コンサルキャリアで最も特筆すべきことは、「ネクストキャリアを見越した入社」の方が多いことでしょう。
そして、コンサルに入社した方の多くが直面するのが、以下のような問いです。
・いつファームを去るべきか
・コンサルを経由したからこそ行けるネクストキャリアはどこか
・年収の増減をどう捉えるか
本シリーズでは、実際にコンサルを卒業してネクストキャリアを歩まれる方々にインタビューをし、ポストコンサルキャリアの実録を集めていきます。
今回の実録:マッキンゼーからイオンネクスト
今回お話を伺ったのは、イオンネクスト株式会社の経営企画部長およびイオンネクストデリバリー株式会社の非常勤取締役 を務める木元海さん。
慶應義塾大学大学院を卒業後、2020年に新卒でMcKinsey & Companyに入社。コンサルタントとして大手通信業の海外市場進出の戦略立案や新規事業立ち上げのプロジェクトマネジメントなどに従事。
ファームの制度を活用して1年間出向したイオンネクスト株式会社に、2023年4月に経営企画部長として転職。中期経営計画立案、取締役会運営、戦略的プロジェクトの立上・推進、予算・KPI策定、経営管理などの役割を担う。 2024年5月より、Green Beansのラストマイル物流を担うイオンネクストデリバリー株式会社の非常勤取締役を兼任しています。
コンサル歴2年で、若干29歳で日系企業の経営企画部長を務める木元さんに、卒業したからこそ見えてきた転職や年収のリアルを聞きました。
よりトップイシューに近い課題を解決したい
木元さんが転職を決意したのは、2年目の終わりでした。
「マッキンゼーでは、非常に優秀な先輩方と一緒に働くことができ、本当にたくさんのことを学ばせていただきました。今でも、当時の先輩方からいただいたフィードバックに立ち返ることが多く、大変感謝しております。一方で、当時コロナ禍でリモートも多かったため、クライアントの方々が僕たちコンサルタントと対峙している以外の時間、具体的に何をしていてどんなアジェンダを抱えているか、全体像が見えなかったんです。
あるプロジェクトで、一緒に働いていたクライアントの方が、実は裏で別のプロジェクトと様々な定常業務に取り組んでいることが判明したことがありました。
今、振りかえると当然ですが、クライアントは、コンサルとのプロジェクトに全ての時間やマインドシェアを割いているわけではなく、コンサルに依頼しているのは企業にとって重要なものですが、必ずしも最大のイシューではない可能性がある、とそこで気づいたんです。」
経営コンサルであるマッキンゼーであれど、大企業のトップアジェンダをすべて請け負うことは当然ながらなく、自身が従事しているイシューの断片性を感じていました。
それと同時に、企業活動の全体像を把握し、よりトップイシューに近い問いを課題解決したいという気持ちが強くなったと言います。
また、実行フェーズのプロジェクトを通して、経営課題の解決に繋がっている戦略・施策は、クライアントの方々がトライアンドエラーを繰り返しながら、粘り強く実行していると肌で感じ、自身で最後まで実行に携われないことにもどかしさを感じていたのもこの時期でした。
「これをやればいいのでは」という答えらしきアイデアが出たときに、「すぐにやってみよう」と生き生きとしているクライアントの方を隣で見ていて、「自分でも、一度やってみたい」という思いが強くなり、転職を考え始めました。
とはいえ入社後2年。ファーム内での年収アップや恵まれた環境を手放すにはアグレッシブな決断のように見えますが、彼の整理は「5年後ではなく20年後への投資」でした。
「30歳時点の年収で考えたら、ファームに残る方が高いと思います。ただ、40歳以降を見据えたときに、事業会社で独自性の高い事業経験を積んでいる方がキャリアの広がりもあるし、給与は後からついてくるのではと漠然と考えていました。
コンサルティングファームで学んだことと、事業会社での新規事業のグロース経験とをかけ合わせたキャリアは希少性が高く、より幅広い機会や待遇を手にできるのではないか。だとしたら長期で見たら、早く外の環境にチャレンジした方がいいのではないか、そんなことを考えていました。」
ミッションを自分事として捉えられるか
転職時に最も重視したことは、ミッションの手触り感です。
イオンネクスト株式会社は、「買い物を変える。毎日を変える。」というミッションのもとに、「Green Beans」というネットスーパー事業を行っております。買い物を便利にすることで、家事や育児、仕事で忙しい人たちが、家族と過ごす時間や趣味の時間を持てるようにすることを目指しています。
自身もコンサル時代、スーパーに行くこともままならないような忙しい生活を送っていたこともあり、会社が取り組んでいく課題に実体験をもって共感できたからこそ、当事者として取り組みたいと感じたと言います。
「自分がミッションに共感でき、新しいことにチャレンジする事業会社であれば、大手でもスタートアップでもよかったし、職種もあまり気にしていませんでした。
就活当時から日系大手そのものには興味がありましたが、イオンネクストにたどり着いたのは結果として、すごく運がよかったと思います。」
日系の事業会社に転職すると、マッキンゼーとは異なる人事制度や、働き方、様々なバックグラウンドを持つメンバーなど、環境も大きく変わります。そんな中でも、変わらず事業にコミットができるのは、ミッションへの揺るがぬ共感と成長環境があるからです。
