はじめに
ONE CAREER PLUSのキャリアアナリストが、皆様のお悩みや一般的な疑問にお答えする連載企画。
今回は、「組織再編により、キャリアプランが揺らいでます」という相談者さんからのご相談です。
組織再編によるリスクやメリットを考慮した上で、どのように今後のキャリアを選択すれば良いのでしょうか?
キャリアデータを知り尽くすキャリアアナリスト佐賀が、率直にお答えします。
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本日のお便り
お世話になっております、ONE CAREER PLUSの佐賀です。
キャリアアナリストである私佐賀が、キャリアのお悩みに答えていくこの企画。
これまでONE CAREER PLUSに寄せられた相談や、一般的に皆さんが悩むであろうテーマを取り上げ、ラジオ形式で解決していく、シンプルなコーナーでございます。
さて、本日のお便りはこちら。
ラジオネーム「ユキジ」さんからのお便りです。
「初めまして、ユキジです。
デジタル商材のインサイドセールスを担当する社会人8年目です。
現在の会社は4社目で、フィールドセールスへの昇進に向けて頑張ってきました。
少しセンシティブなご相談になってしまうのですが、現在私の企業は大きな組織再編を予定しています。
私が所属する部署はあまり力が強くなく、自身のキャリアにとっては、組織再編によるアップサイドよりはダウンサイドの方が大きいと予想しています。
会社としても苦戦が続いていることもあり、キャリアアップが遅れるなら転職も視野に入れたいのですが、そもそも経験社数が多いのと、転職するとしてもインサイドセールスとして再度やり直しになるのが懸念点です。
リスク覚悟で現職に留まるか、足踏みの要素も許容して転職をするか、佐賀さんとしてはどちらが良いと思われますか?」
というご相談をいただきました。
外部に相談し難い内容も含まれていたと思うのですが、お便りをお寄せいただきありがとうございます。
組織再編によって生じる問題とは?
今回のお便りのように、組織構造の変化に伴い、在籍企業に留まるべきか転職すべきか悩み、ご相談いただくケースは、近年増加しています。
具体的には、現在在籍している会社やビジネスモデルに大きな不満はなく、本来であれば社内昇進の機会があり、職種転換や部署異動も叶うはずであった。しかし、業績悪化や組織再編によって職種転換や部署異動の道が断たれてしまったことで、今後も同じ業務を続けなければならなくなったというケースになります。
今回と類似したお悩みが多数寄せられた例として、2022年後半から2023年の前半にかけて外資系企業を中心に行われていたレイオフが挙げられます。
X (旧Twitter)社を初めとした外資メガテック企業で、レイオフが大々的に発生し、社内におけるプロモーションや職種転換が停止したことで、各社のビジネスパーソンに大きな影響が及びました。
具体的には、SaaS系の企業に在籍されている方から、
「インサイドセールスを始めて3年目になるため、本来であればフィールドセールスに職種転換できるはずでしたが、その道も閉ざされてしまいました。
このあとどのようなキャリア選択をすれば良いでしょうか? 」
といったご相談が多く寄せられました。
【2022年後半~2023年前半のレイオフについて詳細を知りたい方はこちら】
まさしく、相談者さんもこちらのケースに該当するのではないかと思います。
お便りをふまえると、現在の状況は以下のように整理できます。
- これまで、デジタル商材のセールスとデジタル商材以外のセールスの両方を経験し、インサイドセールス職としてキャリアアップを積み重ねてきた。
- その過程でフィールドセールス職への昇進を狙っていたが、組織再編によってその道が閉ざされてしまった。
こうした状況の中、「今後のキャリアをどう選択するべきでしょうか ?」というご相談になると思います。
「転職」or「現職に留まる」、どちらの選択肢をとるべきか?
個人的には、現職に留まることを前提としてキャリアを形成する方が良いと思います。
ただし、以下の2パターンに該当する場合には転職を検討された方が良いと思います。
(1) 現職に留まることで、自身が思い描いているキャリアアップのイメージから大きく後れを取るケース
(2) 現在の職場がハードな環境であり、現職に留まることで健康上大きな悪影響が及ぶケース
上記のパターンに該当しない場合には、現職でキャリアを形成する選択肢を推奨させていただきます。
現職に留まるべき理由とは?
