はじめに
ONE CAREER PLUSのキャリアアナリストが、皆様のお悩みや一般的な疑問にお答えする連載企画。
今回は、学生時代から興味がある教育業界にチャレンジをしたいが、お給料をあきらめざるを得ないのか、と悩んでいらっしゃる相談者さんからのお悩みです。
実はこの点、必ずしもトレードオフではないのがリアルです。
キャリアデータを知り尽くすキャリアアナリスト佐賀が、率直にお答えします。
本コンテンツは、Podcastまたは記事のお好きな方法でお楽しみいただけます。
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本日のお便り
ワンキャリアプラスの佐賀です。
キャリアアナリストである私佐賀が、キャリアのお悩みに答えていくこの企画。
これまでワンキャリアプラスに寄せられた相談や、一般的に皆さんが悩むであろうテーマを取り上げ、ラジオ形式で解決していく、シンプルなコーナーでございます。
本日のお便りはこちら。
ラジオネーム「夢カサゴ」さんのお悩みです。
佐賀さん初めまして。
夢カサゴといいます。
現在新卒で入社した外資系企業の4年目です。
実は私は学生時代から教育領域に興味を持っていたのですが、新卒就活時はビジネススキルを磨いてから社会課題に取り組みたいと考え、外資系企業に入社しました。
3年半ほど働いて、スキルが向上していると同時に、お給料も一定高くなっているのが実態です。
社会課題領域ってお給料があまり高くないイメージがあるのですが、私はお金も妥協したくありません。
佐賀さん、何かいい方法はないでしょうか。
これは難しいですね。
仰る通り、「社会課題解決の領域は給与がついてこない」という実態があるのも半面正しいと思っております。
転職を考えている方から「ロマンの追求と、営利の追求の両立って難しいですね。」とご相談をいただくケースは多いです。
ただ、実はこの社会課題領域には、給料が高くて稼げている企業と、投資フェーズで社員への還元はこれからの企業があります。
そこで今回は「社会課題領域で、稼げている企業と投資段階の企業の違いと見極め方」を中心にお話させていただければと思います。
給料を確保したいならキャッシュリッチなマーケットへ
結論は、「給料を妥協したくないのであれば、社会課題領域の中でキャッシュリッチなマーケット・企業を選びましょう」というのが答えになります。
稼いでいる業界・企業に行かないと、給与原資を確保することはできず、稼いでいない企業では社員に対する還元も発生しません。
そのため、当然ながら自身の入社時や、働いている期間の給料は少なくなってしまいます。
稼げる業界に入って社員還元が始まっているのであれば、自分自身の給与への還元も少し期待ができる状況である、ということになります。
当たり前のことだと思われるかもしれませんが、マーケット全体で捉えると、例えば「教育って他の業界に比べると、稼いでいないんではないか」と見方になってしまうと思います。
しかし、その企業ごとのビジネスモデルの部分を深堀って見てみると、「意外と稼げてないイメージがあるマーケットだけど、この企業ちゃんと稼げてるな」みたいなものが見えてくると思うので、そのような点を見ていただければと思っております。
お金を持っている対象を顧客としている企業・業界を狙うべき
どうやって「稼げているか、稼ぎでないか」を見極めていけるかというと、「ちゃんとお金を持っているお客さんを対象にしてビジネスを進めているか」というところを見てみるのはいいんじゃないかな、というふうに思います。
教育業界の例
例えば、夢カサゴさんが興味を持たれている教育業界を見た時、どこがお金持ってると思いますか。
例えば、学校法人がありますよね。
学校法人の中でも、高等学校や中等学校などもありますし、義務教育か否かも変わってきます。
どこが母体になっているかによって、お金を持っているか否かは異なります。
EdTechと呼ばれる教育業界のテック推進を目指すIT企業の多くが最初に攻めるのは、実は学習塾です。
この理由は単純で、一番お金を持っているから。
教育業界の中でも学習塾に一番お金が流れてくるのは、子供を良い高校や大学に行かせたい親がちゃんとお金を払ってくれるマーケットだからです。
