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【地方創生】地方都市の困難な課題を解決する仕事・キャリア

深刻さを増す、少子高齢化に伴う人口減少。それによって、地方創生の重要性は今後ますます高まっていくのではないでしょうか。


今回は東京渋谷の地で、地方都市の課題解決に携わってきたゲストを招き、地方創生の仕事・キャリアの魅力や難しさについて語っていただきます。聞き手は20万部以上のベストセラー「転職の思考法」の著者であり、ワンキャリア取締役 執行役員CSOの北野唯我です。



北野唯我

司会/MC:北野 唯我/株式会社ワンキャリア 取締役 執行役員CSO。1987年8月21日生まれ、兵庫県出身。神戸大学経営学部卒業。就職氷河期に博報堂へ入社。ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、採用DXサービスを提供する「ワンキャリア」に参画。「すべてのプロセスにいる、いま挑戦しようとしている人に捧げる本」をモットーに作家としても活動。



目次



【前編】民間企業と自治体で仕事をする違いは?魅力と難しさは?



吉永 隆之氏/Urban Innovation Japan 代表理事

大手IT企業でシステム開発に従事したのち、2014年に福島県浪江町に勤務し、町民コミュニティの再生プロジェクトのPMを担当。2016年4月より神戸市ITイノベーション専門官として、100社を超えるスタートアップをサポートしてきた。2020年に任期満了により市役所を離れ、現在はスタートアップと自治体による地域課題解決プログラムUrban Innovation JAPANを全国22自治体で展開している。


廣岡 大亮氏/W Inc.代表取締役

神戸生まれ。2010年(株)シグマクシス入社。大企業の経営戦略、新規事業開発、M&Aを中心に、プライベートでは、街づくりや中小企業支援に携わる。2019年、W Inc.を(株)フェリシモと共同設立、神戸にUターン。2021年、MBO。「日常へのWell-beingの実装」をミッションに、スタートアップスタジオや、新規事業開発、産官学連携などに取り組む。2020年グッドデザイン賞受賞。3児の父。



北野:まず、自治体で仕事をする魅力や難しさを吉永さんにお尋ねしたいと思います。


吉永:私は福島県浪江町と神戸市で働いたことがありますが、共通していたのは、自治体にはまちのことを一番に考えている「熱い」人が多いという点です。それなのにまちがなかなか良くならないのは構造的な難しさがあるのだろうと考えています。


例えば、民間企業に比べて行政は「縦割り」だと言われますが、むしろ個人に紐づいている仕事がとても多いように感じます。企業だとチームで情報の共有をしながらプロジェクトを進めていきますが、私の経験上、自治体にはそれがなく、周りを巻き込みづらい印象がありました。


北野:そんな中、吉永さんはまさに新しいツールを導入することで仕組みや構造にアプローチをされました。たとえば、「アーバン・イノベーション神戸(Urban Innovation KOBE)」という行政とスタートアップ(成長型起業家)のマッチング事業。このきっかけについて教えてください。



行政とスタートアップをつなぎ、仕組みを変える


吉永:私が任期付きの職員として神戸市に入庁したのは2016年でしたが、2015年からサンフランシスコの「スタートアップ・イン・レジデンス(Startup in Residence)」というモデルを導入したいという構想がありました。


これは、スタートアップがサンフランシスコ市役所に籍を置いて、行政の困りごとを解決するための製品やプログラムをプロトタイプとして提供し、使用してみて良かったらビジネスになるという仕組みです。


その実現に向けて、まず米国のシード投資ファンド「500 Startups」と一緒に神戸経済の持続的成長を目指すため、社会にイノベーションを起こし得るスタートアップの集積・育成を支援するアクセラレータープログラムを実施して、神戸市がスタートアップの街だということを認知してもらい、機が熟した2018年に「アーバン・イノベーション神戸(Urban Innovation KOBE)」という行政とスタートアップのマッチング事業を開始しました。


これによって、スタートアップのビジネス発掘、PRのニーズと、神戸市側の課題解決を掛け合わせ、自治体の中の「やりたいことはあるけれど、ソリューションが見つけられなかった」人との架け橋になりたいと考えたのです。


