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【独自調査】働きやすさ“だけ“では足りない。ホンネで紐解く女性キャリアの理想と実態

「女性のキャリア」というと、結婚や子育てを踏まえて、働きやすさやワークライフバランスの問題が論じられるケースが多い。


しかし、キャリアを築く当事者として、バランスのとりやすい柔軟な仕事を最も必要としているかといわれると、疑問を持つ方も多いだろう。「女性」と括られながらも、キャリアをつくる一人のビジネスパーソンであるという前提に、男女間で本質的な違いは存在しないからだ。


今回ONE CAREER PLUSが実施した独自調査から、「スキルアップやキャリアアップを望んでいるが、それが実現されていないこと」に課題を感じている女性が多いことが見えてきた。


この記事では独自調査から明らかとなった女性のキャリアの実態を始め、ビジネスパーソンとしてキャリアアップを目指すうえで押さえたいポイントや、企業として女性のキャリアを共につくるために取り組むべき課題について解説する。




働きやすさ“だけ“を求めているわけではない


先述の通り、「女性のキャリア」というテーマでは「働きやすさ」や「ワークライフバランス」といったトピックが挙がりやすい。


一方、ONE CAREER PLUSに寄せられた転職データによると、女性は転職時に「働きやすさ・ワークライフバランス」よりも「スキル面の成長」「カルチャーマッチ」を重視していることがわかる。





つまり、多くの女性は働きやすさやワークライフバランスだけを重視してキャリアを考えているわけではなく、大前提として「個人としての成長」を求めているのだ。


実際にONE CAREER PLUS上には、個人の成長を求めて転職した女性の体験談が多く存在する。




今回ONE CAREER PLUSでは、20〜40代の女性106名を対象に「人生設計とキャリア設計の関係性に関する独自調査」を実施した。調査から明らかとなった女性の「理想のキャリア」と「実際のキャリア」を分析し、女性が抱えるキャリアの問題を紐解いていく。


54.7%の女性が理想のキャリアと実態にズレ


まず、キャリアの志向性を以下4つに定義し、理想のキャリアと実態は一致しているのかについて調査を実施した。


  • 仕事を最優先にする
  • 仕事とプライベートを優先する時期をずらして両立する
  • 仕事とプライベートを並行して両立する
  • プライベートを最優先にする


女性が求める「理想のキャリア」について、89.7%の女性が仕事とプライベートの両立を望んでおり、なかでも並行して両立したい人は53.8%と過半数以上であることが明らかとなった。




しかし理想のキャリアと実態にズレを感じる女性は54.7%と、半数以上が理想と実態とのズレを感じている



特に「仕事とプライベートを優先する時期をずらして両立したいと望んでいるがギャップがある」と回答した人は68.4%にのぼり、仕事とプライベートのいずれかにフォーカスする時間を作ることの難しさが見て取れる。


キャリアに対する3つの本音


「スキルアップ」「キャリアアップ」「男女差」「働き方・カルチャー」の4つのカテゴリで、各項目について重要度・達成度を10段階で点数づけしてもらう調査も行った。


この結果より、女性のキャリアに対する3つの本音が明らかとなった。




①飛び級の管理職登用はいらない



多くの女性は「仕事を通してスキルアップし、成長できる」「自信の強みを活かした仕事をすること」「キャリアの幅が広がること」といったスキル/キャリアアップを重視している一方で、「管理職で働くこと」は比較的重視していないことが明らかとなった。


つまり女性にとって「管理職で働くこと」自体は、自身のスキル/キャリアアップの延長線上に存在するにすぎないのだ。

「女性の管理職比率アップ」に本質的に向き合うのであれば、企業は、各個人のスキル/キャリアアップに向けた手厚い支援を行うことがまずは必要だ。



②評価と報酬の男女格差を是正せよ



男女差という観点では、女性は「給与格差がない環境」や「昇進・昇格のしやすさが変わらないこと」を重視する一方で、達成度は低く、課題があることがわかった。


「性別に囚われずに業務の割り振りがされる環境」に対しては大きな課題が見られないことからも、課題をシャープに捉えることができる。


こうした性差による問題に対して、日本政府は2022年7月に女性の活躍に関する情報公表項目として「男女の賃金の差異」を追加、301人以上の従業員が在籍する企業に対して情報公開が義務化した。


だが、情報を公開するだけでは、男女格差の改善には繋がらない。

まず、企業は格差が生じている実態・課題を把握した上で、是正に向けた適切なアクションを取ることが今後ますます求められるだろう。


たとえばメルカリ社では、昨年初めて自社の男女間の賃金格差を公表し、役割・等級や職種などによる差に起因しない「説明できない格差(unexplained pay gap)」が7%あることを発表した。


