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公務員から公務員に転職できる?在職中でも受験できるのか、退職手当と共済はどうなるのか 

今の職場に在籍したまま、別の自治体や省庁の採用試験を受けられるのか。公務員から公務員への転職を考えたとき、最初に引っかかるのはこの点です。


結論から書くと、本記事で確認した人事院の2026年度 経験者採用試験(係長級(事務))と東京都のキャリア活用採用選考では、在職中であることだけを理由とする一律の除外は確認できません。 人事院の受験案内には、求める人材として「官公庁」で従事した職務経験が明記されています。東京都のキャリア活用採用選考では、在職先に関する制限として原則として東京都職員が対象外とされています。


ただし採用試験ごとに受験資格は異なります。 本記事で確認したのは上記2つの制度についてであり、他の府省や自治体の試験・選考が同じ扱いとは限りません。志望先の受験案内を個別に確認してください。


一方で、在職中だからこそ確認しておきたい点もあります。退職手当がどう扱われるか、年金にあたる共済組合員期間はどうなるか、最終合格後に何を提出する必要があるか。この記事では、その3点を公式情報で確認したうえで、ワンキャリア転職に投稿された公務員から公務員への転職体験談を、移動の方向別に整理します。



目次




1. 在職中の受験について、公式の受験案内で確認できること


この章では、次の4点を公式の受験案内で確認します。いずれも人事院の2026年度 経験者採用試験(係長級(事務))と東京都の令和8年度キャリア活用採用選考について確認した内容です。


  1. 人事院の経験者採用試験に、公務員在職者を除く規定があるか
  2. 受験資格が何を基準に書かれているか
  3. 東京都のキャリア活用採用選考で、在職先に関する制限はどう定められているか
  4. 在職中の受験で確認しておきたい手続は何か


1-1.人事院の経験者採用試験は、公務員在職者を除く規定を置いていない


人事院の2026年度 経験者採用試験(係長級(事務))受験案内には、受験できない人の条件として次の記載があります。

*次のいずれかに該当する者は受験できません。


⑴ 日本の国籍を有しない者
⑵ 国家公務員法第38条の規定により国家公務員となることができない者


続く箇条書きは、拘禁刑以上の刑に処せられた者、一般職の国家公務員として懲戒免職の処分を受けて2年を経過しない者、日本国憲法またはその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する団体を結成・加入した者、平成11年改正前の民法による準禁治産の宣告を受けている者です。「現在公務員として在職している者」という条件はここに含まれていません。


さらに、同じ受験案内の「求める人材」には、次の記載があります。


⑤ 大学卒業後、民間企業、官公庁、国際機関等の社員・職員等として従事した職務経験を通じて体得した効率的かつ機動的な業務遂行の手法その他の知識及び能力(特に政策の企画及び立案又は調査及び研究に関する事務に有用なもの)を有するもの


これは試験の区分「府省合同A」の記載です。試験の区分「府省合同B」でも「民間企業、官公庁、国際機関等の社員・職員等として従事した職務経験」という同じ表現が使われています。民間企業と並んで「官公庁」が名前を挙げて含まれている点が、公務員から公務員への転職を考える人には重要です。



受験資格は「職務経験○年以上」ではなく、学歴と卒業後の経過年数で書かれている


経験者採用試験について「一定の職務経験年数が必要」という説明を目にすることがありますが、人事院の受験案内の書き方は違います。


試験の区分「府省合同A」の受験資格は次のとおりです。


2026(令和8)年4月1日において、大学等(短期大学を除く。)を卒業した日又は大学院の課程等を修了した日のうち最も古い日から起算して2年を経過した者


試験の区分「府省合同B」も同じ立て方で、卒業・修了の日から起算して経過が必要な期間が学歴ごとに定められています。主なものを抜き出すと、次のようになります。

起算日となる学歴

経過が必要な期間

学校教育法に基づく高等学校又は中等教育学校を卒業した日

11年

短期大学、高等専門学校等(短期大学等)を修了した日

9年

大学等を卒業した日

7年

大学院の課程等を修了した日

5年


つまり基準になるのは、公務員として何年働いたかではなく、学校を出てから何年経ったかです。在職年数が短いことを理由に受験資格を失うという構成にはなっていません。


最終合格者は、採用候補者名簿(5年間有効)に記載されます。各府省等では、この名簿に記載された者の中から、面接などを行って採用者を決定します。採用は、おおむね2027(令和9)年4月となります。


