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【相談#31】SMBセールスよりエンプラセールスの方が市場価値は高いのでしょうか


はじめに


ONE CAREER PLUSのキャリアアナリストが、皆様のお悩みや一般的な疑問にお答えする連載企画。

今回は、「SMBセールスよりエンプラセールスの方が市場価値は高いのでしょうか」という相談者さんからのご相談です。


中小企業が顧客となるSMBセールスと、大手企業が顧客となるエンタープライズセールス。

この2つの職種の間に優劣はあるのでしょうか。


キャリアデータを知り尽くすキャリアアナリスト佐賀が、率直にお答えします。


本コンテンツは、Podcastまたは記事のお好きな方法でお楽しみいただけます。


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本日のお便り


お世話になっております、ONE CAREER PLUSの佐賀です。

キャリアアナリストである私佐賀が、キャリアのお悩みに答えていくこの企画。


これまでONE CAREER PLUSに寄せられた相談や、一般的に皆さんが悩むであろうテーマを取り上げ、ラジオ形式で解決していく、シンプルなコーナーでございます。

さて、本日のお便りはこちら。


ラジオネーム「あみだくじ職人」さんからのお便りです。

「佐賀さん、こんにちは。
社会人3年目のあみだくじ職人と申します。
現在、SaaS系の企業で中小企業向けのSMBセールスを担当しています。
SMBセールスとしての経験を積み重ねる中で、大企業に対してもアプローチしたいと思い始めたのですが、エンタープライズセールスの方々が担当しているため、中々チャレンジできずにいます。
自社の求人を見るとエンタープライズセールスの方が年収レンジが高いこともあり、SMBよりエンプラの方が価値が高いのではないかと感じるのですが、この認識は間違っているのでしょうか。
また、SMBセールスからエンプラセールスへの転職は可能なのでしょうか。
佐賀さんにぜひお聞きしたいです。」


あみだくじ職人さん、お便りありがとうございます。

こういった悩みは、SMBセールスの方々にとってはあるあるかもしれません。


私自身がファーストキャリアから所属している人材業界では、大手企業が顧客の場合は、人材紹介事業やメディア事業などの様々な商材を合わせて複合的に提案を行う部署が存在する場合が多いです。

一方で中小企業に対しては、各部門ごとに分かれた営業担当が配置される体制を取ります。

そのため、中小企業の営業を担当するSMBセールスの方々は大手顧客に対してアプローチできないという線引きをされている業界です。


当初は、エンタープライズセールスが大手企業を担当していることから、特別で年収も高く、SMBセールスと比較して優劣があると私自身思っていました。

しかし、実際に様々な職種を知っていくうちに、SMBセールスとエンタープライズセールスの間に優劣があるわけではないことがわかってきました

顧客が大手企業と中小企業では、その企業を開拓する上で重要になることやそのために使うスキルも異なるため、そういった点を説明したいと思います。






SMBセールスとエンタープライズセールスの比較


エンタープライズセールスとSMBセールスの違いとして、

  • 対象とする顧客群
  • 扱う商材の価格
  • ステークホルダーの数
  • 意思決定までにかかる時間

が挙げられます。


SMBセールスとは

SMB=Small and Medium Business

の言葉通り、中小企業向けのセールスを指します。

日本には企業数が約400万社ありますが、大企業はその中の1万社程度です。

そのため、世の中で営業をしている会社のほとんどの顧客が中小企業です。

従って、SMBセールスは対象とする顧客の数が多いことが特徴です。

また、エンタープライズセールスと比較すると、低単価の商材を扱うケースが多いことや、巻き込むステークホルダーが少ないことも特徴として挙げられます。


SMBセールスの場合は、顧客企業の担当者の次の決裁者が社長であるケースや、商談相手である担当者に決裁権があるケースがよくあり、短期間で意思決定をしてもらえることが多いです。



エンタープライズセールスは、対象となる顧客群が世の中にある企業400万社の内の1万社しかありません

そのため、複雑な商材を求められることや、価格が高単価になることも多いです。


関わるステークホルダーが膨大であることを表す

キーワードとして「深耕営業」という概念があります。深耕営業とは、クライアント企業の1部門と契約を結ぶだけでなく、他部門の開拓を進め受注を増やしていく営業スタイルであるため、関わるステークホルダーもその分多くなります。


人材派遣業を例にすると、ある企業の営業第一部が自社で契約を結んでいる派遣スタッフを雇ってくれたとします。

そうすると、営業第一部に入り込み続けるだけでなく、その企業の営業第二部やバックオフィスなどの様々な部署に人材派遣のニーズがないかの探りを入れ、その企業との取引金額を増やしていきます。

