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クラウドサイン責任者に聞く、より良い事業家になるために必要な条件

ONE CAREER PLUSでは、次のキャリアを考えるきっかけとなるイベントを定期開催しています。今回お届けするのは、2022年9月に開催した「『事業作り』への道 〜事業家になるための3つの真実〜」のイベントレポート。


ゲストに迎えたのは、約130万社が利用する電子契約サービス、クラウドサインの責任者である弁護士ドットコム株式会社取締役の橘大地さん。


クラウドサインの立ち上げ期からあらゆる事業フェーズを経験したという橘さんに、ONE CAREER PLUS モデレーターの佐賀が、事業家に必要な素養や環境などについて、3つのテーマを起点にお話を伺いました。そこには業界トップで活躍されてきたからこそ言える、本質的な解がありました。



橘 大地:東京大学法科大学院修了。最高裁判所司法研修所修了。株式会社サイバーエージェント入社、スマートフォンゲーム事業、契約交渉業務および管理業務等の契約法務、株主総会および株式関係実務に従事。2014年GVA法律事務所入所、資金調達支援、資本政策アドバイス、ベンチャー企業に対する契約アドバイス、上場準備支援などを担当。2015年11月当社入社、2018年4月より執行役員に就任、2019年6月より取締役に就任。






契約の新たなスタンダードを築くクラウドサイン


ONE CAREER 佐賀(以下、佐賀):自己紹介と会社概要をご説明いただけますか。





橘 大地(以下、橘):弁護士ドットコム株式会社で取締役をしている橘大地です。紙とハンコではなく、クラウドで契約締結する、クラウドサインという電子契約サービスの事業責任者をしています。





前職は日本におけるスタートアップ草創期に、法律事務所でスタートアップの顧問弁護士として支援するなかで、本を出版したり、日本在住の起業家の海外進出を支援するため、シンガポール支部の立ち上げなどを行っていました。


営業やマーケティング、カスタマーサクセスなど、ビジネスに関することは全て弁護士ドットコムで学びました。そのほかにも、業界団体を立ち上げたり、与党内の勉強会やSalesforceなどのセールステックのイベントにも多く登壇したり、弁護士ドットコムで多面的な経験を積んできました。また、最近ではJapan Sales Collection 2022というコンテストで営業日本一にもなり、自分自身、楽しみながらいろいろな経験をしてきました。







弁護士ドットコム株式会社は、2022年で18期目を迎えるインターネット企業です。法律相談ポータルサイトの弁護士ドットコムという事業と並行し、7年前に新規事業として、電子契約サービスのクラウドサインを立ち上げました。


クラウドサインは、約150年続いてきたハンコという文化を尊重しつつも、電子契約という新しい契約の商習慣を作るという考えで取り組んでいます。


今でこそ「クラウド化」という言葉が当たり前になってきていますが、立ち上げ当時は、理屈ではクラウドにしたほうが良いと分かりつつほぼ誰も手を付けていない分野でした。100年以上続いてきた文化自体を変えるという、事業として最難関レベルのものだったことも影響していると思います。


それが今は、「さらば、ハンコ。」というCMを放送したり、多くの企業さまに利用いただき、徐々に社会に普及しつつあるサービスへと成長しています。



より良い事業家になるための3つの論点





ONE CAREER 佐賀(以下、佐賀):それではここから、事業作り経験のある橘さんに、「事業家キャリア 3つの真実」をテーマにお話をお伺いしていきたいと思います。



1.最も重要なのは、意思決定の機会とセレンディピティ





佐賀:まず最初の質問です。ONE CAREER PLUSのデータでも、事業づくりの根幹である集客を行えるマーケティング経験者は事業家として活躍しやすいことが表れていますが、橘さんはどのようにお考えでしょうか?


:トレンドに適したクリエイティブを選ぶ、マーケティングスキルは必要です。しかし私は、意思決定の機会と運に恵まれる能力、セレンディピティが、事業家に最も重要なスキルだと考えています。





上図の「20代成長環境に必要な4つの視点」を基点に解説をします。


まず、「意思決定の機会」と「適切なフィードバッグを受けられるか」について。基本的に、若手はなかなか裁量のある意思決定権を得られません。責任ある意思決定主体者というポジションを得て、かつ適切なフィードバックを受けられるかどうかが成長の鍵を握ります。


例えば、50億円の案件をチームで合議するのと、1億円の案件を一人で意思決定するのでは、後者のほうが圧倒的に成長できます。そして、業界に精通する先輩経営者の側で働く体制が整っている企業は、より本質的な意思決定を行っています。そのような企業だと、自身も正しく成長できます。


その点クラウドサインでは、私が全員の面接に参加し、入社初日から彼らと話す機会を作っています。そして、全て本音でフィードバックしていますね。


佐賀:それは若手にとってありがたい環境ですね。次に「セレンディピティ」についてお話を伺いたいと思います。成長環境の文脈では馴染みのない言葉ですが、選んだ背景や意図を教えていただけますか?