なお公式案内で示されているのは、採用候補者名簿の有効期間が5年であることと、採用がおおむね2027年4月であることまでです。受験者本人が入庁時期を自由に延期できるとは説明されていません。



東京都のキャリア活用採用選考|在職先に関する制限では原則として東京都職員が対象外


地方自治体の側も見ておきます。東京都の令和8年度キャリア活用採用選考案内は、受験資格を6つの要件で定めています。


在職先に関する制限はこのうち5番目の要件で、年齢、国籍、地方公務員法第16条の欠格条項、職務経験年数など、ほかにも満たすべき要件があります。


⑤ 申込受付期間末日現在、東京都職員(※2※3※4)(教育公務員(※5)、任期付職員(※6)、特別職非常勤職員、会計年度任用職員及び臨時的任用職員を除く。)でない人


この要件は「原則として東京都職員は対象外」という定め方です。 原文のかっこ書きのとおり、教育公務員、任期付職員、特別職非常勤職員、会計年度任用職員、臨時的任用職員は、この除外の対象から外れています。


そしてこの「東京都職員」の範囲について、注記※4に次の一文があります。


※4 警視庁の警察官及び東京消防庁の消防吏員を含む。


在職先に関する制限の対象は東京都職員であって、国家公務員や他の自治体の職員ではありません。裏を返せば、警視庁の警察官と東京消防庁の消防吏員は東京都職員に含まれるため、この選考の対象外になります。


職務経験年数の要件は、6番目の要件に定められています。


⑥ 学歴区分(※7)に応じた民間企業等(官公庁含む)における職務経験年数(※8)が、8ページに掲げる《別表》の「必要な職務経験年数」以上ある人(令和9年3月末日現在)


ここでも「民間企業等(官公庁含む)」と、官公庁が明記されています。別表の主な学歴区分と必要な職務経験年数は次のとおりです。

学歴区分

必要な職務経験年数

博士課程

5年以上

修士課程・専門職学位課程(標準修業年限2年以上)

5年以上

大学卒業(4年制)

7年以上

短期大学等卒業(2年制)

9年以上

高等学校等卒業(3年制)

11年以上

中学校等卒業

14年以上


年齢についても、1番目の要件に「昭和40年4月2日以降に生まれた人」という記載があり、上限が設けられています。



在職中に確認しておきたい手続|経験年数の入力と職歴証明書


制度上受験できることと、手続きを問題なく通せることは別です。東京都の案内には、在職中の受験者に向けた記載があります。


・申込日現在、在職中の人は、令和9年3月末日現在の見込みで期間を入力してください。


つまり申込時点ではまだ満たしていない経験年数を、翌年3月末時点の見込みで計算して入力する運用です。そして最終合格後に確認が入ります。


2 最終合格後、職歴証明書や卒業証明書など、職務経歴や最終学歴等を確認するための証明書類を提出していただきます。職務経歴等が証明できない場合は採用されないことがあります。


東京都の案内で確認できるのは、最終合格後に職歴証明書等を提出することと、職務経歴等が証明できない場合は採用されないことがある点までです。証明書の発行方法や依頼先については、事前に確認するとよいでしょう。 これは在職中に確認しておきたい手続の一つです。


併願の扱いも団体によって違います。人事院の採用試験に関するQ&Aには次の記載があります。


複数の経験者採用試験を同時に受験することはできませんので注意してください。


一方、東京都のキャリア活用採用選考案内には次の記載があります。


*東京都職員経験者採用選考と併願ができます。


ただし同じ案内には「複数の選考区分を申し込むことはできません。一つだけ選んでください。」「本選考に申し込む方は、令和8年度就職氷河期世代を対象とした東京都職員採用試験に申し込むことはできません。」という記載もあります。併願できる組み合わせと、できない組み合わせが個別に定められている形です。


