これまで数多くの人が経験してきたにもかかわらず、何かとブラックボックスの多い「キャリア」。「キャリナレ!」では、キャリアをもっとオープンにするために、経験者にしか分からないリアルを解き明かし、キャリアナレッジとして集めていきます。
「キャリナレ!インサイドセールス(以下、IS)編」の第9回のテーマは「未経験からのIS」。ゲストは、大工から不動産営業を経てビズリーチでISを経験後、スタートアップへキャリアを広げてきた倉方聡行さんです。
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未経験→ビズリーチの経験が経営企画へキャリアを広げた
喜多:早速ですが、自己紹介をお願いします。
倉方:私は高校卒業後、3年間大工職人として働いた後、投資用不動産の会社に入社して営業を経験し、リファラル採用でビズリーチにジョインしました。ビズリーチでは法人営業やISの立ち上げなどに従事した後、ミーミルにジョインし、BtoBマーケティングやISの立ち上げ、経営企画としてBPRに携わりました。
その後、さらにスタートアップのカオスな環境に挑戦したいと思い、2024年2月からハイタレントという会社でBtoBマーケティングの立ち上げ、セールス活動に従事しています。
喜多:ISのキャリアはビズリーチから始まったということですが、どのような魅力を感じたのでしょう?
倉方:単に顧客との折衝だけでなく、マーケティングやフィールドセールスなどの部門と円滑にコミュニケーションしたり、仕組み化をしたりする点です。
また、ビズリーチ時代に所属していた組織は社内のオペレーションの効率化、顧客の体験向上のためにテクノロジーを活用する部門だったので、新しい世界や景色を見せてもらったと思っています。
喜多:ビズリーチでの経験はミーミルでどのように発揮されたのでしょう?
倉方:最初はISの立ち上げをやりながら、社内のオペレーションを見たり、商談獲得業務をやったりしていました。それからマルケトを導入し、ISやBtoBマーケティングにどのように活用するか、どういうナーチャリングモデルがミーミルにとって効果的なのかなどを議論しながら、マルケトのシステムに落としていきました。
もっと言うと、立ち上げ期だったのでKPIやKGIをどうするのか、レベニューモデルや事業計画、モニタリングの体制整備など、経営企画の領域まで業務の領域は広がっていきましたね。
喜多:キャリアのはじめが不動産での現場のお仕事だったことを考えると、かなり業務の幅が広がっていますよね。そして、現在はさらにアーリーフェーズのスタートアップに転職された?
倉方:はい。ハイタレントには先日ジョインしたばかりですが、社員は20名弱で、ISの機能や概念もない、カオスな環境です。前職のミーミルは50名ぐらいの組織でしたが、30名違うだけでも、いい意味でかなり環境のギャップは大きいなと感じますね。
喜多:発展途上のカオスな組織に入って、体制が整ってくるとまたカオスな組織を整えに行きたくなる、そんなキャリアなんですかね。
倉方:そうですね。自分でも振り返ったことがあるのですが、組織立ち上げなど「ゼロからイチを立ち上げること」が、私は根っから好きなんです。
大工職人って図面や設計図だけある状態から更地に家を作り上げますよね。そういうゼロから何かを立ち上げる喜びみたいなのは大工時代から来ているのかなと思っています。
不動産からITへ。待っていたのは、全く別の世界
喜多:ここからは未経験からのIT/SaaS業界への転職について深堀していきます。まず、不動産営業からビズリーチに転職されて違いや戸惑いを感じたことはありましたか?
倉方:不動産営業時代は、1日600架電とか、ダイヤルイン方式でひたすら電話をかけまくる、今でいうとテレマーケティングみたいな業務でした。顧客情報をストックするために、自分で小さなノートにひたすらメモをためていまして、それが1年くらいで計20冊くらいになる。そんな仕事風景でした。
転職先のビズリーチで驚いたのは、顧客の情報をSalesforceに入力するということです。実は、それまで私はパソコンすら使ったことがなかったのです。支給されたパソコンを見て「カッコいいな」と思いながらも、タイピングの仕方からマネージャーに尋ねながらのスタートでした。全く違う世界にきたなというぐらいの変化が当時はありました。
喜多:カルチャー面には違いがありましたか?
倉方:不動産営業では、成果が属人的な部分がありましたが、ビズリーチでは「仕組み化してチームで成果を最大化しようとするカルチャー」がありました。
地域別にチームが組成され、セールス部隊同士の連携を大事にしていたので、最初の半年は成果に伸び悩んだのですが、周りの上司や同僚にはかなり手厚くサポートをいただいて、とてもありがたかったですね。
不動産営業の経験はインサイドセールスにどう活きる?
喜多:逆に不動産営業時代の経験がISで活きた部分はありましたか?