義務教育期間中は、公立校では無償教育があり、私立でも一定金額は決まっているため、その中で稼ぎを上げることが簡単ではありません。
ただ学習塾は、例えば講座を増やしたり、受ける授業を増やしてもらったりと、生徒数が少なかったとしてもさらに売上を伸ばす術があります。
その分、学習塾業界は少子化の中でも、売上の規模で見たときのマーケットサイズが成長している傾向にあります。
EdTech系の企業には、「atama+」さんや「モノグサ」さんなどの様々な企業がありますが、
- 学習塾
- 私立の高等学校
- 公教育
という順番で実績を作りながら、進める企業が結構多かったりします。
そうすると、学習塾業界において一定シェアが取れていると、教育業界の中でもちゃんとお金稼いでいるという印象が持てると思います。
先程までは、おそらく皆さんの中では教育業界は一律で稼ぎづらいというイメージがあったかもしれません。
しかし、ビジネスモデルを
- 対象としているマーケット
- マーケット内でのお金の流れ
- マーケット内で一番お金が集まるところを顧客の対象としている企業か
の視点で順々に紐解けば、自分に給与原資からの還元が発生するかの仮説が立つと思います。
一方で、お金を持っていないお客さんから取ろうとしている場合、売りが立たないのは当然であり、その分給料に還元がない企業が多くなりがちであると思います。
サステナビリティ関連業界の例
教育以外で社会課題解決で言うと、最近はSDGs関連がトレンドであるため、サステナビリティや環境、エネルギーなどの領域に関心が高い方は多いと思います。
例えば、サステナビリティ関連で、農業やアグリテックのマーケットの中で農家さんの生産性を向上することを目指している企業があるとします。
ビジネスモデルを深堀ろうとしたときに、農業の中で稼いでいるところや、農業マーケットに商材を提供した際の稼げる見込みが、私には正直まだ見えないです。
これは「稼げない」と言ってるわけではなく、「勝ち筋があるのかがわからない」ということです。
同じサステナビリティの文脈では、CO2排出削減みたいなものも挙がります。
CO2排出を削減していくために、工場や生産ラインの中でのCO2排出量を見える化するクラウドサービス・SaaSサービスを提供しているアスエネさんのような企業もありますが、こういった企業が対象としているお客様は、製造業界です。
メーカーや、資源、鉄の生産などの製造業界の企業の多くは、IRや中長期経営方針などで「CO2排出を実質ゼロにします」などということを掲げています。
そのような企業にとっては、「CO2排出を見える化し、削減していくこと」は、会社経営における至上命題であるため、この顧客群に対してそのような商材を提供しようとすると、売上を上げる余地があります。
製造業界は、日本だけでなく世界で見ても最大のマーケットであるため、お金は一定あります。
そのため、サステナビリティという広義で見たとしても、CO2排出削減のために製造業界を狙っているマーケットであれば、一定稼ぎが立つのではないかという見立てが立ち、入社した際の給料にも期待ができるかもしれないです。
自分自身が行いたい社会課題解決と、ちゃんと稼げるというニーズが一致しやすいという側面があるのではないでしょうか。
まとめ
様々なアプローチから考えてみましたが、いかがでしたでしょうか?
自分の給料が高くなるかどうかを考えるには、その企業が支払う余力があるのかということが大事です。
支払う余力という点では、ちゃんと稼げているか、コストの効率化ができているかというところが大事になってきます。
そういった点から、企業やプロダクトが攻めているマーケットや対象としているお客さんはちゃんと稼げているのか、を紐解いていくと、ご自身への給与還元原資についても仮説が立つようになるかと思いますので、こういった形でアプローチしてみると、夢カサゴさんが今後チャレンジしてみたいと思う業界や企業で、自分自身の望む年収・待遇が実現できそうかという見立てが立つのではないかと思っております。
さいごに
さて、いかがでしたでしょうか。
このコーナーでは、皆様からのお便りを大募集しています。
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それでは、また次のラジオコーナーでお待ちしております。
さようなら!