なお、現職への報告義務について、今回確認した人事院と東京都の公式ページには記載がありませんでした。



令和2年度の調査で見る、中途採用を実施していた団体の偏り


受験できるとしても、受け皿がどこにでもあるわけではありません。総務省が令和3年12月24日付で発出した地方公務員の職員採用方法の多様化についてには、令和2年度の調査結果として次の記載があります。


令和2年度は中途採用試験を実施した団体数が 906(対前年度+112)、受験者数が 98,455 人(対前年度+44,430 人)、採用者数が 8,331 人(対前年度+1,991 人)及び採用倍率が 11.8 倍(対前年度+3.3 倍)となっている。


同資料には、令和2年度の実施率についての記載もあります。


中途採用を実施する団体は増加してきており、都道府県及び指定都市の全て(100.0%)で実施している。


同資料の表19によると、令和2年度の調査では、中途採用試験を実施した団体数は都道府県が47団体中47、指定都市が20団体中20、市区町村が1,722団体中839でした。都道府県と指定都市はすべて実施している一方、市区町村は半数程度にとどまります。

ただしこれは令和2年度の調査結果であり、現在の実施状況を示すものではありません。 2026年時点の受け皿を判断する際は、志望する自治体の最新の募集情報を個別に確認する必要があります。



官民人事交流制度は「国と民間企業」の制度


公務員の組織間の移動に関連して、官民人事交流制度に触れられることがありますが、これは別の枠組みです。人事院の官民人事交流制度の概要には「国と民間企業との間の人事交流に関する法律」に基づく制度と説明されており、交流対象として列挙されているのは株式会社、監査法人、医療法人、学校法人、社会福祉法人などで、地方公共団体は含まれていません。また交流派遣・交流採用いずれも「期間:原則3年以内(最長5年)」と任期が定められており、自分で退職して別の団体の採用試験を受ける転職とは仕組みが異なります。





2. 転職前に確認したい2つの制度|退職手当と共済組合員期間


在職中の公務員が転職を検討するとき、給与額そのものより後から効いてくるのが、退職手当と年金の扱いです。この2つは別の制度で、確認すべき規定も異なります。


退職手当は、移動の方向によって確認する規定が異なる


総務省の資料地方公務員の退職手当制度についてには、地方公務員の退職手当の根拠について次の記載があります。


地方公務員の退職手当については、地方自治法(昭和22年法律第67号)第204条第2項及び第3項の規定により、各地方公共団体の条例により定めることとされている。


つまり地方公務員の退職手当は、団体ごとの条例で定められています。 一方、国家公務員の退職手当は国家公務員退職手当法によります。したがって確認すべき規定は、移動の方向によって変わります。


移動の方向

確認する規定

地方公共団体から地方公共団体へ

転職先の地方公共団体の退職手当条例

地方公共団体から国へ

国家公務員退職手当法など国の規定

国から地方公共団体へ

転職先の地方公共団体の退職手当条例

国から国へ

国家公務員退職手当法など国の規定


確認する規定が分かれば通算の可否が分かる、というわけでもありません。 前の勤務先を退職した際に退職手当が支給されたかどうか、退職と次の採用が「引き続いて」行われたものとして扱われるかどうかなど、個別の事情によって結論が変わり得ます。

具体的に検討する段階では、現在の所属先の人事担当と、志望先の人事担当の双方に個別に確認してください。



共済組合員期間は、国と地方の期間を通算して年金が計算される


一方、年金については明確な記載があります。国家公務員共済組合連合会(KKR)のよくあるご質問


国家公務員になる前に勤めていた地方公務員の期間の年金はどうなるのでしょうか。への回答は次のとおりです。


国家公務員と地方公務員の組合員期間は、両期間を通算して年金を計算することとなっています。
したがいまして、最終勤務先が国家公務員となる場合、地方公務員の期間は国家公務員の期間と通算して、連合会で決定します。


