ONE CAREER PLUSが送る特集「データでみる、第二新卒の転職実態」。
第3弾は、コロナ禍での転職のリアルを解説。一度は耳にしたことがあるであろう「石の上にも3年」という言葉。新卒で入社した会社と、自分のキャリアプランやスキルにギャップを感じても3年は待ってみる、という考え方です。
2023年4月で、コロナ禍の中で新卒入社した世代が社会人3年目に突入します。この世代は新型コロナウイルスの流行を前提とせずに就職活動を行い、入社前後の職種や職場などのギャップが著しいのが特徴です。彼らの中には「石の上にも3年」を実践した人もいれば、早々に見切りをつけて転職した人も。
本記事では、そのような大変な状況下でのそれぞれの選択と、豊富な転職事例から読み解く若手転職の今を紹介。会社に残るべきか転職しようか悩んでいる方は、ぜひお役立てください。
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コロナ禍の中で社会人になった世代の特徴
コロナ禍で社会人になった世代を象徴する特徴は、上図の3つです。具体的に説明していきます。
1.仕事の喪失
航空業界、インバウンド業界、飲食業界などの企業に入社した人は、入社時には想定できなかった新型コロナウイルスにより、仕事そのものを失いました。コロナ禍で新卒入社した人の中でも、もっとも過酷な経験をした人たちといえるでしょう。
2.オフィスの喪失
オフィスの喪失、言い換えるとリモートワークの普及もその特徴のひとつ。コロナ禍前は、同期や先輩社員とオフィスで情報交換したり、研修を受けたりすることでメンバーの一員であることを自覚し、仕事に関するノウハウも蓄積できました。しかし、コロナ禍後は全てリモートに切り替わったため、「学びの消化不良」が続き、働き方に大きなギャップを生んでいます。
リモートだと、上司や先輩社員と肌感を持ったコミュニケーションが取れません。業務上のフィードバックや、厳しい言葉で指導を受けることもないまま入社1、2年を過ごしてきました。その背景には、大企業を中心に導入された「ホワイトな職場環境」も関係しています。従業員ファーストな環境を創出しているにもかかわらず、若手社員はそこにやりがいを見いだせずにいるのです。
上図が示す通り、4人に3人の新入社員が「不安だ」と答えています。労働時間は大幅に削減され、職場はより働きやすくなりましたが、「こんなに居心地の良い環境にいたら、ほかで通用しなくなるのでは?」という不安や焦りも。
近年は上司がパワハラ・ブラック企業という批判を恐れて厳しく指導しないことによる、成長の実感しづらさもあるといいます。これは次の「エンゲージメントの喪失」にもつながっていきます。
3.エンゲージメントの喪失
「エンゲージメントの喪失」とは、会社とのつながりが希薄になることで、帰属意識が失われることを指します。コロナ禍前は、先輩社員が飲み会に誘ってくれたり、社内イベントが開催されたりすることで、企業の一員であることを段階的に認識できました。
しかしコロナ禍の中では、全てのやりとりがオンラインツールに移り、肌感のある人間関係の構築が困難に。新入社員は社内にロールモデルを見出すこともできず、具体的なキャリアプランを描けないままでいます。
また、会社との関係が希薄になる中で、経営層を含め、企業側のエンゲージメントを高めるための努力も見られています。企業側にそうした姿勢が欠如していると、新入社員は「自分は本当に必要とされているのか」と違和感を持ち、落胆するようになり、それが転職の引き金となりました。
コロナ禍におけるキャリア事例
「仕事の喪失」「オフィスの喪失」「エンゲージメントの喪失」という現実に直面したZ世代の新入社員たちは、一体どのようなキャリア選択をしたのでしょうか? 次に、キャリア事例に基づいて、生の声も含めながら解説します。
1.キャリア事例:仕事の喪失
航空会社、旅行業界、飲食関連など、新型コロナウイルスによって業界そのものが大打撃を受け、転職を決意した人が多く見られました。コロナ禍初期は様子を見ていたものの、業績悪化が進み、仕事がなくなって給与も減少しつづけ、転職を余儀なくされたケースがほとんどです。
・JTB→レバレジーズ
新型コロナウイルスの影響を大きく受け、自分のキャリアを見直し、転職活動をすることに決めました。異業種への転職を考えていたので、20代のうちに転職するべきだと思いました。
・近畿日本ツーリストコーポレートビジネス→Sansan
新型コロナウイルス感染症の拡大により、旅行業は大打撃を受け、案件の99%程度が中止・延期となり、自宅待機を命ぜられたことが発端です。倒れかけた業界で勤め続けるより、この状況下でもなお成長を続けている企業で自分の能力を延ばし、市場価値を高めるために時間を使いたいと思い、転職を考えました。
・ANA→アクセンチュア