転職して変化した役割とやりがい
1年間の出向という形でマッキンゼーから、イオンネクストへ参画した木元さん。入社当初は、コンサル時代と異なり、スコープが定められていない中で、幅広い経営課題に対して事業の主体者として自身が何をすべきか、判断するのが難しかったと話します。
「入社当初は、コンサルタントっぽい動きをしていたなと思います。」
特に若手コンサルタントの仕事は、パートナーやクライアントが意思決定をしやすいよう、材料を集め準備をすることがメインです。
オプションの提案はできても、自分自身で意思決定して、実行する癖はついていなかったそうです。
「すべての情報が揃っていたら合理的に正しい判断はみんな出来ると思います。ただ、限られた時間の中で全ての情報が揃わないことや、正解がないトレードオフがあること、ロジックだけで判断できない状況もあります。そのような状況でも意思決定したり、事業を前に進めるためにアクションをしたりと、少しずつ事業会社で求められる動きができるようになったのは、イオンネクストで成長できている部分だと思います」
また、事業会社で直接お客さまと接するB2Cのサービスに取り組むなかで、新たなやりがいを感じるようになったと言います。
「2023年7月からサービスを開始したGreen Beansですが、ユーザー数は2024年12月時点で40万人を超えました。自身が立ち上げから関わっているサービスを多くのお客さまに使っていただき、時にはお客さまから感謝の声をいただきます。そういった時にはやりがいを感じますね。」
事業会社で重宝される、経営目線の思考法
コンサルでの経験が活きたと感じるのは、経営と現場をつなぐ意思決定を迫られる場面です。
「専門性が高い現場の方々の知見や意見を経営課題に紐づけたり、経営陣の考えを現場に理解してもらい動いてもらったりと、トップダウンとボトムアップの行き来は役に立っていますね。
現場があってこその小売業なので、現場が何よりも大切だと思っています。
一方で、事業会社に経営目線での思考法を持ち込むことで、格段に意思決定・実行のスピードが上がる感覚があります。
ゴールから仮説思考で逆算しマイルストンを組んだり、オプション出しや、複数のシナリオをシミュレーションしたりといった経営意思決定に必要な材料を準備したりといった所作が当然のようにできるのは、マッキンゼーで学んだ基礎スキルです。」
ただ、今思い返せば、コンサル時代にもっとやっておいた方がよかったと感じることもあると言います。
「転職したあとも、マッキンゼー時代の先輩や同期との繋がりは続きますし、今後も大事にしていきたいと思っています。振り返ると、そういった関係性をもっと積極的に構築し、一緒に事業をする仲間候補をもっと増やしてから転職すればよかったなとは思います。」
マッキンゼーと事業会社との違いは、フィードバック文化です。
周りからフィードバックをもらえる機会はコンサル時代の方が多かったと感じていますが、結局、成長できるかは自分次第だと言います。
「マッキンゼーほどフィードバック文化が徹底されている会社は少ないと思います。そこでマネジメントに挑戦してたくさんフィードバックをもらって、基礎を身に着けてから出る、というのも選択肢だったかなと思います。ただ、事業会社でマネジメントに初めて挑戦して、手探りでトライアンドエラーを繰り返し日々失敗しながら学ぶやり方にも面白さを感じています。今も、経営陣から直接フィードバックをもらえますし、フィードバックを素直に受け入れて、成長できるかが大事だと思います。」
20代で挑戦したことで広がったキャリア
マッキンゼーで学んだ2年間を糧に、事業会社にて20代で部長職を務める木元さんは、新卒コンサルだからこそ手にできるキャリアの広がりがあると言います。
「事業会社だと、年功序列の文化もあるため、役職に就くのは30代後半から50歳くらいまでかかることが通常です。
コンサルでの経験やスキルを評価してもらえたからこそ、キャリアの前半で部長や事業責任者を経験できるのは、大変ですがメリットも多いと思います。
実際に、事業会社に来てから、マネジメントや意思決定をする立場にならないと分からないことだらけだと強く感じます。
それらを経験できたことで、より事業の全体像をつかめるようになりましたし、様々な職種に対する興味も広がりました。事業会社で一つの業界に身を置き、身に着けた専門性を軸に次のチャレンジにつなげることもできる。
若いうちに転職していれば、2回3回とチャレンジすることが可能です。」
また、事業会社でのキャリアを考えるなら、外に出るタイミングは早い方がいいと、木元さんは考えています。
「年収や年次が上がり切っていない若手のうちだからこそ飛び込める環境があると思います。未経験であっても新しい業界や職種に挑戦できますし、企業から長い目で投資してもらえる側面もあります。
ただ年齢に関わらず、どんな環境でも、事業にコミットし、しっかり成果を出していれば、キャリアの選択肢は広がっていくと思いますし、私はそういった方々と一緒に働きたいです。
少しでも外に興味があれば、思い切ってチャレンジしてみてほしいです。」
自身と同じようにコンサルタントから、事業会社に挑戦する人が更に増えてほしいという木元さん。今後のさらなる活躍に期待です。
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