これがきっかけで、ほかの自治体からも同じような事業をやりたいと問い合わせをいただくようになりました。私は2020年の任期満了に伴って神戸市を離れ、現在は「Urban Innovation JAPAN」として全国22自治体で、スタートアップと自治体による地域課題解決のお手伝いをしています。



自治体の魅力は「時間軸」と「問いの立て方」にある


北野:次に廣岡さんにお尋ねしたいと思います。もともと東京のコンサルティングファームで働き、ご家族もいらっしゃる立場でしたが、神戸へのUターンを決断する際にどのような悩みをお持ちでしたか。





廣岡:誰しも、地方にUターンして働く場所があるのか、どうやって起業したら良いのか、いろいろと不安があると思います。私の場合、後輩を連れて、東京から神戸に戻って起業しました。


私は神戸に家業があるため、ある程度のリスクヘッジはできるのですが、他方、後輩については、「家族と共に移住」と「スタートアップへの入社」という二つのハードルは高かろうということで、まずは出資元のフェリシモ(上場会社)に転職してから、新会社へ出向してもらうという形を設計しました。


北野:廣岡さんが感じる、地方自治体で働く魅力や難しさについて教えてください。


廣岡:私が感じる自治体の魅力は時間軸の長さです。自治体は10年どころか、50年、100年先のことを考えており、これは常に日次、月次で報告しなければならない民間企業では難しいことです。


また、魅力でありつつ難しさでもあるのは、「問いの立て方」ではないでしょうか。自治体は問いを比較的自由に立てることができますが、それだけに問いの立て方によってまちの方向性が大きく変化します。


例えば、神戸市は経済規模も大きく、皆さんそれなりに豊かに暮らしているように見えます。しかし、実際には生活困窮者も一定数いらっしゃいます。その中で、どんな問いを立てて取り組んでいくのか。しかもそれを50年、100年のスパンで考えていくというような経験は民間企業でほぼないでしょう。





多様なステークホルダーを巻き込む魅力





北野:民間企業との違いについて、私が神戸市の方と話していて感じるのがステークホルダーマネジメントの観点です。自治体、コンサル、事業会社、特定団体法人、スタートアップなど、地方都市の課題に取り組むにしてもさまざまなプレイヤー(=ステークホルダー)がいます。


吉永さんはこれまでいろいろな立場で地方の課題解決に関わってこられたと思いますが、その違いについてどう感じていらっしゃいますか?


吉永:それぞれの立場でできることも異なりますし、良さも悪さもあります。先ほど廣岡さんもおっしゃっていた通り、自治体は長期的なスパンで物事を考えられる良さがありますが、政治に振り回されることもあります。


また、企業の良さはミッション、ビジョンが明確ですが、一方で手段が限られてしまうこともあります。それに対して、自治体は「まちのためであれば手段は選ばない」ため、その時々で最適なものを提案することができます。



震災の経験からくる、変化への危機感


北野:なるほど。神戸ならでの特徴はありますか?


吉永:神戸市でやりやすい(=自治体以外の巻き込み)のは、震災を経験しているため、課題を解決するには行政だけでは難しいことを自治体側が分かっているからだと思います。民間や市民、NPOにもお願いしなければならないというマインドセットがありますし、人口150万の大規模な自治体であるものの、危機感がしっかりあるのです。


廣岡:プレイヤーの中のコンサルは確かに課題解決のために支援してくれるのですが、「ゼロイチ」で新たな価値を創造する点では限界があります。社会にとって新しいものを生み出し、挑戦していくプレイヤーがスタートアップなのだと思います。


また、東京に比べると地方は経済圏が小さいため、各プレイヤーの関係性が深いです。そのため、大手の事業会社はどうやって自治体に貢献できるかという意識が高いですし、自治体と企業が一緒に成長していく姿に向き合えると感じています。



【後編】地方都市の困難な課題を解決する仕事で、活躍できる人材とは?



