「リテール営業の立場では、小売企業様や消費者へ提供できる価値が限られてしまう」
「様々なプロモーション施策を行っているが、実際にどの施策によって店頭で自社商品が売れているのか検証がしきれない」
FMCGメーカーで営業やマーケティングに携わっている方は、誰しもが上記のようなもやもやを感じたことがあるのではないでしょうか。こうした課題を解決しているのが株式会社フェズ(以下、フェズ)です。
創業10期目、従業員約120名のスタートアップでありながら、同社にはP&G、資生堂、ジョンソンアンドジョンソン、キリンビールなど、トップメーカーから続々と優秀な人材が中途入社しているのだそう。
なぜ、トップメーカー出身者のネクストキャリアとしてフェズが選ばれるのか?ONE CAREER PLUSのキャリアアナリストがトップメーカー出身者を取材しました。
P&Gや資生堂など。トップFMCGメーカー出身者が集まるリテール業界の変革者
ドラッグストアやスーパーマーケットなど私たちの生活に必要不可欠な存在であるリテール産業。売上規模は約154兆円、従業員数735万人と巨大なマーケットである一方、人手不足や多様化した顧客ニーズへの対応など、多くの課題を抱えている産業でもあります。
このマーケットに変革を起こそうとしているのが、フェズです。国内最大級のリテールデータプラットフォーム「Urumo(ウルモ)」を軸に、リテールメディア事業などを展開しています。業界への深い理解や保有するデータの量と質を強みに年々成長しており、2022年にはシリーズDの調達を実施。リテールテック企業として市場からも注目を浴びている企業です。
そんなフェズの魅力の一つは、成長を支える多様な人材が集っていること。P&G、資生堂、キリンビール、アサヒ飲料、コカ・コーラ、ライオン、J&Jなど、名だたるFMCGメーカー出身者が、フェズに参画しています。
ここからは、資生堂、キリンビール、アサヒ飲料からフェズに転職してきた3名のお話しを伺い、フェズの魅力を紐解いていきます。
マーケット構造がうむ「もどかしさ」メーカー在籍時に感じた課題
—— トップメーカーで営業やマーケティングを経験したのちに、フェズに入社している3名。まずは、メーカーのマーケターとして働いていた時に感じたマーケットの課題について具体的に教えてください。
上田:私は前職時代、広告関連の業務に関わることが多かったのですが、その際に「どの施策がどう効いたのか」という因果関係が明確にわからない点を課題に感じていました。
もちろんMMM(マーケティング・ミックス・モデル)と呼ばれる調査を使って調べることもできるのですが、その結果も完璧ではないですし、費用が高額なため頻繁に行えるものではありません。
クリエイティブや企画性など、科学しきれない要素が結果を左右することもあるのですが、仕事をしていて「もっと科学できる余地があるのではないか」とは常に考えていました。
松本:私は、商品開発のプロセスで様々なステークホルダーの意見を取り入れないといけないという点にも課題を感じていました。
企画のスタートは、純粋に消費者起点で「お客様のこの悩みを解決するためにこういう商品を出す」というコンセプトを作るのですが、その後商品化して売るまでの過程で他の部署からの意見で調整を加えなければいけないシーンもあります。
商品開発担当としては、会社としての全体最適を実現するために指揮棒を振る存在としての役割も求められるため、どうしても消費者起点で商品を作り切るのが難しいという実態はあると思いますね。
—— 営業における課題はいかがでしょう。
松本:私が営業時代に感じていたのは、メーカーのリテール営業という立場上、どうしても小売企業様に提供できる価値が限定的になってしまうということです。
目の前の顧客である小売企業様の成長につながる提案をしたいと思っても、自社の商品が提供できる価値は限定的です。そして、メーカーの営業としては、自社商品のシェアや配荷率を追い求める必要があります。
結果として、似たような商品が小売企業様の棚に増えていく光景をみると、「世の中に対してどこまで貢献できているんだろう」と懐疑的になることがありました。
上田:マーケットの構造上仕方ないところが大きいですよね。独占禁止法の話を別にすると、メーカーは究極的には自社商品のシェアを100%にしたいので、売場で自社商品をいかに目立たせるかを考えるのは必然的なことです。
私はその構造を所与のものとして割り切って仕事をしていましたが、たまに俯瞰して考えてみると「本当にそれが小売企業様や消費者にとっていいのか?」というジレンマを感じることはありました。その中でリテール営業として、いかに小売企業様にとって価値ある提案をするのかを考えながら仕事をしていましたね。
西田:2人と違う視点で話をすると、私は資生堂の営業時代、「店頭で自社商品をいかに消費者に手にとってもらえるか」という点に非常にこだわりを持っていました。
無数の商品が並ぶ小売店舗の売場において、消費者に手にとってもらい、さらに選んでもらうのはすごく難しいことです。そのため、販促物を小売企業様に企画提案したり、パッケージの色や訴求を社内のマーケティング部とディスカッションをしたりとあらゆる工夫をしていました。
