これまで数多くの人が経験してきたにもかかわらず、何かとブラックボックスの多い「キャリア」。「キャリナレ!」では、キャリアをもっとオープンにするために、経験者にしか分からないリアルを解き明かし、キャリアナレッジとして集めていきます。
「キャリナレ!インサイドセールス編」の記念すべき第10回のテーマは、「インサイドセールスから広がるキャリア」。ゲストは、ISからCSを経験し、現在フリー株式会社でHRBPをされている星山由佳さんです。
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お客様の声に責任を持ちたい…その想いからビズリーチへ
本間:本日はよろしくお願いします。星山さんはいろんな業界・職種を経験されていると思うのですが、まずはこれまでのご経歴を深掘りさせていただければと思います。
新卒ではSIerでプリセールスをやられたあと、株式会社ビズリーチ(現ビジョナル株式会社)でインサイドセールスをされていたとのことなのですが、その経緯を教えていただけますか。
星山:はい。フロントに立つ営業の方をエンジニアの視点でサポートしていくプリセールスを担当しており、仕事自体に特に不満はありませんでした。でも、たまにお客様と接する機会があり、そこでお客様の抱えてる課題を聞けたんですが、これって、たまたま今日フロントに立っていたから実感できたことで、立っていなかったら気づけなかったかもしれないと思いました。
「もっとお客様の声をちゃんと生で聞かなくていいんだっけ」「自分がお客様の声を聞いたんだからちゃんと責任持ってフロントに立ってやるべきだよな」とモヤっとした焦燥感が生まれていたんです。
そんな時にご縁があってビズリーチの面接をしていただけることになりました。そこで出会ったのが、当時営業部長でのちに代表になった多田さんでした。多田さんとの面接は30分ぐらいで終わっちゃったんですよね。そして、その場ですぐに内定もいただきました。。その意思決定の速さが面白かったですし、絶対ここに入りたいなと思いました。
本間:人に惹かれて、という要素が大きかったんですね。そのビズリーチには4年ほど在籍されていると思うのですが、具体的にどういうことをやってきたんでしょうか。
星山:最初に、インサイドセールスから入って、その後にフィールドセールス、BtoBマーケチーム、そして地方創生事業に携わりました。
フィールドセールスの時にはカスタマーサクセスまで一気通貫でやらせていただき、地方創生事業もフィールドセールス的な立ち位置で、獲得からサクセスまでやっていました。特にサクセスでは、担当企業様の採用成功まで導くのと、メンバーのマネージメントまでしていました。
未経験領域でも活きた「役割」にとらわれない働き方
本間:そこから次はスイスの外資メーカーに移られたんですよね。どういった経緯で、IT領域からメーカーにチャレンジしようと思ったのでしょうか。
星山:これもそのメーカーの方と知り合ったことをきっかけに、そこのシューズが大好きになっちゃって。有形商材というか、自分の好きな「人が手に取る物」というところに一度は関わってみたいと思ったのがきっかけです。私が日本で6人目という規模のときにジョインしました。
本間:そんなタイミングだったんですね。その際、社会人歴としては10-11年目のタイミングで全く違う領域への転職はある種チャレンジングだなと思いまして。どうやってキャッチアップしていったんでしょうか。
星山:正直、業務的なキャッチアップは壁にぶち当たったことがないです。ビズリーチでお客様に価値提供するために、自分が成長しなくちゃいけないと思って培ってきたスキルやインプットを、そのまま応用できたんです。とにかく、そのブランドに関わるということが私の中で大事にしていた軸でした。ぶっちゃけ、何でもやりますって感じだったんです。
なので、スキル面よりも商材が変わったことによる難しさの方が大変だったかなと思います。
本間:「自分の役割を決める」というより「お客様や事業の成長のためには何でもやります」という、ビズリーチで培ったマインドがその次のメーカーでも活きているということですか。
星山:その通りです。自分のキャリアを振り返ると、常に役割にとらわれず仕事をしてきたという自負があります。
常に誰のため、何のためにやるのかを問い、ユーザーに価値を届けるという軸を最優先に考えていました。
このマインドはビズリーチ時代に培われたと思います。
恩人の想いを後世に残したい。freeeのHRBPに至った理由
本間:ありがとうございます。その後、ビットキー(IoT系のシステムのベンチャー)に行かれていますよね。ここはどういった背景でご転職されたんでしょうか。
