はじめに
ONE CAREER PLUSのキャリアアナリストが、皆様のお悩みや一般的な疑問にお答えする連載企画。
今回は、「メガベンチャーとスタートアップの違いって何でしょうか?」という相談者さんからのお悩みです。
その違いが、キャリアにどのような影響をもたらすのでしょうか。
キャリアデータを知り尽くすキャリアアナリスト佐賀が、率直にお答えします。
本コンテンツは、Podcastまたは記事のお好きな方法でお楽しみいただけます。
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本日のお便り
ONE CAREER PLUSの佐賀です。
キャリアアナリストである私佐賀が、キャリアのお悩みに答えていくこの企画。
これまでONE CAREER PLUSに寄せられた相談や、一般的に皆さんが悩むであろうテーマを取り上げ、ラジオ形式で解決していく、シンプルなコーナーでございます。
さて、本日のお便りはこちら。
ラジオネーム「センターゴリ」さんからのお便りです。
「佐賀さん、はじめまして。
新卒3年目のセンターゴリです。現在は日系の部品メーカーで営業をしています。
ぼんやりとですが、転職を考え始めました。
よりスピード感があって成長できる環境に身を置きたいと思っています。
そこで、佐賀さんにメガベンチャーとスタートアップの違いについて聞いてみたいです。
正直両者の違いが明確に分かっていませんし、どちらかに行くことで自分のキャリアにどのような違いが出るかもイメージがついていません。
また、エージェントの方と話すと、いわゆるメガベンチャーと呼ばれる企業群の求人をたくさんご紹介いただきます。
なぜメガベンチャーの紹介がこんなに多いのかも、聞いてみたいです。」
というご相談です。
転職活動をスタートしてエージェントに相談に行くと、メガベンチャーやコンサルティングファームなどの求人を紹介されるケースは増えているのではないでしょうか。
実際、我々が人材紹介で転職のご支援をする際にも、メガベンチャーという選択肢をご提示させていただくケースは多いです。
その背景や、メガベンチャーとスタートアップの違いを説明させていただき、ぜひ今後のキャリアを考える際に参考となる情報をお渡しできればと思います。
【メガベンチャーへの転職例】
【スタートアップへの転職例】
エージェントと向き合う際に理解したい、人材紹介のビジネスモデル
メガベンチャーの紹介が多い理由については、人材紹介の収益化の仕組みが一部関与しています。
大前提、エージェントの視点から見た時に、センターゴリさんのご希望や今後のキャリアパスに鑑みて、メガベンチャーが条件に合致しているというのは大きな理由の一つです。
一方で、人材紹介のビジネスモデルの都合で紹介がされやすいケースもあります。
人材紹介のビジネスモデルは、
- ご支援をしている求職者の方々を企業様に紹介する
- 求職者の方が紹介した企業へ入社することが決定する
- 入社時の想定年収に何%かの料率をかけた金額が企業から人材紹介会社へ支払われる
という流れになっています。
このようなビジネス構造であるため、
- 求職者に紹介する企業の想定年収の高さ
- 支援する求職者の方がその企業に受かるか
の2点を大事にする傾向があります。
1点目の「求職者に紹介する企業の想定年収の高さ」については、入社が決定した企業の想定年収が高いほど、人材紹介の会社へ支払われるフィーも高くなるためです。
人材紹介会社へ支払われる料率は、平均的には想定年収の30%〜50%以内に収まることが多いため、例えば想定年収600万円で転職する方であれば200万円弱〜300万円程度のフィーが人材紹介会社へ支払われます。
そのため、「想定年収が高い企業を紹介したい」というインセンティブが働きます。
また、候補者側も「年収を上げたい」という意向を持つ方は多いため、その点でエージェントと候補者がwin-winになりやすいという側面もあります。
2点目の「支援する求職者の方がその企業に受かるか」については、入社決定後にフィーが支払われる構造であるためです。
いくら企業に推薦をしたとしても受からなかった場合、求職者の方の時間や工数を無駄に使うことになり、人材紹介の会社・求職者の両者に不利益が生じます
そして、この受かりやすさの観点には、企業側がどれだけの席を用意しているか、端的に言えば、どれだけ採用を加速させようとしているか、という点も関わってきます。
採用枠数が豊富にあれば、求職者の方の通過確率が上がり、人材紹介の企業にフィーが支払われる確率も同様に高くなります。