商品の認知を高めるという意味ではTV広告などマスプロモーションもありますが、最終的には多くの人が店頭で実際に商品を手にとってから購入します。「消費者の意思決定の瞬間に、どのようなコミュニケーションで自社商品の購買を後押しするか」は、メーカー営業として重要な課題だと考えています。
”フェズ”だから包括的に課題解決ができる。よりメーカー/小売双方に対して価値を追求し続けるために
—— みなさんのおっしゃる課題は、リテール産業の構造に起因する部分も多くあると思います。フェズの事業アイデアは創業者の伊丹氏がP&GやGoogleで勤めていた時にリテールと向き合うなかで感じた課題がベースになっているそうですね。改めて、フェズの事業について教えてください。
上田:当社は「情報と商品と売場を科学し、リテール産業の新たな常識をつくる。」というミッションのもと、リテールデータプラットフォーム「Urumo(ウルモ)」を軸に小売企業様のDX支援や、メーカー様に向けたマーケティング支援を行っています。
特徴的なのは、複数の大手小売企業様とパートナーシップを組んで、彼らからデータをお預かりしている点です。「Urumo(ウルモ)」を使えば約1億のID-POSと約1100万の広告IDのデータをもとに、購買データや店頭データ、バイヤー施策データ、販促データなどを管理・分析することができます。
オフラインの購買結果まで見ることができるため、メーカー様にとってはより広告の費用対効果がわかり、マーケティング施策を最適化することができます。
松本:一方、小売企業様に対してはプラットフォームに貯まったデータをもとに、データ活用の支援を全体設計から環境構築の実装、分析まで包括的にご支援し、お客様のリテールDXを進めています。また当社から小売企業様へはデータフィーをお渡ししており、新たな収益源となっています。
このような取り組みを通じて、小売企業様とメーカー様がWin-Winな関係構築をしているのがフェズの事業です。
—— データを武器に全く新しいことに挑戦されているんですね。みなさんがメーカーのマーケター時代に抱えていた課題が現職でどのように解消されたかについても具体的に教えていただけますか。
上田:現在、メーカー様向け広告ソリューションの「Urumo Ads」を導入、継続していただく営業を行っていますが、仕事の中で「広告をもっと科学したい」という思いは叶えられつつあると感じています。
従来の一般的なデジタル広告施策では、拡散や認知の結果は見ることができますが、本当に消費者に届いているのか、そして実際に購入されているかまではわかりませんでした。また、データ自体はメーカーも調査会社から購入することができますが、そのデータと施策を紐づいけることは難しいです。
一方、「Urumo Ads」では、大手小売企業様からお預かりしているデータが、メディアパートナーであるYouTubeやGoogleなど国内の主要広告と連携できます。そのため、例えば配信したYouTube広告を見た人が実際に商品を買ったかどうかまで可視化することができるのです。
購買データまで検証できることは当社ならではの価値であり、多くのメーカーのお客様に興味を持っていただいています。まだまだデータ連携などに伸び代はありますが、自身がメーカー時代に抱えていた想いと同じような課題を抱えているお客様に対してフェズの営業として伴走できているので、手応えを感じています。
また、他にも購買データを基軸にメーカーのターゲット消費者を明らかにするソリューションの開発や、小売企業様内でデータを効率的・効果的に取り扱う支援も行っており、こういった面からも小売産業全体に貢献できている実感もあります。
—— 西田さんが感じていたメーカーの営業における課題については、フェズでどのように解消されていると感じますか?
西田:現在携わっている「ストアギークサイネージ」が、まさしくメーカー営業時代に自身が悩んでいた課題を解決するソリューションだと思っています。
ストアギークサイネージは、小売店舗の「定番棚」前専用の縦型サイネージで、購入直前の消費者に対して、商品を選ぶ意思決定の後押しをすることができるメディアです。
メーカー時代に悩んでいた「最後どうお客様に手にとってもらうか?」の一つの解決策になると思いますし、全く新しい販促のコミュニケーションとして小売企業様にとっても消費者にとってもこれまでにない楽しい買い物体験を提供できると考えています。
—— これからもフェズの事業は進化し続けると思います。メーカーや小売の課題を今後どう解決していくかについて構想があれば教えてください。
西田:私は「ストアギークサイネージ」の導入を通じて、小売店舗の定番棚の価値を再定義したいです。定番棚は、小売店舗の売上の中で約7-8割を占めると言われるぐらい重要であるにもかかわらず、あまりフィーチャーされていないのが現状です。価値あるものを正しく世の中に認知してもらうことで、業界全体もより良くしていけると考えています。
松本:今後はフェズのソリューションを通じて、より個人に合わせた消費体験を実現していきたいですね。例えば、商品企画の現場では「20代女性」など消費者を大きな集団として捉えてしまうところがあります。20代女性の中でもパーソナリティや購買傾向は異なる中で、当社が持つリテールデータを活用すればもっとパーソナライズしたアプローチが可能になるはずです。