星山:ここもチャレンジングな転職だったんです。外資メーカーでは、ブランドが好きでしたが、結局スイス本社のブランチという立場で、やれることの範囲は狭かったんです。
それが悪いわけではありませんが、基本的に会社の成長幅と個人の成長幅は比例すると思っています。
最初の転職でビズリーチを選んだのもそれが理由です。ビズリーチという成長企業なら自分も成長できるはずと信じて選択しました。一方、外資のメーカーでは成長性に限界を感じる出来事があったので、もう一度、ITに戻ろうと思いました。そこで初めてちゃんと転職活動をしたかもしれないです。
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本間:そうなんですね。その初めての転職活動の中で、ビットキーさんに決められたのはどういう背景だったんですか。
星山:面接を通してなんかワクワクさせてもらえたな、と思えたのがビットキーでした。プロダクトの成長性に惹かれたんです。
本間:具体的に、ビットキーさんではどういう業務を担われていたんですか。
星山:ビットキーでは、workhubというオフィス向けのプロダクトが初めて世に出る案件のカスタマーサクセスを担当しました。
サクセスの部署ではありつつも、実際は事業開発的な動きを求められ、新規事業立ち上げのような感覚でした。
プロダクトの導入支援から、導入支援のプロマネもやる中で、営業時のお客様の期待値に対して導入過程でギャップが生じ、苦戦しました。
そこをどう埋めるかも開発と密に連携を取りながらやっていました。どうすればお客様のやりたいことを実現できるかを熟考していましたね。
本間:ここでは採用関連業務にも携わられたんですか?
星山:そうなんです。私がもともとビズリーチにいたということもあり、採用に明るいだろうということで声がかかりました。
本間:なるほど。では、採用などの人事系のキャリアはそこが最初だったんですね。そこから今現在のfreeeさんでのHRBPになるまでには、どういった経緯があったんでしょうか。
星山:今のfreeeに入りたいと思った一番のきっかけは、私自身が両親ともに自営業の家系だったことです。
小さい時からスモールビジネスのいいところも悪いところも見てきて、改めてそこに関わることが、自分の人生にとって非常に意味のあることだと感じていました。それでご縁もあって、今こうしてfreeeでHRBPのお仕事をしています。
あと、ビズリーチで多田さんにすごくお世話になったんです。その多田さんが一昨年に他界され、そこで人生を考え直したんです。多田さんのおかげで、今の自分のキャリアや人格があると再認識し、多田さんがやってきたこと、やりたかったことを、後世に残す仕事をしたいなと思ったんです。
本間:めちゃくちゃエモいですね。
星山:エモいですよね。で、それがもしかしたら人事なのかもと思いました。だからここはもう少し深くやるつもりです。
ただ、繰り返しにはなりますが、人事も一つの手段でしかないですし、結局はサービスや会社を通じて、ユーザーさんに価値が届くことが一番大事だと思っています。
ISでもCSでも共通する「最終的な顧客価値」
本間:一般的には、インサイドセールス・カスタマーサクセス・HRBPは、遠い領域に見えるかと思います。星山さんはすべて経験されてきたわけですが、それぞれの職種での経験がどのように次の職種につながっているか、具体的に教えていただけますか。
星山:ビズリーチではとにかく、アポを取ることがミッションで、そこでいい成果を残せばフィールドセールスになれるという仕組みでした。そのため、リストをつくって架電してアポを取るところからやっていました。
ただ、その当時もアポを取ることがお客様の価値にならなきゃいけない、と意識しながらやっていました。そのおかげか、当時は電話だけで受注していたんです。ビズリーチ内では非対面での受注は初めての成果でした。当時の「アポが取れなくても架電数 (活動量)が多ければ賞賛される」という実態には違和感を感じていたので。
本間:顧客の価値からその先まで考えると言われるインサイドセールスが世の中で言われる前から、星山さんが地で行っていたというのはすごいですね。ビズリーチでは新規開拓・マーケ・CSまで、かなり職種が広がっていったと思うのですが、どんなスタイルでやられていたんですか。
星山:当時、BtoBマーケが流行り出す前で、Bマーケチームとフィールドセールスのつなぎ込みができていませんでした。
マーケチームに異動してとりあえずは、とにかく来たリードをいったん全部さばいていきました。
実地で改善を重ね、最終的にはホットリードと呼ばれるものを獲得して、フィールドセールスにつなげるという活動が始められました。