倉方:やはり実行力やあきらめない「ド根性精神」、「やり切る力」はISでもいろんなところに活きていると思います。
例えば、会社との約束である目標へのコミットや、マーケティング部門とセールス部門の連携の部分で自ら立てた施策を実行するなどの場面です。ISを立ち上げるフェーズの時はオンラインセールスも私一人で担当したのですが、朝8時から夜8時まで口が切れるような思いをしながら、1日15件、月165件の商談をやり切りました。
喜多:不動産営業からSaaSやITのキャリアパスとして考える人がそんなに多くないと思うのですが、相性はどうなんでしょうか?
倉方:不動産業界に勤めている方はお金をしっかり稼ぎたいというマインドの方と、顧客のためになりたいという方と主に2パターンいるかなと思っています。
前者の方は不動産業界でキャリアを重ねていったほうが自分のwillを実現できると思いますが、後者の方で世の中をもっと良くしていきたいというマインドを持っているなら、ITやSaaS業界はおすすめです。
不動産営業の経験者はインセンティブもかなりシビアで実行が求められるため、コミット力や馬力が違うなと思います。
また、投資用不動産営業だと富裕層向けのクライアントがベースでビジネスマナーやコミュニケーションスキルが身についているので、こうしたスキルセットはどの企業でも高く評価されるのではないでしょうか。
名ばかりのインサイドセールスに注意?未経験転職のポイント
喜多:倉方さんのように業界未経験でISを目指す場合、企業選びで注意するポイントはありますか?
倉方:コロナ明けからISのポジションは増えている印象ですが、ISとして力をつけることができる環境かどうかは企業によってもかなり違うと思っています。「体系的に仕組み化されたインサイドセールスなのか、それとも名前だけのインサイドセールス部門なのか」を見極めることは重要です。
前者の仕組み化されたインサイドセールス組織は、きちんとテクノロジーに投資をして、イネーブルメントや教育する部隊がいるはずです。こうした組織であれば、未経験で採用されるケースも多いですし、コミット力やコミュニケーション力があれば成長できると思います。
一方で、コールセンターやテレコールっぽい組織に入ってしまうと、役割としてコールメインとなるので、忍耐力は付きますがインサイドセールスとしてのキャリアの広がりとしては遠回りになる可能性が高いと思います。
ISからFSにもマーケにも企画にも。多様に広がるキャリア
喜多:ISを経験したからこそのキャリアの広がりについて教えてください。
倉方:ISはキャリアパスにおいては最強の職種なのではと個人的には思っています。なぜなら、ISはマーケティングにも、フィールドセールスにも関わる、司令塔のような役割だからです。
ISが顧客の一次情報を持っているので、マーケティングに対しては「どういう基準でナーチャリングをしてくのか」「ウェブ広告でお客さんがどんなキーワードから探しているのか」「どう訴求できるのか」などをフィードバックしますし、フィールドセールスに対しても商談を円滑に進める為に情報をまとめセールスへの橋渡し的な役割を担います。。
さらに言えば、ISは顧客の悩みをたくさん聞いているので、カスタマーサクセスとして既存顧客の悩みに寄り添い、関係性を築くことができる点も当てはめられる部分があると思っています。
そのため、ISからBtoBマーケティング、フィールドセールス、カスタマーサクセス、さらにISのマネジメントなど、キャリアは多方面に広げることができると思います。
喜多:倉方さんは企画業務にもキャリアを広げていかれていますよね。
倉方:ISは定性定量的なデータもかなり活用する部門になるので、私自身レベニューサイドの企画業務も選択肢として与えられたと思っています。
あとは、ISでSalesforceやマルケトの活用に精通していたので、ビズリーチを出た後でもSalesforceの設計や構築、レベニューサイド全般にキャリアが広がっていった気がします。
喜多:ISから企画業務のキャリアパスは王道なのでしょうか?
倉方:必ずしも王道とは言えないと思います。逆に、ISの次のキャリアとしては、マネージャーやセールス部門のリーダー候補になるなど縦に広がっていくパターンが多いのかなと思います。
私自身は興味がある分野を深掘りしていく性格のせいか、レポートを組んでいるだけでなく、裏側のフロー設計やトリガー設計がどうなっているのかを研究してしまうので、それが次のキャリアにも繋がったのかなと思います。どちらかというと、ISからにじみ出ていった感じですね。
喜多:本当にいろんなことをやってこられたんですね。そして、2024年2月からは新しい環境にチャレンジされるということですが、今後はどんなキャリアを考えておられるんですか?
倉方:今はテクノロジーも進化しているため、積極的にテクノロジーには投資していきたいですし、新しいトレンドにも常にアンテナを張りながら、ハイタレント流にアレンジし、しっかりグロースするところまで持っていきたいなと思っています。
喜多:最後に聞いていただいているリスナーの方へのメッセージをお願いできますか?
倉方:ISという職種からは無限のキャリアの広がりがあると思います。最初はほかの会社への転職って勇気がいると思いますが、一歩踏み出してISという職種に飛び込んでみてください!
いかがでしたでしょうか?
キャリナレ!では、今後も様々な職種を経験された方をお呼びして、経験された方にしかわからないキャリアのナレッジをたくさん聞いていきます。
次回もぜひお楽しみに。
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