ここで示されているのは、国と地方の組合員期間を通算して年金を計算するということです。 共済組合員期間がそのまま退職手当の勤続年数として引き継がれるという意味ではありません。年金の共済組合員期間と、退職手当の勤続期間は別の制度であり、「公務員から公務員なら勤続年数はそのまま引き継げる」とまとめてしまうと実態と合いません。この2つは分けて確認してください。





3. ワンキャリア転職の転職体験談で見る、公務員から公務員への移動


ここからは、ワンキャリア転職に投稿された転職体験談のうち、転職前と転職後がどちらも国または地方公共団体の機関だったものを取り上げます。移動の方向で整理すると、次のようになりました。


なお、独立行政法人・国立大学法人・団体などが関わる事例は、この記事で扱う国・地方の公務員とは区分が異なるため、章の最後に「公的セクターを含む関連事例」として分けて紹介します。


転職前

退職時の職種

転職後

転職後の職種

体験談

川崎市役所

公務員(事務系)

東京都庁

公務員(事務系)

川崎市役所→東京都庁/公務員(事務系)

世田谷区役所

公務員(事務系)

東京都庁

公務員(事務系)

世田谷区役所→東京都庁/公務員(事務系)

朝霞市役所

公務員(事務系)

東京都庁

公務員(事務系)

朝霞市役所→東京都庁/公務員(事務系)

沖縄県庁

公務員(事務系)

法務省

公務員(事務系)

沖縄県庁→法務省/公務員(事務系)

高崎市役所

公務員(事務系)

厚生労働省

労働基準監督官

高崎市役所→厚生労働省/労働基準監督官

東京都庁

公務員(事務系)

経済産業省

公務員(事務系)

東京都庁→経済産業省/公務員(事務系)

気象庁

公務員(技術系)

国土交通省

公務員(技術系)

気象庁→国土交通省/公務員(技術系)

埼玉県庁

公務員(事務系)

戸田市役所

公務員(技術系)

埼玉県庁→戸田市役所/公務員(技術系)

横浜市役所

公務員(技術系)

札幌市役所

公務員(技術系)

横浜市役所→札幌市役所/公務員(技術系)

草加市役所

公務員、行政

川口市役所

公務員(事務系)

草加市役所→川口市役所/公務員(事務系)

警視庁

公務員(事務系)

芦屋市役所

公務員(事務系)

警視庁→芦屋市役所/公務員(事務系)


以下では、この投稿を移動の方向ごとに見ていきます。投稿数がそのまま実際の転職の多さを表すわけではないため、件数から傾向を読み取ることはしません。


市役所から県庁・都庁への転職|投稿されている3件はいずれも東京都庁


市区町村から都道府県への移動として投稿されていたのは、川崎市役所、世田谷区役所、朝霞市役所から東京都庁への3件でした。県庁への移動を記した投稿は確認できず、いずれも東京都庁への移動です。


川崎市役所から東京都庁に移った投稿者は、転職理由を次のように書いています。


新卒時の第1希望先が都庁でしたが、試験に落ちてしまい、もうひとつの受験先である違う地方自治体に就職しました。しかし、業務規模や内容の幅広さ、世間体等を考えると、今後数十年に渡って働きたいと思えるのは、都庁だという気持ちが強く、社会人になり改めて受験し直しました。
川崎市役所→東京都庁/公務員(事務系)


新卒時に受験して不合格だった団体を、社会人になってから受け直したという経緯です。世田谷区役所から東京都庁に移った投稿者が転職先を選んだ理由は、次の一文でした。


より規模の大きい事業に携われるという点。
世田谷区役所→東京都庁/公務員(事務系)


朝霞市役所から東京都庁に移った投稿者も、担う仕事の広さを理由に挙げています。


基礎自治体の役割は非常に重要だと思いましたが、より大きな影響力を持ち、先進的な施策を牽引する東京都のビジョンにこそ、自分の力を捧げたいと確信したことが最大の転機です。
朝霞市役所→東京都庁/公務員(事務系)


