新卒入社では最難関の狭き門として有名なボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)。そのような同社に、近年成長を求める「第二新卒の女性」が数多く入社していることをご存じだろうか。
「そもそも第二新卒で、なぜBCGに?」
「未経験の私がコンサルタントとして活躍できるのか?」
今回は上記の問いを、実際に第二新卒でBCGに入社してキャリアを飛躍させた、高石涼香さんと徐詩慧さんに伺ってみた。
第二新卒だからこそ、ありのままの自分を出せる
──お二人とも第二新卒でBCGに転職されています。早速ですが、第二新卒でBCGはハードルが高くなかったのでしょうか?
高石:当初、コンサルティング業界での経験がなく、非常に要求水準の高いこの業界でプロフェッショナルとしてやっていけるだろうかという不安はありました。一方、前職の投資企画職で得た財務知識や実務経験から、新卒の就活より自分の強みやキャリアビジョンを明確に理解できていたので、その点は新たな業界に踏み出す後押しとなりました。
キャリアを積むと業界やファンクション軸でのエキスパティーズが求められますが、私はあくまで第二新卒だったので、ポテンシャルを見ていただいたうえで、0からのコンサルタントとしてのキャリアを築いていこうと思っていました。
徐:私も「本当にハードルが高いな」というイメージだったので、正直受かると思っていませんでした。ただ、高石さんと同様に、心理的な面で差があったように感じます。新卒時は他の学生との差別化が難しかったですが、第二新卒での面接では、ある程度ビジネスパーソンとしての経験をもとに、できることや求めるもの、キャリアビジョンなどを素直に話すことができました。
さらなる成長を求めてBCGへ。第二新卒の転職で広がるキャリア
──第二新卒というタイミングで、転職を決めたのはなぜですか。
高石:私は新卒でソフトバンクに入社し、2021年1月にBCGへ転職しました。前職では主に海外スタートアップの日本進出支援や、国内スタートアップへの出資に関連する業務に従事していました。
主にディールにおける条件交渉や契約書作成などの業務を担当しており、投資案件のダイナミクスや、国内外の有望スタートアップの立ち上げフェーズのドラマを肌で感じられる、非常に面白い経験をしました。しかし、投資実行や投資先の経営については多くの重要な経営判断が生じる中で、私はあくまで下された経営判断を実行する部門の一人であったため、業務に取り組むにつれて興味が湧きましたが、上流の戦略立案に携わる範囲は限定的でした。
そのため、若いうちから経営判断に携われるだけのビジネスセンスやスキルを近道で得られる場所を模索して見えてきた結果、見えてきたのはコンサルティングファームへの転職でした。いくつかのファームへエントリーし、その中でBCGが最もカルチャーフィットを感じたため、転職を決めました。入社後は前職の経験を活かしながら、プライベートエクイティなどを対象としたビジネスDDや投資先企業の成長戦略策定に従事しています。
徐:私は中国出身で、日本の大学院を卒業後、新卒で生命保険会社に入社しました。1年目は保険営業や管理、2年目からはオルタナティブ投資に携わり、主にインフラファンドや不動産ファンドの分析作業や出入金の手続き、契約業務などを担当していました。
2021年6月にBCGに転職しましたが、実はコンサルティングファームへの転職は想定していませんでした。転職エージェントから「BCGが第二新卒を積極的に採用している」という情報を聞いて、非常に興味を持ったのがきっかけです。
入社後は、自分の強みである定量分析のスキルを活かして、数字の可視化といった業務を担当し、直近では保険会社の人事戦略プロジェクトにも携わっています。
——お二人とも投資関連の業務からキャリアが始まってますね。新卒時から具体的なキャリア像があったのでしょうか?