そのため、最初に契約をした担当部署の部門長から、他の部門長や決裁者に繋げてもらうなどして企業に深く入り込むことが重要になります。


また、意思決定までの期間は、SMBセールスが短期間であるのに対し、エンタープライズセールスは年単位でかかることも多くあります

その理由は、大企業はその年度の予算は既に決まっており、次年度の予算に向けてロングスパンで検討するケースがあるためです。






求められるスキル「SMBは瞬発力、エンプラは継続力」


SMBセールスとエンタープライズセールスでは、求められるスキルも異なります。


SMBセールスに求められるスキルは主に3つあります。

SMBセールスは顧客対象の数が多いため、自分の中でPDCAをいかに早く回し、レベルを上げられるかが重要になるため、効率性が必要になります。

そして、見つけた顧客に対してアプローチをする際の瞬発力、短期間で意思決定まで導くクロージング力も求められます。



一方で、エンタープライズセールスに求められるのは、継続力忍耐力です。

先ほども説明した通り、SMBセールスの顧客群である中小企業とは異なり、エンタープライズセールスの顧客となる大手企業は年単位で交渉が進んでいきます。

そのため、次年度での意思決定の俎上に乗れるように、企業との関係性を築くことが重要になってきます。

このような長期間の交渉では、継続力と忍耐力が求められます。


また、顧客へのアプローチ力、すなわちリードを生み出す力も重要になってきます。

SMBセールスの領域では、BtoBマーケティング手法が確立されてきたことで、Web広告や展示会などを通じて、商材の認知拡大や顧客へのアプローチがしやすくなっているため、リード獲得よりはクロージング力が求められます。

一方で、大手企業が顧客の場合は、お問い合わせベースでリードが生まれるケースはまれです。つまり、自社の商材を顧客に対してどのようにアプローチし、見込み顧客を獲得するかが重要になります。

そのため、現状は接点を持っていない顧客に対して、どのようなマーケティング手法でアプローチをするかを一社一社考え抜く力が求められます。


組織力学を理解するという点も重要です。

先ほども説明した通り、エンタープライズセールスはステークホルダーが複雑です。

SaaS商材を例にすると、契約をしてもらいたい部門の部長がYESでも、コーポレートセキュリティの方々がNOだと契約はできません。

このような背景から、顧客企業の中での意思決定者だけでなく、意思決定に対して影響力を持つ存在を見定め、攻略することが求められます。






エンプラセールスが高年収の理由は商材単価と希少性


様々な観点から、SMBセールスとエンタープライズセールスについて説明してきましたが、あくまで優劣があるわけではなく、使うスキルセットが異なるということを理解いただけたと思います。


しかし、相談者さんが仰る通り、エンタープライズセールスの方が年収レンジが高くなる傾向はあります

その理由は2つあります。


1つ目は、エンタープライズセールスの方が扱う商材の単価が高く取引額が大きくなりやすいためです

その分一人当たりの営業生産性も上がり、年収水準も高くなりやすいです。


2つ目は、市場の中での希少性が高いためです

対象顧客数が少ない分、エンタープライズセールスとしての経験を持つ方々も少ないです。

その少ない人材を、\様々な業界の企業が取り合うため、年収は引き上がっていくという状況になっています。

したがって、SMBセールスとエンタープライズセールスで「どちらが優秀か」については優劣はありませんが、希少性という意味ではエンタープライズセールスの方が高くなりやすいです。






SMBからエンプラへの転職の2つの方法


SMBセールスからエンタープライズセールスへの転職の方法は2つあります。


1つ目は、SMBセールスの経験しか持っていない方でもエンタープライズセールスを募集している企業に転職するパターンです。

このような募集を行っている企業は、受注までを狙うフィールドセールスではなくても、アポイント獲得を狙うインサイドセールスとして採用していることがあります。

SaaS系の企業はこのような募集を行っていることが多いです。


こういった企業で、大手企業の顧客とのコミュニケーションの取り方や見込み顧客の生み出し方を学んでいき、エンタープライズセールスの経験を積んでいくのは一つの方法だと思います。


▼未経験からSaaS系企業のインサイドセールスへの転職▼



2つ目は、エンタープライズセールスが事業戦略上重要な会社にSMBセールスとして入社をし、社内異動で狙っていくというパターンです。

事業戦略上、エンタープライズセールスが重要な職種になっている企業としてSaaS系の企業が挙げられます。


SaaS系の企業はアカウント課金の形式をとっている企業が多く、アカウントを発行するごとに売上が増えていきます。

そのため、顧客企業の社員数が多いほど、発行されるアカウント数も多くなりやすいため、大手企業の顧客を獲得したいというニーズが存在しています。


こういった企業にSMBセールスとして入社し、実績を挙げた後に社内異動でエンタープライズセールスを狙っていくことが王道のキャリアパスだと思うので、是非検討してください。


▼大手企業が顧客対象となることが多いアカウント営業へのキャリアパス記事▼






さいごに


さあ、いかがでしたでしょうか。

このコーナーでは、皆様からのお便りを大募集しています。

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こちらもお気軽にご応募ください。


それでは、また次のラジオコーナーでお会いしましょう。

さようなら!



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