「SIerから転職したい」と考える人は少なくありません。多重下請け構造による裁量の制限、客先常駐の働き方、キャリアパスの見えにくさといった環境的な要因により、転職を意識するきっかけになるケースが多くみられます。
一方で、SIer出身者が転職市場で持つアドバンテージには大きなものがあります。厚生労働省「IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業報告書」(令和5年度)によれば、5年以内にIT・デジタル職種に転職した人の約56%が転職後に賃金が上昇しています。
本記事では、SIerからの転職を考える方に向けて、転職理由の背景・評価されるスキル・転職先7選・目的別の選び方・成功のポイントと注意点を解説していきます。
- 1. SIerから転職を考える主な理由
- 1-1. 多重下請け構造による課題
- 1-2. 客先常駐による働き方の制約
- 1-3. スキルアップ・キャリアアップの機会に対する不安
- 1-4. 労働時間や給与・評価への課題
- 1-5. 将来のキャリアパスが描きにくい環境
- 2. SIer出身者が転職市場で評価される経験・スキル
- 2-1. 上流工程の経験(要件定義・基本設計)
- 2-2. プロジェクトマネジメント能力
- 2-3. 顧客折衝力・合意形成スキル
- 2-4. 業界特化の業務知識(金融・製造・小売など)
- 2-5. 大規模システムの開発・運用経験
- 3. SIerからの転職先として選ばれている職種7選
- 3-1. ITコンサルタント
- 3-2. Web系エンジニア(自社開発)
- 3-3. 社内SE・情シス(事業会社)
- 3-4. プロジェクトマネージャー・PdM(事業会社のDX推進)
- 3-5. SaaS企業・スタートアップ
- 3-6. IT営業・プリセールス
- 3-7. フリーランス・独立
- 4. 【目的別】転職先の選び方
- 4-1. 年収を上げたい
- 4-2. 残業・働き方を改善したい
- 4-3. 技術スキルを高めたい
- 4-4. 客先常駐から解放されたい
- 5. SIerからの転職を成功させる5つのポイント
- 5-1. 経験・スキルの棚卸しを丁寧に行う
- 5-2. 転職先の業務内容・企業文化・技術環境を事前にリサーチする
- 5-3. 転職理由をポジティブに言語化する
- 5-4. 在職中に転職活動を進める
- 5-5.信頼できる転職エージェントを活用する
- 6. SIerからの転職で失敗しないための注意
- 6-1. 一時的な年収ダウンを想定していなかった
- 6-2. 求められるスキルの違いによるミスマッチ
- 6-3. 企業文化・働き方の実態を確認せずに入社してしまった
- 6-4. 転職の軸が明確でなく、情報に流されてしまった
- 7. SIerからの転職に関するよくある質問
- Q1. SIerからの転職は難しい?
- Q2. 未経験の職種への転職は可能?
- Q3. 転職活動を始めるベストなタイミングはいつ?
- Q4. 年収を下げずに転職することは可能?
- ワンキャリア転職のご紹介
1. SIerから転職を考える主な理由
転職を考える主な理由とその背景を紹介していきます。
1-1. 多重下請け構造による課題
日本のIT産業は、多重下請け構造が特徴とされています。経済産業省の審議会資料「IT産業における下請の現状・課題について」では、「下請企業の労働生産性は元請企業の6割にとどまっている」と示されており、この構造が格差の背景にあると分析されています。
重層的な下請け構造が広まった理由のひとつとして、ウォーターフォール型開発との相性の良さが挙げられています。ウォーターフォール型開発とは、「要件定義→設計→開発→テスト」と工程を順番に進めていく開発手法のことで、上流から下流へと仕事が流れていく構造が、そのまま元請け・下請けの階層に対応しやすいという特徴があります。
その結果、下流工程を担う企業ほど待遇や裁量が制限されやすい状況が生まれており、こうした構造は現在も続いています。
1-2. 客先常駐による働き方の制約
客先常駐とは、自社ではなくクライアント企業のオフィスに出向いて働く形態のことです。便利な面もある一方で、働く環境や職場のルール、社内文化などがクライアント企業側のものになるため、自分や自社でコントロールしにくいという面があります。
厚生労働省の過去の調査では、客先常駐を行う企業が9割を超えるとされていました。現在ではリモートワークの普及により働き方は多様化しているものの、依然としてSIerにおいてはプロジェクトの特性上、客先付近での業務が発生する構造が続いています。
1-3. スキルアップ・キャリアアップの機会に対する不安
