10月23日のドラフト会議は、企業の「人材育成力」が評価される場でもあります。 プロ野球界で活躍するスター選手たちの中には、企業に所属し、その組織文化の中で才能を磨いた元会社員もいます。彼らはいかにしてそのポテンシャルを開花させたのでしょうか。
シリーズ「野球に学ぶキャリア戦略」。今回は2回にわたり、プロ選手を輩出してきた企業の組織文化や人材育成術に迫ります。執筆は、年間400試合以上のアマチュア野球を観戦し、ドラフト候補を追い続けるスポーツライターの西尾典文さん。まずは都市対抗野球大会の成績と時価総額を比較し、才能が開花する「エコシステム」を紐解きます。
量は減っても質は高い。社会人野球の現在地
チーム数減少、独立リーグへの移籍も
10月23日に行われるプロ野球(NPB)のドラフト会議。2週間前となる10月9日には高校生と大学生がドラフト指名を受けるために必要となるプロ志望届の提出も締め切られ、高校生124人、大学生176人が対象となることが決まった。
そしてNPBのドラフト指名の対象となるのは学生野球以外にも存在しており、その多くが社会人野球と独立リーグの選手である(それ以外では海外のプロ球団や大学でプレーしている日本国籍の選手も含まれる)。
社会人野球の企業チームはピーク時に200以上あったが、不景気の影響を受けて減少傾向が続き、2011年には72に。その後、新興企業の参入や、今年16年ぶりに活動を再開した日産自動車なども加わり、今年は93チームまで回復しているが、それでもピーク時の半数以下だ。
また選手をNPBに送り出すという意味では、社会人野球を管轄している日本野球連盟(JABA)の申し入れによって、企業チームの選手は育成ドラフトでの指名は不可となっている。育成でもNPB入りを目指したいという選手が企業チームから独立リーグに移籍するケースも増えている。
その影響もあって、昨年のドラフト会議で指名された選手の数は社会人野球からは13人なのに対し、独立リーグからは18人(支配下7人・育成11人)だった。育成ドラフトまで含めると、NPB入りへの道は社会人よりも独立リーグの方が開かれているとも言えそうだ。
レベルの高さで即戦力を輩出
NPB入りする人数こそ多くないものの、レベル的に高い選手の割合が最も多いのが社会人野球であることは間違いない。今年のルーキーでも伊原陵人(NTT西日本→阪神1位)、竹田祐(三菱重工West→DeNA1位)、荘司宏太(セガサミー→ヤクルト3位)、石伊雄太(日本生命→中日4位)などが一軍の大きな戦力となっている。
また10月8日にはクライマックスシリーズを控えたDeNAの一軍が社会人の日本通運と練習試合を行い、4対9で敗れた。社会人野球には年齢的にNPB入りは逃したものの、実力的には十分NPBで通用する選手も多い。ドラフト指名されるのは、そのような厳しい環境である程度若いうちに頭角を現した選手であり、それを考えればNPBで早くから結果を残せる選手が多くなるのも当然だろう。
「企業の規模」は強さに比例しない? 都市対抗の結果が示す真実
社会人野球チームの「時価総額ランキング」
ではそんな社会人チームの企業規模や風土と、大会での成績や選手をNPBに送り出した実績についてはどのような関係があるのだろうか。まず、企業規模から考察する。
今年の都市対抗野球に出場した32チームの母体となっている企業について、時価総額をまとめたところ以下のような結果となった。
トップは日本国内企業の中でも1位であるトヨタ自動車。その後に日立製作所、NTT(今年はNTT西日本が出場)、三菱重工(今年は三菱重工Eastが出場)、Honda(今年はHonda、Honda鈴鹿、Honda熊本の3チームが出場)が続く結果となった。
ただ、社会人最大の大会である都市対抗での成績を見ると、この中で最も優勝回数が多いのはHondaの3回で、その他はトヨタ自動車が2回、NTT西日本、三菱重工East、Honda鈴鹿が各1回とそれほど多くはない。
今年の都市対抗本大会に出場したチームを優勝回数の多い順に並べるとENEOS(12回)、東芝(7回)、日本生命(4回)、ヤマハ(3回)となる。この中で東芝と日本生命は現在非上場となっているため時価総額は不明だが、ENEOSは今年出場した企業の中では時価総額で10位、ヤマハは19位と決して上位ではない。これを見ても企業規模の大きさがイコールそのチームの強さではないことがよく分かるだろう。
神奈川の企業の躍進を支える「エコシステム」とは?
さらに・・・





