コンサルキャリアで最も特筆すべきことは、「ネクストキャリアを見越した入社」の方が多いことでしょう。
そして、コンサルに入社した方の多くが直面するのが、以下のような問いです。
・いつファームを去るべきか
・コンサルを経由したからこそ行けるネクストキャリアはどこか
・年収の増減をどう捉えるか
本シリーズでは、実際にコンサルを卒業してネクストキャリアを歩まれる方々にインタビューをし、ポストコンサルキャリアの実録を集めていきます。
実録:「やりきる」から見える未来へ。
大手電機メーカー子会社の技術職からコンサルタントへの挑戦、そしてスタートアップでの経営の最前線へ。自らの違和感と向き合い、進むべき道を切り拓いてきた小島さん。
何度も挫折しながらも「やりきる」ことを武器に、キャリアを大きく転換してきたその道のりには、ポストコンサルとしての多くのヒントが詰まっています。
「このままでは価値ある人間になれない」大手子会社で感じた危機感
大学では工学部に在籍していたので、卒業後はそのまま技術職として北芝電機に入社しました。入社後は、鉄を溶かすための電気炉の構造設計を担当していました
新卒で入社したのは、東芝系列メーカーの北芝電機。電気炉の設計や、鋳造工場全体のエネルギーマネジメントシステムの導入など、プロジェクトに熱意を注ぎながら取り組んできた小島さん。しかしその中で、ある違和感を覚えるようになります。
お客さんの工場って電気代が毎月一億円かかるような規模感なんです。必死になって電気代の見える化を実現するシステムを納品したものの、それが本当にお客さんの財務インパクトに繋がっていたのか、当時はまったくわからなかった。『果たしてこれって、本当に価値を出せてるのか?』と、すごくモヤモヤしていました
「納品して終わり」というスタンスに、強い疑問を感じたという小島さん。技術職として「与件を満たす」ことはできても、事業パートナーとして「価値を届ける」ことはできていない。そうした危機感が、キャリアの方向を変えるきっかけになりました。
技術職としてこのままキャリアを積んでも、自分は価値ある人間になれないと思ったんです。経営や財務を理解して、お客さんに本当の意味で価値提供できる人間になりたい。そんな思いから、未経験でコンサルティング業界への転職を決意しました
苦しかったコンサル適応期。「詰め文化」と「高い要求水準」の壁
先の違和感を契機に、2017年、小島さんは山田ビジネスコンサルティング(現:山田コンサルティンググループ)へ転職します。とはいえ、財務や経営の業務は未経験。内定直後から簿記の勉強を始め、基礎的な知識を詰め込むことで入社に備えたといいます。
事前に勉強したとはいえ、入社してすぐプロジェクトに放り込まれて、めちゃくちゃ大変でした。右も左もわからない状態でひたすら目の前のタスクを何とか対応する、といった日々がしばらく続きました
とりわけ苦しんだのは、コンサルティング業界特有の「詰め文化」と「高い要求水準」の壁でした。
資料を出すと『てにをは』のレベルから全部赤字で戻ってきて、日本語を直してもまた直されて。論理の飛躍がある、示唆が浅い、構造が甘い……そんなフィードバックが無限に返ってくる。上長承認を得るために日本語の修正だけで徹夜したこともありました
毎日が背水の陣だったと語る小島さん。「また詰められるんじゃないか」と怯えながらも、「やるしかない」という気持ちでがむしゃらに食らいついていったと言います。
悩む余裕すらなかったですね。とにかく目の前の課題をひとつずつ潰していくしかなかった。正直、かなり苦しい日々でした
3年耐えた先に広がった仕事の幅。事業再生からM&Aまで
ただ、苦しみながらもずっとやっていくと、そのうち仕事の型ができてくるんですよ
3年目に入った頃、ようやく業務に慣れ、ただタスクをこなすのではなく、上司やチームに自分の意思を伝えられるようになったと言います。そこから少しずつ、楽しくなり、仕事の幅が広がっていきました。
最初は事業再生の案件が中心でしたが、M&Aや経営管理体制の構築、投資回収シミュレーションの策定、敵対的株主への対応支援まで、徐々に関われるプロジェクトが増えていきました
とくに印象に残っているのは、地方宿泊施設の再生型M&Aの案件。一般的な第二会社方式ではなく、譲渡後に元会社を破産させるという特殊なスキームを組んだ案件でした。
弁護士とタッグを組んで進めた案件だったんですが、案件の終わりに弁護士さんから『小島さんの粘り勝ちだったね』と言っていただいたのは、本当に嬉しかったですね。これまでの経験が全部つながったような感覚がありました
再生からM&Aまでやりきった集大成のような案件。詰められ続けた日々を乗り越えたからこそ、得られた手応えでした。
コンサルとしての大成か?事業の手触り感か?再び事業会社へ
6年間のコンサル経験を経て、小島さんの中に再びある思いが芽生えます。
さらに・・・