コロナ禍により仕事量が激減し、今後のキャリアを考え直すきっかけになった。自分が求めるキャリアは(1)社会情勢に左右されにくい業界で働くこと。客室乗務職で磨けるスキルや機材の知識は非常に専門的で、機内以外の場面での汎用性が難しいところがあり、新型コロナウイルスのような世界的パンデミックやテロ、自然災害などの外的要因により仕事量に大きな影響がある。(3)数値で成果が還元される職種に就きたいと思った。サービス業はどうしても自身の創意工夫や成果が数値として見えづらく、達成感を感じにくい部分がある。
・ウィルグループ→デロイト トーマツ コンサルティング
コロナをきっかけに事業のおかれた状況が大きく変わり、継続運営していくことが難しくなったことにより、社内異動を命じられたため。勤務地、給与、働きやすさ(リモートワーク、フレックスタイムなど)のバランスが取れているところ。どこか一つが秀でているより、バランスの良さを選んだ。
・近畿日本ツーリストコーポレートビジネス→Sansan
最も重視したポイントは、コロナ禍でも通常業務が回っているかどうかでした。前職がコロナ禍に適応できず、在宅勤務もできないインフラ環境、かつ業績が著しく悪化したことを受け、転職先はコロナ禍の影響を大きく受けていない企業であることを重視しました。
これらのケースの場合、次の転職先は業績が安定していること、成長実感やスキルアップが重視される傾向にありました。具体的には、コンサルやITベンチャーが選ばれるケースが多く見られました。
2.キャリア事例:オフィスの喪失
コロナ禍によって、各社ともリモートへシフトすることで、多くの若手社員たちが成長実感を持てずに転職をしました。具体的なケースとして、新型コロナウイルスによって働き方や顧客との向き合い方が変わり、成長実感が持てなくなった事例があります。
・SCSK→住友電装
新型コロナウイルスによる客先訪問、常駐の制限をきっかけに、前職においてやりたい仕事ができなくなったため。転職により、かつては顧客であった業界に参画でき、前職以上にやりがいを持って働けると考えたため。
・ダイワボウ情報システム→セールスフォース・ジャパン
コロナ禍でオンライン営業が多くなったことで、今まで関係構築型の営業で数字を作ってきた自分にとって、これからはオンラインでも受注できるような営業力(ヒアリング力や仮説構築力など)をつけていく必要があると考えたため。
別のケースとして、コロナ禍をきっかけにキャリアやスキルを根本から考え直し、もっと成長しなければという危機感を感じるようになった事例もあります。
・マイナビ→KDDI まとめてオフィス
コロナ禍で揺らぐ社会情勢を前に、将来会社に依らずに生計を立てていけるスキルを身に付けるには、別の環境のほうが挑戦の機会が多いのではないかと感じたため。
・メタルワン→YCP Solidiance
コロナ禍で現職の売り上げが落ちた際に、自分の将来のキャリアを考え出したことがきっかけです。自社以外の場でも経営者として活躍できる人材になりたいと思い、コンサルティング業界への転職活動を始めました。
・キーエンス→日本M&Aセンター
コロナ禍で世の中の情勢が大きく変動し、浮き彫りになった社会的な課題に対してより大きな価値提案をしたいと考えたため。また自身の年齢を鑑みたときに、自身のキャリアを大きく変革させられるのは、適応力、活力的にも現時点がベストと考えたため。将来独立するためのスキル、知識、経験が得られる仕事であるかを重視した。
・ネオキャリア→メディアドゥ
新型コロナウイルスの影響で会社の経営状態や社員の心理状況などが悪化し、今の環境にいることが成長につながらないと感じたため。成長できるフィールドを見つけるために転職した。
・(旧)リクルート住まいカンパニー→アイティメディア
コロナ禍だったこともあり、今後何か起きたときでも会社に左右されることなく、自分の人生の手綱を自分で握れるようなスキル(専門性があるもの)を積めるかどうかを重視していました。
転職先を選ぶポイントとして、専門スキルが身に付けられるか、今後のキャリアにおいて評価される経験を積めるか、今まで経験したことがないことに挑戦できるか、という点が挙げられました。その結果、いわゆる成長産業といわれるコンサルファーム、ITベンチャー、スタートアップに転職する傾向がありました。
3.キャリア事例:エンゲージメントの喪失
「エンゲージメントの喪失」にも2つのタイプが見られました。
3-1. ロールモデルの喪失
一つはコロナ禍によって「ロールモデルが喪失」したケースです。上司や先輩社員と接する機会がなくなり、社内のロールモデルが見えなくなることで、会社で働き続ける未来が見えなくなったのです。
・監査法人トーマツ→花王