高石:学生時代は、生涯にわたる一貫したキャリアはあまり考えておらず、「その時々の関心やアスピレーションに応じて領域を選んでいこう」という思考が強かったです。
当時は、成長分野であるIT業界に魅力を感じていたので、ソフトバンクで多くのスタートアップ投資に関われたことは非常に幸運でした。結果的に現在のコンサルティング業界でもほぼ一貫してM&A領域の仕事をしていますし、現在のキャリアにも通ずるのを感じています。
徐:私はジャーナリズム専攻だったこともあり、院生時代は新聞社のインターンに参加しました。報道の仕事には興味がありましたが、「社会をより豊かにしたい」という目標があったので、就活時はその目標に最も近づけそうな生命保険会社や資産運用会社を中心にエントリーしました。
——BCG入社後に、キャリア像の変化はありましたか?
徐:実はBCGへ転職後すぐはあまり自信が持てず、1、2年ほどで転職するのではと思っていました。しかし、想像していたようなドライな外資系ファームとはまったく異なり、若手や女性の育成に積極的なファームだと考えを改めました。社会をより豊かにしたいという目標を実現する手段を、プロジェクトを通じて幅広く身に付けられている実感もあります。
またBCGでは、キャリアアドバイザーと定期的な面談があります。そこで現在の仕事はもちろん、将来のキャリアの話もできるので、長期的な視野が持ちやすいですね。今は仕事がとても面白いですし、長く続けたいという気持ちが強くなっています。
高石:私の場合、BCGへ転職したばかりの頃は、「プロフェッショナルファームで修業したい」という思いが優先でした。コンサルティングファームは、自分のキャリア形成における修行期間であり、おそらくまた違う企業に転職するだろうと捉えていた節があったんです。
しかし、現在少しずつ考えが変わってきました。若手のコンサルティング業務は、定量分析やスライドライティング、エキスパートインタビューなどのタスクから始まりますし、それをイメージしている人も多いかもしれません。
しかしBCGでは、それに加えてかなり早い段階から論点設計・仮説構築、クライアントへのデリバリーを任せられます。たとえば「撤退が相次いでいるxx業界において、この企業に投資する意義は何か」「投資後にどうやったらバリューアップできるのか」という問いから仮説を立てたり、成果物をクライアントにデリバリーしたり、クライアントに問いを投げて議論をファシリテーションしたりなど、シニアになってからの役割だと思っていたものが入社2年目の後半くらいからチャレンジさせてもらえるようになりました。
その中で、本質的な面白さはスキルや経験の習得ではなく、自分の頭で大きな問いにチャレンジすることや、クライアントとのコミュニケーションの中にあると感じ始めています。もちろんそのような役割を担ううえではまだまだ成長段階ですが、パートナーを含めた周囲のフィードバックを受けて勉強の日々です。そうしたコンサルの醍醐味を知った今は、長期にわたってこの仕事を続けたいという思いも芽生えてきています。
——キャリアの考えにも変化があったんですね。ちなみに、お二人のように第二新卒で入社される方は実際多いのでしょうか?
徐:同期入社は私の他に2名います。前職は病院勤務や、異業種から転職している人がいたりと、さまざまな業界から集まっていて驚きました。
高石:私の同期は私を含めて4名いて、面白いことに全員事業会社出身です。彼らは数年経験を積んだあとにBCGへ転職しているので、キャリアも似ています。
個人的な意見ですが、私は第二新卒という早い段階でBCGへの転職を決めて良かったです。特定のエキスパティーズを高めたあとに、コンサルタントになるという希望があれば別ですが、転職時の私はスキルやビジネスセンスを磨きたかったので、一から学べたことが結果的に良かったと思っています。
第二新卒の転職は「アンラーニング」が成長の鍵
——とはいえ、コンサルタント未経験者でBCGに入社となると、活躍できるか不安ですよね。どのように必要なスキルを身に付けていくのでしょうか?
