働にはなりにくい傾向が見られます。
エンジニア・技術職
残業時間は10〜40時間と幅広く、担当する領域やプロジェクトによって異なります。
クチコミで分かる外資ITのワークライフバランス事情
データだけでは見えにくい、働き方の実態や残業に対する考え方を、現役社員のクチコミから探っていきます。
残業時間が発生する要因は「高い目標」と「クライアントワーク」
なぜ残業時間が多い層が存在するのでしょうか。クチコミからは、主に2つの要因が浮かび上がります。
一つは、高い営業目標です。特にセールス職では、成果を出すためにハードワークが常態化しているケースが見られます。
営業に関しては比較的自由に働く時間を決めることができる。 ただし、営業目標がかなり高く成果を出すためにはハードワークが必須(セールスフォース・ジャパン/法人営業/60時間)
もう一つは、クライアントワークです。コンサルタント職やプロジェクトマネージャー職では、顧客の都合や納期に働き方が大きく左右されるため、制度としてフレックスタイム制があっても活用が難しい実態があります。
制度は充実しているが、クライアントワークの場合適用することは難しい(ほぼ無理)(日本IBM/プロジェクトマネージャー/50時間)
外資IT企業の残業に対する考え方:「時間」ではなく「成果」で管理
残業時間が少ない、あるいは全くないという社員のクチコミからは、外資IT企業特有の残業に対する考え方が見えてきます。それは、「時間」ではなく「成果」で仕事を管理するという思想です。
完全フレックスかつ時間をトラックするシステムも存在していないようなものなので、結果さえ出していればどこで働いてもいいし何をしていてもよい(日本マイクロソフト/法人営業/0時間)
ミーティング入っている時間以外は何してもOK、いつ働いてもOK とても自由です。 残業の概念もないです(日本マイクロソフト/プリセールス・技術営業/5時間)
このように、個人の裁量が非常に大きく、成果さえ出していれば勤務時間や場所は問われないというカルチャーが多くの企業で浸透しています。
外資系ITと日系ITの残業時間・働き方の違い
日系企業から外資IT企業へ転職した社員は、働き方の違いをどのように感じているのでしょうか。セールスフォースで働くAさん(30代男性)にヒアリングしたところ、日系企業に勤めていた頃、夜10時まで残業することも多かったと語ります。
前職は月60時間ほど残業していましたが、今は多くても月30時間ほどです。インサイドセールスは自分で業務量を調整しやすいため、基本的には定時で終われます。業務時間内に終われないことがあったとしても、朝早めに仕事を始めたり、一度家庭の用事を済ませたりしてから夜に仕事をするなど、自分のタイミングで調整できます
この違いの根底には、評価制度の違いがあります。多くの日系企業が年功序列や勤務態度を評価に含めるのに対し、外資IT企業は個人の実績を評価する「成果主義」が基本です。
そのため、長時間働くことよりも、限られた時間でいかに生産性を上げ、成果を出すかが重視されます。
外資ITで働くメリット・デメリットと注意点
これまでの分析から、外資IT企業で働くメリットとデメリット、そして注意点をまとめます。
メリット
柔軟な働き方が可能
多くの企業でフレックスタイム制やリモートワークが導入されており、個人の裁量で働き方を調整しやすいです。
オンとオフの切り替えがしやすい
成果さえ出していれば、プライベートの時間を確保しやすく、ワークライフバランスを保ちやすい環境です。
デメリットと注意点
成果へのプレッシャー
高い目標が設定されることが多く、常に成果を出し続けるプレッシャーがあります。
制度と実態の乖離
特にクライアントと直接関わる営業職やコンサルタント職では、制度が形骸化し、長時間労働になりやすい傾向があります。
部署や職種による差が大きい
同じ会社でも、配属される部署や担当する業務によって働き方が大きく異なります。
外資ITに転職するなら働き方について理解しておこう
外資IT企業の残業時間は、一概に「多い」とも「少ない」とも言えず、「成果主義」をベースとした柔軟な働き方が浸透している一方で、その実態は企業、職種、そして個人の成果によって大きく異なります。
営業職やコンサルタント職のように顧客に働き方が左右される職種では残業が多くなる傾向があり、一方で、成果さえ出せば残業ゼロで働ける環境も存在します。
外資IT企業への転職を成功させるためには、提示される年収や待遇だけでなく、ワンキャリア転職のようなクチコミサイトを活用して、リアルな働き方の実態を深く理解することが不可欠です。本記事で解説したポイントを参考に、自分に合った企業文化や働き方を見極め、後悔のないキャリア選択をしてください。
外資IT企業への転職に関してさらに詳しく知りたい方は、ワンキャリア転職の「外資IT転職:完全攻略ロードマップ」シリーズもぜひご覧ください。
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