はじめに
ONE CAREER PLUSのキャリアアナリストが、皆様のお悩みや一般的な疑問にお答えする連載企画。
今回は、「転職サービスから大量のスカウトを受け取り、どう絞りこんでいけばいいのか分からない」という戦略コンサルに勤める相談者さんからのお悩みです。
コンサル出身者が転職先を検討する際に、抑えておくべき要素はどのような点なのでしょうか。
キャリアデータを知り尽くすキャリアアナリスト佐賀が、率直にお答えします。
本コンテンツは、Podcastまたは記事のお好きな方法でお楽しみいただけます。
▽Podcastで聴く方はこちら
本日のお便り
ワンキャリアプラスの佐賀です。
キャリアアナリストである私佐賀が、キャリアのお悩みに答えていくこの企画。
これまでワンキャリアプラスに寄せられた相談や、一般的に皆さんが悩むであろうテーマを取り上げ、ラジオ形式で解決していく、シンプルなコーナーでございます。
本日のお便りはこちら。
ラジオネーム、「ローズ・マリー」さんからのお便りです。
佐賀さん、こんにちは。
ローズ・マリーと申します。
新卒で戦略コンサルに入社し、現在5年目です。
そろそろマネージャーになろうという時期なのですが、同時にそろそろ転職も考え始めようと思っています。
そこでハイクラス転職サービスに登録したのですが、登録と同時に大量のスカウトメールが届いて困惑しています。
事業の上流の意思決定に携わりたいという以外の軸は特にないので、選択肢が多すぎてどう選べばいいか全く見当がついていません。
戦略コンサルの人間に対して、求人票には書いていないけど、留意すべき絞り込み項目があれば教えていただきたいです。
ローズ・マリーさん、ありがとうございます。
まず、そもそものこのお便りの中に書かれてる内容については、「まさしく」と思うところがいくつかあります。
例えば、「そろそろマネージャーになろうという時期に、転職を考え始めている」というのは、コンサルの人からしたら、あるあるですよね。
実はコンサルティングファームは、マネージャーに上がるタイミングで年収の水準が一気に変わります。
具体的には、1,000万円台前半から1,000万円台後半とか2,000万円台に乗るなど、ファームによって様々ですが、給料がかなり上がるのがマネジメントを担当するというタイミングです。
総合ファームですと、1個手前のシニアコンサルあたりで1,100万に乗るのか900万円ぐらいで、そのマネージャーになったタイミングで1,000〜1,300万円とか、そういったふうに一気に上がるところが多いので、上がりすぎる前に転職するという考え方をする方もいらっしゃいます。
コンサルティングファームの中でキャリアを作っていくのであれば、現在のファームの中で昇格をすることが勝ち筋である一方、今後ポストコンサルの転職で事業会社を狙う場合は、給料を上げすぎることは考えもので、マネージャー昇格前に転職を考える方も多いと思っています。
そして、スカウトサービス登録すると大量のスカウトがくることもあるあるですよね。
特にエージェントや事業会社では、コンサルの方は戦力として求められやすい傾向があるため、大量の求人・選択肢が届くかと思います。
そのため、今日はローズ・マリーさんには
- ポストコンサルの転職先
- ポストコンサルの転職で考えるべき要素
ついてお話させていただければと思います。
ポストコンサルの転職先
ポストコンサルの転職先は、大きくは「支援会社」と「事業会社」に分かれます。
<支援会社>
どちらかというと事業会社を支援する側に回っていく、これまでのコンサルタント・アドバイザリーとして同じ働き方の中でキャリアを追求していくキャリアパターン
支援会社の例
- コンサルティングファーム
- ベンチャーキャピタル
- プライベートエクイティファンド
<事業会社>
クライアントサイドとも言うことができるかと思いますが、意思決定の当事者である事業会社側に転身をするというようなキャリアパス
