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営業は「売り込む」のではなく「相談に乗る」。価値貢献を軸としたヒアリング術とは|トップセールスの思考法vol.1

「提案は一切しないんですよ。ただ相談に乗るだけ。それで年間1000万の仕事が決まっていく」──そう語るのは、セールスギルド株式会社代表取締役の古瀬貴大さん。


新卒入社から一貫して営業畑を歩み、現在は営業支援事業で累計5億円以上の売上を創出。その営業スタイルは、従来の「売り込み型」とは一線を画します。


日本最大級の営業の大会「S1グランプリ」とワンキャリア転職のコラボシリーズ「トップセールスの思考法」では、豊富な経験・実績を持つ営業のエキスパートから、成果を出すためのノウハウやキャリアづくりの秘訣を伺います。


第1回となる本記事では、「価値貢献」を軸にしたスタイルで圧倒的な成果を出す古瀬さんのノウハウ・キャリアに迫ります。





「何でも売れる状態」を目指した営業キャリアのスタート


──まずは古瀬さんの自己紹介をお願いします。


古瀬:改めまして、セールスギルド株式会社代表取締役の古瀬貴大です。私は大学3年生の時に「一度きりの人生で、何かを成し遂げて自由になりたい」と考えました。そのためには社長になることだと思い、社長になるには「何でも売れる状態」、つま

りトップセールスになる必要があると考えたんです。


文系だったため何かを作るという発想がなく、営業が得意になれば起業して社長になれるに違いないと考え、それをずっと追い続けてきました


新卒では通信機器会社のスターティアに入社し、子会社のスターティアラボ(現クラウドサーカス)で電子書籍作成ソフトの営業を担当しました。単価200-300万円の商品をほぼ未接点の顧客に対して提案するアウトバウンド型の営業でしたが、リストアップからターゲティング、テレアポ、商談までを一貫して行い、月に20〜30件のアポ・最大で月5件の受注を獲得していました。


──その後、転職と起業を経験されていますが、どのような経緯だったのでしょう。


古瀬:29歳になってトップセールスにはなれても起業できていないことに気づき、転職を決意しました。転職先の候補にはセールスフォース、営業代行会社、ラクスルがあったのですが、年収は一番低かったもののラクスルを選択しました。


理由は起業のためです。営業力だけでは社長になれないと考え、ビジネスの本質である「安く仕入れて高く売る」の仕入れ側を学ぶため、生産管理部という営業とは全く違う部署に入りました。年収は約200万円下がりましたが、3年後の起業を見据えた戦略的な選択でした。


1年半後に再び営業をやることになったのですが、そこで改めて「営業が得意で、好きで、人に求められる」ことを実感しました。好きで得意で求められることで起業すれば価値提供でき、成功するに違いないと確信し、営業で起業することを決めたのです。






月間アポ率10%を実現した「効率重視」の新規開拓術


──新卒時代から営業成績が優秀だったとのことですが、どのような工夫をされていたのでしょうか。


古瀬:「1番になりたい、稼ぎたい」というストレートな気持ちが強かったので、必要なことは全てがむしゃらに行いました。まず前月の営業成績1位の人の数字をウォッチして、250万なら300万を目指すという逆算思考と、常に進捗をチェックしていました。


実は私、数をこなすのがあまり得意ではないんです。みんなが1日100件電話する中で、私は頑張っても30件程度でした。その代わり、効率を徹底的に追求しました。最終的にはアポ率が10%に達し、1日に20~30件のコールで2~3件のアポを獲得し、2~3件の商談に回るスタイルを確立しました。



──アポ率10%というのは驚異的ですね。どうやって実現されたのですか。


古瀬:まず「勝ちやすいところはどこか」を徹底的に考えました。業界、企業規模、そして決裁者の分析です。営業部長より社長の方が決まりやすいとわかれば、社長をターゲットにリスト作成しました。


そして「強く興味を持ってもらえそうなターゲットリスト」を作り、引きつけるトークを用意しました。社長と話せれば50%の確率でアポが取れる状態にまで精度を高めたんです。つまり、会うべき人に適切な話を持っていく設計をしっかりと作り込んでいました。






信頼獲得の鍵は「売り込む」のではなく「相談に乗る」


──ここからは多くの実績を残されている古瀬さんに、「商談で顧客の心をつかむためのヒアリング術」をテーマにお話しいただきます。商談時にはどのようなことを意識されていますか?