本間:リード獲得や受注に加えてサクセスまで担当されるとなると、先ほどの「とにかくリストに電話かけて」というインサイドセールスと、かなり頭の使い方が違いますよね。そこはどうやってキャッチアップされたのでしょうか。
星山:インサイドセールスをやってる時も、やっぱり最終的には価値が届かないと意味がないと思っていました。いわゆる会社情報だけでなく、規模感・業種、リリースの情報まであらゆる情報を参照しながら、お客様に今必要な人材を1社ごとに考えていました。そのトレーニングがサクセスでも活きました。
お客様の人事になったつもりでハイタッチで入り込んでいくので、「事業をこうしていきたいからこういう人が欲しい」というのを解像度高く捉えようという意識を持っていました。
例えば、当時のビズリーチのデータベースから5人ほどピックアップして、履歴書を読み込み、転職動機を想像し、複数社経験してる人だとA社からB社に移った時の経緯を考えてみたり、履歴書の裏側にある指向性のようなもの考える時間を毎日作っていました。
そのうえで、候補者に対してどうアトラクトすれば、採用決定まで至るんだろうと考えることで解像度を上げるようにしていました。
本間:すごいですね。その情報収集って、そのままISだろうがフィールドセールスだろうがCSだろうが、お客様のところに持っていったら、めちゃくちゃ喜ばれる情報ですよね。その時からもう意識されてたからこそ、CSにつながって今の採用や人事の仕事にもつながってるのかな、と思いました。
「何のために・誰のためにやるのか」本質に向き合うことの重要性
本間:星山さんの場合は、CSで求められるものをその前のIS経験の中で見出されていたからこそ、うまく滑り出しができたと思います。未経験でCSにチャレンジしたいという方々も、星山さんのように何かしらスタイルが近ければ、問題なく入っていけるものなのでしょうか。
星山:実は、freeeのカスタマーサクセス本部のいわゆる実行実務を担うような方々の採用って、未経験の人も多いんですよ。実際そういう人たちが活躍もしているので、未経験でも不安に思わなくて大丈夫です。
ここでもやはり、何のため、誰のためにやるのかがしっかりご自身の中にあることが重要です。あとは、仕事のアプローチの仕方を見ています。
本間:なるほど。では未経験だとしても、先ほどから出ている「お客様のために自分で考えて行動できるか」という素養が大事なんですね。
星山:おっしゃる通りです。結局、何か渡されたテーマの中で適切に情報を揃えて、課題を見つけ、その課題の中でも本質的に何からやらねばならぬかを特定し、そこのアプローチを見立て、企画し、実行しきる力はどの職種でも求められる要素です。
今のfreeeのカスタマーサクセス本部も、サクセス業務だけを実行をする人は多くありません。お客様に長く使い続けていただくというミッションのために、色々なことに取り組む部隊なのです。
なので、採用自体もポジションによってペルソナが異なります。事業企画や営業経験、アカウントマネージャー的な動きができる人、KPIの活動量の可視化ができる人など様々です。
もちろん、自分が経験したことのない役割や職種の方を採用することは、かなり難易度が高いです。
ただ、私自身、自分と近しくない職種の人と一緒に仕事することが多かったこともあり、その経験が活かされています。HRBPに必要なのも、自分と遠い役割や業務に関する想像力と、キャッチアップ力だと思います。
本間:ありがとうございます。最後に、聞いてくださってる方に、メッセージをお願いします。
星山:私のキャリアは偶発的で、自分が強く望んでこのキャリアを歩んできたわけではないです。ただ分岐点ごとの選択が間違っていなかったと、今自信をもって言えます。
選択が「良かった」と思えるかどうかは、自分次第でしかない。選択をいいものに変えられるのは、環境ではなく、自分自身だと思うので、そこだけは見失わずにやってほしいなと思います。
採用面接をしていると、「企画職やりたいです」「事業開発やりたいです」って言ってくださる方がいるんですが、企画職も事業開発も別に役割を与えられたからできるものではないと思っています。別にどの職種であっても企画はできるし、事業開発的なことはできるのです。
価値の発揮の仕方は様々なので、その役割にとらわれずに仕事と向き合っていくのが、やりたいことへの近道になるのでは、と感じています。
いかがでしたでしょうか?
キャリナレ!では、今後も様々な職種を経験された方をお呼びして、経験された方にしかわからないキャリアのナレッジをたくさん聞いていきます。
次回もぜひお楽しみに。
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