はじめに
ONE CAREER PLUSのキャリアアナリストが、皆様のお悩みや一般的な疑問にお答えする連載企画。
今回は、「カスタマーサクセスの年収が上がるのはどういった企業ですか」という相談者さんからのご相談です。
カスタマーサクセスの年収に違いが生まれる要因には、どういったものがあるのでしょうか。
キャリアデータを知り尽くすキャリアアナリスト佐賀が、率直にお答えします。
本コンテンツは、Podcastまたは記事のお好きな方法でお楽しみいただけます。
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本日のお便り
お世話になっております、ONE CAREER PLUSの佐賀です。
キャリアアナリストである私佐賀が、キャリアのお悩みに答えていくこの企画。
これまでONE CAREER PLUSに寄せられた相談や、一般的に皆さんが悩むであろうテーマを取り上げ、ラジオ形式で解決していく、シンプルなコーナーでございます。
さて、本日のお便りはこちら。
ラジオネーム「オンボードの鬼」さんからのお便りです。
「佐賀さん、はじめまして。
現在、一度の転職を経て、ベンチャー企業でATS (採用管理ツール)のカスタマーサクセスをしています。
主に新規でご契約いただいたお客様向けのオンボーディングを担当しています。
今後もカスタマーサクセスとしてキャリアをつくりながら、しっかりとお給料を上げていきたいのですが、今いる会社ではお給料の変動があまりありません。
社内でもフィールドセールスであれば、明確に営業成績などで昇給がなされていますが、カスタマーサクセスチームは軒並みなかなかお給料が上がらないという状況です。
カスタマーサクセスというのは、フィールドセールスと比べてお給料が上がりづらい職種なのでしょうか?
カスタマーサクセスという概念自体が比較的新しいものだと思うので、なかなか先行事例がなく、情報収集に苦戦しています。」
トレンド職種「カスタマーサクセス」が生まれた背景
こういったご相談をキャリア面談でいただくケースは増えております。
日本において、カスタマーサクセス(以下、CS)という職種が普及し始めたのは、2010年代の前半から中盤あたりだと思います。
セールスフォースの、いわゆる”TheModel型”の営業組織から生まれたものです。
▼The Model型についての解説記事
今までは、お客様へのアポイントから営業のクロージング、商品やサービスの納品までを一人の営業担当が実行していました。
そこから分業化による効率化を目指した結果、”The Model”に基づいて
- インサイドセールス…見込み顧客に対してアプローチを行い、アポイントを獲得する
- フィールドセール…お客様に商材の購入を提案し、クロージング契約を行う
- カスタマーサクセス…契約を結んだ顧客への伴走支援を行う
という形の組織構造が普及していきました。
私の前職である転職サービスデータベースを保有する企業でも、2016年に入社した当時はCSという職種で登録されている方はそこまで多くなかったのですが、その後年々増加していき、未経験からCSにチャレンジする方も増加していました。
【未経験職種からカスタマーサクセスへの転職事例】
CSが稼げる企業は、”フェーズ”と”組織構造”で見極めよ
まず、今回のご相談者さんの「カスタマーサクセスは給料が上がりづらいのですか」という質問に対しては、明確に「NO」と回答させていただきます。
CSだからといって上がらない、というわけではありません。
しかし、CSの中でも「年収が上がる企業・事業」と「年収が上がりづらい企業・事業」に明確な差はあります。
この差が生まれる要因は
- 利益還元ができるフェーズの企業か否か
- CSが利益を生み出せる組織構造・ビジネスモデルか否か
の2つだと思っています。
1つ目の「利益還元ができるフェーズの企業か否か」については、企業のフェーズによって年収の元となる給与原資が変化してくるため、重要な要因となっています。
稼いでいる企業であれば、社員に対して利益還元という形で給与を増やすことができます。
一方で、まだ利益を生み出すフェーズにいない企業は給与原資がない状態であり、社員に対して大幅な還元を行うことが難しい状況です。
そのため、「給料を上げたい」と考えているのであれば、ご相談者さんが在籍している企業のフェーズや、会社として稼げているか否かについては見極める必要があると思います。
▼スタートアップのフェーズについて解説している記事はこちら
2つ目、「CSが利益を生み出せる組織構造・ビジネスモデルか否か」によって、CSの役割や待遇が変化してくるため、こちらも非常に重要な点です。
採用管理をするATSのサービスを行っている企業の中には、採用管理ツールだけでなく幅広いサービスを提供している場合もあります。
例えば、ビズリーチのHRMOSという事業では、採用管理ツールのATSの導入を行いながら、労務やバックオフィスの領域にもサービスを展開しています。
また、ラクスも「楽楽シリーズ」として請求や明細などの複数のサービスを展開しています。
このような企業においてのCSは、ATSのオンボーディングだけでなく、クロスセル(=担当商材に加えて、他商材の販促を行うこと)の役割が求められていることがあります。
こういった場合、CSが売上・利益を上げることができるプロフィットセンターであるため、給与還元がしやすくなります。
例として挙げた企業が上場しており、利益還元フェーズに入っているのも大きな背景ではありますが、様々なサービスを展開しており、CSがクロスセルで売上・利益を生み出せる構造の企業は給与還元がされやすい傾向にあると思います。
一方で、「扱っている商材が単一であり、ミッションはオンボーディングだけ」という企業のCSについては、企業側の視点ではコストを下げる方向に関心が向きやすいというのが本音だと思います。
特にオンボーディングは、1人の社員が1つでも多くの企業を担当することで必要な人件費が低くなるため、構造的にもコストを下げやすいです。
また、採用に関する情報は蓄積され続けることや、採用活動は節目があまりなく定常的に動き続けていることから、ATSは「企業が1回導入するとリプレースは難しく、他のSaaS商材と比較しても解約率は低い」という特徴を持っています。
このような背景から、CSに対して売上・利益を向上させることへの期待より、オンボーディングを徹底し、かつ効率化や工数削減へ関心が向きやすい企業においては、社員への給与還元が後手に回ってしまう事態が生まれやすいのではないかと思います。
まとめ
今回のご質問の内容については、
CSという職種でも、稼げている企業・事業もあれば、給与還元されづらい企業・事業あるため、在籍企業が利益還元フェーズにあるか否かと、カスタマーサクセスが利益を上げられる組織か否かの2点を見極め、現職でキャリアを積むか、転職をするのかについてご判断するのが良いのではないでしょうか。
「もっとカスタマーサクセスという職種について聞きたい」という方は、私はカスタマーサクセスという職種について過去に記事も作っている程、しっかりと研究をしているため、一度キャリア面談にお越しいただければと思っています。
▼佐賀さんが過去に執筆したカスタマーサクセスに関する記事
さいごに
さあ、いかがでしたでしょうか。
このコーナーでは、皆様からのお便りを大募集しています。
詳細欄のURLの部分から、キャリアに関する疑問やお悩みをどしどしとお寄せください。
また、佐賀や他のキャリアアナリストと直接話してみたいという方は、無料のキャリア面談も受け付けております。
こちらもお気軽にご応募ください。
それでは、また次のラジオコーナーでお会いしましょう。
さようなら!