幸福を引き寄せるのはスキルです。アメリカのベンチャーキャピタルの研究機関では、シリコンバレーの起業家で最も重要な能力は「セレンディピティ」だといっています。スティーブ・ジョブズの一番有名な卒業講演で出てきた、経験の点と点を線にする能力「Connecting the dots」もセレンディピティの一種です。


謙虚であること、オープンマインドであること、自ら努力し続けること、エネルギーが高いこと、感受性が高いこと、多様性のある意見を聞くこと、そういった能力が幸運を引き寄せます。逆に斜に構えて、やるべきことをやらないとチャンスは二度と巡ってきません。


例えば飲み会で偶然、先輩起業家と隣になり、記憶に残る対応をするか、一言も喋らないか。前者のように振る舞うだけで、そこからご縁が広がることもあります。クラウドサインも、一枚の名刺から三井住友フィナンシャルグループとご縁ができて、SMBCクラウドサイン株式会社という合併会社が誕生しました。





佐賀:次に、「ドメイン知見」「複数プロダクトを活かせるフェーズ」について伺えればと思います。ONE CAREER PLUSでは、市場価値を上げるためには、伸びる業界や企業でキャリアを積むことが重要だと考えています。





なぜなら、事業が成長しているとチャンスが回ってきやすく、縦横にキャリアを伸ばすことができるからです。一方で、5〜10年後の事業成長を見極めることは非常に難しいですが、橘さんのご意見を伺えますでしょうか?


20代の方によく言っているのが、「日本初の新規事業を生み出しているかどうか」という観点で企業を見ることです。その会社では新規事業でも、世間では既存事業というのはよくある話です。日本初の事業を生み出している企業は、全てオリジナルで考えるしかないので、自身を最も成長させることができると思います。


その点当社は、日本初の事業にトライし続けている企業です。祖業である「弁護士ドットコム」という法律相談サービスは、「一見さんお断り」だった弁護士の世界で、誰でもインターネットから弁護士に依頼できる新たな商習慣を作り出しました。


クラウドサインも、1億2000万人のユーザーがいるハンコ文化を電子契約という新しい商習慣に切り替えようとしています。今後はそれに加え、法律の問題やテクノロジーが届いていない領域における国民的なインフラなどにも挑戦していきます。


そして、ドメイン知見も必要条件ではありません。当社の社員の9割以上は、法務経験も弁護士経験もありません。知識がなければ、知見のある人に聞けばいいと思います。



2.フェーズは関係なく、成長環境が整っているかどうか





佐賀:よく意思決定のチャンスは、アーリー期やシード期に多いといわれていますが、橘さんのお考えをお伺いできればと思います。





フェーズは関係なく、挑戦でき、適切なフィードバックをもらえる環境があることのほうが重要です。会社はその時々で異なる意思決定が必要となり、事業難易度にも差があります。例えば、2年でシードからレイターになる急成長企業もあれば、3年間成長せずアーリーの企業もあります。


私は上場後の弁護士ドットコムに入り、クラウドサインという座席数の多い事業に恵まれて、全てのフェーズを経験しました。そして現在新たに、「termhub(タームハブ)」という規約管理の事業に挑戦しています。まだ数名のメンバーなので、こちらはシード期の環境です。


また、良くない例として聞くのが、新規事業だけやりたいという人です。事業は当たればグロースしますし、どの企業も事業を拡大させるために力を注いでいます。新規事業だけやりたい人には、「結局何がやりたいの?」という印象を正直受けてしまいます。





佐賀:ここで視聴者の方から「自身の成長に合わせて会社を選ぶことは適切か」という質問が届きました。


:これは上司によると思います。この点もセレンディピティの能力の一つで、そのような上司に出会う運を自分で引き寄せるべきです。


どのフェーズでもフィードバックをしない責任者はいます。したがって、面接で事業責任者の性格を聞くのがいいと思います。事業成功という山への登り方は複数あります。ですので、経験則からしか意見を言わない人より、自分の意見を共有しつつ、こちらの意見も尊重してくれる人が成長できるフィードバックをしてくれるのではないでしょうか。