調査を行ったところ、社員の9割以上を占める中途入社者に対し、前職の給与を参考に報酬を決定したために、すでにあった女性の方が賃金が低いという社会的構造を引き継いでしまう状況が生まれていたことが判明したのだ。

同社ではこの結果に対し個別報酬調整を実施し、2.5%まで是正している。



③柔軟な働き方の「制度+風土」が大事



多くの女性は働く場所や時間を自分でコントロールできることは大前提とし、ライフイベントや個人の事情に対しても柔軟に受け入れてもらえる環境を求めている。


ONE CAREER PLUSに寄せられた転職体験談からも、働き方の柔軟性だけでなく、周囲から理解が得られるような風土の企業が選ばれているという実態が見て取れる。




さらに今回の調査ではライフイベントにまつわる制度整備にも改善の余地が存在していることが明らかとなった。


たとえば住友商事では、テレワーク制度・スーパーフレックス制度のみならず、結婚から妊娠・出産、小学校卒業までの子育てに対して男女ともに様々な制度が整備されている。


産休・育休制度以外にも、妊娠時には定期検診や体調不良による欠勤への考慮、通勤緩和処置がなされ、育児に伴う勤務時間に対する特別処置や子の看護休暇制度も充実している。




市場価値向上がキャリアの分断への不安払拭のカギ


仕事とプライベートを優先する時期をずらして両立することが理想だが、実態とズレが生じていると回答した人のうち、50%が仕事を最優先にし、38.4%が仕事とプライベートを並行して両立していることが判明した。


プライベートを優先したいと思っていながらも、仕事の優先度を落とすことができていない要因は何か?


各項目への重要度・達成度の点数付けの結果から、理想と実態にズレがあると感じている人は、理想と実態が一致している人よりもスキル/キャリアアップの重要度が高く、達成度とのギャップが大きい傾向があることがわかる。




女性の場合は結婚や出産・育児に伴い生じるキャリアの分断に対して不安を感じやすい。

キャリアの分断を経て自身の望む環境で仕事復帰をするには、一定の市場価値が求められるからだ。


そのため不安払拭に向けて、プライベートを優先する時期より前にスキルアップ・キャリアアップを通じて、自分が納得できるレベルまで市場価値を高める必要があるのだ


子育て両立管理職が求めるのは「生産性」で評価する職場


プライベートと仕事を並行して両立することを求めるがズレが生じている女性は、他項目と比較して「管理職で働くこと」の重要度は高くはないが、達成度が著しく低いことがわかった。


この背景には、プライベートと両立しながら管理職を務めることに対し、ハードルの高さを感じていることが挙げられるのではないだろうか。


一方で、理想の状態を叶えられており、子育てをしながら管理職を務める女性も存在する。彼女たちはどのようにしてハードルの高さを乗り越えているのだろうか?


今回の調査で寄せられた声から、プライベートと両立しながら管理職を務めるためには、「生産性も含めた評価」や「周囲からの理解」が必要だと言える。




これらを実現するためには企業側の変革が求められる。


まず第一に、これまでの管理職の枠組みや評価制度を見直し、両立しても務まる新たな管理職の枠組み設計をすべきである。

既存の管理職に求められている業務内容を明らかにした上で、業務量や範囲を減らす、一部の役割をメンバーへ委譲するなどの対応が必要だ。また、成果に対しても生産性の観点を取り入れた評価を行うことが望まれる


その上で、ハードルの高さを払拭するためにはロールモデルの存在や等身大の悩みを共有できるような環境作りも求められる。

自分でもできるかもしれないと具体的にイメージを持てる状態を作ることで、管理職への心理的ハードルを下げることもできるだろう。



・・・



ここからは、現在理想のキャリアと実態がズレてしまっている方や、女性のキャリアを共に作りたいと考えている企業の方に向けて、ではどうしたら良いのか?という点に絞ってお伝えしたい。


市場性を重視したキャリア戦略を。



自分の市場価値を高め切れておらずプライベートを優先することに踏み切れない方には、「市場性」を重視してキャリアを考えることをおすすめする。


「キャリアの分断を経て、戻ってきても会社から必要とされるか?」という不安に対しては、プライベートを優先するタイミングを現職で迎えるのか、転職後で迎えるのか、どちらが心理的安全性が高いか=「市場性*」があるかという点が重要だからだ。

*:市場性:マーケットからどれだけ必要とされているかどうか


例えば、現職での業務範囲が限定的かつ仕事に優先的に時間を割くことができる状況下で成り立つ場合、キャリアの分断が生じたり、プライベートの時間を優先するようになると成り立たなくなる=会社から必要とされづらくなる可能性が高く、市場性が高いとは言えない。