紹介した3件はいずれも、住民に近い基礎自治体から、より広域を扱う団体への移動でした。



地方公務員から国の省庁への転職


地方から国への移動として投稿されていたのは、沖縄県庁から法務省、高崎市役所から厚生労働省、東京都庁から経済産業省の3件でした。


高崎市役所から厚生労働省の労働基準監督官になった投稿者は、転職のきっかけを次のように書いています。


人の役に立ちたくて公務員になったが、初期配属された市民課は実質高齢者の話し相手になる仕事が多く、アンマッチを感じたため
高崎市役所→厚生労働省/労働基準監督官


同じ公務員という枠のなかでも、担う業務が想定と違ったことが転職の入口になっているケースです。東京都庁から経済産業省に移った投稿者は、キャリアの終着点から逆算したと書いています。


行政官→大学院→退職後は大学で教鞭を取るというキャリアゴールから逆算したときに、転職したほうがよいと考えたため。中途採用者を霞が関が積極採用していることは知っていましたが、大学院への留学支援制度も使えるという話を聞き、非常に関心が高まりました。
東京都庁→経済産業省/公務員(事務系)


沖縄県庁から法務省に移った投稿者は、公務員の選考について次のように受け止めています。


その中でも公務員は、年齢制限はあるものの既卒や職歴をそこまで問わず公平に審査してくれるため、自分も勝負できると感じた。
沖縄県庁→法務省/公務員(事務系)


これは投稿者個人の受け止めですが、前述した人事院の受験資格の立て方(在職年数ではなく学歴と卒業後の経過年数)とは方向が一致しています。



国の省庁間の転職


省庁から省庁への移動として投稿されていたのは、気象庁から国土交通省の1件でした。いずれも技術系の職種です。転職理由は次のとおりです。


観測業務を行っていたが、自動化等を考えると将来性がないと感じた
気象庁→国土交通省/公務員(技術系)



都道府県・市から市役所への転職


同じ地方公務員の枠内での移動として投稿されていたのは、埼玉県庁から戸田市役所、横浜市役所から札幌市役所、草加市役所から川口市役所の3件でした。


このうち埼玉県庁から戸田市役所に移った投稿者は、転職活動の方針そのものを次のように書いています。


公務員から公務員の転職ありきで考えて活動した。滑り止めも確保しつつ、業務の内容で転職先を選択した。基本的には専門性が高い業務かつ職種であれば、スキルを活かせるかつ公務員特有の異動スパンにも悩まされないと考えた。
埼玉県庁→戸田市役所/公務員(技術系)


きっかけとして挙げられているのは、専門性と残業でした。


前職では若いうちから大きな仕事に携わることが出来、成長できたと感じていた。しかし、どの所属に属していても専門的なスキルは養えなかった。また、マンパワーで乗り切ろうとする社風であったため、残業が大変多かったことがきっかけ。
埼玉県庁→戸田市役所/公務員(技術系)


この投稿では、事務系から技術系へと職種も変わっています。専門性が身につく職種を選ぶことで、公務員特有の異動サイクルの影響を抑えるという発想です。


横浜市役所から札幌市役所に移った投稿者は、勤務地を起点に転職先を絞り込んでいます。


札幌で公務員となると、開発局、道庁、札幌市役所か近郊の自治体になるが、絶対札幌に住むとなると、札幌市しかありえないこともあり、これ以外の選択肢がなかったため。
横浜市役所→札幌市役所/公務員(技術系)


草加市役所から川口市役所に移った投稿者は、扱う行政課題の幅を理由に挙げました。


草加市では主に業務(市民税や収納業務など)に携わっておりましたが、川口市は規模も大きく、産業や人口構成の多様性が高いことから、より高度な行政課題に取り組める環境だと感じました。
草加市役所→川口市役所/公務員(事務系)




参考|公的セクターを含む関連事例


以下は、独立行政法人・国立大学法人・団体などが関わる事例です。これらの職員は、この記事で扱っている国・地方の公務員とは区分が異なります。 公務員から公務員への転職の事例としてではなく、公的セクターに関わる移動の参考として紹介します。