例えば現職が総合ファームとか、どちらかというと現場に関わる案件を担当される方には、上流の中に戦略ファームも含まれてくると思いますが、ローズ・マリーさんは現在戦略コンサルに在籍をしていらっしゃるというお話ですので、事業の上流の意思決定に携わりたいという軸、すなわち事業会社に転職をしたいというふうに捉えさせていただきます。
コンサルタントが事業会社へ転職する際に抑えるべき3つの要素
コンサル人材が事業会社で活躍できるか否か、その先の選択肢をどう見極めていけば良いか、という内容については、以下の3つの要素があるということをお話しさせてください。
<3つの要素>
- ビジネスモデルや勝ち方上、コンサル人材の強みを活かせるのか
- 受けようとしている企業の中に今ポジションがあるか
- コンサルタントの能力値・優秀さを正当に評価できる環境かどうか
要素1 コンサル人材が活躍できるか
1つ目の要素である「ビジネスモデル上、コンサル人材活躍できる方法か」というところです。
コンサルティングファームの方々が事業会社に行く際、経営企画や事業開発として入社するというケースが多いと思います。
会社の中で活躍できるか否かということについては、
- 入社後に期待する役割や業務の進め方と、自分自身のスキルの親和性があるか否か
という点がとても重要です。
例えば新規事業と一口に言っても、重宝されるのがリクルートの人なのか、Salesforceの人なのか、コンサルの人なのか、ビジネスモデルによってそれぞれ異なってきます。
あるビジネスモデルでは「事業開発」という職種名でも、フロントで意見を収集してくることが一番求められる場合もあります。
具体的には、客先に足を運んで自分たちのプロダクトを提案し、そこでもらったフィードバックをもとにプロダクト開発側・エンジニアサイドに対して、顧客が求めているニーズを提示するといったことです。
一方で、営業的に顧客に足を運ぶというよりも、事業展開的にはどこに勝ち筋があるのかを見極めることや、事業課題の構造や論点を整理し、それを企画によって課題解決・推進していくことが重要なビジネスモデルもあります。
例えば、世の中で立ち上がっているスタートアップの中にも、SaaS・ソフトウェアビジネスを展開している企業さんは多くいらっしゃいます。
SaaSのビジネスモデル、一定プロダクトの開発ができてきて、PMFと呼ばれるようなこのプロダクトであれば一定いけるだろうというような勝ち筋が見えてくると、あとはマーケットの中にいかに広めていくか、中心となる顧客をいかに抑えるかということが重要になってくるため、そこで求められるのは営業力だと思います。
また、BtoC、C側のビジネスモデルの場合、toCのエンドユーザーに対して積極的に営業行っていくことはないです。
C側のユーザーを集めるために必要なのは、マーケや、アライアンス提携、外部の企業さんと協業して物事を前に進めるなどといったことです。
この点では、コンサルの事業推進をやってきた力が生きる可能性があります。
このように、求められる力・スキルセットと、コンサル人材が持っているスキルセットが一致しているのか否かが大切です。
この親和性が悪いと、入社後に
「新規事業って聞いていたのに、結局やっていることは事業部長・事業責任者の論点整理や課題整理で、結局コンサルにいた時と変わらないことやってるな」
と、ある種、整理屋さんみたいに小さくまとまってしまう危険性があります。
そのため、1つ目は、そのビジネスの勝ち筋・勝ち方的に、コンサル人材である皆さんが活躍できる土壌がしっかり整っているのか、ここは確かめるようにしてみてください。
要素2 企業の中にポジションがあるか
2つ目の要素である「今その企業に椅子があるのか」というところです。
例えば、戦略コンサルタントのように「戦略的に考え、構造化し整理する」ことが得意な人材は企業には一定必要ですが、大量にはいらないです。
事業会社の組織図を見てみても、経営企画室や社長室はポジション数が少ないですよね。
1,000名の組織でも、経営企画室や社長室は社員数10名にも満たない、0.1%未満という企業は多くありますよね。
経営企画室や社長室というのは、大量採用しても事業が好転していく、売りが立っていくというポジションではありません。