塩谷 将敏氏/神戸市役所(企画調整局医療産業都市部調査課 係長)

2003年YKKAP株式会社入社。窓を中心とした住宅用建材の営業としてルート営業や新規顧客開拓営業を経験。2013年神戸市に転職。産業振興局工業課にて市内中小製造業の振興、建設局総務課において人事労務などに携わったのち係長に昇任。北神地域の出張所において地域活性化を担当したのち、現所属で神戸医療産業都市の推進に従事。


営業から公務員への転職:仕事の本質は変わらない





北野:塩谷さんには、民間から公務員への転職についてお尋ねしたいと思います。ワンキャリアプラスのデータをみると、公務員にもいろいろなキャリアパスがあることが分かります。前職が記者やライターの方もおられれば、デジタルマーケティングに従事していた方もおられます。


転職理由もさまざまな点が特徴ですが、塩谷さんはそもそもなぜ神戸市に転職されたのでしょうか。


塩谷:私は新卒で営業としてメーカーに入社しましたが、営業の仕事自体は嫌いではなくむしろ好きでした。ただ、10年ほど働き、自分のキャリアが営業だけでいいのだろうか、何かほかのことができないだろうかと考えるようになりました。そんな中で公務員の方と接することがあり、自治体で働くことも自分のキャリアの一つとしてあり得るのではないかと思ったのが、きっかけです。


仕事探しにあたって、私は西宮市出身なのですが、残念ながら当時西宮市では民間企業等の経験者からの職員採用を行っていませんでした。そこで隣の神戸市のホームページを見てみると民間企業等の経験者の職員採用を行っているだけでなく、「デザイン都市・神戸」などの新しい都市戦略に取り組んでいることがわかりました。そんな神戸市に魅かれて、ここで働いてみたいと思ったのです。


北野:なるほど。営業職からのジョブチェンジですが、そこに不安はありませんでしたか?


塩谷:営業から公務員への転職に不安はありました。ただ、よくよく考えてみると相手の話を聞いて、ニーズを引き出し、自分の手元にあるものでそれに応えることが営業だとすれば、公務員でも相手が変わるだけで仕事自体は変わらないのでは、と考えました。そうすると、すごく気が楽になりましたね。



たった一人で「地域活性化」!? 田園風景が事業になる


北野:神戸市職員になっていろんなことに取り組んでこられたと思いますが、その中で印象に残っている仕事はありますか。


塩谷:神戸市というと海や山をイメージする方が多いと思いますが、神戸市の大半を占める北区や西区には田園風景が広がっています(下図の真ん中の写真を参照)。





私は係長になって初めての異動で、そうした農村地域にある出張所という市の出先機関に「地域活性化してください、やり方は任せる。」といった感じで放り込まれました。最初に何をすべきか途方に暮れていた時期は、地域で活動している自治会や婦人会、PTAなどいろんな団体の会合にできる限り参加して、ひたすらお話をお聞きしました。


ニーズをお尋ねする中で分かったことは、人口減少に伴い、どの団体も会費や収入が減っており、活動継続のためには地域活動においても儲けるという視点が必要ではないかということでした。そこで地域活動を担っている団体を法人化し、収益事業にも取り組めるようにしました。まだ収益化できているとは言い難いですが、今その団体はまさにそういった課題に取り組んでいるところです。


もう一つは、町内人口が少ないとはいえ、さまざまな事業に取り組んでいる方がおられます。それで、「横の連携」「異業種の交流」を大切にしたいと思い、地域の方々と商工会を立ち上げ、その団体を神戸市に登録団体として認定してもらって地域商業を活性化する目的の補助金を使えるようにした取り組みも印象に残っています。


北野:民間ではなかなかできない事業ですね。ところで、(上図左)「KAN」とは何でしょうか。


塩谷:これは「神戸エアロネットワーク」の略です。私が工業課という部署にいた時に航空機産業が右肩上がりだったのですが、航空機は一つのモデルの寿命が長いため、一度採用されると継続的な受注が可能です。


ただ、参入のための障壁が非常に高く、一つの企業だけではなかなか太刀打ちできません。そこで、いろんな企業がそれぞれの得意分野を持ち寄って、ネットワークを形成し、受注する仕組みを作れないだろうか、ということになり、中小企業の社長さんや専門の方が作り上げたのが「KAN」で私はその団体の支援を担当していました。





空いた時間で始めた「六次産業化」&「スタートアップアフリカ」とは?