自衛隊から大学法人への移動として投稿されていたのは、防衛省自衛隊から沖縄科学技術大学院大学学園の1件でした。定年の早さが起点になっています。なお自衛官は特別職の国家公務員です。


自衛官は定年が早いため、定年まであと5年に迫っていた。自衛隊で身に着けた安全業務の知識・経験をコアスキルにして、体が健康な限り働き続けるだけのキャリアを身につけたかった。
防衛省自衛隊→沖縄科学技術大学院大学学園/内部監査・内部統制


外務省から独立行政法人であるJICAに移った投稿者は、公的セクターに絞って転職先を探したと書いています。


中央アジアの専門家として、現地駐在も含めたキャリアを描ける会社は数少ない。また、自分にとってはビジネスを通じて利益をあげるより、日本がよりよい国際関係を築くために働くことのほうが働き甲斐があります。なので、公的セクターでの仕事を探しました。
外務省→JICA/団体職員


団体職員から国の省庁へ移った投稿もありました。JA全農から厚生労働省の労働基準監督官になった投稿者は、大学での専攻を理由に挙げています。


大学で労働法を専攻しており、自身の専門であったため。
JA全農→厚生労働省/労働基準監督官


国立大学法人から自治体への移動もあります。香川大学から東京都庁に移った投稿者の理由は次のとおりです。


「少子化」という構造的な問題から、大学職員の将来性を危惧し、より広いフィールドで従事でき、圧倒的な財政基盤と影響力を持つ東京都庁を希望。
香川大学→東京都庁/人材開発・人材育成・研修






4. 複数の転職体験談で確認できた理由


紹介した転職体験談のうち、複数の投稿で挙げられていた理由を3つ取り上げます。これらは投稿された事例の範囲で確認できた内容であり、公務員間の転職理由の全体傾向を示すものではありません。


1つ目は、扱う事業の規模や裁量です。 市区町村から東京都庁への3件と、草加市役所から川口市役所への1件で、担う行政課題の幅や事業規模が理由に挙げられていました。いずれも基礎自治体から広域自治体へ、あるいは人口規模の小さい市から大きい市へという方向でした。


2つ目は、勤務地と生活です。 横浜市役所から札幌市役所への投稿は、地元に戻ることを前提に選択肢を絞り込んでいました。勤務地を先に決めると、受験できる団体はかなり限られます。


3つ目は、働き方です。 警視庁から芦屋市役所への投稿では夜勤と休日が、埼玉県庁から戸田市役所への投稿では残業が理由に挙げられていました。ただしこれらは1件ずつの投稿であり、組織全体の状況を示すものではありません。






5. 転職先を選ぶときに確認しておきたい3つの点


給与表や制度は団体間で似ていても、実際の働き方には差が出ます。ワンキャリア転職に投稿された社員クチコミから、公務員から公務員への転職で見落としやすい点を3つ挙げます。


異動のサイクルと専門性


前述の埼玉県庁から戸田市役所への転職体験談では、専門的なスキルが身につかなかったことが転職のきっかけに挙げられていました。同じ埼玉県庁のクチコミにも、近い記載があります。


土木や設備などの専門職採用の職員は専門性が身に付くが、一般行政は3年に一度の配属ガチャの連続で、専門性が身に付くことは期待できない。
埼玉県庁/企画財政部/新卒


東京都庁のクチコミでは、異動希望の通り方について次のように書かれています。


基本的に異動希望はかなわないと考えていた方がよい。
退職者や育児休業者が出たらそこにあてはめられるような「玉突き人事」が大半である。
東京都庁/スポーツ推進本部/中途


異動のサイクルと希望の通りやすさは、専門性を積みたい人にとっては転職の目的そのものに関わります。志望する団体で職種別採用があるかどうかは、確認しておく価値があります。


