ONE CAREER PLUSがお送りする「トレンドテーマ別企業紹介シリーズ」第4回はVRです。VRというとゲームやエンタメでの活用をイメージしますが、技術が進化することで医療や観光、不動産業など、他の領域への利用拡大も期待されています。
ここでは、VRが注目されている理由と、VR技術を活用したさまざまなサービスやプロダクトを開発し、販売している企業をご紹介します。
VRとは?
VR(Virtual Reality)とは日本語で「仮想現実」と訳され、コンピューターによって創り出された仮想空間をまるで現実かのように体験できる技術です。現在、仮想空間による没入感を得るにはゴーグルを装着する必要があります。
類似の技術にAR(Augmented Reality)があり、「拡張現実」とも呼ばれます。ARはVRと異なり、現実空間にバーチャルな世界を「融合させる」ことを指します。ARはスマートフォンを使用しての服の試着体験やメイク体験、ゲームなどに活用されています。
VRゴーグルの2022年度の国内販売数は48万台で、「VR元年」と呼ばれた2016年と比べて約10倍まで拡大しました。MM総研によると、2025年には100万台を超え、2027年度には185万台になると予測されています。
なぜVRが注目されているのか?
VRが注目されているのは、さまざまな分野や産業への活用が可能だからです。エンタメやゲーム以外にも、以下のような分野が挙げられます。
・医療
VRを用いることで、希少症例やリスクの高い手術などのトレーニングや練習を行うことができます。時間や場所の制限なく行えますし、医師はその過程を踏むことで実際の手術に自信を持って臨めます。また、PTSDや恐怖症、不安障害といったメンタルヘルス領域の治療でも用いられる動きもあります。VRを使って高度なシミュレーションを行うことで、患者は徐々にトラウマに慣れて、対処法を学んでいけます。
・不動産
VRを使うことで、未完成の物件や未開発の道路などが実際に存在しているかのように、360度から完成予定の概観や周辺環境を見ることができます。また、実際に現地に内見・内覧に行く時間や手間が省けるため、不動産事業者と入居予定者どちらにもメリットをもたらします。
・観光
観光分野において、VRは実際に旅行に行く前の意思決定を促すプロモーションや、実際よりも格安で旅行気分を味わえるVRツアーで活用されています。すでに多くの自治体がVRを使ったプロモーションを始めています。
企業一覧&キャリアパターン解説
Spacely(スペースリー):360度VRで各業界の課題を解決
#スタートアップ #360度VR
#クラウド #空き家問題 #DX
■どんな事業内容?
2013年設立。空間データ活用プラットフォーム「スペースリー」を開発、提供しています。スペースリーを使うことで誰でも360度VRコンテンツを簡単に制作・編集でき、自社の事業に活用できます。2016年のローンチ以降、2023年11月時点で10,000社以上に、不動産、住宅、観光、ギャラリーの展示アーカイブ、製造業、レストランなどで利用されてきました。
スペースリーはAI×VRの研究開発を推進するために、2018年に「Spacely Lab」を設立。業界初の遠隔地でも簡単にVR空間の案内ができる遠隔接客機能や、パノラマVR写真へ家具を自動配置する機能を含むAI空間設計シミュレータ機能など、高い技術力が特徴です。
■なぜ注目?
スペースリーが注目されているのは、単にVRコンテンツを制作できるクラウドソフトを提供しているだけでなく、それにより各業界のDXを推進している点です。その一つに自治体や不動産業界が取り組んでいる空き家問題があります。
例えば岡山県笠岡市は「空き家バンク」において、地方移住に関心があっても実際に現地へなかなか足を運べない希望者のために、スペースリーのVRを活用しました。特にコロナ禍における効果は絶大で、スペースリーは「第1回 日経自治体DXアワード」の行政業務/サービス変革部門で部門賞を受賞しました。
また2020年以降、スペースリーは完全にリモートワークへ移行。社員は仕事にコミットしながらもプライベートも充実させることができます。若手社員が多く、メンバー同士の絆も強いので、2022年からは社員3人以上が集まって食事に行くと会社が飲食代を負担してくれる福利厚生「あつまり制度」も導入されました。
■この企業への転職事例は?
カヤック:唯一無二の「面白法人」
#VR #面白
#コンテンツ制作 #イノベーション #eスポーツ
■どんな事業内容?
1998年に合資会社カヤックとしてスタート、2005年に株式会社として再スタートした同社。日本的面白コンテンツ事業と題し、プロダクトやサービスの企画からゲーム・エンタメ関連事業、eスポーツ関連事業、さらにはまちづくり事業まで幅広い事業を展開しています。その中にVR事業も含まれており、ミュージックビデオ、VR面接コンテンツ、VRゲーム、VRプロモーションなど、多方面にわたるVRコンテンツ制作の実績があります。
■なぜ注目?