北野:面白いですね。広域に渡る多様なステークホルダーを巻き込んで、市民の生活の向上や発展に実際に貢献できるのは、自治体の仕事の醍醐味ですね。吉永さんはいかがでしょうか。


吉永:私のメインの仕事はスタートアップ支援でしたが、ほかにもいろんなことにチャレンジしていました。例えば、学生たちと一緒になって、神戸の農産物の「六次産業化(農業従事者が2次産業や3次産業にも取り組み、生産物の価値を高める)」の一つとして、いちじくのブランディングをしたり、ジャムやチャツネへの加工・製品化もしたりしていました。






また、「神戸スタートアップアフリカ」と銘打って、アフリカからの留学生たちとつながりを作り、シリコンバレーではなく、ルワンダで学生たちに2週間の起業体験プログラムを経験してもらう試みも行いました。


自治体というとトップダウンで予算が決まるイメージがあるかもしれませんが、意外にボトムアップ型なのです。自分で企画して、予算がついて、事業化できるのは大きな魅力ですね。


北野:イベントの冒頭で吉永さんが、自治体では仕事が個人に紐づいている部分があるとおっしゃっていました。そういう意味では、自治体は短いスパンでの費用対効果を重視するだけではなく、長いスパンで見たときの効果も大切にしているため「まずはやってみよう」というケースが多いのかもしれないですね。


塩谷さんの他にも様々な方が民間企業から神戸市へ転職されていると聞いていますが、事例をご紹介いただけますか?





塩谷:東京の旅行会社に勤務していましたが、地元である神戸市に貢献したいと一念発起して、神戸市役所に転職した女性がいます。「近代登山発祥の地」である六甲山の魅力をもっと発信したいと考え、JR新神戸駅に登山支援拠点を設置するなど、「神戸登山プロジェクト」に取り組んでいます。また彼女の部署では、閉鎖された保養所をコワーキングスペースにしたりしています。



公務員の唯一無二の経験が、キャリアップにつながる


北野:公務員としてのさまざまな魅力を挙げていただきました。ただ一方で、公務員になると市場価値が失われてしまい、民間企業に戻れないのではという不安を持つ方がおられます。ワンキャリアプラスのデータを見るとそんなことはないように思いますが、実際はどうなのでしょうか?





吉永公務員へ転職後のキャリアアップは可能だと思います少なくとも私の場合、民間企業で30歳くらいまで働き、自分で企画して事業を立ち上げるような経験はありませんでしたが、公務員に転職したことで唯一無二の経験ができたと思っています。


ただ、自分の市場価値について明確なイメージ、目的意識は持っておいたほうが良いと思います。私の場合はITのプロジェクトマネジメントに地方創生を掛け合わせることで市場価値を高めるようにしました。自分の側で何をテーマにしたいのかを明確にしておくと、採用側にとっても分かりやすいと思います。


塩谷:個人的に、公務員の仕事で一番すごいと思っているのは、会える人の幅が非常に広いことです。


民間企業だと同業種の方との付き合いに限られることが多いですが、公務員は3~5年で異動し、そのたびに全く違う仕事をすることもあります。部署が変われば、同僚も変わりますし、それに加え、市民の方、企業の方、NPOなど民間団体の方にもお会いします。これだけいろんな人に会えるのは公務員でないと得られない経験で、どこに行っても活かせるのではと思っています。


北野:確かに「人的資産」と「企画業務」は市場価値を高める上で武器になりそうです。



地方自治体でのキャリアに向いている人とは?





北野:最後にあらためてお聞きしたいのですが、地方自治体でのキャリアを目指すにあたり「向いている方」「向いていない方」はどんな人でしょうか。


吉永:向いているのは「正義感の強い人」かなと思います。民間企業だと正しいことをやりたいと思ってもそれを「飲み込んで」モヤモヤを抱えることは結構あります。もちろん、公務員も組織のやりづらさ、面倒臭さはいろいろとあるものの、「正しいことを正しくやれる」のです。


塩谷社会の役に立ちたい、課題解決に取り組みたいと考えるチャレンジングな人には向いていると思います。 神戸市に限らず、地方自治体には本当にいろんな課題がありますので。


▼神戸市役所の職員採用情報はこちらから▼

https://www.city.kobe.lg.jp/a14057/shise/shokuinsaiyou/kobe/ke/index.html


北野:今日は貴重なお話をありがとうございました。



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