なお、川口市役所のクチコミには、その後のキャリアについて次の記載がありました。


基本的には他の地方公務員や国家公務員への転職しか道はない。
川口市役所/税務課/中途


投稿者個人の見方ですが、公務員から公務員への転職が現実的な選択肢として意識されていることの一例です。



残業と休日


働き方を理由に転職する場合、転職先の実態を確認しないと同じ状況を繰り返す可能性があります。埼玉県庁のクチコミには、入庁前の想定との差が書かれています。


ホワイトな環境で、アフター5は充実…と淡い期待をよそに、夜中まで電気のついている課の多いことに驚いた。
埼玉県庁/企画財政部/新卒


札幌市役所のクチコミでは、残業と給与の関係について次のように書かれています。


昨今36協定を守るような雰囲気のため、残業代で稼ごうという職員自体が減ってきている。このため、月の給料を気にすることが多くなったので、ワークライフバランスと給料が両立できるか考えた方がよい。
札幌市役所/建設/中途


東京都庁のクチコミには、配属先による差についての記載もあります。


基本的に学校職場においてはリモートワークはできない。上司が許可すれば可能であるが、窓口業務があるため出勤しないと同じ職場の人に迷惑がかかってしまうため、気軽に申請できない。
東京都庁/都立高校経営企画室/新卒


同じ団体でも本庁と出先機関で働き方が変わる点は、団体名だけでは判断できません。



年収の水準と上がり方


年収についても、団体ごとに水準と上がり方が違います。東京都庁のクチコミには次の記載があります。


年収面では、昇給幅が限られている。評価制度の基準が曖昧な部分もある
東京都庁/デジタルサービス局/中途


横浜市役所のクチコミでは、給与テーブル自体の改定に触れられています。


人事委員会勧告によって給与テーブルが変わる。近年は若年層を中心としたベースアップが図られており、入社してから初任給が4万円近く上がった。これはいい意味でギャップだった。
横浜市役所/人事部門/新卒


警視庁のクチコミには、公安職の給与についての受け止めが書かれています。


公安職ということで、給料は他の公務員と比べると良いということは知っていた。実際に他の公務員の知り合いよりは年収は高いイメージだが、民間の大規模な会社と比べると劣っていると思う。
警視庁/地域課/新卒


昇進の仕組みも団体によって異なります。川口市役所のクチコミには次の記載があります。
川口市役所では、主任までは基本的に年次に沿って昇進していく仕組みです。
川口市役所/税務課/新卒


公安職から一般行政職へ移る場合のように、給与体系そのものが変わる移動では、目先の年収だけでなく昇進の仕組みまで確認しておく必要があります。





6. まとめ


公務員から公務員への転職について、公式情報とワンキャリア転職の投稿から確認できたことを整理します。


  1. 本記事で確認した2つの制度では、在職中であることだけを理由とする一律の除外は確認できなかった。人事院の2026年度 経験者採用試験(係長級(事務))の受験案内には公務員在職者を除く規定がなく、求める人材には「民間企業、官公庁、国際機関等」の職務経験が挙げられている。ただし採用試験ごとに受験資格は異なる
  2. 受験資格の立て方は「職務経験○年以上」ではない。人事院の受験案内は、学歴と卒業後の経過年数を基準にしている
  3. 東京都では、在職先に関する制限として原則として東京都職員が対象外。注記により警視庁の警察官と東京消防庁の消防吏員が東京都職員に含まれる。ほかに年齢・国籍・欠格条項・職務経験年数などの要件もある
  4. 在職中に確認しておきたい手続は経験年数の入力と職歴証明書。在職中の経験は翌年3月末時点の見込みで入力し、最終合格後に証明書類の提出を求められる
  5. 退職手当と共済組合員期間は別の制度。国と地方の共済組合員期間は通算して年金が計算されるが、退職手当は移動の方向によって確認する規定が異なり、個別の事情も関わる
  6. 投稿された移動の方向はばらけている。市区町村から都道府県へ、地方から国へ、県から市へ、警視庁から市役所への移動がそれぞれ投稿されている


公務員から公務員への転職は、団体ごとに受験資格・併願の可否・中途採用の実施状況・退職手当の規定が異なります。志望先が決まったら、その団体の受験案内を確認し、退職手当については現在の所属先と志望先の人事担当に個別に確認するのが確実です。





