記事画像

アマゾン出社回帰を回避。異変を察知したパパ・マネージャーの「先読み転職術」

「出社になるかもしれない」


当時、巨大IT企業アマゾンに勤務していた天野さん(仮名・30代男性)が、社内でそんな「噂」を耳にしたのはコロナ禍が収束に向かう兆しが見えていた頃だった。多くの同僚が噂に対して様子見を続ける中、彼は即座に転職活動を開始した。


噂は、現実のものとなった。


天野さんが動き出した数ヶ月後の2023年5月、アマゾンは週3日の出社を義務化。さらに2025年1月には、週5日の出社義務化を決定した。


天野さんは、この会社のシビアな動きを「先読み」したことで、出社義務化のアナウンスに慌てることなく、自らの理想とする働き方を実現する転職を成功させた。


彼は、どのようにしてキャリアと家族の生活を守ったのか。そこには、出社回帰という大きな波に翻弄されず、自分らしいキャリアを築くためのヒントが詰まっていた。

 



 

コロナ禍で入社し、マネージャーに昇格。順風満帆だったリモート・キャリア

 

天野さんのキャリアは、新卒で入社した日系大手からスタートした。経営企画部門での勤務や海外への派遣も経験し、充実した日々を送る。しかし、彼の中には学生時代から温めていた思いがあった。


「大学院ではAI系の研究室に所属し、データ活用や機械学習を研究していました。データをビジネスに活用することに面白さを感じていたんです」


1社目で得た経験と、学生時代に培ったデータ活用のスキル。この二つの軸が交差する場所を探していたところ、アマゾンのファイナンス部門のポジションを見つける。


「当時、ファイナンスでありながらSQLやPythonも触れるというポジションは市場にはあまりありませんでした。アマゾンが出していたピンポイントの募集に応募したところ、運良く採用となりました」


入社当時はコロナ禍の真っ只中。面接から入社後の業務に至るまで、すべてがフルリモートだった。配属されたのは、当時急拡大していた物流部門。どうすれば「より安く、より早く」顧客に商品を届けられるか。天野さんはファイナンスとデータ活用の両面から事業の急成長を支え、その中で高い評価を得ていく。


「仕事は思い通りにできていました。事業がどんどん拡大していく中でやりがいも大きく、人間関係にも恵まれ、マネージャーにも昇格できました。今思えば、かなりうまくいっていたと思います」


働き方、仕事のやりがい、評価。すべてが満たされていた。あの日、あの「噂」を聞くまでは。

 

 

出社回帰の裏側で起きていたアマゾンの異変

 

「出社になるかもしれない」


最初は、情報の感度が高い社員の間でささやかれる、単なる噂だった。しかし天野さんは、その噂に妙なリアリティを感じ取っていた。


彼が所属していたファイナンス部門は、日本企業でいう経営企画部に近い役割を担う。全社の人員計画や採用予算を管理する立場にあった彼は、会社の「異変」に気づいていたのだ。


「コロナ禍でアマゾンの事業は爆発的に伸び、それに伴って大量の人員を採用しました。全員が出社するとオフィスに入りきらないほどの人員です。しかし、その爆発的な成長は永続しません。実際に『人員がダブついている』という噂を聞いたこともありました」


天野さんの目には、人員計画が岐路に差し掛かっているように見えた。


「このタイミングでの出社回帰は、単なる方針転換ではない。レイオフ(解雇)ではなく、『自主退職』を促すための実質的な人員削減策ではないか、と推察しました」


天野さんは即座に次のアクションを心に決めた。

 

▼出社回帰への兆しを知る


 

「タイムリミット」付きだった転職活動

 

天野さんが「噂」を耳にしたとき、プライベートでも大きな変化が起きた。


「第1子が1歳になったばかりで、ちょうどそのタイミングで第2子の妊娠がわかったんです。保育園からの急な呼び出しも頻繁にある。0歳と1歳の育児を抱えながらの出社は、物理的に無理だと思いました」


出社が現実のものとなれば、仕事と家庭、そのどちらかが破綻する。彼にとって、それは非常に高いリスクを抱えた状態だった。


「正式に言われてから慌てて動いたのでは、余裕がなくなり、良い転職先は見つからない。余裕があるうちに、先手を打とうと決めました」


天野さんの転職活動の軸は明確だった。


第一に、働き方だ。たとえアマゾンから転職したとしても、転職先もコロナの収束に伴い出社に切り替わることも十分に考えられた。そのリスクを避けるため、コロナ前からフルリモートを導入・整備している企業を探した。


次に、自身のスキル。アマゾンで培ったファイナンスとデータ・ITの経験を活かせることだ。


幸い、時代はまだオンライン面接が主流だった。天野さんはアマゾンでのハードな業務と育児の合間を縫い、面接を重ねた。


そして、「週3日出社」の正式リリースが出たときには、彼はすでに次のキャリアを決めていた。天野さんの希望するフルリモート・フルフレックスの働き方が可能で、以前から関心が高かった領域の事業会社だった。


「間に合った。よかった……」。それが彼の偽らざる心境だった。

 

 





「出社回帰」の波を乗りこなし、働き方と年収はどうなった?

 

ここから先は会員限定の記事です
カンタン無料登録で、今すぐ続きを読もう
さらに・・・
6,000件以上の転職体験談(実例)が見放題
限定のイベント情報も配信
限定の記事コンテンツも読み放題
会員登録して続きを読む ログインはこちら >

ワンキャリア転職 編集部

吉川翔大

東京大学卒業後、新卒で中日新聞社に入社。長野、静岡、三重の3県で記者として働く。2019年にワンキャリア に入社。就活生向けの記事制作チームや広報を経て、ワンキャリア転職 編集部でコンテンツ制作を担当。京都市生まれ。

フェーズからキャリア面談を選ぶ

関連タグの人気記事

こちらの記事も読まれています

記事一覧のトップへ