2025年9月25日、アクセンチュアがグローバルで約8億6500万ドル(約1300億円)規模のリストラ計画を発表した。同社の決算資料によると、すでに1万人以上の人員が減っており、ジュリー・スウィートCEOは「必要なスキルのリスキリング(再教育)が現実的ではない人材の退職」と語っている。従来のコスト削減とは一線を画す、AI時代に適応するための一手といえる。
アクセンチュアは日本で事業規模・社員数ともに拡大路線を取ってきたが、AIの登場により淘汰される時代へと突入するのか。ワンキャリア転職の社員クチコミと最新の業界動向から、コンサル業界の行方を考察する。
(参考)アクセンチュア、1300億円規模のリストラ計画発表 - 日本経済新聞
1.増収でもアクセンチュアが人員削減に踏み切る理由
アクセンチュアが発表した事業再編計画「事業最適化プログラム」は、約6カ月間にわたって8億6500万ドル(約1300億円)規模のリストラを実施するというものだ。
今回のリストラ計画は、単なる業績悪化に伴うコストカットではない。同社の2025年6〜8月期決算を見ると、純利益こそ減少したものの売上高は前年同期比7%増と成長を続けている。それにもかかわらず、従業員数は8月末時点で約77万9000人となり、前四半期に公表した約79万1000人からすでに1万人以上減少している。
これまでのコンサル業界における人員削減は、たいていが業績悪化に伴うものだった。コンサルは原価≒人件費というビジネスモデルのため、売上が下がれば原価率(人員)をコントロールするのが当然だからだ。
増収なのに人員減。一見矛盾したこの動きは、AI活用による一人当たり生産性の向上を背景とした、新たな人材戦略の始まりと解釈できる。
2. 大規模リストラの日本への影響は?
2-1.「日本への影響は極めて限定的」
では、このグローバルでの大規模リストラが日本法人にどの程度影響するのだろうか。アクセンチュア日本法人広報は「日本では引き続き好調を維持しており、日本への影響は極めて限定的だ」としている。
実際、日本では足元で事業拡大を続けている。2025年に入ってからSI&C、アイデミー、ゆめみと立て続けに買収を発表し、より組織規模も大きくなっている。
(参考)米アクセンチュアで大幅人員削減、日本法人への影響は「極めて限定的」-日経クロステック
2-2. すでに始まっている生産性向上の動き
しかし、日本法人への直接的な影響が限定的だとしても、生産性向上という点では既に波が来ていると考えてよいだろう。2025年6月からの週5日出社義務化も、この文脈で捉える必要がある。
出社の目的は「対面でのつながりを強化し、人と人とのつながりをもとにスキルと能力を向上させる」だ。AIには代替できない人間同士のコラボレーションや偶発的なアイデアの創出こそが、今後の付加価値の源泉であるという経営判断の表れと言える。
また、アクセンチュア社内では既にAI活用が本格化している。アクセンチュアの公式HPでは自社の取り組みを紹介し、次のようにコメントしている。
社員全員が生成AIの先駆者として走り続けることを目指し、まずは我々自身の変革を実現すべくさらに高度な生成AI活用に取り組んでいきます。
3. クチコミから見るアクセンチュアの現状と未来
3-1. 急成長と大量採用の裏で漏れていた懸念
ワンキャリア転職に寄せられたアクセンチュア社員のクチコミを分析すると、生産性向上が課題になることは十分に予測できた。
一時期はリソース不足から人を採用しまくっていたが、昨今は人余りの状態かつコンサルタントのレベルが下がってきているように感じる。コンサルタント一人ひとりの品質を担保しないとこれから生きていけないと思う(中途入社/戦略コンサルタント)
ケイパビリティ確保のために大量採用をしていることは否めず、従来であれば入社できなかったような人が入社している様子を見受ける(新卒入社/パッケージ導入コンサルタント)
人を増やし続けることで、人材の質やマインド・カルチャーが合わない人が増えてきていると思っているので数より質に拘った方が良いと思う(中途入社/経営コンサルタント)
大量採用による組織の急拡大によって「人材の質のばらつき」が生まれ、生産性向上が急務となったアクセンチュア。その先に待っているのは「実力がないコンサルタントは、AIによって自然と淘汰される未来」だ。
3-2. 「アサインされない」という静かな淘汰
アクセンチュアの未来を考える前に、この数年の大量採用によって起きた組織内の変化について触れておきたい。具体的には「アサイン」と「昇進・昇格」についてだ。
ある戦略コンサルタントは、現在の社風をこう語る。
昔ほどはUp or Outの社風ではなくなっているそうだし、働き方もマイルドになっている。とはいえ、結局ハイパフォーマーには仕事が集まってくるため激務になることが多い。一方で、仕事ができないとプロジェクトにアサインされない状態が続いたりするため、やはり自分の実力を周りにアピールし認めさせることが重要(中途入社/戦略コンサルタント)
大量採用により人材の質にばらつきがあっても、個々人が出す「アウトプットの質」はシビアに見られる。その結果、評価の低いコンサルタントはプロジェクトにアサインされにくくなるという「静かな淘汰」が始まっているのだ。
昇進・昇格面では、さらに厳しい現実がうかがえる。
グローバルの経営状況によって、昇進のしやすさが大きく異なる。現状では、昇進の枠は想定より少ないと考えておくべき(新卒入社/マーケティングコンサルタント)
年功序列ではないが、上司が詰まっているため、実力があったとしてもなかなかポストが開かず、昇格することが難しいイメージがある(中途入社/システムコンサルタント)
2020年ごろからの大量採用により、アクセンチュアではアナリストやコンサルタント職の社員が急増した一方、マネジメント職のポストは限られているため、特にマネージャーへの昇格競争は熾烈を極めている。
(参考)アクセンチュアに転職するには? どんな会社? 会社概要から中途選考情報まで徹底解説
アクセンチュアがAI活用を推進していることを踏まえると、こうした昇進・昇格・アサインにおける競争は今後、AIを使いこなせた人材が勝ち残っていくことになるだろう。
4. コンサルは「Up or Out」から「Learn or Out」の時代へ
さらに・・・
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