現職の企業でキャリアを形成することを推奨する理由が2点あります。
【理由1:転職市場におけるネガティブな評価】
1点目は、転職の回数が多い場合、転職市場においてネガティブな評価を受ける恐れがあるがあるためです。
お便りに含まれていた通り、社会人8年目という30代にさしかかるタイミングにおいて3回という転職回数は、転職市場においてやや多いと解釈されます。
以前ほどではないにせよ、転職回数を理由に書類審査で落ちてしまうケースも考えうる転職回数だと言えます。
昨今の「転職が当たり前」という風潮により、転職回数が問題になる機会は減ったものの、
「30代前半であれば転職は2回まで」という上限を設けている企業も少なくありません。
そのため、いたずらに転職回数を増やすことには反対します。
さらに、転職回数以外の観点で、インサイドセールスとフィールドセールスの違いに対する懸念についても説明させていただきます。
インサイドセールスは、受注確度の高い商談・アポイント獲得を主に担当する業務になりますが、転職市場においては、クロージングの経験がないという受け取られ方をしてしまう場合があります。
自身で顧客に提案して、契約書や受注を獲得するという営業経験は積んでいないため、大半の企業は、「現時点でいきなりフィールドセールスを任せることは難しい」という判断を下すと思います。
企業側からすると、フィールドセールスへのチャレンジを許容する場合は、大変失礼な表現になってしまいますが、採用難易度を下げる意思決定を下さなくてはならないおそれがあります。
そのため、相談者さんが望むような企業、ビジネスモデル、フェーズ、年収帯といった条件と見合わない企業を受けることになる場合があります。
以上を踏まえて、中長期的に理想とするキャリアが定まっているのであれば、まずは社内でキャリアを積み、2〜3年かけてでも社内の中で異動をして理想のキャリアを実現することを推奨します。
【理由2:組織上の困難を乗り越える価値】
2点目は、現在の窮地を迎えた組織において、ハードな環境を経験することで市場価値が上昇する可能性があるためです。
以前Twitterでレイオフが発生した際に、当時LINEで上級執行役員を務められていた田端さんが「(Twitterに在籍されている方は)絶対に今のハードな環境に残った方がいい」という趣旨の投稿をされていました。
私もほとんど同じ意見です。
組織において大きな難所に差し掛かった際に、経営陣が下した判断や、その判断に対する現場のメンバー・マネージャー陣の行動に関する知見は、キャリアにおける重要な財産になります。
私が、新卒で入社したビズリーチの創業者である南さんは、「ビジネス上の困難は、いつか笑い話になり、話のネタにすることもできる。」と仰っていました。
例えば、今後マネジメント層に昇進した際にメンバーに語ることができます。
また転職活動においては、採用側・候補者側双方の立場において強いエピソードになります。
それに加えて、今後同じフェーズや類似した苦難を経験する可能性がある企業にとって、苦難に直面してそれを乗り越えた経験がある方は、採用したい人物像に合致していると言えます。
そのため、こうした経験を積むことは、キャリアマーケットにおいても、ビジネスパーソンとしても非常に大きな財産になります。
以上より、現職に留まってできる限り多くの経験を積む方が良いのではないかと思います。
しかし、例外としてお話させていただいた通り、現職に留まることで自身の心身の健康が大きく損なわれる場合や、年収が大きく下がり生活が立ち行かなくなる場合、困難を抜け出す見込みがなく5年・10年とキャリアが停滞する場合には、話が変わります。
よって、こうしたリスクと天秤にかけた上で、今後経験する困難が自身のキャリアにおける財産になるのか、遠回りになってしまうのかを判断して、意思決定してみてください。
さいごに
さあ、いかがでしたでしょうか。
このコーナーでは、皆様からのお便りを大募集しています。
詳細欄のURLの部分から、キャリアに関する疑問やお悩みをどしどしとお寄せください。
また、佐賀や他のキャリアアナリストと直接話してみたいという方は、無料のキャリア面談も受け付けております。
こちらもお気軽にご応募ください。
それでは、また次のラジオコーナーでお会いしましょう。
さようなら!