よくある質問


Q. 在職中の公務員でも経験者採用試験を受験できますか?


人事院の2026年度 経験者採用試験(係長級(事務))受験案内に記載されている受験できない人の条件は、日本の国籍を有しない者、国家公務員法第38条の規定により国家公務員となることができない者、平成11年改正前の民法の規定により準禁治産の宣告を受けている者です。この受験案内には、公務員として在職中であることを理由に除く規定はありません。また「求める人材」には「民間企業、官公庁、国際機関等の社員・職員等として従事した職務経験」と記載されています。ただし受験資格は採用試験ごとに異なるため、志望先の受験案内を個別に確認してください。



Q. 「経験者採用は職務経験○年以上が必要」と聞きましたが、実際の受験資格はどう書かれていますか?


人事院の受験案内では、学歴と卒業後の経過年数で定められています。試験の区分「府省合同A」は大学等の卒業または大学院の課程等の修了から2年、「府省合同B」は高等学校を卒業した日から11年、短期大学等を修了した日から9年、大学等を卒業した日から7年、大学院の課程等を修了した日から5年などとされています。一方、東京都のキャリア活用採用選考では「民間企業等(官公庁含む)における職務経験年数」が要件で、大学卒業(4年制)なら7年以上と定められています。制度によって要件の立て方が違うため、志望先ごとに確認が必要です。



Q. 退職手当は前の職場の分と通算されますか?


確認する規定が移動の方向によって異なります。地方公務員の退職手当は、総務省の資料によると地方自治法第204条第2項および第3項の規定により各地方公共団体の条例で定めることとされています。一方、国家公務員の退職手当は国家公務員退職手当法によります。したがって転職先が地方公共団体ならその団体の条例、国なら国の規定を確認することになります。あわせて、前の勤務先を退職した際に退職手当が支給されたかどうか、退職と次の採用が「引き続いて」行われたものとして扱われるかどうかといった個別の事情も関わります。この記事では一般的な結論は示しません。現在の所属先と志望先の人事担当に個別に確認してください。



Q. 年金(共済組合員期間)は国と地方をまたいでも通算されますか?


国家公務員共済組合連合会(KKR)のよくあるご質問には「国家公務員と地方公務員の組合員期間は、両期間を通算して年金を計算することとなっています。」と記載されています。あわせて「最終勤務先が国家公務員となる場合、地方公務員の期間は国家公務員の期間と通算して、連合会で決定します。」とされています。ここで示されているのは年金の計算についてであり、退職手当の勤続期間とは別の制度です。



Q. 市役所から県庁への転職事例はありますか?


ワンキャリア転職に投稿された転職体験談のうち、市区町村から都道府県への移動として投稿されていたのは、川崎市役所・世田谷区役所・朝霞市役所から東京都庁への3件でした。県庁への移動を記した投稿は確認できませんでした。



Q. 複数の採用試験を併願できますか?


人事院のQ&Aには「複数の経験者採用試験を同時に受験することはできませんので注意してください。」と記載されています。一方、東京都のキャリア活用採用選考案内には「*東京都職員経験者採用選考と併願ができます。」という記載があります。ただし同じ案内には複数の選考区分の同時申込みができないこと、令和8年度就職氷河期世代を対象とした東京都職員採用試験には申し込めないことも記載されています。併願の可否は制度ごとに個別に定められています。



Q. 現職に受験することを報告する義務はありますか?


今回確認した人事院と東京都の公式ページには、現職への報告義務についての記載はありませんでした。ただし東京都では最終合格後に職歴証明書等の提出を求められ、職務経歴等が証明できない場合は採用されないことがあるとされています。証明書の発行方法や依頼先については、事前に確認するとよいでしょう。



Q. 官民人事交流制度を使えば、在籍したまま他の自治体で働けますか?


人事院の官民人事交流制度は「国と民間企業との間の人事交流に関する法律」に基づく制度で、交流対象として列挙されているのは株式会社、監査法人、医療法人、学校法人、社会福祉法人などです。地方公共団体は含まれていません。また期間は原則3年以内(最長5年)と定められています。






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