上田:現在「Urumo Ads」はプロモーション領域への支援をメインとしていますが、上流のブランドに対するコンサルティングにも踏み込めると考えています。データを中核として、メーカー様のバリューチェーンの川上から川下まで一気通貫で支援を強化していける体制を作っていきたいですね。
変化の激しい環境で新しい挑戦を。ネクストキャリアとしてフェズを選んだ理由
—— 皆さんのキャリアについてもお聞きします。誰もが知るトップメーカーで勤務されながらなぜ転職を考えたのか、転職活動の経緯を教えてください。
西田:資生堂における自分のその先のキャリアがある程度見えたからです。「おそらくこのぐらいの年次で、これぐらいの役職につくのだろう」という見立てがついた時にもっとチャレンジしたいと思ったことがきっかけです。
松本:大企業では、年功序列の組織文化や役職者の席も数が限られることからどうしても先が見えてしまいますよね。私の場合は運良くマーケティングに携わることができましたが、希望が叶わない人も多くいて、キャリアを自分で選びづらいのは大手メーカーあるあるなのではと思います。
また、会社としても大きな変化が起こりづらい中で、私は「VUCAの時代にもっと変化が激しい環境で変化を楽しめる人材になりたい」と思いました。そこでベンチャー企業への転職を考えるようになりましたね。
上田:私も2人と少し似ていて、世の中の変化が激しくなる中で「自分で稼げるスキル・経験」を確立したいと考えたのがきっかけです。これまでの自身の経験を活かせる転職先を考えた時に、FMCGメーカーの知見が生きる環境や、様々なブランドマーケティング経験をもとにした支援会社側の立場での転職を考えました。
—— 転職先の選択肢は多くあったかと思いますが、最終的にフェズを選んだ理由も教えてください。
松本:他には、全く違うメーカーのマーケティング職なども見ていましたが、最終的には小売企業様向き合いの事業であることにフィットを強く感じてフェズへの入社を決めました。
私のキャリアで一番長いのはリテール営業で小売企業様に向き合うことが好きですし、日常生活で一番身近な存在ともいえる小売店舗での消費行動が少しでも楽しくなれば、世の中もっとハッピーになるのではとも考えています。
上田:他にもマーケティング支援の会社をいくつか見ていました。ただ事業の魅力と、自身の経験が活きるかという点で総合的に一番フェズが良い選択肢だと感じたのです。選考時から、小売企業様に本気で向き合う姿勢を感じていましたし、扱えるデータも魅力的でした。
西田:私は「どこでも活躍できるスキルを身につける」という軸のもと、企業を見ていました。その中で即戦力になれそうな企業や全く畑違いの領域も選考を受けていました。ただ最終的にはフェズが選択肢の中で一番「これまでの経験を活かせる」かつ「新しいチャレンジができる」環境だと感じたのが大きな理由です。
—— みなさんの今後のキャリアプランについても教えてください。
上田:先ほどの話にも繋がりますが、メーカー様に対して提供できる価値はこれからも広げたいです。Urumo Adsだけでなく、ストアギークや小売アプリ、データをもとにした上流の提案も含めて、メーカー様のブランドマーケティングに対してもっと包括的な提案を行っていきたいです。
松本:今やっている仕事をもっと継続して極めたいという気持ちもありますが、「変化を楽しむ」という意味ではマネジメントにも今後はチャレンジしてみたいですね。
西田:私はストアギークというサービスを「日本一の棚前メディアにしたい」というのが目標です。新規事業の創出を通じて新しいマーケットを作ることができるのは、ベンチャーで働く醍醐味だと思うので、ストアギークの事業成長にフルコミットしていきます。
最後に:読者へのメッセージ
—— 最後に、この記事を読んでいるメーカー在籍者の読者に向けてメッセージをお願いします。
松本:フェズには前向きな人がたくさんいます。成長著しいフェーズだからこそ、予測不可能なことも沢山起こりますが、その時に前向きでいられる人と一緒に働きたいなと思います。一緒に変化を楽しめる方はぜひ仲間になっていただけると嬉しいです。
西田:松本さんの言う通りですね。思いっきり失敗して、チャレンジできる人と働きたいです。大企業にいると、「ミスしないこと」が一定評価される風潮もあり、「どうやったら怒られないように進められるんだろう」と些細なことに気を張りながら仕事をすることが自分自身ありました。
それに対してフェズは、挑戦を後押ししてくれるカルチャーの会社です。お客様に対してできることや自分のやってみたいことに対して、チャレンジしたいという思いのある人にはうってつけの環境だと思います。
上田:私はメーカーに残り続けるという選択肢も良い選択だと思っています。特に自社の商品に愛着がある方や、その商品を消費者に届けたいという思いが強くある方であれば、メーカーの方が向いているのではないでしょうか。
一方で、小売企業様やメーカー様に寄り添いながら業界全体の課題解決に携われることがフェズの魅力です。これまでお話ししたような業界の構造的な課題に対するアプローチが面白そうと感じる方である人にはぜひ検討していただきたいです。
—— ありがとうございました。