高石:研修制度は、主にOJTが中心で新卒とほとんど同じ扱いを受けます。まず、コンサルタント未経験のジュニアとして、PAアサインと呼ばれるローテーションを通じ、さまざまな業界の案件を体験します。具体的には、2カ月×3回で半年間、その間は各プロジェクトのチームに入れてもらい、実際にOJTのようなかたちで先輩コンサルタントの指導を受けながら、ジュニアとしての一通りの分析業務などを担当します。
はじめてサーベイの設計や分析を行う際は、新卒社員と同じように先輩社員の隣に座りながら、一から指導を受けました。議事メモを先輩社員に見てもらったときは、修正で真っ赤なメモが返ってきましたね。新卒と同じように教えてもらえる環境があるのは、業務を覚える面では非常にありがたかったです。
——研修制度が充実しているんですね。事前に身に付けておくべきスキルはありますか?
徐:実務においては、プロジェクトにアサインされたあとすぐ活躍するために、Excelやスライドライティングのスキルを事前に身に付けておくことをおすすめします。
ただ、それ以上に「経験値は低いけど頑張りたい」「とにかく役に立ちたい」「何でもやらせて欲しい」などの前向きな人がBCGでは評価されるので、積極的な姿勢を持つことも重要です。
高石:あとは、フィードバックを真摯に受け止める力と「アンラーニング」も必要だと思います。BCGでは、日々の業務を通して上司や同僚、さらにはパートナー(経営層)からも多くのフィードバックを受けます。
たとえば、お客さまとの会議での私の発言に対し、「あの場合はこのように聞けば、お客さまの真意を探り出せたはずだよ」とかなり具体的な指導を受けます。全てが私のためを思ってのフィードバックのため、いかに吸収して次につなげるかによって、成長曲線の傾きが変わってきます。
——前職の経験を活かすのではなく、アンラーニングですか?
高石:前職の経験や成功体験に執着しすぎない、という意味のアンラーニングは心がけておくべきだと思います。BCGで求められる人材になるために、前職の癖などが支障をきたす可能性があるためです。
私の場合、前職では契約関連の業務だったこともあり、上司にレビューしてもらう書類などはミスのないように緻密に作るのが当たり前でした。しかし、業務サイクルが非常に早く、とにかく仮説思考のBCGでは真逆の「クィック・アンド・ダーティー」が求められ、粗い段階で上司にレビューしてもらい、速やかに解を出すことを優先します。このような違いは多々あると思いますので、すぐに順応するためにも、アンラーニングが大切です。
徐:私も前職ではマニュアルが多く、とにかくマニュアルどおりの業務の遂行を求められました。しかし、BCGではいわゆるマニュアルはほとんど存在せず、フィードバックが一番の学びになっています。
また、仕事の進め方一つとっても言われたことからやるのではなく、常に優先順位をつけて自分から動く必要があります。上司に言われたとおりに業務を遂行するのではなく、自分がこうすべきだと思ったことを率先して実践することが、進め方において求められています。
主体的に希望を発信することでかなえる、キャリアとワークライフバランス
——コンサルのキャリアにおいては、アサインされるプロジェクトもかなり重要だと捉えています。実際、どれほどの希望が通るものなのでしょうか?
高石:前提として、毎回プロジェクトが終わるたびに次のプロジェクトに投票できる制度があります。アサインを希望できるプロジェクトがリスト化され、そのなかで第1、第2希望を出すかたちです。
そのあと、実際にアサインされた際も、パートナーレベルの相手と話す機会が与えられ、自分がこのプロジェクトでどのような経験を積みたいのか、最終的にどのような役割を任されたいのかなどの希望を直接伝えることができます。
私は入社以来からプライベートエクイティ(未上場企業への投資など)に携わっているのですが、きっかけとなったのは前述のOJT期間です。プライベートエクイティのケースでは、チームの皆さんから多角的に学ばせてもらい、もっとこのチームで働きたいという希望を素直に伝えたところ、引き続きアサインしてもらえました。
また、希望が通るかどうかは、そのプロジェクトがどれぐらいのレベルのメンバーを求めているかが大きく影響します。プロジェクトが求めるメンバーの条件に合わなければ難しいですが、自ら手を挙げれば、最大限尊重してくれるカルチャーは間違いなくありますね。
徐:私も入社してからいくつかの違うプロジェクトを経験していますが、アサインされた9割以上のプロジェクトは希望どおりでした。今はさまざまな経験を積みたいので、普段から積極的にパートナーに声がけして、どのようなプロジェクトが動いているのかを聞き出したり、次の希望を伝えています。そのように、パートナーとも密にコミュニケーションできるBCGの環境は本当にありがたいですね。
入社したばかりは、自分の希望を出すには勇気が必要かもしれませんが、BCGには希望を伝えられるシステムがあり、上司は話を聞いてくれるので、積極的に動くことで、自分の描くキャリアに近づけてます。
——徐さんのように、複数のプロジェクトに携わるケースもあれば、一つの担当領域で専門性を磨くことは可能なのでしょうか?