3.豊かな感受性が次の事業を生み出す





佐賀:なかには、強い原体験がない方もいらっしゃるかと思います。この辺りについてどのようにお考えかお聞かせいただけますでしょうか。


:取って付けたような体験は、事業家においてはほぼ意味を成しません。いつも言っているのが、表に示す必要はないものの、喜怒哀楽を感じられる人間になってほしいということです。


例えば、クラウドサインの場合、面倒なハンコ文化に黙って従うのではなく、許せなくてその文化を変えたいという想いが事業の原動力になります。


佐賀:事業家・起業家は「こんな世の中を作っていくべきだ」という想いや強い感情から事業を作っていく人も多いと思いますが、いちメンバーとして入社するにあたり、そこまでの感情を持っていない人もいると思います。例えば、「ハンコがなくなったほうがベターだと思うが、”世界を変えたい”といったような強い想いまでは抱いていない」というケースにおいて、橘さんのお考えをお聞かせいただけますでしょうか。


:どの会社、どの事業でも最初はのめり込めるかどうか分からないと思います。例えば、事業ドメインだけではなく「何者かになりたい」という動機も良いです。公的なものだけではないとも考えています。


ちなみに、クラウドサインには、社会貢献に興味のある人、そして成長事業は新しい取り組みの連続なので、人と違うことをやりたい人が相対的に多いと感じています。





佐賀:ポテンシャルの高い方が揃っているんですね。クラウドサインでは、日々どのようにして事業を生み出しているのでしょうか?


:事業の誕生はセレンディピティの連続です。例えば先ほどお話した、一枚の名刺が発端でSMBCクラウドサインが誕生したり、そのSMBCクラウドサインの立ち上げの際、入社2年目の社員を取締役に抜擢したり、とあるご縁でリクルートとの共同事業の利用規約管理サービス「termhub(タームハブ)」も行うことになったり。現在新しく取り組んでいる、クラウドサインAIというAIサービスも偶然生まれたサービスです。


事業の成長を継続させるためにも、セレンディピティが必要だということを実感しています。あのアップルやピクサーも、セレンディピティを使い、偶然の巡り合わせの連続で、あれほど成長してきたといわれています。


佐賀:関連するのかもしれないのですが、「事業立ち上げ時に、おすすめの本を教えてください」という質問が来ています。


:『ビジョナリーカンパニー』シリーズは自分のバイブルです。「リターンオブラッキー」という運の利益率が、優れた経営者には必要だという内容が書かれています。サイバーエージェントの藤田晋さんもこの本を読んで起業したそうです。


加えて最近は、感受性を高めるために、小説を読んだり映画を観たり、報道を見て怒りを感じたり……そのようなことも事業家として必要だと思います。


先日の記事で、渋谷の街を歩くことの重要性をお話ししたのは、まさにこのことです。変化の激しいところでは新たなトレンドが生み出される。そこには新たなチャンスも眠っていて、その背景やシーンを学ぶことは新たな事業の種につながります。


だからこそ私は、渋谷に住んでトレンドを肌で感じられる機会を増やしたり、日々大学生やアーティストの友人に「なぜこれが流行ってるの?」と質問して、謙虚に学んでいくことを大切にしてます。





佐賀:上記の質問の答えはもちろんYesですが、スタートアップはどうしても、大手の存在を気にしてしまいますよね。


:どちらが新規事業か、ということが重要だと思います。より顧客の課題解決につながる、新規性のある事業は必然的にマーケットをシェアできます。新しいものが常に勝ってきた歴史があり、それは今も変わりありません。ですので、後から大手が参入してくるのは全く脅威ではありません。


ただ逆に、大手が展開している事業領域にスタートアップが参入するというのは、スタートアップが行う行為ではないと思います。


佐賀:最後に、弁護士ドットコムでキャリアを積めることの魅力を教えてください。


:創業者である元榮(もとえ)の近くで働けるのが一番の魅力です。18年前にリーガルテックという世界を作り、国会議員を経て、現在も当社で挑戦し続けている彼から、私は入社当初から現在まで非常にたくさんの学びを得ました。挑戦を続ける企業の創業者はやはり非常に高いエネルギーを持っており、触発されるものも大きいと思います。


最近の私の座右の銘は「大丈夫、全部うまくいく」。人生の大部分の時間を仕事に費やすので、絶対にワクワクできるほうが良いと私自身考えています。弁護士ドットコムには私がいるので、安心して挑戦できる環境があります。もしご興味あれば、ぜひ当社の門戸を叩いてみてください。


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