例えば1人だけを採用する求人にご支援をすると、企業側に相対比較をされてしまう可能性がありますが、10人を採用する求人の場合は通過する確率が上がるという考え方です。
人材紹介の会社は、求職者の方からのご希望に加え、上記の2点も考慮しながら、紹介する企業のピックアップを行っています。
そして、「どうしてメガベンチャーの求人を多く紹介されるのか」というご質問に立ち返って、メガベンチャーが上記観点に合致する理由も深堀してお話ししたいと思います。
1つ目の「求職者に紹介する企業の想定年収の高さ」の観点では、メガベンチャーの企業は上場している場合が多く、従業員の年収待遇が優れている傾向が強いです。
上場している企業は株主に説明責任を果たしており、黒字転換している場合が多く、年収が高くなりやすいです。
2つ目の「支援する求職者の方がその企業に受かるか」の観点については、メガベンチャーは事業数が多く、募集している事業領域や職種が多い傾向にあります。
リクルート 、ディー・エヌ・エー、サイバーエージェント、楽天などの日本を代表するメガベンチャーは事業領域が幅広くあります。
楽天を例にすると、ESの楽天市場や旅行の楽天トラベル、携帯電話通信の楽天モバイルなどの事業領域があり、その分様々なポジションが存在するため、求人の募集も多いです。
また、受かりやすさの観点では、未経験職種であっても通過する確率が高い傾向にあるという側面も見逃せません。
なぜなら、メガベンチャーのように大きくなってきた組織では、ポテンシャルはあるもののベンチャー企業未経験の方や職種未経験の方を育成してきた実績があるためです。
そのため、未経験職種出身の方でもポテンシャルの部分を評価されて、選考に通過する可能性は高いです。
このような背景が、人材紹介の企業がメガベンチャーを多く紹介する傾向に繋がっています。
キャリア形成の重要なカギになる「フェーズ」の考え方
メガベンチャーとスタートアップの違いは、厳密な言葉の定義はないというのが結論です。
ただ感覚的には、「従業員数千人超え」「IPOしてグロース市場からプライム市場に転換」「事業領域の多角化」「売り上げも3桁億円」など、大規模になっていく際にメガベンチャーと呼ばれ始める印象はあります。
一方でスタートアップは急速に短い期間で大幅なグロースを目指すため、上場や事業をどんどん大きくしていく意思を持った企業群を、スタートアップと広義で指している印象はあります。
メガベンチャーとスタートアップを比較する際には、”フェーズ”で分けることが大事になります。
※フェーズ…シードフェーズ、アーリーフェーズ、ミドルフェーズ、インターフェース、ポストIPO上場フェーズなどのような、その企業や事業の規模感や成長段階などを表す区分のこと。人によってはフェーズに加えて、資金調達のシリーズやラウンドなどで判断する方もいらっしゃいます。
少し語弊があるかもしれないですが、前のフェーズに行けば行くほど、ハイリスクハイリターンで、後ろのフェーズに行けば行くほど、ローリスクローリターンになる傾向が強いです。
では、このリターンとリスクについて説明していきます。
リターンは「経験」と「資産」の2つがあります。
1つ目の「経験」については、それによってマーケットで評価され、次のキャリアにも繋がるということです。
勤めたスタートアップが将来上場したり超巨大企業になったりした際には、自他共に認める素晴らしいキャリアのトラックレコードが残ります。
例えば、近年ではメルカリやビジョナルなどの大型上場のスタートアップ企業の社員番号1桁から2桁に当たる方々は、現在は部長陣クラス、もしくは新たに立ち上げたスタートアップの経営者や執行役員を勤めている場合があります。
このような経験は転職のマーケットで評価をされやすく、その経験をフックに次のキャリアが繋がる程に強いものとなります。
2つ目の「資産」については、株という形でリターンが得られる可能性があることです。
シートフェーズやアーリーフェーズのスタートアップでは、給料が高いケースは少ないです。
その分、しっかりと大きくなった際に報いる形でストックオプションや株という形で還元されるケースが多いです。
それを資金化できるのは上場後数年後にはなるので、10年やそれ以上かかる場合もありますが、上場後に大きくなった際には2桁億円のような大きな資産になる可能性もあります。
一方でリスクは、「会社が大きくなる可能性」と「体調やメンタルの不調」の2つがあります。
1つ目の「会社が大きくなる可能性」については、皆さんが選んだ企業が必ず大きくなれるかを保証できないということです。