そのため、今後受けようとしている企業の中で、自分自身が入る想定の部門のポジションの埋まり具合や、企業側の採用背景をしっかりと理解をしておきましょう。
例えば、「出現率が低いポジション・職種だから、一応取っておくか」という感じで採用されてしまうと、入社した際に、前任者が結構仕事を取ってしまっていて自分のやることがなかったり、とりあえず仕事作ってと渡されるが必要性も自由度も低いために手持ち無沙汰になってしまったり、ということもなくはないと思います。
そのため、ここの部分は要注意でチェックをしてみていただければと思います。
要素3 コンサルタントが評価される環境か
最後3つ目の「コンサルタントの能力値を正当に評価できるのか否か」という点は、盲点になりがちです。
コンサルと一口で言っても、戦略ファーム、総合ファーム、IT特化のファーム、ブティック系ファームと様々であり、「どこにいて何のプロジェクトをやっていたのか」によって持っている経験値・スキルレベルも様々です。
コンサルティングファームにいた方にとっては当たり前なことであっても、そこの出身者ではない、経験したことがない方の中からすると、言葉としてはなんとなくわかったとしても、業務・スキルセットレベルでの違いを適切に理解できていない方もいらっしゃると思います。
これは経営者や人事でも、社名・プロジェクト内容を見たときに「その人にうちの会社の何を任せられるの」ということが浮かんでこない方もいらっしゃるはずです。
そのため、今後事業会社に行こうとしている方の中で、自分の実力値に自信がある人ほど、能力値を正当に評価してくれる会社じゃないと歯がゆい思いをする可能性があります。
この観点で、どういうところであれば評価をしてもらいやすいのかというと、極論ですが、同じファームの人がいる企業の方が、自分自身の価値だったりですとか活用の仕方はわかってもらいやすいです。
同じファームとは言わずとも、同じレイヤーを担当していたファーム、例えば戦略ファームであれば、現在例えばマッキンゼーにいる人にとっては、マッキンゼーの卒業生がいる会社ではなくても、BCGベインなどのように近しい案件やクライアントと対峙をしてきている方がいらっしゃる会社の方が、皆さんの価値をしっかりと分かっていただけるかと思います。
Big4やアクセンチュアのような総合ファーム出身者の方も同様で、できる限り自分自身のバックグラウンドと近しい経験を持っていらっしゃる方がいる会社の方が、活躍しやすい土壌は整っているかと思います。
更に言うと、コンサル出身の起業家は増えてきています。
元コンサルの企業家は、コンサルの使い方がうまく、業務内容への理解もあります。
そのため、事業会社の中でどうやってキャリアを作っていくと皆さんが望む方向性に向かっていけるのか、キャリアアップに繋がるのかという点について、一緒に議論してくれると思います。
よって、コンサル出身の起業家の会社や自分自身のバックグラウンドと近しいコンサルファーム出身の方がいらっしゃるような企業のポジションに入ることで、活躍のチャンスが増えるのではないかと思っています。
今日いろいろお話させていただきましたが、ローズ・マリーさんが転職活動をスタートする際に、ぜひ事業会社を見極めるために持ってほしい3つの視点をお話させていただきました。
- ビジネスモデルや勝ち方上、コンサル人材の強みを活かせるのか
- 受けようとしている企業の中に今ポジションがあるか
- コンサルタントの能力値・優秀さを正当に評価できる環境かどうか
この3つを意識して、次の環境を探してみてください。
さいごに
さあ、いかがでしたでしょうか。
このコーナーでは、皆様からのお便りを大募集しています。
詳細欄のURLの部分から、キャリアに関する疑問やお悩みをどしどしとお寄せください。
また、佐賀や他のキャリアアナリストと直接話してみたいという方は、無料のキャリア面談も受け付けております。
こちらもお気軽にご応募ください。
それでは、また次のラジオコーナーでお会いしましょう。
さようなら!