もし現在の業務で市場性が見込めない場合は、プラベートを優先するタイミングより前に、社内異動や転職を通して市場性を高める動きを取るべきである。


もしご自身の市場性がわからない、これまでの経験を活かしつつ、どんな業界・企業であれば市場性を高めることができるのか見当がつかない場合には、マーケット知見のあるキャリアのプロにまずは相談してみることもおすすめする。




両立可能な管理職への挑戦には2つの見極めが必要



プライベートと仕事を両立しながら管理職を務めることに興味がある方は、企業がそのポジションを求める背景と実態を把握することが求められる。


もし管理職を生み出すことへの切迫感がある場合は、既存の管理職の枠組みを引き継いでいるケースが存在する。


そのため、管理職に求められる業務量や役割、成果に対する評価基準を把握する必要がある。長時間労働や固定化された働き方ができるからこそ成り立つ管理職ポジションの場合、両立は難しいだろう。


また、事業の急成長に伴いマネジメントポジションの新設が急務なスタートアップの場合、業務・役割の整備自体を行うことも求められる。両立を目指して柔軟性の高いポジション設計を可能にし得るが、一定の負荷が求められることは想定される。


こうした実態を把握した上で、自身で管理職業務が務まるか見極めるポイントとしては、2点ある。


1点目は自分の立場に近いロールモデルがいるのかどうか、前例の存在だ。たとえば子育てをしながら管理職を務めている人がいれば、社内の制度整備は一定期待できるだろう。


2点目は両立しながら管理職を務めることを後押しする制度やカルチャー(雰囲気)があるかどうかだ。たとえ前例があったとしても、これらが存在しないと続けていくことは難しいからだ。


こうした実態を見極めるためにも、転職体験談などのクチコミで確かめる、選考過程で直接確認するなどのアクションが必要だ。すでに在籍している会社で管理職になる場合は、実際に管理職の方に話を聞き、管理職に関する情報をぶつけてみて反応を確かめるのも良いだろう。


柔軟に成長機会を生み出す企業が選ばれる時代へ


理想のキャリアを歩む女性を増やすために、企業には何が求められているのだろうか。




まず1点目は男女問わず、各個人の市場価値向上に向けた手厚い支援である。


近年では各個人の成果・能力の向上を目的とし、イネーブルメント組織を置く企業も増加している。従来は集合研修やOJT、eラーニングといった取り組みが中心だったが、加えてナレッジやコンテンツ共有の仕組み設計や業務プロセスの標準化、スキルの定義・定量化を行うことによって個人の成果を最大化することが可能となる。


企業として事業成長と働く個人の成長の両方を叶える仕組みだと言えるだろう。


また、挑戦の機会を与えることも個人の成長には大きな影響を及ぼす。

例えばラクスル社は機会提供ファーストの考え方を持つ。事業への大きな裁量権を与えることで、自ら意思決定する機会を増やし、リスクをとって結果に責任を持つ経験を踏ませている。



2点目はプライベートと両立しても務まると思える新たな管理職の枠組み設計だ。


そのためにまず必要なことは、現場(組織・個人)で起きている実態・問題の把握である。ここで活躍するのが、事業成長を人・組織の面からサポートする役割を担うHRBPだ。


経営と現場を繋ぐ橋渡し的な存在である彼らによって、現場の課題や個人のニーズを吸い上げることが可能となる。

企業にとってのエンドユーザーである社員ひとりひとりの声を聞くことができ、ニーズに合わせて柔軟にポジションを変容させられる組織には、HRBPの存在が必要不可欠になってくるだろう。


おわりに


「女性の理想のキャリアと実態」に焦点を当て、当事者が語る「本音」をお届けしてきた。


やはり存在する女性ならではの苦悩を抱えながらも、主体的に人生・キャリアをつくることを諦めない姿にたくましさを感じるとともに、強く共感を覚えた。

改めて、調査にあたり赤裸々な声を寄せてくださった106名の皆様に感謝申し上げたい。


キャリアのオーナーシップが個人のものになりつつある昨今、世の中・企業も変革しなければならない時がきている。

人生設計とキャリア設計は密接に関わっているからこそ、キャリアのつくりかたも新しい形が求められている。


今回ご紹介した「本音」はほんの一部にすぎない。

女性のみならず個人がもたらす新しい風が企業に与える影響は大きい。


社員の声を柔軟に受け入れ、人生もキャリアも理想の状態を歩むことができる企業が選ばれ続けるようになるだろう。


ONE CAREER PLUSでは1人でも多くの方のキャリアにまつわる苦悩や悩みが解決できるよう、引き続き個人の声に耳を傾け続ける。迷った時は、自身の理想に近づくための情報がないかぜひ探しにきてほしい。



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