「千三つ」と呼ばれるように、1,000の企業が立ち上がったら、大きくなるのはその内の3企業程度であると言われているのが、スタートアップのマーケットです。
プロの目利きができるベンチャーキャピタリストでさえ外す世界であるため、皆さんが選んだ企業が必ず大きくなりきる保証はありません。
そのため、シードフェーズやアーリーフェーズの企業を選ぶ方々には、
「この企業が大きくなるかどうかと皆さんのキャリアは一種一蓮托生ですよ」
「その企業に人生賭けるぐらいの覚悟は最低限持っておいた方がいいんじゃないですか」
ということは、覚悟を問う場面でお伝えするぐらい、大きなリスクが問われる部分です。
2つ目の「体調やメンタルの不調」については、多忙な仕事によってメンタルや体調を崩してしまい、仕事を続けることができなくなるリスクがあるということです。
スタートアップの会社が生き残り続けるためには、人数も足りない中で様々な業務に注力する必要があります
私の友人で、大手コンサルティングファームからスタートアップの一桁番目の社員として転職し、現在は執行役員を務めている方は、入社当初「営業兼、事業開発兼、プロダクトマネージャー兼人事」という形であらゆることを管掌している状態でした。
そんな多忙な中でもやりがいを持って働いていたということでしたが、人によっては忙しすぎて、体調やメンタルを壊してしまい、会社が続いても自分自身が仕事を続けられないというリスクもあります。
メガベンチャーを選ぶ際に気を付けるべきは、「経験の広さの重要性」
メガベンチャーとスタートアップの比較から、大きなフェーズのスタートアップやメガベンチャーは、
- 給与の大幅ダウンの可能性が低い
- 未経験の人材を育成し立ち上げてきた実績
- 社内の中の他事業・他職種への配置転換によるリスタートの機会がある
などの観点で、リスクが低いと言えます。
ただ、「ローリターン=成長できない」わけではないです。
しっかりと深く、もしくは大きな規模のビジネスを経験できるため、キャリアへのリターンは必ずあります。
ただ、大企業では経験の広さが取りづらいという懸念点はあります。
大企業になるほど、従業員も増えていきますし、専門の戦力も出来上がります。
大きな組織は組織の総合力で勝っていくのが強みであるため、職種や担当業界で分業し、各分野の業務に特化させる傾向があります。
例えばSaaS系の企業では、インサイドセールスやSMBやエンタープライズ向けのフィールドセールスなどのように、職種で専門性を特化させることや、担当業界で分ける形で分業化を進めていきます。
そうなると、1人の担当者が請け負う範囲にやや狭さを感じることがあるかもしれません。
一方で、アーリーフェーズのスタートアップであれば、アポ取りからクロージング、事業開発やプロダクトへの転換までを1人の担当者が行うケースもあります。
このような観点から、メガベンチャーを含む大企業の「経験の広さが取れない点」に不安感を感じて、経験を広く取れるアーリーフェーズの企業への転職に決める方も中にはいます。
そのため、得られる経験や業務の干渉範囲については人によって重要度が違う分、メガベンチャーや大企業を選ぶ際には要注意する必要があります。
また、ポジションが大きい分、事業領域や職種によって得られる経験が全く変わってくるため、この点も、エントリーする企業を選ぶ段階で要注意です。
最後に、個人的にメガベンチャーを受ける際におすすめなのは、上場企業やメガベンチャーの中の新規事業です。
主力事業で稼いだ利益を新規事業に投資をするという大幅なチャレンジ要素があることに加え、事業を1から作り上げていくというよりアーリーなフェーズを体験できるうま味があり、すごく面白いチャンスが眠っていると思うので、是非検討してみてください。
センターゴリさんの「なぜメガベンチャーの紹介をいただくケースが多いのか」というお悩みに対して、
- 人材紹介会社のビジネスモデル
- メガベンチャーとスタートアップの違い
- メガベンチャーやスタートアップ選ぶ際に気をつけるべき点
について説明させていただきました。
センターゴリさんのキャリア選択に少しでも役に立てれば幸いでございます。
さいごに
さあ、いかがでしたでしょうか。
このコーナーでは、皆様からのお便りを大募集しています。
詳細欄のURLの部分から、キャリアに関する疑問やお悩みをどしどしとお寄せください。
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それでは、また次のラジオコーナーでお会いしましょう。
さようなら!