新型コロナウイルスの流行を契機に、クライアントとのコミュニケーションも以前のように膝詰めで出来なくなり、社内でも同じ状況となったことで、クライアントの表情や行動変化、社内メンバーと深夜まで会議室に籠って終わったら飲みに行くなどのリアルのコミュニケーションにやりがいを感じていたわたしはモチベーションが下がってしまった。
・リクルート→モノグサ
スピーディーに動ける環境で働きたいと思い、一度自分で事業を行ってみた結果、尊敬・信頼できる人と一緒に働けるかどうかが自分にとって大事だと気付いた。また、その環境を自分で一から構築するのは難しいとも感じた。結果、そういった環境のある会社で働きたいと思い、「魅力的な人材」を重視した転職活動を行った。
・星野リゾート→レバレジーズ
転職の際に重視したのは、「さまざまな人の価値観に触れられること」「人がイキイキしていることを感じられること」「一緒に働く人、組織のカルチャーが合うこと」「自己成長する機会があること」です。
3-2. 経営方針との齟齬
もう一つは、コロナ禍で見えた企業の姿勢に違和感を感じ、転職を決意したケースです。この場合、転職先は経営方針や企業の姿勢に共感できるかがポイントになりました。
・ストライプインターナショナル→カインズテクノロジーズ
コロナ禍をきっかけに、自分の所属セクションの業務プライオリティが大幅に低下したこと。全社部門やマーケティングのキャリアを脱却し、事業を行う人間としてより深い位置で収益創造ができるようになりたいと思ったため。
・キャディ→LayerX
転職を検討するきっかけとなったのは、前職の経営方針の転換です。企業としては非常に伸びていたものの、一番コアとなる部分に共感できなくなり転職を検討しはじめました。
・博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ→財務省
コロナ禍でさまざまに苦しまれている方のニュースを目にし、自分はこれまで通り、クライアントの課題解決を通じて給料をもらっていることにモヤモヤを感じた。世の中の利益をピュアに追求できる仕事に挑戦してみたいと考えた。
超早期転職でスタートアップを選んだ事例
「石の上にも3年」という固定観念が強い中、早々に見切りをつけて転職に踏み切るのは容易ではありません。3年未満で転職を決めた人たちが何を重視したのか、生の声をご紹介します。
・アクセンチュア→モノグサ
企業が目指す方向(および業務内容)と自身の目指す方向がハマっているかどうか。 採用資料のMVVやカルチャーに共感できることは勿論、面談・面接の中でカルチャーの浸透度やプロダクトへの思いが強いかどうかを重視していた。
・キンドリルジャパン→FLUX
自分の強みとなる軸を作れる企業に行きたいと思ったためです。新卒で大企業に入社し、さまざまな経験をしましたが、自分の強みを考えて転職しようと思いました。その際、事業の成長性は特に意識して、すでにある実績と今後事業が伸びるであろう企業に入りたいと思いました。また、経営者やメンバーの魅力にも惹かれました。
・FLUX→デジタルアイデンティティ
(1)ビジネスモデルが顧客のためになる点と売り上げが上がる点が一致しているか (2)成長している市場×組織文化がしっかりとしている企業(3)信頼できる優秀な仲間と働けるか、この人たちと働きたいと思えるかを重視した。
・サイバーエージェント→FinT
スタートアップで簡単に異動などはできないと分かっていたので、特にそこの会社の社長含む経営陣との相性をしっかりと確認しました。また前職と比較して、自分がやりたい業務内容を責任を持ってできるポジションかどうかの確認をしっかりしました。
確かに3年以内の転職は簡単ではありません。しかし、明確な方向性、目指すべきキャリア、理想とするカルチャーがあれば、それを軸に現職に留まるべきか、それとも転職すべきかを判断するのに3年は必要ないのかもしれない、と彼らの言葉や転職から読み取ることができます。
まとめ
この数年は、新型コロナウイルスというパンデミックに直面して、誰もが自分のキャリアを見直す機会になりました。この事態から、入社直後の若手社員であっても、健全な危機感を持てるようになったのは決して悪いことではないでしょう。
仕事選びの本質は、目の前の業務に打ち込むことで、スキルアップができたり、望んだキャリアに近づけるかどうか。一方で、少しの努力で身に付くスキルや経験ばかりではなく、一定期間取り組んではじめて成長を実感することもあり、この仕事が合わないとすぐに判断するのも本質的ではありません。コロナ禍や3年という数字に囚われず、冷静に判断をする必要があります。
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(若手転職シリーズ#1・#2より抜粋)
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