こんにちは、トイアンナです。
私の同年代は30代後半。キャリアを積んだからこそ、やりたいことが見えてきた……という方が増えています。中には、思い切って大企業からスタートアップへジョインし、新たな世界を切り開こうとする方も少なくありません。
ただ、こうした方の中には「脇が甘い」と言わざるを得ない方も散見され、見ている私はハラハラしています。
大企業出身者は「ただの悪人」を知らない
大前提として、大企業にも悪人はいます。ただ、スタートアップにウヨウヨいる悪人とは根本的な性質が違う、という話をさせてください。
まず、日本の大企業(JTC)にはサイコパスが少なめです。多くのJTCでは、協調性を重視する社風を維持しています。そのため、目的のためには手段を選ばないサイコパス人材の昇格を止める組織を形成できているのです。
よく、日本の会社は協調性が高い人材ばかりで、リーダーシップがないといった批判を受けますが、米系外資にどれほどサイコパス(っぽい人)が多いかを体感してから言っていただきたい、と、外資出身者は思うわけです。
一方、スタートアップにはこの手のサイコパス人材もCEOや経営層として君臨します。誤解を招かないよう付記しておくと、スタートアップの社長=ヤバイ人、というわけではありません。ただ、そこにはJTCの協調性フィルターがないゆえに、ヤバイ人「も」混ざるというだけのことです。
なかでも、良心を持たないサイコパスCEOが常套手段として使うのが「存在しないストックオプションあげるよ詐欺」です。
ストックオプションが抱えるリスクは大きい
私自身が金融リテラシーがないため解説しますと「ストックオプション」とは、会社の役員や従業員が、あらかじめ定められた価格で会社の株式を将来取得できる権利のことを意味します。
たとえば、ある社員が「1,000円でアップル社の株を1,000株取得できる」と、スタートアップ時代にスティーブ・ジョブズと約束したとしましょう。私がこの原稿を書いている2025年11月4日時点で、アップル社の株価は約42,000円。つまり、当時100万円支払ったストックオプションが、4,200万円で売却できるわけです。
こうしたストックオプションで富豪になった方は多数います。そして、現時点で現金がないスタートアップにとって、ストックオプションは「この会社を育ててくれたら、その分あなたに還元するよ」と優秀な人材を引き抜く、いい材料となるわけです。
しかし、ストックオプションが最大の利益を生むのは、その会社が上場する場合。たとえば、その企業が倒産したり、ストックオプションを維持せず売却したりすれば、ストックオプションは紙屑と化します。
そして、悪質なCEOは、はなから企業を上場させるつもりもないのに、ストックオプションを餌にして社員を雇うのです。どうせ上場しないのですから、いくらストックオプションを契約したって痛くも痒くもありません。その株は公開の場で、取引できないのですから。
それでも、M&Aの場合はまだマシです。大抵の場合、買収の条件にストックオプションの維持が含まれるからです。もっとしんどいのは、中小企業としてダラダラ非上場の経営を続けるだけのつもりなのに、ありもしないストックオプションをちらつかせるケースです。
上場もM&Aもせず、ただ非上場のまま事業を継続する(いわゆる「イグジット」の予定がない)場合、社員はストックオプションを換金する手段がありません。そのため、ストックオプションに理論上の価値があっても、現実的な価値はゼロに等しくなります。こうしたデメリットを見越して、ストックオプションを売りにするCEOも多数いるのです。
社長が消え、会社も消え、そしてストックオプションも消えた
実際に、ストックオプションに「騙された」方がいます。Wさん(仮名)は、日本の大手生命保険会社に勤めていました。しかし、ある会社からヘッドハントを受けたことで、Wさんの人生は狂い始めます。
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