古瀬:まず抑えておきたいのは、「興味のない段階で、一方的に話をされるのは嫌だ」という顧客の本音です。私自身、営業を受ける身になって強く感じています。


一方で、人は自分のことや会社のことを熱心に聞いてくれる人を無碍にしません。そして深掘りする際の質問の精度が重要です。「この業界でこの事業をやっているということは、XXXで困っているケースを耳にするんですが、いかがですか?」というように仮説をもってヒアリングをします。


この精度が高いと「この営業は分かっている」と評価され、何度か繰り返すうちに「この領域のプロであるこの人に相談したい」と思ってもらえるようになります。関係性が営業・顧客の関係から対等、場合によっては「教えて」と言われるような状況に変わっていくんです。


また、お客さんに教えてあげる、相談をリードするという姿勢も大事にしていましたね。話し方・知識・経験を通じて尊敬されるような人になれば、相手から本音が出てくるようになります。


──提案よりもヒアリングが重要とのことですが、商談の時間配分はどうしていましたか。


古瀬:1社目の時は、最初の5〜10分でアプローチと前提条件を整理し、30〜40分はヒアリングとディスカッションに使い、商品の話は一切しません。最後の5〜10分でニーズが明確になり、解決したいという言葉をいただいた上で提案し、クロージングまで持っていく流れでした。






顧客と対等な関係を築く「過去・現在・未来」のフレームワーク


──ヒアリングの精度を上げるためには、具体的にどんなことを意識すれば良いのでしょう?


古瀬:シンプルですが重要なのは「会社・事業・担当者の過去・現在・未来を聞く」ことです。これらを相手に話してもらい、考えてもらうことで、相手の中で整理されていくんです。当たり前だから聞かないのではなく、あえて聞いて答えてもらうことが大切です。


例えば社長相手なら、会社の公式サイトで沿革を確認して、仮説をたてます。「創業事業は人材派遣で始まって、そこから人材紹介、さらに採用ブランディングや採用代行をやられていますね。この3事業の売上比率はどのような感じですか?今はどこを一番伸ばそうとしていますか?」といった具合です。



そこから「どうなりたいか」という未来の話を聞き、「そこに向かって何をやっていますか」「それで目標達成できそうですか」「確実にいかないと困りますよね。他に何をやったら達成できそうですか」と続けます。

こうすることで、現在と未来のギャップの目線合わせを行い、顧客と対等な目線で一緒に作戦会議をするような雰囲気を作ることができます


なお、相手が社長なら会社のことを聞けばいいのですが、担当者の場合は注意が必要です。会社や事業にとって優先度が高いものを抑えないと話が前に進まないので、「会社のこと」と「事業のこと」と「個人としてどうか」、その人の役割や評価とかを聞いていき、全てに紐づくような提案につなげる必要があります。






本質は「ビジネス全体の成功」を見据えること


── ヒアリング時によくある失敗例についても教えてください。


古瀬:多くの営業担当者は自分が売りたい領域のことしか聞きません。例えば、人材採用に関するサービスの営業の場合には「今年何人採用したいですか」「どの媒体にどのくらいかけていますか」といった具合に。でもそれは本質ではありません。本質は「顧客のビジネスが成功すること」です。


だから根本を聞きます。「なぜ採用したいんですか」「去年はどうでしたか」「5年後、10年後はどうなりたいんですか」「それなら10人では足りないのではないですか」──そういう会話ができる営業になることが重要です。


また、若手の営業担当者には、自分の商材の周辺領域についても詳しくなることを勧めています。


例えばダイレクトリクルーティングツールを売るなら、採用や転職だけでなく、離職防止、エンゲージメント向上、Z世代のマネジメントなどの周辺領域も学ぶ。そうすれば「最近はこういう傾向があるようですが、いかがですか」と、より広い視点で相談に乗れるようになります。






若手営業パーソンが身につけるべき「3つの自信」


──営業を始めたばかりの若手など、実績や仮説の精度に自信がない人も多いと思います。若手営業が古瀬さんのように熟練した営業になるためには、どのようなステップを踏めばよいでしょうか。


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ワンキャリア転職編集部

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