中堅SIerで働くSEが転職を考えるきっかけとして、「より上流工程に携わりたい」「ワークライフバランスを整えたい」「年収を上げたい」「自社サービスに関わりたい」の4つの傾向が見られるとされています。
これらの背景にある実感として、「2次請け・3次請けがメインの企業で働いていて、スキルも給与も上がらず、不安定な働き方に危機感を覚えた」「設計者や仕様書に沿って開発やテストをするだけの人材にはなりたくなかった」といった声も紹介されており、現状のキャリアに将来への不安を感じていて転職を決意するエンジニアが少なくないことがうかがえます。
【より上流に携わるには?】中堅SIer×SEからのキャリアパスと最新トレンド(ONE CAREER PLUS)
1-4. 労働時間や給与・評価への課題
厚生労働省は2018年に「IT人材の長時間労働削減に向けた企業実態調査」を実施しました。この調査では、月80時間超の残業実態や有給休暇取得率の把握にとどまらず、「帰りやすい雰囲気づくり」「時間外労働の見える化」といった是正策の実施状況まで細かく問われており、長時間労働が業界全体の構造的な課題として認識されていることがわかります。
こうした環境のなかで、働き方や労働時間をコントロールしにくいと感じるエンジニアにとって、ワークライフバランスへの不安は転職を考えるきっかけのひとつとなっています。
IT業界の働き方・休み方の推進|調査・分析結果|労働時間の実態や長時間労働対策への取組状況調査
1-5. 将来のキャリアパスが描きにくい環境
特定の技術や工程に限定された業務が長く続くと、将来のキャリアに不安を感じるケースがあります。ワンキャリア転職に寄せられた転職体験談のなかには、「前職での役割がシステム開発の特定工程に限定されており、上流工程への参画が難しかった」という声も見られます。携われる領域が狭いまま年数だけが重なっていくことで、将来のキャリア像を描きにくくなり、それが転職の直接のきっかけになるケースも少なくないようです。
SIer(SE/システムエンジニア)からの転職・キャリアパス(ONE CAREER PLUS)
2. SIer出身者が転職市場で評価される経験・スキル
SIer出身者が転職市場で評価される経験・スキルについて紹介していきます。
2-1. 上流工程の経験(要件定義・基本設計)
厚生労働省「IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業報告書」(令和5年度)では、IT・デジタル職種への転職後に約56%が賃金が上昇していることが示されています。なかでも、要件定義・設計・構築といった上流工程への参画経験を持つ人材ほど賃金上昇が顕著であることも明らかにされており、要件定義や基本設計の経験は転職後の評価に直結しやすいといえます。
IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業報告書(厚生労働省、令和5年度)
2-2. プロジェクトマネジメント能力
同報告書では、DXや大規模プロジェクトにおいてプロジェクト管理・リスク管理を担える人材への需要が強調されており、企業がIT・デジタル人材を採用・処遇する際に重視する要素のひとつとして位置づけられています。
ワンキャリア転職に寄せられた転職体験談でも、「要件定義から本番リリースまでの経験が評価された」という声が複数確認でき、一連の工程を通じて携わった経験が転職市場での強みになることがわかります。
IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業報告書(厚生労働省、令和5年度、【より上流に携わるには?】中堅SIer×SEからのキャリアパスと最新トレンド | 転職サイト【ワンキャリア転職】
2-3. 顧客折衝力・合意形成スキル
同報告書では、顧客折衝や社内外の関係者との合意形成の経験が転職市場で高く評価される傾向が示されています。
ワンキャリア転職の転職体験談でも、「人との折衝経験を深掘りされる場面が多く、顧客との折衝経験や社内でのリーダー経験が非常に役立った」(新東電算/女性/20代→KPMGコンサルティング)という実例が確認でき、技術力だけでなくコミュニケーションや調整力が選考で重視されている様子がうかがえます。
厚生労働省 「IT・デジタル人材の労働市場に関する 研究調査事業」 調査報告書
【より上流に携わるには?】中堅SIer×SEからのキャリアパスと最新トレンド(ONE CAREER PLUS)
2-4. 業界特化の業務知識(金融・製造・小売など)
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