徐:可能です。私は多くのことを経験したいタイプですが、中には一つの担当領域で専門性を磨く人も大勢います。また、エキスパートコンサルタントという専門性で勝負する道もあるので、第二新卒でもこの分野で専門性を磨きたいと希望すれば喜んで迎え入れてもらえます。
——皆さんどのように仕事とプライベートを両立されているのでしょうか? ライフステージの変化に合わせた働き方についてお伺いしたいです。
高石:コンサルタントは激務の印象が強く、ライフステージの変化と両立させるのは難しそうに見えますが、それらの変化も踏まえてBCGは長く働き続けるための支援制度がいくつもあります。制度を利用して活躍するロールモデル的な女性の先輩が何人もいますね。
現在、私が所属するプライベートエクイティのチームでは4割以上が女性で、皆さんがライフイベントと並行しながら活躍しています。
徐:産休や育休はもちろん、子育て中の社員には週4日勤務制などの制度もあります。以前、同じプロジェクトでご一緒した女性の先輩社員が同制度を利用していましたが、週4日でもフルに活躍されていて、とても心強く感じました。
また、女性同士で悩みのシェアを行うセッションなども開かれているので、女性にとっても非常にオープンな環境だと思いますね。
高石:個人的な働き方としては、私が在籍するプラベートエクイティチームは、オンオフがはっきりしていて、たとえば1カ月間ハードに働いたあとは数日間のオフがあり、今の私は働きやすいと感じています。ライフステージが変わっても、前述のさまざまな支援制度があるので大きな不安は抱いていません。
徐:私はプライベートも大切にしたいので、ワークライフバランスを重視しています。その点、BCGは成果主義なので、役割を果たせば定時に帰っても何も言われません。
また、新しい取り組みが始まるときには、リーダーがメンバーの一人ひとりとコミュニケーションを取り、個々の業務内容や勤務時間などの要望を踏まえてアサインしてくれます。
高石:リーダーによるきめ細やかな調整には、いつもありがたみを感じています。私のチームでは、皆さんが「この時間は保育園の送り迎えがあるので連絡は取れません」「朝型なので早朝からの稼働のほうが都合が良いです」などの希望を出していますが、リーダーがうまく調整して全員が効率的に働いていますね。
それだけでなく、細やかな思考の癖(最初に議論したいか、検討してから議論したいか。ボトムアップ思考かトップダウン思考か。など)や性格を事前にシェアし、チームワーキングする際の参考にすることもあります。メンバー全員の希望や特性を聞き、それを尊重したうえでチームビルディングを行う文化があるのは、すごく良いと思っています。
——最後に、第二新卒での転職を考えている方々に向けてのメッセージをお願いします。
徐:私はBCGへ転職したことによって自分のキャリアアップと視野が広がったと同時に、将来の選択肢も広がったことを実感しています。BCGで働けるならば、他のどのような会社でも働くことができると思うので、そのあとのキャリアにも必ず役に立つはずです。さまざまな支援制度が充実しているので、未経験でも安心してチャレンジしてみてください。
高石:第二新卒にとって、BCGへの転職はこの上なく良い選択肢だと思います。自分が目指すコンサルタント像に近づいていることが実感できて、周りの上長や会社の制度が成長をサポートしてくれる会社は、非常に稀です。今後の自分のキャリアを真剣に形成したい方には、とてもおすすめです。