M&Aや事業再生など、企業の重要な経営判断を財務・会計の専門知識で支えるFAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービス)。高い専門性と魅力的なキャリアパスから、若手ハイクラス層を中心に転職市場での注目度が高まっています。
しかし、その具体的な仕事内容や、戦略コンサル・監査法人との違いについては、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。本記事では、FASの定義から具体的な業務内容、求められるスキルを解説します。
1. そもそもFASとは?
1-1. FASとはなにか
FASとは「Financial Advisory Service」の略称で、企業のM&A、事業再生、事業改革といった重要な局面において、財務・会計の専門知識を活かしたコンサルティングサービスを提供する業務を指します。
監査業務が「過去の財務諸表の信頼性を検証する」役割を担うのに対し、FASは「未来に向けた企業の取引や再建を成功に導く」ことに重点を置いているのが大きな違いです。
日本では中小企業を中心にM&Aが急増しており、2022年度だけで民間支援機関経由によるM&Aが約4,036件、支援センター経由と合わせると約5,700件に達しました。
(*)事業承継・M&Aに関する現状分析と 今後の取組の方向性について
また、近年では中小企業白書にも「M&Aの件数は増加」、支援機関への相談・成約も増えていると記されています。
このような取引の増加を背景に、企業の意思決定を財務面から支えるFAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービス)の重要性とニーズはますます高まっています。
(参考)デロイト トーマツ、ディールアドバイザリー | PwC Japanグループ
1-2. コンサルとの違い
FASと一般的な戦略コンサルや経営コンサルは、カバーする領域と専門性の軸が異なります。
- 戦略コンサル・経営コンサル: 事業戦略の策定、市場分析、組織改革といった定性的な領域に強みを持ちます
- FAS: 財務データに基づいた定量的な分析や、M&A取引の実行支援といった財務・会計領域を専門とします
また、監査法人の監査業務は、過去の会計処理が適正であったかを検証するのに対し、FASはM&Aや事業再生といった未来に向けたアクションを支援する点で明確に異なります。
実務においては、戦略コンサルとFASが協働するケースも多く見られます。例えば、戦略コンサルが「どの会社を買収すべきか」という戦略を提案し、その提案を受けてFASが「対象企業の財務リスクを特定し、適正な企業価値を算定する(デューデリジェンス、バリュエーション)」といった役割分担でプロジェクトを進めます。
(参考)トランザクション・アンド・コーポレート・ファイナンス by EY-Parthenon | EY Japan、KPMG FAS - KPMGジャパン
1-3. FASを提供する代表的なファーム
日本国内でFASを大規模に提供しているのは、主に世界的な会計事務所グループであるBig4系のファームです。これらのファームは、グローバルネットワークを活かしたクロスボーダー案件に対応できる点が大きな特徴です。
▼BIG4系FASについてはこちらの記事でも詳しく解説しています
2. FASの主な業務内容とやりがい
さらに・・・
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