こんにちは、トイアンナです。
「これから先の人生、ずっとこれをやるのか……」
30歳で大手企業を辞めた友人が、漏らした言葉でした。彼女は同僚の中でも最速出世を果たしており、このままいけば部長職、あるいはもっと上まで上り詰めることが確約されていました。しかし、彼女は会社を辞め、ベンチャーへ行きます。
それから数年後。彼女は頭を下げ、元いた業界へ戻りました。出世コースからは外され、庶務としての復帰。それでもいいからと、大企業へ舞い戻った彼女。一体何が起きたのか。答えは、転職にありがちな「やりがい搾取」でした。
やりがい搾取とは

「やりがい搾取」とは、業務に見合う給与の代わりに、やりがいを与えることで労働を搾取することを意味します。東大教授の本田由紀氏が2007年ごろから使い始め、現在では一般的に知られる言葉となりました。
例えば、ライターである私へ原稿料と引き換えに「原稿制作の依頼」をすることは正当な対価の範疇ですが、「今後の成長へつながるだろうから」といって、同じ謝礼額で媒体の戦略立案やスケジュール管理までさせた場合は、やりがい搾取といえるかもしれません。
会社員の場合は、一般職でありながら総合職相当の管理業務を任せるケース、派遣やアルバイトに正社員レベルの代替不可能な業務をお願いするケースなどが該当します。
大企業でも新卒社員にマネジメントを任せることはあります。この場合、任せること自体は問題ないのですが、それに見合ったメンターの指導やOJTも受けられない場合、大半が過労や鬱で辞めることを想定した採用をしているなら「やりがい搾取」といえるでしょう。やりがい搾取は、「ベンチャーだから」「JTCだから」というくくりに関係なく、どこでも起こりうる悲劇です。
ただ、逆に正社員や管理職でありながら、その職位に見合わない業務しかやらせてもらえないと、それはそれで社員のやる気を奪うことになります。冒頭の彼女は、まさにそういう状態にありました。
やりがいを感じられない人生
伝統的な日系企業、いわゆるJTCで30歳前後まで働いている方なら、冒頭の「これから先の人生、ずっとこれをやるのか……」という言葉が刺さるでしょう。私の周りの友人も、バイリンガルであったにも関わらず、国内中小企業の営業を担当。英語を使うことは全くありませんでした。
むしろ、「女を担当にするなんて、うちを取引先として舐めてんの?」とキレる先方の担当者に、頭を下げてのスタートでした。社内に男女差別はないものの、取引先は旧態依然な担当ばかり。
必死のおもてなし、飲み会、あるいは「手作りクッキー」など、”女らしさ”も駆使しての営業で、目覚ましい成果を出しました。そうでもしないと、生き残れなかったからです。
そうして出世した彼女には「女だから優遇された」と、やっかみの声も届きます。政府主導で女性活躍が叫ばれ、各社の出世コースに”女性枠”が生まれます。彼女が管理職になれたのも、そのお陰だと嫉妬されたのでした。
嫉妬を笑顔で流しながら取引先の好みを調べ、「あの飲み屋にいる○○ちゃんなら、○○さんが気に入りそう」と手配する日々。地道な調整が功を奏して売り上げを伸ばしていましたが、ふと思ってしまったのです。
「これから先の人生、ずっとこれをやるのか……」と。
転職の面接で「運命の出会い」をする

さらに・・・