カヤック最大の魅力は、「面白法人」という屋号から分かるように、ユニークなカルチャーにあることです。
例えば、イノベーションを起こすためには失敗が不可欠という考えから、四半期に一度の人事評価の自己評価欄に「今期やった一番大きな失敗」という欄があったり、入社日に「退職届」を書いたりするなどです。
また、「面白法人」という屋号には「面白い人」になるというよりも「何事も面白がる人であれ」という思いが込められています。自分が知らない分野でも好奇心を持ち、仲間とともに「面白い」仕事をしたいと思う人なら要チェックの企業です。
■この企業への転職事例は?
ナーブ:不動産×VRの先駆者
#VR#不動産
#クラウド#VC#資金調達
■どんな事業内容?
2015年設立。ビジネス向けのVRシステムを展開し、さまざまな事業で活用できる企業向けVRコンテンツ配信プラットフォーム「ナーブ・クラウド」の開発・提供を行っています。ナーブ・クラウドの特徴は、VRコンテンツの収集・管理・配信のためにさまざまなアプリケーションと統合することが可能な点です。
2020年には、バーチャル空間として高い没入感を得るために、超高画質になり、不動産の賃貸や購入前によりリアルな物件の特徴を体感できるようになりました。
■なぜ注目?
今では不動産の内覧にVRを活用するビジネスモデルも当たり前になりましたが、同社設立当初は「不動産×VR」のアイデアはベンチャーキャピタルからも受け入れられませんでした。それをいわば「ファーストペンギン」として行ったナーブの先見の明は評価されるべきでしょう。
2022年の時点で総額約25億円の資金調達を実施しており、「不動産×VR」で盤石の地位を築いたナーブが次にどのような戦略を打って出るのか注目です。
クロスデバイス:積み上げてきたノウハウでソリューションを提案
#VR#EC
#バーチャル#コンテンツ制作#ヤマハ
■どんな事業内容?
1998年に設立。主な事業は広告制作、VR/AR/MR、EC事業。VR関連では、VRコンテンツの制作から配信、アプリケーションやシステムの開発、ライセンス販売やVR関連商品の販売まで幅広く手掛けています。
例えば、ヤマハ株式会社の企業ミュージアムをコロナ禍で来館が難しい人たちにも楽しんでもらえるように「バーチャルミュージアム」を制作。バーチャル空間上をクリックし、実際に館内を歩いているかのような感覚を味わえるコンテンツに仕上がっています。
■なぜ注目?
クロスデバイスの強みは1998年設立から積み上げてきたノウハウと、VR関連事業だけでなく広告制作やEC事業も手掛けているため、多面的かつ総合的なソリューション提案ができる点でしょう。
ハコスコ:理研発のベンチャー企業がリアルとバーチャルを融合
#VR#理研
#エンタメ#DNP#VRゴーグル
■どんな事業内容?
ハコスコは、理化学研究所の理研ベンチャー制度によって2014年7月に設立されました。代表の藤井直敬氏はもともと理化学研究所の脳科学者でした。
事業内容として、VR/メタバース領域にとどまらず、ブレインテックサービスの開発・販売を行っています。VR領域においてはVR映像の制作、配信、VRゴーグルの販売があり、エンタメ、不動産業界、ライブ配信など幅広い領域を網羅している企業です。
ハコスコは「もっと手軽に、いつでもどこでもみんなにVR体験をしてもらいたい」という願いから、ダンボール製のゴーグルにスマートフォンを装着するVRゴーグル「ハコスコ」をリリースしました。この名称は「ハコ(箱)」と「スコープ」に由来します。1,200円という破格の料金で購入可能で、ダンボールにオリジナルプリントを施せるため、企業のプロモーションとしても活用できるメリットがあります。
■なぜ注目?
2023年7月に、ハコスコはDNP(大日本印刷株式会社)のグループ会社になりました。ハコスコが持っているアジャイルな事業開発力や幅広いネットワーク力と、DNPの豊富なリソースを組み合わせることで、さらなる成長を遂げていくでしょう。
特にDNPは、リアルとバーチャルの融合によって新しい体験価値を創出する「XRコミュニケーション」事業を展開しており、ハコスコもVRにとどまらず、メタバース領域においても新規事業を開拓していくものと思われます。
ジョリーグッド:急成長の医療VR市場を牽引
#VR #医療
#急成長 #スタートアップ #海外展開
■どんな事業内容?
2014年に設立、医療VRを事業の主軸にしている企業です。具体的には、VRを活用した医療スタッフ教育プロダクトや、患者の治療やリハビリを支援するプロダクトを開発しています。
■なぜ注目?
世界の医療教育市場は急速に成長しており、2028年には22兆円の市場規模になるといわれています。そのうち、17%程度に相当する3.9兆円が医療VR市場と予測しており、非常に大きなポテンシャルを持ったマーケットです。先進国だけでなく、病院や医師が少ない東南アジアなどの新興国でもVRを使った医療教育のニーズは非常に高いと考えられています。
まとめ
ゲームやエンタメ領域からスタートしたVRですが、それにとどまらず医療や空き家活用など、日本社会が直面する社会問題の解決にも一役買っています。また、VRは今後「メタバース」を支えるテクノロジーとしてますます注目されていくはずです。私たちの世界観を根本から変えるVR企業から目が離せません。
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